越冬キャベツとは?普通のキャベツとはどう違う?
キャベツは1年に旬が3回ある野菜として年中流通しています。特に春キャベツや冬キャベツはそれぞれに特徴的な美味しさを持つことで人気です。普段何気なく食べているキャベツですが、実は北海道で作られる特別なキャベツが話題になっていることをご存知でしょうか。
メディアでも話題に取り上げられている北海道の越冬キャベツ。春キャベツとも冬キャベツとも違う、味わい深さに「こんな美味しいキャベツ食べたことがない」と驚く人が増えています。この記事では、北海道の越冬キャベツについて、普通のキャベツとの違いや栽培方法、美味しい食べ方を紹介します。
- 越冬キャベツは、雪の中で保存し熟成させたキャベツ
- 雪の中で越冬することで甘みが増し鮮度が保たれる
- 越冬キャベツは、畑に放置したキャベツが偶然雪の中で冬を越したのが始まり
この記事でわかること
越冬キャベツとは
越冬キャベツとは、秋に収穫したキャベツを雪の中で保存したものです。雪の中で越冬したキャベツは、普通のキャベツに比べて美味しさや瑞々しさが増します。
雪国だからこそできる越冬キャベツは、これまで知る人ぞ知る北海道の特産物として知られていましたが、メディアで取り上げられたこともあり近年知名度が急上昇しています。
キャベツを雪の中に埋めているのに何故凍らないの?
北海道は言わずと知れた日本最北端の都道府県です。真冬になるとほとんどの地域で気温は氷点下となり、雪と氷に包まれてしまいます。しかし、積もった雪の中は別です。雪の中は深さによって温度が変わり、表面に近ければ近い程気温と近い温度になり、地面と接している部分は地熱によって約0度の温度を維持しています。
ちなみに、冷蔵庫の温度は0~10度が一般的。雪の中でも地面近くであれば冷蔵庫のような環境を保つことができ、キャベツを凍らせずに保存できます。
雪国では古くから伝わる冬の保存法
雪国では、雪を使って食料を貯蔵する文化が古くから伝わっています。雪を利用して食料を保存する場所を雪室(ゆきむろ)と呼び、新鮮な魚や肉、野菜、米などの貯蔵に用いられてきました。
昔から野菜なども雪室で保存されていましたが、葉物野菜は凍ってしまうと風味や食感が悪くなるため藁などで温度の下がり過ぎを防ぎながら保存されています。しかし、従来の雪室を使った保存方法では越冬キャベツはできません。
越冬キャベツはある偶然から生まれ、農家の方々が知恵と工夫を凝らして完成させた特別なキャベツなのです。
越冬キャベツは和寒町が発祥
越冬キャベツは北海道の道北に位置する川上総合振興局・和寒(わっさむ)町の特産品です。和寒町は自然が豊富でキャベツやかぼちゃの栽培が盛んに行われています。
しかし、1968年の秋にキャベツの市場価格が大暴落。キャベツ農家は途方に暮れてしまったそうです。その際、市場が飽和状態になってしまっているキャベツをある農家が畑に放置したのが、越冬キャベツの始まりと言われています。
畑に放置したキャベツの上には雪が積もり、そのまま冬を越えました。藁も巻かずに雪に埋まってしまったことで凍ってしまっていると思いきや、春になって雪解けすると青々としたキャベツが畑に残っていたのです。
冬を越えたキャベツは普通のキャベツよりも甘くて新鮮な食感を保っており、和寒町の農家では「冬を越えたキャベツを町の特産品にできないか?」と一致団結して越冬キャベツの開発が行われました。
越冬に適した品種の選定や越冬させる際の環境設定など、約10年程かけてさまざまな工夫を凝らし誕生したのが越冬キャベツです。2010年には和寒町蔬菜組合連合キャベツ部会が「越冬キャベツ」を商標登録し、名実共に和寒町のブランドキャベツとして特産品になりました。
越冬キャベツと普通のキャベツの違い
北海道の大地が育む越冬キャベツは、普通のキャベツと糖度・鮮度が違います。続いては、越冬キャベツと普通のキャベツの違いについてみていきましょう。
糖度が上がり甘くなる
雪の中で保存されているキャベツは、凍らないギリギリの温度を保っている状態です。その際、キャベツは細胞が凍って壊れてしまうことを防ぐために糖度を上げます。
越冬キャベツが甘くて美味しいと言われる由縁はここにあります。普通のキャベツは糖度7~8度ほどですが、越冬キャベツの糖度は10度以上になることも珍しくありません。
ちなみに一般的な苺の糖度は8~15度、生のさつまいもの糖度は8~12度と言われています。越冬キャベツの甘さがいかに普通のキャベツと異なるかお分かりいただけるでしょうか。
水分が保たれて瑞々しくなる
越冬キャベツが保存されている雪の中は、地面からの熱で適度に雪が溶け丁度よい湿度が保たれています。そのため、キャベツは長い冬を越えても水分を殆ど失わず、瑞々しい状態を維持できます。
越冬キャベツは冬を越したと思えない位に新鮮で、キャベツ特有のシャキシャキした食感が際立っているのが特徴です。水分を失わないため、芯まで余すことなく食べられるところも普通のキャベツとは違います。
越冬キャベツの栽培方法
甘さと新鮮さを兼ね備えた越冬キャベツは、農家の方が知恵と工夫を重ねて開発したものです。雪の中にキャベツを置いておけば甘くなる…なんて単純な話ではありません。 越冬キャベツには適した品種や栽培時期があります。普通のキャベツとは少し異なる栽培方法についても紹介していきます。
越冬キャベツは夏に栽培を始める
キャベツは年3回種まきの時期があります。
- 春まき…夏に収穫できる
- 夏まき…秋~冬に収穫できる
- 秋まき…春に収穫できる
秋まきで栽培した品種がいわゆる「春キャベツ」になる訳です。越冬キャベツは冬前に収穫するため、夏まきよりも少し早めに種まきを始めます。
一般的に6月半ば頃に種まきを始め、秋には立派なキャベツに育ちます。北海道の初雪は早い地域だと11月上旬、一般的に11月下旬までには各地で初雪が観測されるでしょう。そのため、越冬キャベツは雪が降る前の11月上旬~中旬にかけて収穫するのが特徴です。
越冬キャベツの収穫は2回ある
越冬キャベツはしっかり育ったキャベツを一度収穫して根切りし、雪中で保存します。冬を越えた頃に雪の中から掘り出し作業を行うため、雪から掘り出したタイミングが収穫時期と言えるでしょう。キャベツの収穫と雪の中から掘り出す収穫。越冬キャベツは2度の収穫を経て出来上がります。
現在は和寒町以外でも栽培されている
越冬キャベツを作るにはさまざまな条件がありますが、北海道をはじめ雪国の中には条件を満たすことのできる地域が多々あります。そのため、現在は和寒町以外でも富良野や幕別などさまざまな地域で越冬キャベツが栽培されています。
ただし、「越冬キャベツ」という商品名は和寒町が商標登録しているため、「雪の下キャベツ」「雪中キャベツ」など、少し違った商品名として流通しているようです。
越冬キャベツのおすすめの食べ方
普通のキャベツとは甘みも食感も違う越冬キャベツ。どのような料理にしても美味しくいただけますが、特に越中キャベツの魅力を感じられるおすすめの食べ方を紹介します。
千切り
キャベツ農家もおすすめするのがキャベツの千切りです。千切りにカットしただけのシンプルな調理方法だからこそ、素材の味が際立ちます。
特に、越冬キャベツは甘みが強いため、これまで食べたことのないような甘い千切りキャベツを味わうことができます。シャキシャキ食感を楽しみたいなら少し太めに、フワフワ食感を味わいたいなら細めの千切りにカットしてみてください。
ポトフ
普通のキャベツよりも糖度の高い越冬キャベツは加熱することでさらに甘みが増します。越冬キャベツは瑞々しいため、少し加熱するだけでも芯までトロトロに煮込むことができますよ。ソーセージやマッシュルーム、玉ねぎと一緒に野菜盛りだくさんのポトフを作ってみてはいかがでしょうか。
みそ汁
甘い越冬キャベツはみそ汁の具材にもぴったりです。味噌のコク深い味わいが越冬キャベツの甘みを引き出します。キャベツに含まれるビタミンは水溶性なので、みそ汁にすることで水に溶け出た栄養も余すことなく食べられるところもポイントです。
カレー
越冬キャベツの千切りに、カレーのルーをかけたキャベツカレーもぜひご賞味ください。ご飯をキャベツに置き換えることで、カロリーを抑えることもできてダイエット中の人にも人気です。甘くてシャキシャキな越冬キャベツの千切りに、スパイシーなカレーのルーがよく合います。食べる手の止まらなくなる一皿です。
キャベツだけじゃない?越冬〇〇
積雪の多い地域で古くから親しまれていた雪中保存。雪の中で冬を越える食べ物はキャベツだけではありません。積雪地帯でどのような食品が雪中貯蔵されているのか調べてみました。
- 大根
- ニンジン
- ごぼう
- じゃがいも
- ねぎ
- ほうれん草
- りんご
- 日本酒
- 味噌
- 塩麴
- コーヒー豆
さまざまな食品が雪の中で冬を越えて美味しくなっているようです。特に、北海道函館市の「雪の下大根」や青森県の「雪室りんご」は、近年全国的に知名度が上がっています。
まとめ
北海道の雪を活かした特産品・越冬キャベツについて紹介してきました。雪景色の足元で、じっくりと時間をかけて熟成していく越冬キャベツは、一度食べたら忘れられない美味しさです。「キャベツがこんなに美味しいなんて知らなかった」と感動する人も多いのだとか。
ぜひ、農家の方のさまざまな努力と研究の末に生まれた越冬キャベツを味わってみてはいかがでしょうか。