蕎麦の種類はこんなにあった!更科・田舎・藪・砂場から変わり種まで紹介
蕎麦の種類は非常に多く、分類方法も複数存在します。蕎麦のコシや味わい、風味などは原料となる蕎麦粉や蕎麦粉の割合、水の分量などで大きく異なります。さらに、蕎麦のブランドもさまざまです。また、種類が幅広いだけでなく、温かくして食べるのか冷たくして食べるのか、食べ方が多様なのも蕎麦の魅力です。
こちらの記事では、代表的な蕎麦の種類からおいしい蕎麦の食べ方まで紹介します。
この記事でわかること
- 蕎麦の種類は非常に幅広い
- 蕎麦には4つの分け方がある
- 蕎麦の味や風味は作り方で大きく変わる
- 更科そば・藪そば・砂場そばは「蕎麦の御三家」
- 信州そば・出雲そば・わんこそばは「日本三大蕎麦」
蕎麦は何種類ある?蕎麦には4つの分け方がある
蕎麦には幅広い種類があり、大きく4つの分け方があります。
蕎麦の分け方
- 蕎麦粉の違い
- ブランドの違い
- 蕎麦粉の割合の違い
- 蕎麦以外の原料の違い
蕎麦の種類を知るためには、まずは分け方を知っておく必要があります。以下では、それぞれの分け方について詳しく見ていきましょう。
1.蕎麦粉の違い
蕎麦粉には大きく3つの種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
種類 | 特徴 |
---|---|
一番粉(更科) | ・蕎麦の実の中心部分で、はじめに蕎麦粉になるもの ・より純度の高い一番粉は「更科粉」と呼ばれる ・弾力があり、食べた時の歯切れや喉越しがいい |
二番粉 | ・蕎麦の実の胚乳部や胚芽部の部分が粉になったもの ・蕎麦らしい色味・香りがある ・味と食感のバランスがいい |
三番粉(藪) | ・蕎麦の実の外殻に近い部分、甘皮部分が粉になったもの ・蕎麦らしい色味・香りが強い ・「藪系の蕎麦」「田舎そば」に使用される |
蕎麦の実は外側から中心部に向かって「外殻」「甘皮(種皮)」「胚乳」「胚芽」「花粉」という構造をしており、蕎麦の実を挽き込むと外側からではなく中心部分から粉になります。
一番粉は蕎麦の実の中心にある花粉部分が粉になったものです。次に胚乳や胚芽部分が粉になり二番粉と呼ばれ、最後に粉になる外殻に近い部分は三番粉と呼ばれます。
蕎麦の味わいは蕎麦粉によって異なり、一番粉で作られた蕎麦は、透き通るような白さでツルツルとした食感が特徴的です。二番粉・三番粉で作られた蕎麦は、蕎麦らしい色味・風味をしっかり楽しむことができます。
2.ブランドの違い
蕎麦はブランドごとに分けることもできます。さまざまなブランドがありますが、中でも「蕎麦の御三家」「江戸前の三大蕎麦」などと呼ばれる有名な蕎麦が次の3種類です。
蕎麦の御三家
- 更科そば
- 藪そば
- 砂場そば
これらの蕎麦は江戸時代から代々続いていることから、「蕎麦の御三家」と呼ばれるようになったと言われています。
更科そばは、更科粉を使用した白い麺が特徴的です。蕎麦らしい香りは少ないですが、ほのかな甘みと喉越しを楽しめるブランドです。藪そばは緑色の麺が特徴的で、蕎麦らしい味わいを強く感じられます。砂場そばは蕎麦粉8割・小麦粉2割で作られる「二八そば」です。ツルツルとしており、喉越しがよくなめらかな舌触りが砂場そばの特徴です。
3.蕎麦粉の割合の違い
蕎麦粉の割合によって、蕎麦の呼び名が変わります。主な蕎麦の種類と蕎麦粉の割合は次の通りです。
蕎麦粉の割合 | |
---|---|
十割そば | 蕎麦粉10割 |
二八そば | 蕎麦粉8割・小麦粉2割 |
蕎麦粉だけで作られる蕎麦は「十割そば」と呼ばれ、ザラザラとした食感で、蕎麦らしい風味と香りを楽しむことができます。蕎麦粉が8割で作られる「二八そば」は、ほどよい弾力となめらかな舌触り、喉越しが特徴的です。また、蕎麦粉5割・小麦粉5割で作られる「五割そば(同割そば)」などがあり、蕎麦粉の割合により蕎麦の呼び名が変わります。
4.蕎麦粉以外の原料の違い
蕎麦粉以外の原料を混ぜて作られた蕎麦は、その原料で呼ばれることが多いです。「変わりそば」と言われることもあり、有名な種類には次のものがあります。
有名な変わりそば
- 茶そば
- 桜そば
- 梅そば
茶そばは蕎麦粉に抹茶を練り込んで作られる蕎麦です。お茶と蕎麦の香りを感じられ、静岡県の郷土料理としても知られています。桜そばは桜の葉を練り込んで作られる蕎麦で、華やかな桃色の見た目をしており、桜の香りを感じられます。また、梅を混ぜて作られる梅そばは、桃色の見た目とほんのりと感じられる梅の香りが特徴です。
蕎麦の種類一覧
蕎麦にはさまざまな種類があるため、この章では主要な蕎麦を15種類紹介します。
それぞれの見た目や味わいなどの特徴について、詳しく見ていきましょう。
1.更科そば
更科そば(さらしなそば)は、一番粉の中でも「更科粉」を使用して作られる蕎麦です。白色の麺で蕎麦っぽい香りが少ないことが特徴的です。味わいはほのかな甘みがあり、喉越しと歯切れのいい食感となっています。
更科そばの誕生には諸説ありますが、約200年前に「堀井清右衛門」という人物が、江戸に「信州更科そば処 布屋太兵衛」を始めたことが発祥と考えられています。現在では、広く認知されている高級蕎麦のひとつです。
2.藪そば
藪そば(やぶそば)は、緑がかった色の蕎麦が特徴的で、塩味が少し強いつゆにつけて食べられることの多い蕎麦です。二番粉や三番粉を使用しているため、蕎麦っぽい風味をしっかり味わえます。
藪そばのルーツはいくつかありますが、江戸中期の蕎麦屋にあると考えられています。かつて東京都豊島区にあったおいしい蕎麦屋に、竹藪があったことから「藪」と呼ばれるようになったという説が有力です。現在はさまざまな蕎麦屋で藪そばが食べられており、なかでも「かんだやぶそば」「並木藪蕎麦」「池の端藪蕎麦」は藪そばの御三家と言われています。
3.砂場そば
砂場そば(すなばそば)は、蕎麦粉8割・小麦粉2割で作られる「二八そば」の一種です。甘みがありなめらかな舌触りをしており、濃いめのつゆと相性抜群です。砂場そばの代表的なお店には、「室町砂場」「砂場総本家」「巴町砂場」などがあります。
砂場そばの発祥は大阪です。大坂城築城の資材置き場として使用されていた砂場の近くに蕎麦屋があったことから、砂場そばと呼ばれるようになったと言われています。しかし、砂場そばのほとんどは大阪から江戸へ移店したため、砂場そばのルーツは信州にあり、「江戸前の三大蕎麦」のひとつとしても数えられます。
4.十割そば
十割そば(じゅうわりそば)は、つなぎを使わず蕎麦粉のみで作られる蕎麦です。蕎麦粉だけで打つことを「生粉打ち(きこうち)」と言い、生粉打ちで作る蕎麦は十割そばのことを指します。十割そばの麺の表面はザラザラとしており、麺を噛んだ時に蕎麦の香りと味を強く感じることができます。ザラザラとした舌触りとモチモチ感が、二八そばとは違う十割そばの魅力です。
5.二八そば
二八そばは蕎麦粉8割・小麦粉2割で作られる蕎麦です。十割そばと比べて麺にしなやかさがあり、ツルツルとした食感となめらかさが特徴的です。生地のつなぎとして小麦粉を混ぜると、時間が経っても切れにくい蕎麦になります。作りやすく長持ちしやすいことから、お店で提供される蕎麦は基本的に二八そばが多いです。もっとも食べられている蕎麦は二八そばと言えます。
6.田舎そば
田舎そば(いなかそば)は、粗く挽いた蕎麦粉で作られる蕎麦です。通常は捨てられる「そば殻」がついたままで製粉するため、麺は黒っぽい色味をしています。ややエグみがありますが、蕎麦の甘み・香りが強く、どっしりとした素朴な味が特徴です。白色で蕎麦らしい香りの少ない「更科そば」とは対極的と言えます。また、蕎麦の香りは強いですが、田舎そばが全て十割そばというわけではなく、二八そばでも田舎そばに分類されることがあります。
7.茶そば
茶そば(ちゃそば)は蕎麦粉に抹茶を練り込んで作られる蕎麦で、変わりそばのひとつです。茶の風味と色合いを楽しめることが特徴で、食べる前に湯通しすると茶と蕎麦の香りが立ち上ります。静岡県の郷土そばとして有名ですが、山口県でも「瓦そば」として、瓦の上で茶そばと具材に火を入れ、めんつゆに浸して食べられています。
8.梅そば
梅そばは、蕎麦粉と小麦粉に梅肉を練り込んで作られる蕎麦で、変わりそばのひとつです。見た目は桃色をしており、独特の梅風味を味わうことができます。温かくして食べるかけそばはもちろん、冷たいざるそばにしてもおいしく食べられます。
9.桜そば
桜そばは蕎麦粉と小麦粉に桜の葉を練り込んで作られる蕎麦です。桃色の見た目の麺で、桜の華やかな香りを楽しめます。季節を感じられることが桜そばの魅力で、春ごろに食べるのがおすすめです。
10.五色そば
五色そば(ごしきそば)は、「白・赤・青・黒・黄」の5色の麺を盛り付けて食べる蕎麦です。それぞれの色は食品を練り込んで作られており、白色の更科そばをベースとして赤色はエビや紅、青色は抹茶、黒色はこしょうやごま、黄色は卵の黄身が使用されています。見た目が美しく華やかなため、3月3日のひな祭りをはじめ、お祝いの席で食べられることが多いです。また、赤・白・青の「三色そば」もあります。
11.寒ざらしそば
寒ざらしそば(かんざらしそば)は、厳寒期に仕込んで食べる蕎麦です。1〜2月の厳寒期に、殻つきの蕎麦の実「玄蕎麦」を冷たい水に1週間〜1カ月ほど漬けた後、天日・寒風にさらして乾燥させて蕎麦を打ちます。寒ざらしそばはアクが少なく、ほのかな甘みを感じられることが特徴です。また、江戸時代には寒ざらしの玄蕎麦から挽いた、「更科粉(一番粉)」は最上級品として扱われていました。
12.韃靼そば
韃靼そば(だったんそば)は、栄養価が優れていることで注目を集めている蕎麦の実です。韃靼そばに含まれる「ルチン」は、ポリフェノールの一種で毛細血管を強くする作用があり、血圧を下げると言われています。韃靼そばには、普通の蕎麦の約80〜120倍のルチンが含まれており健康に適した食べ物です。
また、原産地は中国やモンゴル、インド、ネパールがあり、日本では北海道で栽培が行われています。韃靼そばは少し黄色がかった色合いをしており、独特な苦味が特徴です。そのため、中国では「苦そば」とも呼ばれています。
13.へぎそば
へぎそばは、「片木(へぎ)」と呼ばれる器にのせて食べる蕎麦です。冷えた蕎麦を一口サイズに丸めて盛り付けられますが、通常の蕎麦では麺が切れるため、へぎそばにはつなぎとして布海苔(ふのり)が使われます。コシのあるモチモチとした食感で、なめらかな喉越しが特徴です。
14.ぼたんそば
ぼたんそばは、北海道で古くから作られている品種の植物のこと、またはそれを原料にして作られる蕎麦のことです。ぼたんそばは背が高く倒れやすいため栽培が難しく、収穫量が少ないことから「幻のそば」と呼ばれることがあります。他の蕎麦と比べて香り高く、豊かな甘みが特徴です。主に北海道の浦臼町と新得町で生産されています。
15.にしんそば
にしんそばは、かけそばの上にニシンの干物「見欠きニシン」をのせて食べる蕎麦です。江戸時代、蝦夷地(北海道)ではニシン漁が繁栄していたものの、冷凍・冷蔵技術が未発達だったため、ニシンを乾燥加工して流通していました。京都へ流通した見欠きニシンを蕎麦と一緒に食べ始めたことがルーツと考えられており、現在、にしんそばは北海道や京都府の名物料理として知られています。
日本三大蕎麦とは?
日本全国には北海道の「釧路そば」や青森県の「津軽そば」など、さまざまな種類の蕎麦があります。そのなかでも代表的な以下3種類の蕎麦は「日本三大蕎麦」と呼ばれています。
日本三大蕎麦
- 信州そば
- 出雲そば
- わんこそば
以下では、日本三大蕎麦のそれぞれの詳細について紹介します。
1.信州そば(長野県)
長野県の信州そばは、さまざまある蕎麦のブランドのなかでも特に知名度の高い蕎麦です。長野県は昼夜の寒暖差が大きい地域で、水はけのいい山地の畑が蕎麦の栽培に適していて良質な蕎麦が取れることから「信州そば」として知られるようになりました。
長野県信州そば協同組合は、信州そばのブランドのクオリティを守るため、長野県内で製造された蕎麦粉を40%以上配合した良質な干しそばのみ信州そばとして認定しています。また、蕎麦の名産地が多い長野県の中でも、長野市戸隠の「戸隠そば(信州戸隠そば)」も有名なブランドのひとつです。
2.出雲そば(島根県)
島根県の出雲そばは、出雲市の郷土料理として知られています。出雲そばは原料となる蕎麦粉はそば殻がついたまま製粉する「挽きぐるみ」という製法で作られます。そのため田舎そばに分類することができ、見た目は黒っぽく蕎麦の香りが強いことが特徴です。
また、信州系の蕎麦はつゆに蕎麦を運んで食べる食べ方が一般的ですが、出雲そばは薬味やつゆを蕎麦の上からかけて食べる食べ方をします。
3.わんこそば(岩手県)
岩手県のわんこそばも日本を代表する蕎麦のひとつです。わんこ(お椀)に蕎麦と薬味を一緒に入れて食べる料理で、岩手県の盛岡市と花巻市を中心にわんそばが食べられています。給仕(ウェイター)が、一口サイズの温かい蕎麦を次から次へとお椀の中に入れて食べ進める食べ方で、お椀の蓋を閉めるまで終わらないことが特徴的です。家族や友人などと何杯食べられるのか、一緒に競って楽しむこともできます。
おいしい蕎麦の食べ方
蕎麦は種類や食べ方、メニューが非常に幅広いです。汁物にして天ぷらと一緒に食べたり、ざるそばにして薬味とつゆだけで食べたりなど、自分の好みに合わせておいしく食べることができます。
おいしい蕎麦の食べ方
- 温かい蕎麦を食べる
- 冷たい蕎麦を食べる
- 好みの薬味を入れて食べる
温かい蕎麦を食べる
おいしい蕎麦の食べ方ひとつ目が、温かくして食べる方法です。茹でた蕎麦を温かいつゆに入れて一緒に食べます。
温かい蕎麦の種類
- きつねそば
- たぬきそば
- 月見そば
- 鴨そば
- 天ぷらそば
- カレーそば
- かき揚げそば
きつねそばは甘辛く煮付けた油揚げをトッピングした蕎麦で、たぬきそばは揚げ玉をトッピングして食べる蕎麦です。天ぷらそばや、かき揚げそばのほかに、変わりダネとしてカレーそばというメニューもあります。同じつゆでも、トッピング次第でさまざまな食べ方ができるのが温かい蕎麦の魅力です。
冷たい蕎麦を食べる
蕎麦は冷たくして食べてもおいしいです。
冷たい蕎麦の種類
- ざるそば(盛りそば)
- ぶっかけそば
- 冷たい肉そば
- 冷やし月見そば
茹でた蕎麦を冷水で締め、冷たいめんつゆにつけて食べる「ざるそば」は、冷たい蕎麦の定番の食べ方です。ほかにも、冷水で締めた蕎麦の上からめんつゆをかけて食べる「ぶっかけそば」や、常温のめんつゆに冷えた鶏肉やネギをのせて食べる「冷たい肉そば」は山形県で食べられています。
また、月見そばは温かくしても冷たくしてもおいしく食べることができます。冷たい蕎麦は暑い時期に食べるとさっぱりできておすすめです。
好みの薬味を入れて食べる
蕎麦には薬味が欠かせません。好みの薬味を入れて食べるのも、おいしい蕎麦の食べ方のひとつです。
主な薬味
- ネギ
- 七味唐辛子
- わさび
- 海苔
- 大根おろし
- 梅干し
- ごま
- 生姜
ネギや七味唐辛子は冷たい蕎麦にも温かい蕎麦にも合うため、よく一緒に食べられる薬味と言えます。ざるそばをはじめ、冷たい蕎麦を食べるならわさびとの相性が抜群です。ほかにも大根おろしや梅干し、生姜なども蕎麦の味をいっそう引き立てる薬味です。
また、薬味は蕎麦をおいしく食べられるだけでなく、栄養面をプラスできるのもメリットと言えます。たとえば、ネギに含まれる「アリシン」には、蕎麦に含まれている「ビタミンB1」の吸収を高めるはたらきがあり、わさびの辛み成分「シニグリン」は「ビタミンB2」のはたらきを高めます。蕎麦を食べる時は、ぜひ好みの薬味も一緒に食べてみてください。
まとめ
蕎麦にはさまざまな種類があり、分け方にも違いがあります。蕎麦粉の違いやブランドの違い、蕎麦粉の割合の違いなど、蕎麦の種類は非常に幅広いです。
更科そば・藪そば・砂場そば・田舎そばをはじめ、この記事で紹介した蕎麦をぜひ試してみてください。