北海道の郷土料理一覧!定番から知る人ぞ知る料理まで32種類を紹介
北海道を代表する郷土料理と言えば、ジンギスカンや石狩鍋、ちゃんちゃん焼きを思い浮かべる人は多いかと思います。しかし、北海道の郷土料理はほかにも数多く存在し、いかめしやスープカレー、じゃがバターもそのひとつです。
そこでこちらの記事では、北海道の郷土料理を32種類紹介します。定番のものから知る人ぞ知るものまで幅広く紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- ジンギスカンの食べ方は地域によって異なる
- 松前漬けはかつて数の子を使うのが主流だった
- 北海道の赤飯は甘納豆を使った甘い味付け
- 北海道の食文化はアイヌや西洋、国内の多様な食文化混じり合う
- 北海道の三大郷土料理はジンギスカン、石狩鍋、ちゃんちゃん焼き
北海道の有名な郷土料理一覧
その地域特有の食材や伝統的な調理法で作られる郷土料理。郷土料理は歴史や文化、食生活とともに受け継がれてきた料理で、その土地の食文化を深く知ることができます。ここからは、北海道の有名な郷土料理を32種類紹介します。
1.ジンギスカン
ジンギスカンは、北海道を代表する郷土料理のひとつです。羊肉を特製タレに漬け込み、中央が盛り上がった専用の鉄板で野菜と一緒に焼くスタイルの焼肉です。羊肉にはラム肉やマトン肉を使用することが多く、漢字では「成吉思汗(じんぎすかん)」と書きます。
ジンギスカンの歴史は大正時代に遡り、羊毛の輸入困難に伴い、国内での綿羊飼育が奨励されたことから始まります。第二次世界大戦後には、羊毛需要の高まりとともに羊肉の消費が拡大し、ジンギスカンが普及しました。現在では、花見やバーベキューなどのアウトドアイベントでも人気があるほか、1年を通して北海道の家庭の食卓に登場することも多い料理です。
2.石狩鍋
石狩鍋は、北海道の石狩地方で生まれた郷土料理です。昆布だしと白味噌で味付けし、ぶつ切りした鮭やキャベツ、玉ねぎなどを一緒に煮込む鍋料理で、寒い冬に体を温める定番料理となっています。その起源は江戸時代に遡り、石狩川の河口に位置する石狩町で漁師たちがとれたての鮭をぶつ切りにし、味噌汁で煮て食べたことに由来します。昭和20年代には、観光客向けに提供されるようになり、全国に広まりました。
3.ちゃんちゃん焼き
ちゃんちゃん焼きは、北海道の石狩地方発祥の郷土料理です。秋から冬にかけてとれる鮭と旬の野菜を使った蒸し焼き料理で、キャベツや玉ねぎなどの野菜と鮭をバターで炒め、味噌で味付けするのが特徴です。「ちゃっちゃと作れるから」「お父ちゃんが作るから」「焼くときの音から」など、ちゃんちゃん焼きの名前の由来には諸説あります。始まりは昭和初期、漁師たちが船上でドラム缶の鉄板を使って調理したものとされます。平成19年には農林水産省によって、石狩鍋とジンギスカンと並び「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれました。
4.ザンギ
ザンギは、釧路発祥とされる郷土料理です。鶏の唐揚げとほとんど同じものですが、一般的な鶏の唐揚げよりも味付けが濃く、醤油ベースの甘辛いタレに漬け込んで調理することがザンギの特徴です。北海道では家庭のおかずとしてザンギが並ぶほか、行事ごとや祝いの席では必ずと言っていいほど食卓にならぶほど人気があります。
ザンギは昭和30年ごろに釧路市の鶏料理店で生まれ、鶏肉をぶつ切りにして唐揚げにしたのが始まりとされています。中国料理の「炸鶏(ザーギー、ザーチー)」に運がつくようにと、「ン」を加えたことが名前の由来です。
5.ニシン漬け
ニシン漬けは、北海道留萌(るもい)地方発祥の郷土料理です。身欠きニシンと大根、ニンジンなどを麹と塩で漬け込んだ保存食で、麹のちょうどいい酸味と塩味がニシンの風味を引き立て、お酒と相性がいいです。
ニシン漬けのはじまりは明治時代とされます。明治時代はニシンの漁獲量がピークで、当時は寒い冬を越すための食糧保存方法として、干物にしたニシンと野菜を一緒に漬け込む「ニシン漬け」がどの家庭でも作られていました。現在はニシンの漁獲量こそ減少していますが、ニシン漬けは北海道の冬の家庭料理として根付いています。
6.ニシンそば
ニシンそばは、身欠きニシンの甘露煮をそばにのせた郷土料理です。甘辛いニシンと出汁のきいたそばつゆの相性がよく、道内ではニシンそばを看板料理として提供する飲食店も少なくありません。ニシンそばは京都発祥とも言われていますが、北海道でも古くから食べられており、ニシン漁が盛んだった江戸時代後期ごろに、江差町の網元「横山家」に伝わるレシピがニシンそばだったそうです。北海道のニシンそばは、京都のニシンそばと比べて濃口で、そばの汁もほのかに甘いことが特徴です。
7.ルイベ
ルイベは石狩市や函館市、釧路市をはじめ、北海道の沿岸部を中心に受け継がれてきた郷土料理です。鮭やマスを冷凍させたまま刺身にして食べる料理で、かつてアイヌ民族が冬に備えて鮭を雪に埋めて凍らせ、保存食として利用していたことに由来します。ルイベの名前はアイヌ語の「溶ける」という意味の「ル」と、「食料」という意味の「イペ」をかけあわせたことからきています。凍った食感と口の中で溶ける味わいが特徴で、鮭の寄生虫対策としても効果的です。現在では醤油などの調味料に鮭といくらを漬け込んで冷凍させる「ルイベ漬け」という派生料理も誕生し、1年を通して全国的に食べられています。
8.トキシラズ
トキシラズとは、白鮭(シロザケ)のことです。通常、鮭は秋から冬にかけて産卵のために遡上しますが、春から夏にかけて季節外れの時期に遡上する白鮭を「トキシラズ」と言います。トキシラズはロシアのアムール川で生まれて回遊中に北海道沿岸で捕獲された若い鮭で、脂の乗りが良く、身が柔らかいのが特徴です。特に「トキシラズの焼漬け」は北海道の代表的な料理で、昔から家庭のごちそうとして親しまれています。6月の北海道神宮祭(札幌まつり)の際には、トキシラズの焼漬けや赤飯が家庭でよく作られます。
9.飯寿司
飯寿司(いずし)は、魚と野菜を米麹に漬けて乳酸発酵させた郷土料理です。かつて、冬の保存食として家庭で晩秋から初冬にかけて漬け込み作られてきました。低温発酵による保存食として知られ、北海道から東北地方の沿岸部では伝統的な料理です。また、使用される魚にはホッケやサケ、ハタハタ、ニシン、サンマなどがあり、中でも価格が安く安定して獲れるホッケがよく飯寿司に使われます。
10.うに・いくら丼
うに・いくら丼は、北海道を代表する豪華な丼ぶり料理で、新鮮なうにとイクラをたっぷりと盛り込んだ一品です。丼ぶりに使用するうには、淡白で上品な甘みの「ムラサキウニ(白うに)」と、濃厚な甘みの「バフンウニ(赤うに)」の2種類があり、いくらは醤油漬けが主に用いられます。これらを温かいご飯の上にのせ、薬味として海苔やしそを加えると、さらに風味が引き立ちます。北海道はうにの漁獲量が全国一で、特に夏には赤うにと白うにの2種類を盛り合わせたうにの二色丼も人気です。
11.鯨汁
鯨汁(くじらじる)は、塩漬けされた鯨肉と野菜を煮込んで作る汁物で、北海道道南地域の正月料理として欠かせない郷土料理です。正月の三が日に食べられる鯨汁は、縁起を担いで大物になることを願う意味があります。江戸後期から明治時代にかけて盛んだったニシン漁において、ニシンを岸に追い込んでくれる鯨は縁起の良い動物とされており、豊漁を祈るために正月に鯨汁が食べられてきました。塩蔵した「塩くじら」と煮崩れしにくい野菜を使用し、何度も温め直して食べるのが特徴です。寒い冬を乗り切るための栄養価の高い保存食としても重宝され、現在でも正月が近づくと鯨汁を作る家庭は多いです。
12.三平汁
三平汁は、北海道の郷土料理で、塩漬けにしたサケやニシンなどの魚と人参や大根などの野菜を一緒に煮込んだものです。名前の由来には、松前藩の藩主が斉藤三平という漁師の家でこの汁を食べたことから名付けられた説や、有田焼の三平皿に由来する説などがあります。200年以上前から食べられており、江戸時代後期の見聞録「東遊記」にも記録があります。塩漬け魚の塩分のみで味付けするのが特徴で、使う魚や味付けは地域によって異なり、道央や道東では塩ザケ、道北では塩ダラが使われます。寒い冬に体を温める家庭料理として親しまれ、北海道の冬の定番料理です。
13.ごっこ汁
ごっこ汁は、北海道の冬を代表する郷土料理で、ホテイウオ(ごっこ)を大根や豆腐と一緒に煮込んだ汁料理です。ごっこはゼラチン質に覆われたプルプルの身と皮が特徴で、コラーゲンが豊富に含まれ、美容にもいいとされています。漁期は冬の産卵期で、ごっこのメスはたくさんの卵を持っており、オスよりも高値で取引されます。また、ごっこ汁は醤油ベースのあっさりとした味わいが特徴です。コラーゲンたっぷりの身を楽しむことができ、北海道では今でも冬の味覚として親しまれています。
14.てっぽう汁
てっぽう汁は北海道の道東地域、特に根室地方で親しまれる郷土料理です。カニを入れた味噌汁で、その名は箸を使ってカニの脚の身を食べる様子が、鉄砲に弾を詰めるような姿に似ていることに由来します。主に根室地方で水揚げされる花咲ガニが使われ、花咲ガニは茹でると鮮やかな朱色に変わり、甲羅全体にトゲをもつカニです。昔から漁師料理として食べられてきましたが、花咲ガニの漁獲量は減少し収穫時期も限られているため、現在は冷凍カニや毛ガニ、タラバガニなどほかのカニを使って年間を通じて食べられています。
15.いももち(いもだんご)
いももちは、家庭で手軽に作れるじゃがいもを使ったおやつです。地域によっては「いもだんご」ともよばれます。いももちの発祥は、稲作が発達していない時代に、もち米の代わりに豊富に生産されていたじゃがいもを使ったことに始まります。じゃがいもを蒸してつぶし、片栗粉を混ぜて形を整え、焼いて作ります。明治時代の開拓時や戦時中・戦後の食糧難の時代に貴重なエネルギー源として重宝され、現在でも通年で幅広い世代に親しまれている郷土料理です。モチモチとした食感と甘さが特徴で、子どものおやつとしても人気があります。
16.べこ餅
べこ餅は、白と黒の2色で彩られた木の葉形の模様が特徴的な郷土菓子です。主に端午の節句に食べられていますが、正月や彼岸、冠婚葬祭などのハレの日にも食べられます。発祥については諸説あり、山形県の郷土料理「くじら餅」が北海道で独自に進化したものという説や、白と黒がホルスタインの色合いを連想させることから牛を意味する「べこ」から由来しているという説があります。そのほか、べっこうの色合いに近いことから「べっこう餅」となったという説、米粉(べいこ)を現在利用として作ったことから由来する説などさまざまです。現在では道南地域を中心に様々な色や形のべこ餅も存在し、スーパーマーケットなどでも販売されており手軽に楽しむことができます。
17.松前漬け
松前漬けは北海道の道南地域、特に松前町周辺で親しまれる郷土料理です。細切りにしたスルメイカと昆布に、醤油や酒、みりん、砂糖などを漬け込んだ甘辛い味付けの保存食です。その名の通り「松前藩」が発祥とされ、地元でとれた食材を使って作られてきました。ニシン漁が盛んだった江戸時代後期から明治時代にかけては、大量にとれたニシンの卵(数の子)を使って作られていましたが、現在は数の子の使用量が減り、代わりにスルメイカと昆布が多く使われるようになりました。冬の保存食として知られ、正月料理としても定着しています。
18.はさみ漬け
はさみ漬けは北海道の漁師町で古くから愛されてきた漬け物です。大根と塩鮭を酢でしめて挟むのが特徴で、定番の「紅鮭のはさみ漬け」のほか「カニのはさみ漬け」「数の子のはさみ漬け」「ホタテのはさみ漬け」など種類が豊富です。野菜と海産物を下ごしらえした後に1日ほど漬け込むことで、海産物の旨味と野菜のシャキシャキとした歯ごたえが絶妙なバランスを生み出します。栄養価が高く、作り置きも可能で日常の食事に取り入れやすいことから、北海道を代表する名産物として全国的にも知られています。
19.昆布巻
昆布巻は、北海道の日高地方を中心に親しまれる郷土料理です。昆布でサケやニシンなどの魚を巻き、醤油、酒、みりんなどで煮込んだ保存食で、正月のおせち料理としても定番です。特に日高地方で取れる「日高昆布」は繊維質が少なく柔らかいため、昆布巻きに適しています。昆布という名が「よろこぶ」に通じることから縁起物とされ、不老長寿や子孫繁栄の願いも込められています。昆布巻にする具材は自由で、「ブリの昆布巻」や「鮭の昆布巻」など種類はさまざまです。
20.豚丼
豚丼は十勝地方の郷土料理です。厚切りの豚肉を砂糖醤油のタレでからめ、ご飯の上にのせたシンプルな料理で、十勝地方の帯広市が発祥とされています。十勝地方では明治時代末ごろから養豚業が始まり、豚肉が親しまれるようになりました。昭和初期に帯広市内の食堂で、炭火焼きした豚肉に、うなぎの蒲焼き風のタレを使った丼が誕生したことが始まりと言います。農家や開拓者のスタミナ料理として考案されたもので、うなぎの代わりに身近な豚肉が使用されました。
21.赤飯
赤飯は縄文時代に食べられていたインディカ種の米が始まりとされます。江戸時代後期には、「ハレの日の食事」として一般庶民の家庭でも広まりました。赤飯は地域色が強く、北海道の赤飯は甘納豆を入れた独特の甘さが特徴で、全国的に親しまれている小豆の赤飯とは異なります。甘納豆を入れて炊いても米は赤くならないため、食紅で色をつけるという簡単な調理法です。北海道の赤飯は、昭和20年代後半に札幌の学校法人光塩学園の創設者である「南部明子」先生が、忙しいお母さんでも手軽に作れるように考案したとされています。その後、南部先生が全道各地で行った講演やメディアで紹介され、北海道全域に広まりました。
22.いかしゅうまい
いかしゅうまいは函館の名産品です。函館名産のイカを丸ごとすり身にし、しゅうまいのタネと練り合わせて団子状にしたものに、細切りにしたしゅうまいの皮をまぶして蒸した料理です。フワフワとした皮の食感に加え、イカの旨みとコク、軟骨のコリコリとした食感を同時に楽しめます。しょうゆや薬味しょうゆがよく馴染むため、ご飯のおかずやお酒のつまみとしても人気があります。
23.粕イカ(イカの粕漬け)
粕イカは、新鮮なイカを酒粕に漬け込んだ粕漬けです。地元では冬のご馳走として親しまれてきた伝統的な珍味で、輪切りにしたイカの中にはたっぷりと詰め込まれたゲソが顔をのぞかせます。酒粕に漬け込まれたイカはまったりとした旨味に加え、芳醇な香りを楽しめるので、そのまま食べるのはもちろん、お酒のおつまみにもぴったりです。ワサビじょうゆやレモン汁を添えてもおいしいです。
24.いかめし
いかめしは北海道の道南地域、特に函館地方や渡島地方の郷土料理です。もち米とうるち米が詰め込まれたイカを醤油ベースの出汁で煮た料理です。第二次世界大戦中の食料統制における米不足の時期に、函館本線森駅の駅弁として考案されました。手に入りやすいイカを使い、少しでも米を節約できる料理として生まれたのが始まりです。いかめしは、手軽に食べられてお腹にたまると評判をよび、今でも駅弁として根強い人気があります。家庭でも手軽に調理できるので、おかずやおやつ、お酒のおつまみとして広く親しまれています。
25.いかソーメン
いかソーメンは北海道函館の郷土料理です。新鮮なイカを細切りにして、そうめんのようにいただく料理です。函館で水揚げされた真イカを使用しているため、コリコリとした食感が楽しめます。加工後に一日寝かせることで歯応えが柔らかくなるうえ、イカ本来の甘みが引き出されるため、好みによって熟成具合を楽しむこともできます。イカの豊富な函館ならではの名物料理で、薬味しょうゆや麺つゆで味わうのが一般的です。
26.かぼちゃ汁粉
かぼちゃ汁粉は、北海道帯広の郷土料理です。おしるこに使われる餅のかわりにかぼちゃで作った「かぼちゃ団子」を使用したものです。かぼちゃの自然な甘みを楽しめるかぼちゃ汁粉は、昔もち米が収穫できなかった時代に生まれました。冬至に食べると風邪をひかないという言い伝えもあり、寒い時期に体を温めるごちそうとされています。茹でたかぼちゃをそのまま入れることもあり、意外な組み合わせながらもおいしいと評判です。
27.スープカレー
スープカレーは北海道札幌発祥の郷土料理です。サラサラとしたスープ状のカレーで、具材には大きめにカットされた野菜や鶏肉、ホタテなどが使われ、どれもフォークで簡単にほぐれるほど柔らかく煮込まれています。もともとは薬膳スープにカレー味を付けたものが始まりという説が有力で、1970年代に札幌市の喫茶店で提供されたのが起源とされています。地元で大ヒットし、体を温める作用や香りと辛さが癖になり、現在では札幌の名物グルメとなりました。
28.カスベの煮付け
カスベの煮付けは、北海道の沿岸部を中心に冬によく食べられる郷土料理です。カスベとは北海道の方言で、一般的に「エイ」のことを指します。軟骨魚類のカスベは骨が柔らかく、身から骨まで全て食べられるのが特徴です。しょうがや醤油、砂糖などでシンプルに煮込むことで、臭みがなくおいしくいただけます。コラーゲンが豊富で美容食としても注目されています。また、カスベの煮付けは安価で手軽に調理できるため、冬の家庭の定番料理として人気が高い食べ物のひとつです。
29.ししゃもの甘露煮
ししゃもの甘露煮は北海道の胆振(いぶり)や日高、釧路、十勝地方で親しまれる郷土料理です。ししゃもは全国的に流通している「カラフトシシャモ」と違い、太平洋岸の限られた河川にしか生息していない日本固有の貴重な魚です。特に晩秋に河川に遡上する時期に卵を持ったメスの子持ちししゃもが美味とされています。ししゃもの甘露煮は素焼きしたししゃもを甘辛く煮たもので、頭から丸ごと食べられます。そのほか、ししゃものオイル漬けや酢漬け、昆布巻も北海道を代表する郷土料理です。なお、カラフトシシャモで作る「ししゃもの甘露煮」は全国的にも多く流通しています。
30.たちの味噌汁
たちの味噌汁は北海道全域で親しまれる冬の定番郷土料理です。タラの白子を使った味噌汁で、北海道ではタラの白子を「たち」と言います。特にスケソウダラの白子を「すけだち」、マダラの白子を「真だち」とよんで区別しており、真だちは高級品として取引される一方、すけだちは手ごろな価格で入手でき晩秋からスーパーマーケットに並びます。タラは寒い季節に旬を迎える魚で、北海道では1月〜2月が最もおいしい時期です。タラの白子を丸ごと味噌汁に入れることで、濃厚な風味とクリーミーな食感が楽しめます。
31.じゃがバター
じゃがバターは北海道発祥の郷土料理のひとつです。蒸したじゃがいもの上にバターを乗せたシンプルな一品です。ホクホクのじゃがいもにとろりと溶けたバターが塩気とコクを加え、深い味わいを楽しめます。北海道札幌市の大通公園などの観光地で人気が高いほか、家庭でも広く親しまれています。また、北海道の家庭ではイカの塩辛や醤油、塩、砂糖などを添えて食べることもあり、居酒屋では焼いたサケのほぐし身やコーンなどを加えたアレンジじゃがバターも少なくありません。
32.美唄のとりめし
美唄のとりめしは北海道美唄市の郷土料理です。炒めた鶏肉と玉ねぎ、お米を一緒に炊き込んで作られます。醤油と砂糖、酒というシンプルな味付けで鶏の旨味が際立つ一品です。その歴史は明治時代に遡り、農場主の「中村豊次郎」が稲作が軌道にのるまで養鶏を奨励したのが始まりです。やがて米がとれるようになると、客をもてなすために鶏と米を使った「とりめし」を振る舞ったことから食べられるようになりました。現在でも、美唄市中村地区の地元の女性たちが昔ながらの方法で作り続けており、「中村のとりめし」ともよばれています。
北海道の郷土料理の特徴とは?食文化の歴史を解説
北海道の食文化は、アイヌ民族の伝統料理のほか、西洋から持ち込まれた料理、日本各地の料理などが混じり合ってできたものです。かつて北海道は「蝦夷地(えぞち)」とよばれ、先住民族のアイヌ人が暮らしていました。明治時代になると蝦夷地から「北海道」と改称され、開拓が進められました。開拓時は日本中から多くの人が集まり、各地の故郷料理を持ち寄って新しい食文化が形成されたと考えられます。
また、北海道は山地が半分以上を占めており、まわりは太平洋や日本海に囲まれているため山の幸も海の幸も豊富なことが特徴です。特に太平洋側には魚のエサとなるプランクトンが豊富で栄養が多い寒流があるため漁獲量に優れています。現代はザンギやジンギスカンをはじめ北海道を代表する食文化は郷土料理として全国的にも知られるようになりました。
道央エリアの料理の特徴
空知や石狩、後志(しりべし)、胆振、日高を有する道央エリアは、豊かな自然環境と多様な農畜産業が特徴です。石狩平野を中心とした稲作地帯が広がり、札幌市近郊や空知南部では野菜の生産が盛んです。日高の軽種馬(食用の馬)や胆振の肉用牛など、地域の特色を生かした農畜産業も行われています。
また、道央エリアの代表的な郷土料理のひとつが甘納豆を使った赤飯です。一般的にはもち米と小豆を混ぜて作られる赤飯ですが、道央地域では小豆の代わりに甘納豆を使った甘い味わいが特徴です。そのほか、石狩地方の漁師町で生まれた「石狩鍋」や「鮭のちゃんちゃん焼き」、空知地方の「美唄のとりめし」も道央エリアの郷土料理として知られます。
道北エリアの料理の特徴
道北エリアの料理は、日本海とオホーツク海に挟まれた地理的特性と豊かな海産資源を活かした郷土料理が特徴です。日本海に面した留萌(るもい)市は、江戸末期から昭和半ばまでニシン漁で栄えた歴史があるほか、現代ではエビやタコ、ヒラメなどが名産となっています。オホーツク海に面した枝幸(えさし)町は、日本一の毛ガニの町として知られ、カニを使った「てっぽう汁」は道北エリアでも食べられています。
また、鮭やニシンを野菜とともに煮込んだ郷土料理「三平汁」も人気で、塩漬けした鮭を使うのが一般的ですが道北では塩ダラを使うことも多いです。そのほか、「ジンギスカン」は地域によって食べ方が異なりますが、道北地域の旭川市では、あらかじめ味を付けた羊肉を使用するのが一般的です。
道東エリアの料理の特徴
道東エリアは十勝や釧路、根室を有する地域で、北海道の豊かな自然と高い食料自給率が特徴です。帯広を中心とした十勝地方では、大規模な農業が展開されており、畑作や酪農が盛んです。道東エリアを代表する郷土料理が「豚丼」で、帯広市が発祥の豚丼は昭和初期に市内の食堂で考案されました。そのほか、「ザンギ」も道東エリアの郷土料理で、ぶつ切りにした鶏肉を唐揚げにしたものが一般的ですが、現在はタコやサケを使った「タコザンギ」や「サケザンギ」などさまざまなバリエーションがあります。
道南エリアの料理の特徴
道南エリアは渡島(おしま)と檜山(ひやま)を有する地域で、歴史と自然の豊かさに根ざした多様な食文化が特徴です。安政6年(1859年)には函館港が開港し、国内初の外国貿易港としても発展したエリアでもあります。農業が盛んな道南地域は積雪が少ないため、農作物の生産が早い時期から始められ、ネギやニラ、アスパラガスなどの野菜、じゃがいもや豆などが特に有名です。
道南地域を代表する郷土料理のひとつが「松前漬け」です。かつては数の子を加えて塩漬けして作られていましたが、現在ではイカと昆布を醤油で漬け込んだ松前漬けが主流となっています。函館や渡島地方では「いかめし」が有名で、いかめしは函館本線の森駅で考案され今でも人気の駅弁として知られています。
北海道の三大郷土料理とは?
北海道の三大郷土料理は「ジンギスカン」「石狩鍋」「ちゃんちゃん焼き」です。平成19年(2007年)12月に農林水産省によって「農山漁村の郷土料理百選」に選定され、北海道の三大郷土料理となりました。
まとめ
北海道はさまざまな食文化が混じり合って形成された背景があり、多くの郷土料理が存在します。北海道の三大郷土料理のジンギスカンや石狩鍋、ちゃんちゃん焼きをはじめ、全国的に有名な郷土料理も少なくありません。この機会にぜひ一度、北海道の郷土料理を試してみてください。