つぶ貝の旬や種類、産地は?食べ方や下処理の方法も解説
ほのかに香る磯の香りとコリコリの食感が魅力のつぶ貝。刺身や煮つけ、焼き物などさまざまな料理に用いられている人気の貝のひとつです。
この記事ではつぶ貝の旬の時期や種類、産地の他、下処理方法やおすすめの食べ方も紹介しています。つぶ貝について知りたい方や、つぶ貝を美味しく食べたい方はぜひ参考にしてみてください。
- つぶ貝はエゾバイ科エゾボラ属の貝の総称
- 一大産地は北海道
- 旬は春先から初夏にかけて
- 唾液腺にはテトラミンという神経毒を含むため要注意
この記事でわかること
つぶ貝ってどんな貝?
小型の巻貝であるつぶ貝。しかし、図鑑などを見てもつぶ貝は記載されていません。
実は、つぶ貝はいわゆる「通称」。食用のエゾバイ貝の総称として使われている呼び名です。
食用のエゾバイ科エゾボラ属の貝はその種類が20種類以上あります。しかし、正式な種名で取引されるのはほんの数種だけ。エゾバイ科の貝の多くはつぶ貝として扱われることが多いです。
つぶ貝は生食できる貝
生食できる貝と言えば、ホタテやアワビ、アカガイ、ホッキ貝、牡蠣などが有名です。貝のコリコリした食感を楽しめる一方、ある程度の大きさに成長しているものや新鮮なものでなければ生食には適しません。
つぶ貝は大ぶりなものであれば、生食できる貝として知られています。
食感はサザエによく似ており、強い弾力が特徴です。サザエほど磯の香りが強くないため、食べやすいとも言われています。寿司屋などでは高級なネタとして提供されることもある貝です。
つぶ貝の産地
つぶ貝は冷たい海に生息する貝です。そのため、日本の主な産地は三陸沿岸や北海道。特に北海道の中では、えりも町や厚岸町、広尾町などで多く水揚げされています。
主な産地は北海道。続いて三陸沿岸ですが、日本海側にも生息しているため比較的広域で水揚げされます。
つぶ貝の種類
エゾバイ科エゾボラ属の貝はさまざまな種類があります。今回はエゾバイ科エゾボラ属の貝の中でも特に有名な種類の貝についてみていきましょう。
エゾボラ
つぶ貝の中でもポピュラーな種類であるエゾボラは、貝が大きく成長しやすいため生食用のつぶ貝として流通していることが多いです。
寿司ネタなどに使われるつぶ貝の多くはエゾボラで、「真つぶ」という名前で提供されることもあります。
ヒメエゾボラ
小粒のヒメエゾボラはつぶ貝の中でも小さい種類であると言われています。白いものから黒いものまで、さまざまな色をしており市場では「青つぶ」と呼ばれているつぶ貝です。
ワタの部分から濃厚な出汁が出るため煮物や焼き物として食べられることが多いですが、新鮮で比較的大きなものであれば生食も可能です。つぶ貝を殻のまま焼いて食べる北海道の郷土料理・焼きつぶはヒメエゾボラを使うことが多いです。
シライトマキバイ
殻の長さが15cm程にまで成長するシライトマキバイは、北海道ではゴマツブ、福島ではマキツブ、一般的にはトウダイツブとして流通しているつぶ貝です。
水揚げ量も多いため、全国的にもむき身や冷凍むき身などで流通していることが多いです。
モスソガイ
はみ出した身に柔らかい殻がついている特徴的なつぶ貝のモスソガイ。ベロ貝と呼ばれることもあります。
瀬戸内海以北で水揚げされるため、全国的に市場に出回りやすいものの、足が早いためあまり広く知られているつぶ貝ではありません。焼き物や煮物として食べられることが多く、特にモスソガイを入れたおでんは濃厚な貝の出汁が出て絶品と言われています。
つぶ貝の旬
つぶ貝の産卵時期は初夏から夏にかけて行われます。そのため、最も身が育っている春先が美味しいつぶ貝を味わえる旬の時期と言ってよいでしょう。
一方で、つぶ貝は水揚げ地を変えて、日本近海で通年漁獲されています。旬の時期に関わらず、流通している貝なので、産卵の時期を避ければいつでも比較的美味しいつぶ貝を味わえます。
美味しいつぶ貝の選び方
生のつぶ貝を市場で購入する際には、より鮮度が高く美味しいものを選べるように以下のポイントをチェックしてみてください。
- 蓋に触ると身が素早く引っ込むもの
- 粘液の出ていないもの
つぶ貝は大きければ大きい程高値がつくことが多いです。刺身などで生食したい場合には、できる限り大きなものを選ぶのもポイント。反対に焼き物や煮つけにするのであれば小さなものでも濃厚な出汁が出ます。
つぶ貝には毒があるって本当?
つぶ貝を食べる場合に気を付けたいのがテトラミンという神経毒です。つぶ貝の唾液腺に多く含まれており、人が摂取すると頭痛やふらつきのような症状が起きます。
これらの症状は酒に酔った状態に似ているのが特徴です。テトラミン自体に致死性などはほとんどなく、多くの場合症状は数時間で回復します。
ただし、過剰摂取した場合には昏睡状態や呼吸困難に陥るケースがあるとされているため、つぶ貝を食べる際には必ず唾液腺を取り除く必要があるでしょう。
むき身のものは唾液腺が取り除かれているためそのまま食べても問題ありません。生のつぶ貝を購入する人は唾液腺を取り除く下処理を行うようにしてください。
つぶ貝の中にはテトラミンを持たない種類も存在します。しかし、つぶ貝は漁師であっても種類の見分けが難しいと言われているため、一般の方がつぶ貝の毒の有無を判別するのは難しいでしょう。活きたつぶ貝を調理する際には下処理を必ず行うようにするのが食中毒の予防法として最適です。
【有毒部分を取り除く】つぶ貝の下処理方法
つぶ貝の下処理方法は以下のとおりです。
1.身を取り出す
殻を砕いて取り出す場合は、布でつぶ貝を包んで麺棒や金槌などで叩いて殻を砕きます。強く叩き過ぎると、砕けた殻が身に刺さって残ってしまうため、徐々に力をかけるように叩きましょう。
殻を残したまま身を取り出す場合は、蓋の隙間から竹串などを刺して殻の巻き目と同じ方向に捻りながら身を取り出します。無理に引っ張ると途中で身が千切れてしまうため注意してください。
2.唾液腺を取り除く
むき身になったつぶ貝の身に対して縦に包丁を入れて開きます。左右に開いたつぶ貝に白い脂肪の塊のようなものが見えたら、それが唾液腺です。親指で絞りだすように押し出すとポロリと唾液腺を取り除くことができます。
取り除いた部分はしっかりと流水で洗い流しましょう。
3.下ごしらえをする
唾液腺を取り除いたつぶ貝のむき身に塩を振りかけてよく揉み込み、ぬめりを落とします。塩を流水で洗い流して、キッチンペーパーなどで水分をよく取り除いて完成です。
つぶ貝のおすすめの食べ方
つぶ貝は身のコリコリとした食感もさることながら、ワタから出る濃厚な出汁も魅力です。和食に限らず洋食にもよく合う素材なので、さまざまな料理で楽しむことができます。
続いては、つぶ貝のおすすめの食べ方について紹介していきます。
刺身
つぶ貝は生食できる貝なので、新鮮で大ぶりなものは刺身で食べるのがおすすめです。身の甘さや食感の良さが際立っているため、お造りや寿司として美味しく食べられるでしょう。
定番の醤油で食べる以外にも、塩や柚子胡椒などで食べるのもおすすめです。
煮つけ
つぶ貝のワタからは濃厚な貝の出汁が出るため、煮つけにするのもおすすめです。つぶ貝の身は加熱しても硬くなりにくいため、おでんや鍋物にしても美味しく食べられます。
また、甘露煮などで甘しょっぱく煮付けてもよいでしょう。生姜をきかせれば、ご飯のお供に最適です。
アヒージョ
スペイン料理であるアヒージョは、オリーブオイルとニンニクにさまざまな食材を入れて煮る料理です。鷹の爪などでピリッと辛みを効かせ、お酒のお供としても最高の一皿。そんなアヒージョにもつぶ貝がピッタリです。
つぶ貝のキュッと締まった身にニンニク風味のオリーブオイルがよく合います。さらに、つぶ貝を食べ終わった後、残ったオリーブオイルにはつぶ貝の旨味や風味がほどよく染み渡るのもポイントです。つぶ貝の風味と旨味が移ったオリーブオイルにバケットを浸して食べるのが定番の楽しみ方です。
つぶ貝の栄養
つぶ貝は低カロリーで高たんぱくな食材です。グルタミン酸をはじめとするさまざまなアミノ酸を含んでいるため、食べ物からしか摂取できない必須アミノ酸の摂取ができます。
他の貝同様に鉄分やカルシウムなどを多く含んでいるため、貧血などの症状改善にもおすすめの食材です。
また、つぶ貝はタウリンを多く含んでおり、血圧やコレステロール値の上昇を防ぐ効果も期待できます。生活習慣病予防などに、つぶ貝を積極的に食べるのもよいでしょう。
まとめ
栄養豊富で旨味や風味を存分に味わえる食材、つぶ貝について紹介してきました。生のつぶ貝は毒を持つ唾液腺の切除が必要であったり、そもそも新鮮なものを入手するには産地に赴く必要があるでしょう。
家庭で気軽につぶ貝を味わいたいなら、むき身がおすすめです。さらに、さまざまな海の幸が入ったシーフードミックスなら、アヒージョやパスタ、シーフードカレー、ホイル焼きなどさまざまな楽しみ方で味わえます。
つぶ貝の一大産地である北海道だからこそ提供できる、つぶ貝入りのシーフードミックス。ぜひご家庭で味わってみてはいかがでしょうか。