クラフトビールと地ビールの違いとは?歴史や人気の理由を探る

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さまざまなブランドがあるクラフトビール(地ビール)。旅行に行った時のお土産としてだけでなく、今ではスーパーやコンビニでも見かけることが増えてきました。しかし、クラフトビールとは何なのか、大手メーカーのビールと何が違うのか、明確に答えられる方は少ないかと思います。

本記事ではクラフトビールの定義や歴史、地ビールとの違い、一般的なビールとの違いについて紹介します。

この記事でわかること

  • クラフトビールは小規模の醸造所で造られるビール
  • クラフトビールと地ビールは同じもの
  • イメージアップのためクラフトビールと呼ばれるようになった
  • クラフトビールは独特の味わい・香りを楽しめる
  • おしゃれなパッケージもクラフトビールの魅力
  • 北海道ご当地ラーメン
  • スープカレー特集

クラフトビール(地ビール)とは?

クラフトビール(地ビール)とは、小規模の醸造所で造られるビールのことを指します。英語の「クラフト(Craft)」には、「工芸」「技術」「手工業」などの意味があり、クラフトビールは多様性を重視した、大手メーカーのビールにはない独自性が特徴です。

日本において、クラフトビールには以下の定義があります。

クラフトビールの定義

クラフトビールの定義

  1. 独立している
  2. 小規模である
  3. 伝統的な製法である

クラフトビールの事業者は大手メーカーから完全に独立して、小規模で運営されていること。そして、地域の特産品を原料にするなどの伝統的な製法で造られていることが、クラフトビールとしての証となります。

クラフトビールと地ビールの違いは?ほとんど同じもの

結論から言えば、クラフトビールと地ビールに明確な違いはありません。どちらも、各地方の小規模な醸造所で造られる独自ビールのことを意味します。2つの呼び名があるのは、もともと「地ビール」と言われていたものが、近年「クラフトビール」と呼ばれるようになったという時代背景が関係しています。

以下では、クラフトビールの歴史と呼び名が変わった経緯について詳しく紹介します。

クラフトビール(地ビール)の歴史

大手ビールメーカーの工場

地ビールは小規模の醸造所で造られるビールのことです。しかし、もともとビールを造るためには、年間に最低2,000キロリットルのビールを製造しなければならないという法律があり、小規模の工場でビールを造ることはできませんでした。

当時ビールを造っていたのは「アサヒビール」や「サッポロビール」など、今でも有名な大手メーカーです。その法律があるなか、1994年の酒税法改正により年間の最低製造量が60キロリットルに引き下げられ、小さな醸造所でもビールを造ることができるようになりました。これが地ビールのはじまりです。

小樽の醸造所

町おこしや地域活性を目的として、「地酒」のビール版という意味で「地ビール」を造る醸造所が多くの地域で設立されます。

なかでも、北海道の「オホーツクビール」と新潟にある「エチゴビール」は、日本で最初に設立された醸造所です。1994年の法改正は、「地ビール解禁」とも呼ばれるほど当時は地ビールブームでしたが、1997年ごろから地ビールのブームが衰退していきました。衰退した理由はさまざまありますが、おいしいビールを造るノウハウを持っていない業者も参入し、おいしくない地ビールが造られるようになったことが要因のひとつとして考えられています。

地ビールからクラフトビールへ呼び名が変わった理由

クラフトビール

地ビールからクラフトビールに呼び名が変わったのは、悪いイメージの払拭とアメリカのクラフトビールのブームが関係しています。

当時、おいしくない地ビールが造られていたこともあり、地ビールは「あまりおいしくない」「お土産用」というイメージがつくようになり、ブームは衰退していました。しかし、2000年代になるとアメリカでクラフトビールの人気が出はじめ、日本でも地ビールが再注目されるようになります。さらに、地ビールは「おいしくない」と言われるなか、一部の醸造所は研究開発を続けていたため、おいしく個性のある地ビールが販売されていたタイミングでもありました。

「地ビールはあまりおいしくない」というイメージから抜け出すため、また「工芸品・クラフト」という意味もこめて、新しく「クラフトビール」と呼ぶようになりました。これが地ビールからクラフトビールへ呼び名が変わったきっかけです。

クラフトビールを注ぐ様子

日本でも、品質を重視したおいしく個性的なクラフトビールが販売されていたため、過去のイメージが取り払われ、クラフトビールが注目を集めるようになり、現在にいたります。

近年、クラフトビールの市場は拡大し続けており、各地の酒店やスーパーでもクラフトビールを買えるところが増えてきています。今後も市場の成長はますます進んでいくでしょう。

クラフトビールと地ビールはイメージが違う

クラフトビール(地ビール)の歴史からもわかるように、クラフトビールと地ビールはそれぞれイメージに違いがあります。

種類 イメージ
地ビール お土産用のビール
あまりおいしくない
クラフトビール 小規模で職人が造るビール
おしゃれで希少

歴史的背景から、地ビールはどちからというとマイナスイメージがありました。地ビールと差別化させるために、クラフトビールという言葉が使われるようになりました。

一般的なビールとクラフトビール(地ビール)の違い

クラフトビール

ここまで、クラフトビール(地ビール)の歴史や定義について紹介しましたが、大手メーカーが販売する「一般的なビール」との違いについて気になっている方もいるかと思います。一般的なビールと比べて、クラフトビールには次のような特徴があります。

クラフトビールの特徴

  1. 希少性が高い
  2. 個性的な香り・コク・苦味がある
  3. パッケージがおしゃれ

クラフトビールは小規模で造られているため、大量生産される一般的なビールよりも希少性が高いです。さらに、一般的なビールはのど越しを重視して造られるものが多いのに対し、クラフトビールは職人のこだわりが詰まっています。

一般的なビールとは違う独特な香りやコク、苦味を楽しめるのが魅力です。たとえば、オレンジピールなどの果物を原料にすることで、フルーティーな味わいがあるクラフトビールがあります。

また、クラフトビールのパッケージがおしゃれなのも特徴です。動物のかわいらしいデザインのほか、外国風のスタイリッシュなものなどさまざまです。デザインの好みで選ぶ「パケ買い」を楽しめるのもクラフトビールの魅力のひとつと言えます。

クラフトビール(地ビール)が人気な4つの理由

近年クラフトビールは人気を集めています。「よなよなエール」を製造する「株式会社ヤッホーブルーイング」が行った調査(有効回答数1,090人)によれば、クラフトビールを認知しているのは全体の42.9%という結果になりました。そのうち、クラフトビールを定期的に飲んでいる人の割合は25.8%で、今後も飲みたいと回答した人は合計60.8%という調査結果があります。

※参照:クラフトビールに関する意識調査|PR TIMES

すでにクラフトビールを定期的に飲んでいる人を中心に、クラフトビールは人気を集めていることがわかります。そしてクラフトビールが人気の理由には以下の4つが主にあげられます。

クラフトビールが人気な理由

  1. 種類が豊富にある
  2. おしゃれ感がある
  3. 希少価値が高い
  4. 飲みやすいものもある

1.種類が豊富にある

クラフトビール

クラフトビールが人気の理由ひとつめは、種類の豊富さです。日本国内にクラフトビールの醸造所は650カ所以上あります(2022年8月現在)。クラフトビールによって味わいや香りなどが異なるため、料理に合わせて好みのクラフトビールを選ぶのも楽しみ方のひとつです。

さらに国内だけでなく世界各国にもクラフトビールがあり、アメリカにも6,200カ所以上の小規模の醸造所があると言われています。

2.おしゃれ感がある

おしゃれ感があるのもクラフトビールが人気の理由のひとつです。クラフトビールには個性的なパッケージや、変わったネーミングのものもあります。たとえば、函館のクラフトビールブランド「はこだてビール」には、「社長のよく飲むビール」という商品があり、目を引くような一般的なビールにはない魅力があります。

おしゃれなパッケージのクラフトビールも多いので、写真をSNSに載せて楽しむことも可能です。

3.希少価値が高い

クラフトビール

クラフトビールは大手メーカーのように大量生産ができないため、生産量が限られているビールです。ほかの人とは違うビールを楽しむ特別感、ちょっと高価なビールの贅沢感がクラフトビールの魅力です。

さらに、クラフトビールには期間限定品・季節限定品の商品もあり、一般的なビールと比べてより希少性を感じられます。

4.飲みやすいものもある

おしゃれ感や希少性があるだけでなく、しっかりビールとしておいしいのもクラフトビールが人気の理由です。一般的なビールはのど越しを重視して造られますが、クラフトビールは風味や味わいを特に大切にしています。なかにはフルーティーなビールもあり、通常のビールは苦くて飲めないという方でも、クラフトビールならきっと飲みやすいものを見つけることができるでしょう。

クラフトビール(地ビール)は高い?

ビールの原料

クラフトビールは、大手メーカーが販売する一般的なビールと比べて値段がやや高いと言われることがあります。実際に、一般的なビールは350ml缶で200円程度で購入できるのに対し、クラフトビールは350ml缶で300〜500円ほどします。

クラフトビールが高価な理由は、大量生産できないことが原因です。大手ビールメーカーは少ない品種のビールを大量生産し、大量に販売して利益を上げる方式により運営されています。

それに対して、クラフトビールは醸造所の規模が小さく、保有タンクも少数、機械化・自動化も進んでいないため大量生産することができません。少ない販売数で利益を上げる必要があるため、一般的なビールよりも高価で販売されています。

北海道のクラフトビール醸造所一覧

北海道にあるクラフトビールのブランド・醸造所には以下があります。

ブランド名 製造元・醸造会社
オホーツクビール オホーツクビール株式会社(北見)
空知エール 大雪地ビール株式会社(滝川)
大雪地ビール 大雪地ビール株式会社(旭川)
開拓使麦酒 株式会社札幌開拓使麦酒醸造所(札幌)
薄野地麦酒(ススキノビール) 薄野地麦酒株式会社(札幌)
澄川麦酒 澄川麦酒株式会社(札幌)
月と太陽BREWING 月と太陽BREWING株式会社(札幌)
小樽ビール 株式会社アレフ(小樽)
おたるワイナリービール 北海道ワイン株式会社(小樽)
HOKKAIDO BREWING(北海道麦酒醸造 北海道麦酒醸造株式会社(小樽)
はこだてビール 株式会社マルカツ興産(函館)
網走ビール 網走ビール株式会社(網走)
北海道乙部追分ブリューイング 株式会社アドバンス(乙部)
Endeavour 株式会社アドバンス(乙部)
羊蹄山麓ビール NISEKO LUPICIA BREWERY(ニセコ)
ニセコビール 有限会社グリーンプランニング(ニセコ)
美深白樺ブルワリー 株式会社美深白樺ブルワリー(美深)
忽布古丹醸造 忽布古丹醸造株式会社(上富良野)
富良野地麦酒 有限会社唯我独尊(富良野)
鬼伝説 株式会社わかさいも本舗(登別)
大沼ビール 株式会社ブロイハウス大沼(七飯)
帯広ビール 株式会社帯広ビール(帯広)
旅のはじまりのビール HOTEL & CAFE NUPKA(帯広)
ノースアイランドビール SOCブルーイング株式会社(江別)

以下では、当サイトがおすすめする北海道のクラフトビールを5つピックアップして紹介します。

1.オホーツクビール|オホーツクビール株式会社(北見)

オホーツクビール

オホーツクビールは、全国ではじめて製造されたクラフトビール(地ビール)のひとつです。酒税法改正が行われた1994年の4月にビール製造免許を申請し、同年12月に新潟県の「エチゴビール」とともに、国内初の地ビールの製造が開始されました。

オホーツクビールは地元産の麦にこだわり、主に北見市端野の「二条大麦」を原料とし造られています。ホップはドイツ産・チェコ産のものが使用されており、副原料は一切使われていません。麦芽・ホップ・酵母・水だけで造られた、さまざまな種類のビールを販売しています。

オホーツクビールのラインナップ

  1. オホーツクエール
  2. オホーツクマイルドスタウト
  3. オホーツクヴァイツェン
  4. オホーツクピルスナー

上記、4種類の基本銘柄のほかに季節限定品のオホーツクビールもあり、年間で10種類ほどのオールモルトビールが造られています。北見市に訪れたら、複数種類のオホーツクビールを楽しめる「オホーツクビアファクトリー」へぜひ足を運んでみてください。

オホーツクビールの情報
会社名 オホーツクビール株式会社
所在地 北海道北見市山下町2丁目2-2
電話 0157-23-6300
公式サイト https://www.beers.co.jp/

2.空知エール|大雪地ビール株式会社 滝川クラフトビール工房(滝川)

空知エール

空知エールは、滝川クラフトビール工房で造られているクラフトビールです。伝統的な醸造方法で丁寧に造られており、個性に溢れた味わい・香りを楽しむことができます。マスカットや柑橘系を感じさせる豊かな香り、爽やかな苦味が特徴的です。空知エールのラインナップは次の3種類です。

空知エールのラインナップ

  1. 空知ピルスナー
  2. 空知エール
  3. 空知ヴァイツェン

また、滝川クラフトビール工房は、もともと2005年まで醸造活動をしていた「滝川スカイビール」の醸造設備を、旭川の「大雪地ビール株式会社」が引き継いで復活させた工房です。旭川にある「大雪地ビール館」では、大雪地ビールが造られています。

3.開拓使麦酒|株式会社札幌開拓使麦酒醸造所(札幌)

開拓使麦酒

開拓使麦酒は、「株式会社札幌開拓使麦酒醸造所」が造っている札幌のクラフトビールです。札幌開拓使麦酒醸造所は日本のビール産業の発祥地でもあり、明治時代の1876年からビールの醸造がはじまり、後の「サッポロビール」の前身となります。開拓使麦酒は創業当時の味を復元させたクラフトビールです。原材料の水は、当時と同じ豊平川の伏流水が使用されています。

開拓使麦酒のラインナップ

  1. ピルスナー
  2. クラーク(アルト)
  3. ハリー(ヴァイツェン)

ピルスナーは当時の味を再現した商品です。クラークはほどよい苦味と口あたりが特徴で、ハリーは苦味が少なくフルーティーな香りのビールです。

開拓使麦酒の情報
会社名 株式会社札幌開拓使麦酒醸造所
所在地 北海道札幌市中央区北2条東4丁目1番地2 サッポロファクトリーレンガ館1階
電話 011-207-5959(札幌開拓使麦酒醸造所 見学館)
公式サイト https://www.sapporobeer.jp/brewery/sapporokaitakushi/

4.小樽ビール|株式会社アレフ(小樽)

小樽ビール

小樽ビールは、ドイツの伝統的な製法で造られる「株式会社アレフ」のクラフトビールです。小樽のレンガ倉庫街の「小樽倉庫No.1」という醸造所で造られています。小樽ビールの醸造責任者である「ヨハネス・ブラウン氏」の家系で200年以上にわたり受け継がれているビールです。

小樽ビールのラインナップ

  1. ピルスナー
  2. ドンケル
  3. ヴァイス
  4. ノンアルコールビール 0.00%

ドンケルは褐色の深い色合いをしており、カラメル麦芽の風味とクリーミーな泡立ちが特徴です。ヴァイスはバイエルン地方の醸造法を採用し造られており、フルーティーな味わいとほのかなバナナの風味、爽やかなのど越しが特徴で夏にぴったりのビールです。また、小樽ビールの味に近づけたノンアルコールビールも醸造・販売されています。

小樽ビールの情報
会社名 株式会社アレフ
所在地 北海道札幌市白石区菊水6条3丁目1番26号
電話 011-823-8301
公式サイト https://otarubeer.com/

5.はこだてビール|株式会社マルカツ興産(函館)

はこだてビール

はこだてビールは、「株式会社マルカツ興産」が醸造している函館のクラフトビールです。函館山の天然地下水を100%使用していることが特徴です。山の水はミネラルを豊富に含んでいる硬水で、ビール造りにおいて適しているとされています。はこだてビールのラインナップは次の通りです。

はこだてビールのラインナップ

  1. 五稜の星(ヴァイツェン)
  2. 明治館(アルト)
  3. 北の一歩
  4. 北の夜景
  5. 社長のよく飲むビール

五稜の星と明治館と北の一歩は、「ジャパンビアグランプリ2000」で銀賞を受賞した商品です。北の一歩は大麦麦芽を使用した上面発酵エールビールで、北の夜景はフルーティーな酸味の上面発酵ビールです。変わった名前の「社長のよく飲むビール」は、アルコール度数が10%と高く、贅沢な味わいが特徴となっています。

はこだてビールの情報
会社名 株式会社マルカツ興産
所在地 北海道函館市豊川町12-12
電話 0138-23-4338
公式サイト https://www.hakodate-factory.com/

まとめ

クラフトビールは、小規模の醸造所で造られるビールのことです。地酒にちなんで「地ビール」としてはじまり、現在は「クラフトビール」と呼ばれるようになりました。

全国には幅広いブランドのクラフトビールがあり、北海道だけでも20カ所以上の醸造所があります。一般的なビールとは違う、個性的なビールをぜひいろいろ試してみてください。

PREZO編集部
PREZO編集部
美味しいものに目がない。食べ歩きやお取り寄せ大好きなPREZOのスタッフが、地域の魅力や商品にまつわるストーリー、北海道の豆知識など、とっておきの情報を発信!