カニの栄養成分やカロリーは?殻の再利用方法やおいしいカニの選び方も紹介
高級食材のひとつに数えられるカニ。おいしいだけでなく、栄養価が高いことをご存知でしょうか。カニは高タンパク低カロリーの食品で、さらにタウリンやアスタキサンチンなど、健康と美容に優れた栄養成分が豊富に含まれています。食べた後のカニの殻はそのまま捨てるのではなく、出汁を取れば料理に活用できるほか、植物の肥料にするなど再利用できるので余すところがありません。
こちらの記事ではカニの栄養成分や健康・栄養面の効能、カロリーと糖質量、殻の再利用方法などを紹介します。
この記事でわかること
- カニは健康や美容にいいシーフード
- カニは100gあたり63kcalの低カロリー
- コレステロール値やプリン体の含有量が少ない
- 殻は出汁を取ったり植物の肥料にしたりできる
- エネルギーやスキンケア製品としてリサイクルされる
カニに含まれる栄養成分と効能
カニにはさまざまな栄養成分が含まれています。代表的な栄養成分には以下があります。
カニに含まれる栄養成分
- タンパク質
- タウリン
- アスタキサンチン
- ナイアシン
- 亜鉛
- 銅
- ビタミンB12
ビタミンやミネラル(亜鉛や銅)、アミノ酸(タンパク質)が豊富に含まれており、健康と美容にいいシーフードです。ここからは、それぞれの栄養成分の詳細と健康面の効能について解説します。
タンパク質
カニはタンパク質を多く含む食材です。タンパク質は血液・皮膚・筋肉・内臓のほか、ホルモンや酵素の構成成分です。体内においてタンパク質はアミノ酸に分解され、血液や皮膚などに運ばれます。
さらに、アミノ酸には体内に侵入した細菌・ウイルスを排出するはたらきもあるため、タンパク質が不足すれば免疫力が低下します。身体の健康を維持するためにも、日々の食事でタンパク質を取り入れることが大切です。
タウリン
タウリンはアミノ酸の一種です。カニのほか、貝類やイカなど軟体動物に多く含まれています。タウリンは人間の体内で「胆汁酸」と呼ばれる成分と結合し、コレステロールの吸収を抑えたり、心臓や肝臓などの機能を高めたりするはたらきがあります。
そのため、コレステロールの上昇による、動脈硬化の予防につながると考えられている成分です。
また、タウリンは水溶性の栄養素です。そのため、カニを鍋などにして食べる場合、煮汁も一緒に飲むとタウリンを効率よく摂取できます。
アスタキサンチン
カニにはアスタキサンチンと呼ばれる成分が含まれています。オレンジ色の色素をしており、カニのほかにも、鮭やエビなどにも多く含まれています。
アスタキサンチンは高い抗酸化作用を持つ栄養成分です。アスタキサンチンの抗酸化作用はビタミンEの1,000倍、ビタミンCの6,000倍も優れていると言われています。
抗酸化作用は身体の酸化を抑える作用のことで、身体の老化や血管の老化、シミ・シワの発生を抑制するはたらきがあります。そのため、カニなどからアスタキサンチンを摂取することで美肌を目指すことが可能です。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンBの一種です。皮膚や粘膜の健康維持をサポートするはたらきがあります。ナイアシンが不足すれば食欲不振や皮膚の発疹などを引き起こすとされています。
サプリメントから摂取することもできますが、過剰摂取すると消化不良や肝臓障害を引き起こすリスクがあるため、食品から適切に摂ることが大切です。
亜鉛
亜鉛は皮膚の健康維持をサポートしたり、味覚を正常に保ったりするはたらきを持つ成分です。ミネラルの一種なので体内で合成することができず、食品から摂取する必要があります。
亜鉛は動物性タンパク質とあわせて摂取すると吸収率が高くなるので、亜鉛とタンパク質の両方が含まれているカニは栄養を効率よく摂取できる食品です。
銅
銅はミネラルの一種で、鉄などを成分とする「ヘモグロビン」の合成を助けたり、酵素として骨の形成を助けたりする栄養成分です。ヘモグロビンを作るために鉄を運ぶ役割があり、銅が極端に不足すればヘモグロビンをうまく作れず、貧血を起こすことがあります。
ただし、サプリメントなどから大量摂取するとかえって健康を害する可能性があるため、食品から適量摂取するのが大切です。そのほか、免疫力を高めるはたらきがあります。銅はカニのほかにも牡蠣やスルメ、ナッツ、ココアなどにも含まれています。
ビタミンB12
ビタミンB12もカニに含まれている代表的な栄養成分のひとつです。葉酸ととともに赤血球の生産を助けたり、神経系のはたらきを正常に保つ作用を持つ成分です。ビタミンB12が不足すると、赤血球が減るため貧血の原因になります。また、ビタミンB12は水溶性で体内に蓄積しないため、日々の食事で意識的に摂取することが大切です。
カニの種類のなかでは、ズワイガニやタラバガニに多く含まれています。そのほか、ビタミンB12は魚介類やレバーなど動物性食品に多く含まれていることが特徴です。
カニのカロリーと糖質量
カニは低カロリーの食品です。カロリーと糖質量をその他の製品・食品と比較しました。
カロリー | 糖質量 | |
---|---|---|
カニ | 63kcal | 0.1g |
カニの水煮缶(125gあたり) | 77kcal | 3.6g |
イカ | 83kcal | 0.1g |
エビ | 91kcal | 0.1g |
カニ・イカ・エビはいずれも低糖質ですが、なかでもカニは100gあたり約20~30kcalほど低いことがわかります。
カニは栄養ない?体に悪いって本当?
「カニは栄養がない」「カニはコレステロール・プリン体が多くて体に悪い」という言葉を耳にしたことはありませんか。カニは脂質や糖質をほとんど含まない、高タンパク・低糖質・低カロリーの食品です。筋肉や内臓の組織を作るのに必要な栄養成分が多く含まれており、肌や髪の毛の健康を保つビタミンB群も豊富です。
しかし、なかにはカニに含まれるコレステロール値やプリン体を気にしている方もいるかもしれません。
カニのコレステロール値は特別高いわけではありません。エビなどと同等のコレステロール値と言われていますが、カニにはタウリンが豊富に含まれており血中コレステロール値を下げるはたらきがあります。
カニやその他食品に含まれるプリン体の含有量 | |
---|---|
食品 | プリン体(100gあたり) |
ズワイガニ | 136.4mg |
タラバガニ | 99.6mg |
カニミソ | 152.2mg |
牛レバー | 219.8mg |
ウニ | 137.3mg |
カキ | 184.5mg |
カニの種類によって異なりますが、あまりプリン体は多くありません。プリン体は痛風の原因ですが、カニを多く食べたからといって痛風を起こすリスクは高くないです。このことから、カニは健康に良い食品と言えます。
カニカマとカニの栄養成分の違いは?
カニカマとカニの栄養成分について気になっている方もいるかと思います。
しかし、カニカマの原料はカニではなく白身魚のすり身です。味にクセや臭みがないことから、「スケトウダラ」が主にカニカマの原料に使用されています。カニカマは魚のすり身にカニエキスやでん粉、卵白などを加えて、カニの味を再現して作られる製品です。そのため、カニカマとカニは栄養成分が異なります。
たとえば、カニカマはカニと比べて、アスタキサンチンやナイアシンの含有量が微量です。しかし、カニカマはカニと同じようにタンパク質が多く、ビタミンB12やナトリウムが含まれており、健康に良い食品のひとつです。
カニの栄養成分を効率よく摂取する食べ方
カニの栄養成分を効率よく摂取するためには、カニ鍋や炊き込みご飯、スープなどカニの茹で汁も一緒に食べられる調理法がおすすめです。カニには、ビタミンB12やタウリンをはじめ、水溶性の栄養成分が多く含まれています。茹で汁を捨てる調理法はせっかくの栄養を無駄にすることになるため、カニの食べ方には気をつけましょう。
また、カニは高価な食品なので頻繁に手に入りづらいという方は、カニの缶詰を選ぶのも選択肢のひとつです。
カニの殻の再利用方法
カニを食べた後の殻をそのまま捨てているという方は多いのではないでしょうか。カニの殻の再利用方法には次の3つがあります。
カニの殻の再利用方法
- 出汁を取って料理に利用する
- 植物の肥料にする
- エネルギーやスキンケアなどのリサイクルに用いられる
ここからは、それぞれの詳細を解説します。
出汁を取って料理に利用する
カニは身だけでなく、殻からも美味しい出汁が取ることができます。カニをオーブンやトースターなどで焼いた後、小さくカットして昆布などと一緒に入れて30分~1時間ほど煮込むとおいしいカニの出汁が取れます。
カニの出汁はさまざまな料理に活用することができ、たとえば味噌汁や炊き込みご飯、雑炊、スープ、茶碗蒸しなど幅広いです。カニを食べた後はそのまま捨てずに、ぜひ出汁を取って料理に活用してみてください。
植物の肥料にする
カニの殻は植物の肥料にも活用可能です。カニの殻に含まれている「キチン質」には、糸状菌と呼ばれる植物の病原菌を壊してくれる性質があり、植物の根を強くしてくれます。さらに、カニの殻の赤い色素「アスタキサンチン」によって、花や葉の色を良くするはたらきがあります。
植物の肥料にする際は、殻を天日干しにして水分を取り、細かく砕いて土の中に埋めるだけです。出汁を取った後の殻でも、肥料にすることでカニを余すことなく活用することができます。
エネルギーやスキンケアなどのリサイクルに用いられる
一般家庭での再利用方法ではありませんが、カニの殻はさまざまなところでリサイクルされています。なかでも注目すべきリサイクル方法が、次の2つです。
注目すべきカニの殻のリサイクル方法
- キチンナノファイバー
- 持続可能なバッテリー
ベニズワイガニの水揚げ量日本一を誇る鳥取県の鳥取大学が、カニの殻由来の「キチンナノファイバー」を開発しました。キチンナノファイバーとは、乾燥させたカニの殻などから抽出した「キチン質」と呼ばれる物質を粉砕し、約10ナノメートルまで微細化したものです。
キチンナノファイバーには保湿作用や肌のバリア機能を強化するはたらきが期待できるため、スキンケア製品に活用されています。今後は植物の成長促進のほか、小麦生地の強化など、膨大な廃棄コストをかけることがないリサイクル方法として幅広い分野に応用できることが期待されています。
また、持続可能なバッテリーもカニの殻に期待されているリサイクル方法のひとつです。カニなどに含まれるキチンは「キトサン」と呼ばれる物質に加工することができ、キトサンと亜鉛を結合させて新しい電解質物質を作れます。海外では、カニからできる新しい電解質物質を使って400時間使用してもエネルギー効率がほとんど変わらないバッテリーが開発されました。
さらに、研究者によるとカニからできる電解質物質は土の中で生分解され、残った亜鉛もリサイクル可能だとしており、持続可能なバイオ材料にできると期待されています。
参照:鳥取大学の「キチンナノファイバー」|農林水産省
参照:カニの甲羅からつくった生分解性バッテリーが再エネ普及の決め手になるかも|GIZMODO
カニの種類別!おいしいカニの選び方
カニは健康にも美容にもいい食品ですが、できる限りおいしく食べるためには、カニの選び方が大切です。
よく食べられるカニの種類
- 毛ガニ
- 花咲ガニ(花咲蟹)
- タラバガニ
- ズワイガニ
ここからは、種類別においしいカニの選び方や特徴を紹介します。
毛ガニ
毛ガニは北海道を代表するカニです。年間を通して水揚げされますが、季節によって産地は異なり、夏は函館の北部、旬の時期である冬(12月~3月)は十勝沿岸で水揚げされることが多いです。
オレンジ色に毛が生えた見た目が特徴的で、甲羅はオスが縦長の楕円形、メスは幅広の円形をしています。ほかの種類と比べて体が小さいので食べる部分はあまり多くありませんが、特にカニミソがおいしいと言われており、身にも濃厚な甘みと旨みが詰まったおいしいカニです。焼き物や鍋料理をはじめ、さまざまなカニ料理で食べられます。
市場で毛ガニを購入する際は、発色を確認するのがポイントです。甲羅の色がくすんでいるものは鮮度が落ちている可能性が高いです。水揚げした後の生の状態が続くと、泡や身を吹き出すことがあるので、泡が出ていないか確認しましょう。
花咲ガニ(花咲蟹)
花咲ガニは、北海道根室の花咲港が主な産地のカニです。根室以外にもシベリア海周辺に生息していますが、漁獲量が少ないことから珍しいカニとして知られます。生きている時は茶色の見た目ですが茹でると真っ赤に染まるのが特徴で、足が太く身の味は濃厚、花咲ガニの足をぶつ切りにして、味噌汁に入れる「鉄砲汁」は北海道の有名な郷土料理のひとつです。
花咲ガニは漁獲量に制限があるため、根室市の付近以外で市場に出回ることがほとんどありません。そのため、根室から遠い場所に住んでいる方は、通販サイトで購入するほか、ふるさと納税の返礼品として手に入れる方法があります。
タラバガニ
タラバガニは淡白な味わいで、身が詰まっているのでしっかりとした食べ応えが特徴のカニです。カニミソが少ないので、カニミソを味わいたい場合は毛ガニやズワイガニの方が向いています。旬は4月~5月で、生息域が白身魚のタラの漁場と重なることから、その名がつけられたと言われています。
タラバガニを市場で購入する際は、甲羅の中央にあるトゲの数を確認しましょう。タラバガニによく似た品種に「アブラガニ」と間違えて購入することがあり、タラバガニよりもクセがあるので注意が必要です。アブラガニはトゲが4本、タラバガニはトゲが6本と覚えておきましょう。
ズワイガニ
ズワイガニは身が柔らかく、旨みが強いことが特徴です。カニの炊き込みご飯など、どんな調理法でもおいしく食べることができますが、なかでも強い甘みを楽しめるカニ鍋がよく食べられています。旬は11月~3月です。
ズワイガニを市場で購入する際は、重みがあって殻が硬く、腹の色が茶色っぽいものを選びましょう。脱皮したてのズワイガニは身が痩せているので、脱皮した直後のまだ殻が柔らかいものは避けるのがポイントです。また、甲羅に付着しているカニビルという黒い斑点が多ければ多いほど、脱皮から時間が経っていることがわかります。
カニを食べる時はアレルギーに注意
カニを食べる時はアレルギーに注意が必要です。カニアレルギーは、成人のアレルギー原因として高い割合を占めている上、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を起こす頻度が高いアレルゲンです。食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、特定の食べ物を食べた後、運動して重篤な症状が発症するアナフィラキシーです。
カニアレルギーは幼少期に発症すると、大人になっても耐性を獲得するのが難しいと言われています。また、カップ麺やお菓子などの加工食品にもカニが含まれていることが多いので、パッケージの表示をよく確認する必要があります。カニアレルギーの症状が現れる量などには個人差があるので、不安な方は専門の医療機関でアレルギー検査を受けてみましょう。
妊娠中にカニを食べても大丈夫?
妊娠中にカニを食べても問題ありません。魚介類には微量の水銀が含まれており、通常であれば健康に影響を与えるようなレベルではありませんが、妊娠中は水銀の摂取量に気をつけなければいけません。しかし、カニは水銀摂取のリスクが少ない食品なので、妊娠中に食べても有害性はありません。
むしろ、カニはタンパク質が豊富な上、ビタミンやミネラルをはじめとする妊婦の身体に必要な栄養が多く含まれています。そのため、栄養バランスを考えながら、積極的に摂取するのが望ましいです。ただし、妊娠中は食中毒菌に感染するリスクが高いので、カニはしっかりと加熱調理してから食べましょう。
まとめ
カニは高タンパク低カロリーの食品です。アスタキサンチンやタウリンなどの栄養成分が含まれており、健康にも美容にも優れています。カニの殻には出汁を取ったり肥料にしたりなどの使い道があるので、そのまま捨てるのではなくぜひ有効活用してください。