漬物にはどんな種類があるの?代表的な漬物や野菜別・地域別の漬物の種類を紹介
漬物は野菜を貯蔵する目的で作られていた食品です。漬物にはさまざまな種類があり、漬け方だけでも浅漬けやぬか漬け、粕漬け、味噌漬けなど幅広く分けられます。日本の代表的な漬物には梅干しやたくあんがあり、海外ではキムチやピクルスも漬物の一種です。
こちらの記事では漬物の分類方法や種類、ご当地の漬物などを紹介します。
この記事のポイント
- 漬物は野菜を貯蔵する目的で作られた食品
- 漬物には漬け方や野菜など幅広い分類方法がある
- 日本の代表的な漬物には梅干しやたくあんなどがある
- 地域によって漬物の種類が違い、ご当地の漬物が楽しめる
漬物とは?野菜を貯蔵する目的で作られる食品
漬物は、本来野菜を貯蔵する目的で作られる食品のことを言います。もともとは、収穫した野菜を保管するために考案されたもので、今では日本に欠かせない食品となりました。
漬物の種類はさまざまで、分類方法も多岐にわたります。漬物にされる野菜にはだいこんやきゅうり、なすなどがあります。漬け方で分けると、ぬか漬けや味噌漬け、酢漬け、醤油漬けなどさまざまです。さらに、漬物は地域によっても異なり、その土地で採れる野菜や気候、食文化により幅広い種類の漬物があります。
また日本以外の漬物では、韓国の「キムチ」や中国の「ザーサイ」、ヨーロッパの「ピクルス」や「ザワークラウト」が有名です。
漬物の分類方法は?種類の分け方はさまざま
漬物の分類方法はさまざまで明確な基準はありません。
漬物の分け方
- 何で漬け込むかで分類
- 漬け込む期間で分類
- 発酵させるかどうかで分類
たとえば、塩や酢、味噌など何の調味料で漬け込むかによって分類できます。そのほか、漬け込む期間で分類でき、漬け込み時間が短いものを「浅漬け」と言い、時間が長いものを「古漬け」と言います。また、発酵させるか発酵させないかで漬物を分類することが可能です。
漬物は野菜だけでなく果物や魚介類、肉を漬け込むこともあります。
漬け床の種類
漬物を作るために使用する「漬け床」の材料にはさまざまなものがあります。日本の代表的な漬け床である「ぬか床」は、玄米を精白するときに発生する「米ぬか」に塩を加えたものです。ぬか床に漬けた野菜は塩分によって細胞が破壊された後、乳酸菌が入って発酵することで、独特の酸味がついた「ぬか漬け」になります。
また、一般的ではない漬け床の種類には、ヨーグルト床やパン床、米麹床、海藻床などがあります。なかでもヨーグルト床はぬか床の代用とされることもあり、ぬか床は日々手入れしなければいけませんが、ヨーグルト漬けは手軽に出来ることが特徴です。ぬか床とは違ったすっきりとした味わいを楽しむことができます。
日本の代表的な漬物の種類一覧
漬物にはさまざまな種類があり、野菜だけでなく果物や魚介類の漬物もあります。なかでも日本で代表的な漬物の種類は次の通りです。
漬物の種類
- 梅干し
- たくあん
- 浅漬け
- ぬか漬け
- 粕漬け
- 味噌漬け
- 酢漬け
- 醤油漬け
- 麹漬け
- からし漬け
- キムチ
以下では、それぞれの漬物の特徴や製造方法について紹介します。
種類1.梅干し
梅干しは、梅の果実を塩漬けして天日干ししたものです。日本ではおにぎりや弁当などに用いられることが多く、日本人の食卓には欠かせない食品であり、健康食品としても知られています。
梅干しにはクエン酸やリンゴ酸、コハク酸などの有機酸が多く含まれており、ポリフェノールの一種「梅リグナン」が豊富に含まれています。抗酸化作用が認められており、肌の老化予防にも繋がるとされています。この他、たんぱく質やビタミンE、鉄分なども多く含まれているので、健康効果が期待できますね。
また、天日干しをせずに塩漬けのみで作られたものは「梅漬け」と呼ばれます。
種類2.たくあん
たくあんは、大根を発酵させてぬかと塩で漬け込んだ漬物です。日本では和食の香物としても食べられています。たくあんだけでも、さまざまな種類があり天日干しにした大根をぬか漬けしたものや、干さずに調味液に漬け込んだもの、塩漬けしたものなどがあります。
たくあんは製法によって見た目や栄養価、食感、風味が異なりますが、食物繊維やカリウムが多く含まれている漬物です。食物繊維には整腸作用があり、便秘の改善や予防が期待できます。
種類3.浅漬け
浅漬けは、調味液に野菜を短い時間で漬け込んで作られる漬物です。なすやきゅうり、白菜、大根、かぶの浅漬けが代表的で、浅漬けの種類には一夜漬けやお新香、即席漬けなどがあります。漬け込む時間が短いため、野菜本来の味を楽しめることが特徴です。
浅漬けは水分が抜ける分、生野菜よりも食物繊維の割合が高くなるので、便秘や肥満の解消、コレステロールの抑制が期待できます。また、加熱調理しないため野菜本来の栄養素を残すことができ、ビタミンやミネラルも摂取することが可能です。
種類4.ぬか漬け
ぬか漬けは、ぬか床に野菜を漬け込んだ漬物です。ぬか床は玄米を精白する時にできる「米ぬか」に塩を混ぜ込んで乳酸発酵させた漬け床で、唐辛子などを混ぜることもあります。ぬか漬けは旨味と酸味が特徴的で、なすやきゅうり、大根、にんじん、白菜などのぬか漬けが代表的です。
また、ぬか漬けには乳酸菌やビタミンB1、カリウムが豊富に含まれています。乳酸菌は腸内環境を整えるため、便秘の解消に役立つほか免疫力アップにも有効です。ビタミンB1は皮膚や粘膜の健康を維持する作用があり、カリウムは血圧を低下する作用があります。
種類5.粕漬け
粕漬けは、日本酒の製造過程でできる「酒粕」や「みりん粕」に食材を漬け込んだ漬物です。酒粕には独特の風味や香りがあり、ほのかな甘味と塩気を楽しむことができます。奈良漬けやわさび漬けが代表的な粕漬けです。
酒粕にはたんぱく質やビタミンB、食物繊維、アミノ酸などの栄養が多く含まれていることが特徴です。白瓜(しろうり)を酒粕に漬け込んだ「奈良漬け」にはカリウムが含まれており、高血圧の対策につながります。そのほかアミノ酸やペプチド、酵母も豊富に含まれており、肌の保湿効果やシミの防止にも有効です。
種類6.味噌漬け
味噌漬けは野菜や肉、魚などの食材を味噌に漬け込んだ漬物です。食材を長時間漬け込むと、味噌の風味をしっかり楽しめます。野菜以外では、魚を西京みそに漬け込んで焼いて食べる「西京焼き」が有名です。
味噌漬けには食物繊維や乳酸菌、銅、亜鉛、などが含まれています。食物繊維には整腸作用があるほか、乳酸菌には大腸のはたらきを活発化させる作用があり便秘解消に役立ちます。
種類7.酢漬け
酢漬けは、野菜などを酢に漬け込んだ漬物です。酢以外にも塩や砂糖、唐辛子などを加えることもあります。日本では「らっきょう漬け」や「千枚漬け」が代表的な酢漬けで、海外では唐辛子などの香辛料と漬け込む「ピクルス」が代表的です。
らっきょう漬けには水溶性食物繊維やビタミンC、カリウムなどが含まれており、糖や脂肪の吸収を穏やかにしたり、ビタミンCの抗酸化作用で肌の老化を予防することが可能です。また、ピクルスには酢酸が含まれており、疲労回復や高血圧の対策につながります。
種類8.醤油漬け
醤油漬けは、調味料や香辛料を加えた醤油に野菜を漬け込んだ漬物です。漬け込む野菜は下処理することもあり、一度塩漬けした野菜や干した野菜を漬け込むものもあります。福神漬けや松前漬け、つぼ漬けが代表的な醤油漬けです。
種類9.麹漬け
麹漬けは、米麹に塩や砂糖などを混ぜたものに野菜を漬け込んだ漬物です。野菜は一度塩漬けにするなど、下処理したものを使用します。主になすやかぶ、大根、白菜などの野菜が使用され、代表的な麹漬けにはべったら漬けやかぶらずしがあります。
種類10.からし漬け
からし漬けは、からし・酒・麹などを混ぜ合わせたものに、塩漬けした野菜を漬け込んだ漬物です。からしのピリッとした刺激のある風味を楽しむことができます。なすや大根、きゅうりなどを使ったからし漬けが代表的です。
種類11.キムチ
キムチは唐辛子やにんにくなどを混ぜ込んだものに、野菜を漬け込んで乳酸発酵させた漬物です。韓国の伝統的な漬物で、白菜キムチのほかに、大根キムチ(カクテキ)やきゅうりキムチ(オイキムチ)なども代表的です。
キムチには乳酸菌やカプサイシン、ビタミンAなどが含まれています。カプサイシンには体温を上昇させて血行を促進、免疫力を向上させる作用があり、冷え性の方に適しています。また、ビタミンAは鼻や喉の粘膜の健康を維持し、体内にウイルスが侵入するのを防止することが可能です。
野菜別で見る漬物の種類
漬物にはさまざまな種類があり、同じ野菜でも漬け方などにより数種類の漬物に分けることができます。以下では、漬物として代表的な野菜である「大根・きゅうり・なす」の漬物の種類について紹介します。
大根の漬物の種類
大根の漬物の種類には次のものがあります。
代表的な大根の漬物
- たくあん
- いぶりがっこ
- べったら漬け
- 守口漬け
たくあんは大根のぬか漬けです。あるいは、大根を干さずに塩漬けしたものもたくあんと呼ばれます。いぶりがっこは大根を燻製させた後、米麹や塩で漬け込む漬物で、秋田県の郷土料理として知られます。表面は茶色っぽい色味をしており、燻製の香りが特徴的です。
べったら漬けは大根を塩で浅漬けした後、砂糖米や米麹で本漬けして作られる漬物です。東京都の名産でもあり、独特な香りと甘さがありながら、水分が多くみずみずしいポリポリとした食感が特徴です。また、守口漬けは「守口大根」を塩漬けした後、酒粕に漬け込み、みりん粕で仕上げる漬物です。何度も酒粕に漬け込むため完成までに2年ほどかかります。
きゅうりの漬物の種類
きゅうりの漬物の種類には次のものがあります。
代表的なきゅうりの漬物
- 奈良漬け
- 浅漬け
- ぬか漬け
- 塩漬け
- 醤油漬け
- 酢漬け
きゅうりはさまざまな漬物に使われる野菜です。浅漬けやぬか漬けなど、上記で紹介した漬物のほかにもからし漬けや味噌漬け、キムチなど、どのような種類の漬物にしてもおいしく食べることができます。奈良県発祥の「奈良漬け」も主にきゅうりが用いられます。
なすの漬物の種類
なすの漬物の種類には次のものがあります。
代表的ななすの漬物
- 福神漬け
- 奈良漬け
- 泉州水なす漬け
- 浅漬け
- 麹漬け
- からし漬け
なすもよく漬物にして食べられる野菜のひとつです。醤油漬けにする「なすの福神漬け」のほか、奈良漬けや浅漬け、麹漬けにして食べることができます。また、大阪南部にある泉州地域で採れる「泉州水なす」を浅漬けやぬか漬けにしたものを、「泉州水なす漬け」と言います。
地域によって漬物の種類が違う?ご当地の漬物
地域ごとに見ても、幅広い種類の漬物があります。その土地により採れる食材や食文化が異なるため、食材・漬け方もさまざまです。それぞれの地方ならではの漬物を楽しむことができ、お土産にしても喜ばれるでしょう。
以下では、各地方にあるご当地の漬物を紹介します。
北海道の漬物
北海道には次のような漬物があります。
北海道の漬物
- 松前漬け
- ヤーコン漬け(十勝エリア)
- にしん漬け
松前漬けは昆布やするめ、にんじんなどを醤油に漬け込んで作る漬物です。ヤーコン漬けはキク科の植物「ヤーコン」を味噌漬けや醤油漬けにする漬物で、北海道の中でも主に十勝地方で作られています。
また、北海道では野菜以外にもサーモンなど魚介類の漬物も食べられており、「にしん漬け」も有名です。
東北地方の漬物
東北地方には次のような漬物があります。
東北地方の漬物
- にんにく漬け(青森県)
- いぶりがっこ(秋田県)
- 晩菊漬け(秋田県)
- 金婚漬け(岩手県)
にんにくの生産量が日本一の青森県には、にんにくを酢漬けした後に醤油に漬け込む「にんにく漬け」があります。秋田県では、大根を燻製して漬け込む「いぶりがっこ」や、菊を使った「晩菊漬け」が有名です。
また、岩手県の「金婚漬け」は青瓜の種を取り除いた部分に、昆布で巻いたにんじんやごぼうを詰めて漬け込んだ漬物です。漬け込んだ時間が長い分おいしくなることから、金婚漬けと名付けられたとされています。
関東地方の漬物
関東地方には次のような漬物があります。
関東地方の漬物
- 福神漬け(東京都)
- ハリハリ漬け(新潟県)
- ひょうたん漬け(神奈川県)
- てっぽう漬け(栃木県・茨城県・千葉県)
「福神漬け」は野菜を醤油漬けにした漬物です。明治時代に大根・瓜・しそ・れんこん・なす・かぶ・なた豆の7種類の野菜を原料として作られたことから、七福神にちなんで福神漬けと呼ばれるようになったそうです。
「ハリハリ漬け」は切り干し大根を醤油漬けした漬物で、上越地方を代表する郷土料理のひとつです。新潟県では冬を越すための保存食として作られていました。「ひょうたん漬け」は野菜のひょうたんをしば漬け(塩漬け)にした漬物です。
また、「てっぽう漬け」は唐辛子をしそで巻いて、瓜の中に詰め込み醤油漬けする漬物です。関東地方の複数の地域で作られています。
中部地方の漬物
中部地方には次のような漬物があります。
中部地方の漬物
- わさび漬け(静岡県)
- 守口漬け(愛知県)
- 野沢菜漬け(長野県)
「わさび漬け」はわさびの葉っぱと根っこを酒粕で粕漬けした、わさびの味と香りを楽しめる漬物です。「守口漬け」は細長い守口大根を使って、塩や粕などで漬け込んだ漬物です。また、「野沢菜漬け」は長野県を代表する漬物で、日本三大漬け菜のひとつとも呼ばれています。シャキシャキした食感とさっぱりした風味が特徴です。
近畿地方の漬物
近畿地方には次のような漬物があります。
近畿地方の漬物
- 奈良漬け(奈良県)
- たくあん漬け(三重県)
- すぐき漬け(京都府)
- 泉州水なす漬け(大阪府)
奈良県では瓜やきゅうり、なすなどを粕漬けした「奈良漬け」が食べられています。野菜のあくが抜けて酒粕の風味を楽しめる漬物です。「たくあん漬け」は大根の漬物で、三重県の伊勢地方で作られるたくあん漬けは「伊勢たくあん」と呼ばれます。
「すぐき漬け」は京都市の伝統的な野菜「すぐき菜」の漬物です。すぐきの皮を剥いて茎・葉も一緒に塩漬けした後、炭火で保温して作られる漬物で独特の酸味を楽しめます。大阪南部の泉州地域の水なすの漬物が「泉州水なす漬け」です。浅漬けやぬか漬けにして食べられています。
中国・四国地方の漬物
中国・四国地方には次のような漬物があります。
中国・四国地方の漬物
- 砂丘らっきょう漬け(鳥取県)
- 津田かぶ漬け(島根県)
- 広島菜漬け(広島県)
- 緋のかぶら漬け(愛媛県)
「砂丘らっきょう漬け」は鳥取砂丘のらっきょうを塩漬けした後、甘酢に漬け込んだ漬物で
歯切れのよい食感が特徴です。島根県の津田かぶを天日干ししてぬか漬けにした「津田かぶ漬け」は、かぶ本来の味が楽しめ、漬け込む時間が長ければ熟成された風味や酸味を楽しむことができます。
「広島菜漬け」はピリッとした辛みと風味が特徴の漬物で、日本三大漬け菜のひとつです。かぶを酢漬けした愛媛県の「緋のかぶら漬け」は、鮮やかな赤色(緋色)の漬物で、酢の香りと甘酸っぱい味付けが特徴です。
九州地方の漬物
九州地方には次のような漬物があります。
九州地方の漬物
- からし菜漬け(福岡県)
- 高菜漬け(熊本県)
- 桜島漬け(鹿児島県)
- 島らっきょう漬け(沖縄県)
「からし菜漬け」は、アブラナ科のからし菜の葉や茎を漬け込んだ漬物です。ピリッとした辛みが特徴的で、浅漬けにすればさっぱりした味わいになります。「高菜漬け」は高菜の漬物で、日本三大漬け菜のひとつです。
鹿児島県の「桜島漬け」は、桜島大根を酒粕に長い時間漬け込んだ漬物で、噛めば噛むほど深い風味を味わえます。「島らっきょう漬け」は、沖縄県の島らっきょうを塩漬けしたものです。本土で栽培されるらっきょうよりも小ぶりで、ピリッとした辛みが強いことが特徴です。
まとめ
漬物はもともと野菜を貯蔵する目的で作られた食品です。漬物には幅広い種類があり、漬け方や漬け床、野菜など分類方法もさまざまです。
日本全国で地域ごとに漬物の種類が異なるので、その土地の漬物を楽しんでみてはいかがでしょうか。