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番茶とほうじ茶はどう違う? 意外と知られていない地域ごとの違いも

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みなさんは「番茶」と聞いて、何色のお茶を思い浮かべますか? 香ばしい、茶褐色のお茶でしょうか。それとも薄いグリーンのお茶でしょうか。実はこれ、地域によって違いがあるんです

北海道・東北・北陸在住の方にとっては、番茶といえばほうじ茶を思い浮かべます。関東以南の方であれば、緑茶を思い浮かべるそうです。本記事では、お茶のなかでも特に混同しやすい「番茶」と「ほうじ茶」について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 番茶はふだん使いの緑茶
  • ほうじ茶は番茶を焙じて作られる
  • 緑茶もウーロン茶も紅茶も同じ茶葉
  • 地域ごとにいろいろな番茶がある
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「番茶」と「ほうじ茶」の違いについて

名前が違うので、そもそも異なるお茶であることは一目瞭然なのですが、多くの人が混同してしまうのは「番茶」に地域差があるためです。また、番茶とほうじ茶は似ている部分もあるため、間違いやすいというのもあります。

番茶とほうじ茶の違いは、加工する製法の違いです。

採取した茶葉や茎を煮て乾燥させて作られるのが番茶、茶葉を強火で炒めて作られるのがほうじ茶です。焙(ほう)じているかいないか、これが大きな違いになります。

番茶ってどんなお茶?

茶葉

お茶は、お茶の木の新芽から順に摘んでいきます。その年、一番最初に摘み採れる新芽のお茶(新茶)は「一番茶」と言われます。その後から順番に摘み採れる茶葉を二番茶、三番茶と言います。

緑茶の表示基準の中で、番茶は「新芽が伸びて硬くなった茶葉や古葉、茎などを原料として製造したもの及び茶期(一番茶、二番茶、三番茶など)との間に摘採した茶葉を製造したもの」とされ、いわゆる定番から外れた番外のお茶が番茶と呼ばれます

「番茶」の名前の由来

番茶という言葉の由来はいくつかあり、以下の説が代表的なものです。

  • 一番茶や二番茶の間に摘んだものを表すという説
  • 「番傘」や「御番菜(おばんざい)」のように「番」という文字に「ふだん使い」という意味があるので、番茶と呼ぶ説
  • 遅く摘む茶という意味の「晩茶」から転じた説

表示基準からはやや外れますが、一番茶・二番茶を上質な煎茶として、三番茶以降のものを下級煎茶=番茶と呼ぶこともあります。

ほうじ茶ってどんなお茶?

番茶

ほうじ茶は、その名の通り「焙じた」お茶です。煎茶や茎茶、番茶などを強火で焙じて製造したものがほうじ茶と呼ばれます。番茶は一般の煎茶と同じように、お茶の葉を蒸して揉んで、乾燥させて作られます。そしてその番茶を焙じると「ほうじ茶」になるのです。

高温で焙煎するので、上級煎茶に比べて、旨みとなるアミノ酸、渋みを感じるカテキンだけでなく、カフェインやビタミンCも少ないお茶になります。香ばしくさっぱりした飲み口は、脂っこい食事の後や寝る前にもおすすめです。日本茶として高級茶の位置づけではありませんが、料亭などでも食事中に出されることが多いお茶です。

「ほうじ茶」にはリラックス効果がある

ほうじ茶には「ピラジン」という香り成分が含まれます。「ピラジン」には、精神を安定させ、心を穏やかにするはたらきや、血のめぐりをよくして身体を温めるはたらきもあるため、寝る前に飲むと心身ともにリラックスさせ、快眠に導くとされています。
ただし、緑茶より少ないですがカフェインも含まれているので、カフェインに敏感な方はご注意を。

「ほうじ茶」はスイーツと好相性

近年は茶葉そのものをスイーツに取り込んだ”ほうじ茶スイーツ”が人気ですが、それもそのはず。ほうじ茶の香ばしさは、和洋問わずにお菓子との相性が良いと言われています。生クリーム系の洋菓子であれば、ほうじ茶が生クリームの味わいを引き出し、後口をさっぱりさせてくれます。

また、和菓子の他にもチョコレートや焼き菓子にもぴったり。全粒粉や米粉を使った素朴な焼き菓子は独特の風味があるため、香ばしいほうじ茶とマッチ。さっぱりとしたお茶の味わいが、チョコレートの美味しさを引き立たせます。普段使いのお茶だからこそ、身近なお菓子との相性も楽しんでみると良いかもしれません。


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いろいろなお茶も全部「チャ」から

お茶は全てツバキ科の常緑樹「チャ」の葉から作られ、加工方法の違いによって、緑茶、ウーロン茶、紅茶などになります。お茶の葉を摘んですぐに加熱し、発酵(酸化発酵)しないようにして作ったのが緑茶、完全に発酵(酸化発酵)させるのが紅茶、その中間に位置するのがウーロン茶などの半発酵茶です。中国にも緑茶はありますが、これは加熱する時に釜炒りするもので、蒸して加熱する日本の緑茶とは味わいが少し違います。

麦茶やそば茶、ハーブティーなどは、「チャ」の葉を使わないため、厳密には代用茶と呼ばれます。

不発酵茶(緑茶)

日本独自の製法で、蒸して加熱し、幾度かの揉みの工程を経て、乾燥させて完成します。蒸し時間にも違いがあり、浅蒸し、深蒸し、特蒸し、極蒸しなどによって、最終的に出来上がるお茶が変わってくるというわけです。

お茶の分類

茶の木を栽培する時によしず等で覆いをし、直射日光を避けた茶園のチャの新芽を使ったお茶は「玉露」と呼ばれる高級煎茶になります。同様に、直射日光を避けたお茶の葉を蒸したあと、揉まずに乾燥させたものが「てん茶」と呼ばれ、これを石臼で挽いて粉にしたものが「抹茶」です。

番茶や煎茶を乾燥後に焙じたものが番茶、番茶や煎茶に炒った玄米を混ぜた玄米茶、煎茶の仕上げ工程で芽をより分けたものが芽茶、茎をより分けたものが茎茶と呼ばれます。


発酵茶と半発酵茶

番茶

発酵度合いによって分かれますが、ほんの少しだけ酸化発酵させたチャの芽を釜炒りして作る「包種茶(ほうしゅちゃ)」というお茶もあります。これは中国や台湾でよく飲まれます。

半発酵茶で代表的なのはウーロン茶ですね。チャの芽を酸化発酵させ、途中で釜炒りすることで発酵を止めて作ります。独特の香りや適度な渋み、さっぱりとした口あたりで食事に合わせるお茶として日本でも好まれています。発酵させることで、緑茶にはないウーロン茶ポリフェノールが作られ、これが中性脂肪の燃焼を促す効能があることから、肥満の予防や解消に効果が期待されています。

茶葉

ウーロン茶では途中で止める発酵を止めずに、完全に酸化発酵させた後に、急速に乾燥させたのが紅茶です。深い色合いと高い香りが特徴です。

後発酵茶というのもある

茶葉

チャの葉を蒸してから揉んだものを積み重ね、カビや乳酸菌などの微生物をつけて後から発酵させたものを後発酵茶と呼び、プーアル茶がこれに当たります。日本でも、「碁石茶」や「阿波晩茶」、富山県の「バタバタ茶」などが後発酵茶です。

地域で異なる「番茶」のいろいろ

番茶とほうじ茶の違いをいろいろと見てきましたが、番茶と呼ばれるものの中にも実はいろいろあるんです。基本的には、番茶は一番茶・二番茶から外れた、ふだん使いしやすいお手頃な緑茶で、作り方自体は煎茶と同じものが一般的です。

ただ、日本各地には番茶と呼ばれるものがいろいろあります。

日本各地の番茶
都道府県 名称
北海道 番茶
石川県 加賀棒茶
富山県 バタバタ茶
黒茶
愛知県 足助寒茶
滋賀県 赤ちゃん番茶
京都府 京番茶
奈良県 日干番茶
岡山県 美作番茶
島根県 ボテボテ茶
伯太番茶
徳島県 阿波晩茶
高知県 土佐番茶
碁石茶
愛媛県 石槌黒茶
沖縄県 ブクブク茶

京番茶

茶葉

大きな葉を蒸して、揉まずに乾燥させた後、炒って作る、焙じタイプの番茶です。焙じているので、種類としては「ほうじ茶」に当たりますが、際立つ個性とこだわりの製茶工程から「京番茶」として区別されています。

茶の葉を茎ごと刈り取り、大きな葉をそのままに蒸して、しっかりと炒るため、まずは茶葉の見た目のインパクトに驚く方も多いとか。そして、炒る工程で発生する強い焙煎香が特徴です。燻したようなスモーキーな香りと、独特の香ばしさはほうじ茶の中でも一線を画した味わいです。

美作番茶

美作番茶は、岡山県美作地方で作られている伝統的なお茶で、作州番茶と呼ばれることもあります。7月から8月、夏の一番暑い時期に枝ごと葉を刈り取って作られます。茶葉を蒸すように煮て、むしろに広げた後、時々煮汁をかけながら天日干しして乾燥させて作るのが美作番茶です。

京番茶と同様に、揉む工程がないので茶葉は大きなままで、枯れ葉のような見た目になります。枝ごと刈り取りますが、工程の最後で枝は取り除くのでご安心を。やさしくすっきりした味わいが特徴です。

阿波晩茶(番茶)

茶葉

阿波晩茶に使用される茶葉はしっかり大きくなるまで育てた一番茶です。柔らかい新芽では発酵の時に溶けてしまうので、しっかり育ててから収穫します。京番茶、美作番茶と同様に茶葉は枝ごと刈り取ります。茶葉を釜で茹でた後、揉んで桶に漬け込み、乳酸発酵させるのが一番の特徴です。その後、天日干しで乾燥させて完成です。

日本のお茶の中では珍しい後発酵茶に分類されるお茶で、一般的な番茶とは製法が異なるため、晩茶と表記されることが多いです。乳酸菌で発酵させるという独特の製法により、一般的なお茶よりもカフェインやカテキンの量は少なくなります。それに比例して苦味や渋みも少なくなり、口当たりの良いまろやかな甘味と、さわやかな甘酸っぱい香りが楽しめます。

まとめ

番茶といえば、日常的によく飲まれるお茶というイメージですが、地域によってイメージするお茶が違うのは面白いですね。地域ごとの特別な番茶を思い浮かべる人もいれば、ほうじ茶を思い浮かべる人、煎茶タイプの緑茶を思い浮かべる人もいます。

地域ごとの番茶をお取り寄せして、飲み比べてみるのも面白いですね。味わう時には、製造工程をちょっと思い浮かべながら飲んでみると、違いを意識できるかもしれません。

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皆川 今日子
ライター
札幌在住。旅行誌を中心に、観光・グルメ系メディアにて執筆中。趣味は料理とゲーム。長年、掃除を苦手としていることで悩んでいたが、「掃除に必要な才能を生まれ持たなかった」と割り切ることで気が楽になった。