「ふっくりんこ」ってどんなお米? 特徴と正しい炊き方、おいしい食べ方を調べてみた
北海道の中でも産地限定で作られているお米「ふっくりんこ」は、名前の通りふっくらとした見た目と食感、濃い甘みが特徴。
産地を限定しているため収穫量が多くなく、全国には出回っていませんでしたが、2008年からは生産地を拡大し、今では全国で販売されている人気のお米です。
ふっくりんこの特徴
栽培され始めた当初は北海道南部・函館近辺だけで展開されていた「ふっくりんこ」ですが、近年では作付面積も増やし、北海道米の中でも「ななつぼし」「ゆめぴりか」「きらら397」に次ぐ第4位にまで成長。
ニーズが高まっていることの現れですが、ふっくりんこにはどうんな特徴があるのでしょうか。
3年連続で最高ランクの特Aを獲得
日本穀物検定協会が実施する「米の食味ランキング」では、2015年と2016年に特Aランクを獲得。2017年と2018年は惜しくも逃しましたが、令和に入って2019年度産からは3年連続で特A評価を獲得しています。
白飯の外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価の6項目を専門家が評価。基準米よりも特に良好なものを「特A」、基準米と同等のものを「A’」、やや劣るを「B」、劣るを「B’」と評価する、この「米の食味ランキング」。北海道では、2010年(平成22年)産から「ゆめぴりか」と「ななつぼし」が特A評価を12年連続で獲得し続けています。
メード・イン・道南
産地を限定しているお米なので、お米のおいしさに情熱を持った生産者たちが、自ら栽培方法や品質についての厳しい基準を定めて、「ふっくりんこ」の安定したおいしさを実現しています。
毎年、道南を中心とした産地から4つの生産者組織(函館育ち ふっくりんこ蔵部、JAきたそらち ふかがわまい生産組合、JAピンネ ブランド米生産組合、JAたきかわふっくりんこ生産部会)が集い、「ふっくりんこ産地サミット」が開催されています。
このサミットで締結された厳格な品質基準をクリアしたお米だけに、品質へのこだわりの証として公認マークが付けられます。「ふっくりんこ」を購入する時にはこのマークを探してみてくださいね。
2月9日は「ふっくりんこの日」
ちなみに2022年から、2月9日が「ふっくりんこの日」として制定されました。語呂合わせで「“2”(ふっ)“9”(く)りんこ」です。
ふっくりんこの味わい
低アミロースで粘りが強い
お米に含まれるアミロースとアミロペクチンという2種のでんぷんのうち、アミロースの割合が低いほどアミロペクチンの割合が高くなるため、粘りが強くなると言われています。
「ふっくりんこ」も低アミロース米のひとつ。粘りが強く、また甘みも強いため、もっちりとした食感のおいしいお米になっています。
「あきたこまち」由来の甘さ
ふっくらと柔らかく、甘いお米はまさに日本人が好む味わい。これは品種改良によって生み出されたもので、ふっくりんこの系譜を辿ると、始まりは「あきたこまち」と道産米の「キタアケ」という品種にあります。
「あきたこまち」は粘りと弾力性があり、美しい光沢があり繊細な和食にぴったりの品種。水分量が多く、炊き立てだけでなく、冷めてもおいしいお米です。これに、噛んだ後の甘みが強い「きらら397」が加わったというわけです(正確には「きらら397」由来の道産米「ほしのゆめ」を経由)。
このため、「きらら397」や「あきたこまち」の遺伝子を持つ「ふっくりんこ」は、冷めてもおいしく、お弁当などにもおすすめなんです。
ふっくりんこの正しい炊き方
ふっくりんこの炊き方は、通常のお米と同じで大丈夫です。
お米の正しい炊き方は、研ぐ、すすぐ、水に浸す時間が、合計で2時間になるようにというのが基本です。浸水時間は最低でも、夏場は30分、冬場は1時間以上と言われます。
ただ、「ふっくりんこ」の場合は、これよりも浸水時間を少し長めにとるのがおすすめです。じっくり浸水させることで「ふっくりんこ」特有の柔らかさを味わえます。
充分に浸水させたら浸していた水をよく切り、炊飯ジャーの釜に移します。
目盛りに合わせて新しい水を入れてください。炊き上がったら内釜の水滴を拭き取り、釜の中にしゃもじを入れてお米をざっくりと十字に切り分け、上下を返すようにふんわりとかき混ぜましょう。この時に米粒をつぶしてしまわないように優しく混ぜるのがコツです。
新米の季節は少し水を減らす
新米の季節は米に含まれる水分が多いので、少しだけ水を減らすとちょうどよく炊き上がります。
また、無洗米を使う場合は水を少しだけ増やすといいでしょう(無洗米は米の周囲のぬかを取った状態のものなので、通常の精米よりも米そのものが多く計量されてしまうため)。
おすすめの食べ方
一粒一粒がふっくらとした「ふっくりんこ」は、食のプロに選ばれるお米で、特に和食との相性が抜群です。
煮物や焼き魚などに合わせるのがぴったりです。「ゆめぴりか」よりやや粘りが少ないですが、その分あっさりとした味わいで、上品な味付けの和食と合わせても、お米が主張しすぎることはありません。
また、冷めてもかたくなりにくいので、おにぎりやお弁当にもおすすめです。せっかくの北海道米なので、具も北海道らしいおにぎりで楽しむのもいいですね。
ほぐした焼き鮭、たっぷりのイクラやタラコ、柔らかく煮た日高昆布、糠ニシンのほぐし身、クセになるチーズおかかなどはいかがでしょうか。
知ると面白い! 誕生の歴史
ふっくりんこは北海道立道南農業試験場より2000年に誕生し、道南地区のわずか4人の生産者から始まりました。2002年には本格栽培に着手しましたが、当初は産地が限定されていました。北海道の中でも温暖で秋が長い函館を中心とした道南地区のみの栽培だったのです。
道南の穏やかな気候が米栽培にマッチ
秋の気候が比較的安定している北海道南部は、稲を充分に生育させることができるため、米の栽培に適した地域です。
栽培開始当初は通年販売の量が確保できないほどでしたが、品質や食味の維持に徹底的にこだわり、生産者が自ら決めた生産条件を曲げず、作付けの拡大には慎重でした。
道南から空知へ生産エリアを拡大
その後、「ふっくりんこ」はおいしさが評価され、販売エリア・生産エリアともに空知地区へと拡大し、今では全国で販売されるほどになったわけですが、毎年開かれる生産者サミットによって、厳しい生産基準は今でも守られています。
ふっくらとした味わいからつけられた「ふっくりんこ」の名前は一般公募によるものです。ふっくら感や柔らかさ、ほんのりとした甘さが感じられるネーミングですね。
白米だけじゃない! 生産地ではスイーツにも活用
ふっくりんこはお米としての販売だけではなく、お菓子などの商品にも利用されています。
製粉して米粉にした「ふっくりん粉」が販売されている他、生産地である北斗市内のスイーツ店では「ふっくりんこ」のムースやタルト、シュークリームなども販売されています。
また、スイーツ店ではありませんが、北斗市の澤田米穀店さんでは、「ふっくりんこ」を使ったポン菓子「ふっくりんこ JAPON」が販売されています。
これは油・化学調味料・添加物不使用の優しいお菓子。お子様のお菓子として安心なのはもちろんですが、例えば「海鮮いわし味」ならお湯やお茶をかけて「だし茶漬け」、「黒糖きなこ味」ならヨーグルトや牛乳・豆乳などを加えて朝食としてアレンジもできます。
こちらのお店では、「ふっくりんこ」の玄米を使ったクラフトビールも販売しているので、気になる方はチェックしてみてください。