海のルビー・北海シマエビを美味しく食べる方法。旬は初夏と秋の2回です。
年々漁獲量が減っている北海シマエビは、その希少価値の高さと茹でた時の鮮やかさから “海のルビー” と呼ばれています。甘エビやボタンエビと比べて甘みが強く、一度食べると「あの味が忘れられない」と虜になってしまう人が続出。それほどに美味しいエビなのです。
本記事では特徴や旬の時期、みんなが一番気になるおいしい食べ方を紹介します。
北海シマエビって他のエビと何が違う?
正式には「ホッカイエビ」という名前で、本州では単に「シマエビ」と呼ばれることもあります。オホーツク海からロシア沿岸の冷た~い海に生息しており、日本ではひがし北海道のサロマ湖や能取湖、別海町の野付湾で主に水揚げされているエビです。
北海シマエビの特徴
海に生息している北海シマエビは、黄緑色と緑褐色の縦縞(たてじま)模様をしています。
体長は8cm~13cmほどで、生後1年半まではオス、その後はメスに転換するという特徴を持っています。意外と知られていませんが、北海シマエビが属するタラバエビ科は雌雄同体(しゆうどうたい)といって、甲殻類では一般的。転換後は、抱卵や脱皮を繰り返しながら成長します。
海のルビーと呼ばれる理由
生きている間は、ルビーとはほど遠い色をした北海シマエビですが、茹でると驚くほどに鮮やかな赤色に変化します。これが転じて「海のルビー」と呼ばれるようになったそうです。
また、北海シマエビは漁の時期や漁獲量が決められているため、希少価値の高さも海のルビーという呼び名に関係しています。
北海シマエビは、1キロあたりの単価が3,000円前後で取り引きされることが多く、1万円を超えることもある高級エビ。S・M・Lとサイズ分けされ、大きいほど高値になります。
「幻のエビ」とも言われている!?
北海シマエビは通販やふるさと納税でも手に入りますが、その多くがボイルして冷凍されたものです。その理由は、鮮度が落ちやすいため。捕れたての生で流通することはありません。市場には出回らない=幻のエビ、と呼ばれているようです。
ただし、漁場である北海道東部では北海シマエビを刺し身で提供している飲食店もあるようです。一大産地である別海町の尾岱沼(おだいとう)では、漁の最盛期を迎えると踊り食い体験などがあるようなので、生の北海道シマエビを食べてみたい方は現地を訪れましょう。
とにかく甘い! 旨い!
甘エビやボタンエビなど一般的なエビとでは、北海道シマエビは比べものにならないほど甘いです。その理由は、北海道シマエビのエサとなる貝やオキアミ類が豊富だから。オキアミや貝には、うま味成分であるイノシン酸やアミノ酸などの栄養素を多く含んでおり、これらをエサに育ったエビもまた旨みを多分に蓄えているというわけです。
主な産地である北海道東部は、冬になると厳寒となるエリア。冷たい海の下で育った北海シマエビは甘みが増し、プリップリの食感です。
北海シマエビの水揚げ時期と旬
北海シマエビは資源保護を目的に、漁業規制が設けられています。水揚げ時期や水揚げ量が厳格に管理されているうえに、その漁獲期間も短いため、旬の時期も必然と短いです。
旬は夏と秋の年2回
北海シマエビの漁獲時期は、6月中旬~7月中旬、10月上旬~11月上旬の年2回です。春と夏以外の漁は北海シマエビの産卵時期や、資源保護のため禁止されています。予定した漁獲量に達した場合は漁期間内であっても、資源保護のため漁を終了します。
夏漁で捕れるシマエビは、身がしまっていプリッとした食感が特徴。秋漁では子持ちのシマエビが捕れることから、プチプチとした卵も味わえます。
水揚げ地域
日本国内では、宮城県以北のに生息していると言われています。特に北海道で水揚げされることが多く、別海町の野付湾を筆頭に、北見市のサロマ湖、網走市の能取湖が一大産地として知られています。
別海町では毎年6月下旬に「尾岱沼えびまつり」が開催され、会場では塩茹でした北海シマエビなどを販売。また、尾岱沼(おだいとう)では観光事業として北海シマエビ漁の見学も行っています。
北海道遺産にも登録されている「打瀬舟」漁法
北海シマエビの漁では、主に「打瀬網漁法」という明治時代から続く伝統的な漁法が用いられています。一般的なエビ漁では、エンジンでスクリューを回すため、北海シマエビの住処となるアマモやスガモを傷つけてしまうことがあります。
一方で、打瀬網漁法で使う船は打瀬舟(うたせぶね)と呼ばれ、エンジンの使用を最小限に留め、風の力でゆっくりと網を引いていきます。アマモやスガモを傷つけることのない漁法で、漁の最盛期にはいくつもの打瀬舟が海に並び、次世代の残したい風物詩として北海道遺産に認定されました。
打瀬網漁法は北海シマエビをおびき寄せる撒き餌をしないため、撒き餌独特の匂いもつかず、シマエビ本来の風味が楽しめるのも特徴です。
北海シマエビの解凍方法とおいしい食べ方
インターネット通販やお取り寄せなどで手に入る北海シマエビは、ほとんどが冷凍された状態で届きます。ここでは、正しい解凍方法や調理法を紹介します。
上手な解凍方法と殻のむき方
解凍方法は、自然解凍と流水解凍のふた通りです。
本来のおいしさをそのままに味わいたい場合は、自然解凍がおすすめ。冷蔵庫に入れてじっくりと解凍しましょう。北海シマエビの状態を確認しながら、解凍するのがポイントです。冷蔵庫内の温度にもよりますが、8時間~12時間が解凍目安になります。
流水解凍の場合は、北海シマエビが入った袋ごと、あるいは密閉袋に入れて水につけます。水を流しながら15分ほど付けることで解凍されます。この時に、袋に水が入らないように注意してください。水に触れると、旨みが逃げてしまいます。
北海シマエビの殻のむき方
- 北海シマエビの頭の殻をとる
*頭の身まで取らないように注意 - 胴体の殻をむく
- 足をとる
- 尻尾を殻から引き抜く
卵がついている場合は、先に卵を取り出しておくことで殻がむきやすくなります。手が汚れたり殻で指を傷つけないように、ビニール手袋をすると良いでしょう。
北海シマエビは油との相性が抜群
一般的なエビと同様に、北海シマエビも様々な料理に活用できます。
特に油との相性がよく、むき身の天ぷらや殻ごと唐揚げにするとおいしいです。エビチリやガーリックシュリンプといった濃い味の料理でも、北海シマエビは甘みや旨みが強いため、味付けに負けることなくより一層おいしく仕上がります。
もちろん、サラダやチャーハンなどシンプルな料理にも使えます。
殻までおいしく食べるなら
身だけでなく、殻も料理に活躍します。
むいた頭の殻部分は、濃厚で旨みの強い出汁がとれます。味噌汁の出汁として使うこともできますし、殻をミキサーなどで細かく砕いてフライパンで乾煎りすれば“ふりかけ”にも変身します。
まとめ
北海シマエビの特徴や解凍方法、おすすめの食べ方を紹介しました。
夏と秋の2回食べられるチャンスがあるものの、漁獲期間の短さや漁獲量などから希少性の高い北海道シマエビ。生食は現地でなければ難しいですが、出回る時期を狙って自宅で一度楽しんでみてはいかがでしょうか?