夏のシマエナガの生態とは?冬の姿との違いや観察スポットを紹介

フワフワした白い羽とつぶらな瞳が人気のシマエナガ。愛らしい見た目から、日本全国で人気を集めています。しかし、真っ白でフワフワのシマエナガが夏になると全く違う姿になることをご存知でしょうか。
夏のシマエナガを見て「本当にシマエナガなの?別の鳥じゃないの?」と疑う人もいるほど、冬の姿と夏の姿は違います。
この記事では、夏のシマエナガについて紹介します。シマエナガの夏の姿や、冬毛から夏毛に変わる時期、夏の過ごし方、夏のシマエナガが見られるスポットなども合わせて紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
【雪の妖精】シマエナガってどんな鳥?

シマエナガはエナガという鳥の亜種で、主に北海道に生息しています。エナガは世界中のさまざまな地域に生息し、多くの亜種が存在する鳥です。日本には、シマエナガの他に四国や九州に生息するキュウシュウエナガや対馬に生息するチョウセンエナガなどの亜種のエナガがいます。
シマエナガは約10~14cmの小型の鳥で、スズメと同じくらいの大きさです。冬毛は綿のようにフワフワとした白い羽毛で、愛らしい見た目から「雪の妖精」と呼ばれ、親しまれています。

寿命は約3~4年とやや短くはありますが、野鳥としては平均的と言えるでしょう。昆虫や樹液などを主食としており、冬には雪に覆われてしまう里山から樹液を求めて人の住む街に姿を見せてくれることもあります。
シマエナガは国内のみならず外国人にも人気が高く、シマエナガを見るために北海道を訪れる人も少なくありません。
人気の高さからペットとして飼育したいという声も多いですが、シマエナガは鳥獣保護法によって保護されており、研究や保存を目的とした飼育以外は法律によって禁止されています。そのため、ペットとして飼育できません。
夏のシマエナガは冬の姿と全然違う

可愛い見た目が広く知られてるシマエナガですが、実は夏の間は全く違う姿をしています。
夏のシマエナガはほっそりとしたシャープな印象を受ける見た目で、灰色の短い羽に濃い茶色や黒が混じった羽毛が特徴的です。シマエナガは小型で動きも素早いため、一見するとスズメに見間違えてしまうこともあるかもしれません。
シマエナガのフワフワとした丸いフォルムは、北海道の厳しい寒さのなかで生きるために生え変わる冬羽によるものです。夏のシマエナガは短い夏羽で本来のシャープな見た目に変わります。
シマエナガが冬の姿から夏の姿に変わるのはいつ頃?

シマエナガの産卵期は4~6月頃と言われています。生まれたばかりの雛は、目の周りの羽毛が黒く、夏のシマエナガの姿に近い見た目をしているのが特徴です。
エナガの雛も同じような見た目をしているため、雛の状態でシマエナガとエナガを見分けるのは非常に困難だと言われています。
順調に育ったシマエナガは9~10月頃、北海道の気温が徐々に下がり始めるころに換羽期を迎え、夏用の短い羽毛が冬用の白く長い羽毛へと変わります。
やがて、北海道の厳しい寒さが和らぎ始める3月頃、シマエナガの羽は徐々に夏用に変わっていきます。冬用の長くてフワフワな羽が抜け落ちていき、夏用の羽でシャープな見た目になります。
北海道の冬は本州に比べると長く寒さが残るため、シマエナガの羽が完全に夏用に切り替わるのは4~5月頃と言えるでしょう。
シマエナガは夏の間どこにいる?どう過ごしている?

シマエナガはもともと「探す鳥」ではなく「出会う鳥」と呼ばれるほど、見つけるのが難しい野鳥です。夏の間は特に出会う確率が低いと言われています。
夏のシマエナガは繁殖のために深い森のなかで過ごします。番になると一羽あたり10個前後の卵を産み、他の鳥同様に親鳥が卵を温めて雛を孵します。その後、木々の間を飛び交い、巣を作り繁殖して子育てをするのが一般的です。
雛の成鳥には上質なたんぱく質が必要なため、夏のシマエナガは深い森のなかで忙しなく飛び回りながら昆虫を捉えては巣に持ち帰る日々を過ごしています。
小型で素早いシマエナガは、木々の生い茂るなかで見つけるのが非常に難しく、さらに見つけたとしてもスズメやエナガなど、他の野鳥と見間違えてしまうこともあるでしょう。

冬の白くフワフワした姿を想像していると、実際に夏のシマエナガに出会っても気づくことができない可能性も高いです。シマエナガは混群する鳥でもあるため、他の鳥に混ざってしまい見つけられないこともあります。
夏の間、番になったシマエナガのペアは、二羽で協力して子育てをするため、一羽見つけたら近くに番のシマエナガがもう一羽いるかもしれません。
「ジュリリリリリ」といった特徴的な鳴き声が聞こえた場合は、耳を済ませて鳴き声の方角を静かに探してみるのがよいでしょう。
どのような鳥でも、繁殖期は警戒心が強くなるものです。シマエナガの鳴き声が聞こえた時には、特に周囲の音などを抑えるように気を付けて探してみてください。
夏のシマエナガはどこで見られる?

冬のシマエナガだけでなく、夏のシマエナガにも会ってみたいと思う人は多いでしょう。
冬のシマエナガは、森でエサとなる昆虫などが獲れなくなるため、樹液などを求めて市街地まで移動してくることも珍しくありません。しかし、子育てのために深い森に住む夏のシマエナガを探すのは至難の業です。「ここに行けば会える」といったスポットは、ほとんどありません。
森林公園や森のなかをハイキングしていると、もしかすると出会えるかもしれませんので、「シマエナガに会いに行こう」ではなく「山を散策しに行こう、シマエナガに合えれば幸運だな」位の気持ちで山登りなどをしてみるのがよいでしょう。
運が良ければ夏のシマエナガを観察できるかも?おすすめバードウォッチングスポット

どうしても夏のシマエナガを観察したいという人は、シマエナガの生態に合った場所に足を運んでみるのがおすすめです。人気のバードウォッチングスポットのなかでも、特に夏のシマエナガにとって過ごしやすい環境が整っているスポットを紹介します。
円山公園

札幌市中央区にある円山公園は、円山原始林に隣接した自然豊かな公園です。春は桜の名所としても人気が高く、アクセスもしやすいため、観光中にシマエナガ探しを楽しみたい方におすすめのスポットです。
円山原始林は標高226mの低山ですが、自然が色濃く残り、北海道の野生動物にとって過ごしやすい環境が整っています。北海道開拓時代から大切に守られてきた自然のなかで、シマエナガが繁殖や子育てを行う姿が見られるかもしれません。
ただし、シマエナガは冬に目撃されることが多く、夏の目撃情報は限られているため、観察には根気が必要です。それでも、豊かな自然環境に恵まれた円山公園では、他の野鳥や動植物の観察も楽しめるでしょう。
住所 | 北海道札幌市中央区宮ヶ丘[map] |
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電話番号 | 011-621-0453(円山公園管理事務所) |
旭山記念公園

旭山記念公園は札幌市中央区にある自然公園で、野鳥の観察スポットとしても人気があります。特に冬には真っ白なシマエナガの姿が度々目撃されています。
夏場も木々が生い茂り自然が豊かなため、シマエナガが巣を作って過ごしている可能性があります。
公園の公式ウェブサイトには野鳥情報が掲載されており、その中に「今週のシマエナガ」というコーナーがあり、夏でもシマエナガの目撃情報が定期的に更新されているため、訪れる際の参考になります。
園内には展望台もあり、札幌市街を一望できる景色が楽しめるほか、散策路を歩きながら北海道ならではの野生動物や植物を観察することができます。夏の自然散策とともに、シマエナガ探しに訪れてみてはいかがでしょうか。
住所 | 北海道札幌市中央区界川4丁目1[map] |
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電話番号 | 011-200-0311(札幌市公園緑地課) |
春採湖

釧路市の春採湖は、シマエナガが見られるスポットとして知られています。特に2022年頃から頻繁に見られるようになったという声もあり、他の野鳥と同じく湖周辺の木々の間で確認されることが多いようです。
しかし、これらの情報は冬のシマエナガを対象としており、目撃されているのは白くフワフワな姿ばかりで、夏のシマエナガが発見されたという情報はありません。
一方、SNSなどでは「釧路で夏にシマエナガを見つけた」などの投稿がいくつか見受けられるため、釧路近辺のエリアに残る自然はシマエナガの好む環境である可能性があります。駄目でもともとの精神を持って、足を運んでみる価値があるのではないでしょうか。
住所 | 北海道釧路市春湖台1-38(春採湖ネイチャーセンター)[map] |
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電話番号 | 0154-42-4212 |
まとめ
今回は夏のシマエナガについて紹介しました。いまや、国内外の多くの人からマスコットキャラクターのように愛されているシマエナガ。そんなシマエナガが冬と夏で全く違う姿をしていることに驚いた人も多いのではないでしょうか。
もちろん、冬のフワフワで可愛いシマエナガも良いですが、夏のスマートで雛のためにせっせと働くシマエナガも魅力的です。
ぜひ、可愛いだけじゃない夏のシマエナガの魅力を知ってみてくださいね。