ばんえい競馬は北海道が生んだ世界唯一の競馬

ばんえい競馬は北海道が生んだ世界唯一の競馬の画像

スピード感ある走りと競走馬のしなやかなスタイル、結果を予想しながらレースを見守るワクワク感。競馬は近年、ゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」の登場によって、これまで以上に人気を集めています。そんなポピュラーな競技とはひと味違った競馬が、世界で唯一、北海道の帯広のみで開催されている「ばんえい競馬」です。鉄のソリを力強く引っ張りながら、ゴールに突き進むばん馬の姿は圧巻。ばんえい競馬の歴史や見どころ、何倍も楽しめるおすすめスポットまで、たっぷり紹介します。

この記事でわかること

  • ばんえい競馬が楽しめるのは世界で唯一、帯広だけ!
  • ばん馬の大きさはサラブレットの約2倍
  • 帯広競馬場の入場料は100円(税込)
  • 白熱のレースをコース脇から間近に見れる!
  • 北海道ご当地ラーメン
  • スープカレー特集

ばんえい競馬とは

ばんえい競馬とは

サラブレッドがコースを駆け抜ける一般的な競馬とは、馬の大きさもレースの内容もまったく異なる「ばんえい競馬」。ひと昔前は北海道内の複数の地域で開催されていましたが、現在レースが開催されているのは帯広市1カ所のみ。まずは、ばんえい競馬の特徴や開催されている帯広競馬場について紹介します。

ばんえい馬(ばん馬)が主役

ばん馬が主役

ばんえい競馬でレースを走るのは、「ばんえい馬(ばん馬)」と呼ばれる馬。高さ170cm、重さ500kgのサラブレットと比較すると、高さ180cm、重さ800~1200kgと巨大な体を持ちます。品種も競走馬とは違い、フランス原産のペルシュロンやベルギー原産のベルジャンなど、大きい体格と持久力を持ち合わせた品種です。

サラブレット ばんえい馬(ばん馬)
高さ 170cm 180cm
体重 500kg 800~1200kg

巨大なばん馬が引くのは、鉄のソリ。騎手は鉄ソリに乗り、ばん馬を鼓舞しながらゴールを目指します。鉄のソリがすべて通過したときに初めてゴールになるので、パワーと持久力で最後まで走り切る姿を圧巻です。ばん馬の姿に注目しがちですが、騎手の駆け引きも見どころ。坂や障害に備えて体力を温存したり、ここぞというタイミングで鼓舞したりする、まさに人馬一体のレースを繰り広げます。

スピーディーなレースとは違った魅力があり、泥臭くも、ばん馬と騎手の鬼気迫る頑張りを目の前に、手に汗握るレースに魅了されるはずです。

十勝・帯広にとって無二の観光資源に

世界でも見られるのは帯広市だけ

ばんえい競馬はかつて、地方競馬場を持つ市町村で競馬を開催できるようになった1948年(昭和23年)から「旭川競馬場」「北見競馬場」「岩見沢競馬場」「帯広競馬場」の4カ所で開催されていました。
手探りで始まったものの、競馬ブームによって全国区で知られるようになり、ばんえい競馬の人気は高まっていきます。しかし、不況やバブル崩壊などを背景に経営が難しくなり、旭川・北見・岩見沢が撤退したのが2006年(平成18年)。

一時はばんえい競馬が廃止になると思われましたが、官民一体となって存続を目指し、翌年からは現在の帯広競馬場のみでの開催となって再スタートを果たしました。世界で見てもばんえい競馬を開催しているのは帯広市のみ。ばんえい十勝は「馬の一発逆転ライブショー」というコンセプトを掲げ、世界で唯一のばんえい競馬を北海道・十勝の名物として発信し続けています。

帯広競馬場の概要

帯広競馬場の概要

ばんえい競馬が開催されるのは、帯広市の中心部に位置する帯広競馬場。東京から飛行機で約1時間30分、札幌から電車で約2時間とアクセスが良いのが特徴です。とかち帯広空港からの発車する十勝バス、ナイター開催日のみ運行している無料シャトルバスなどもあり、ばんえい競馬を楽しみやすくなっています。

  • 住所:帯広市西13条南9丁目 map
  • 営業時間:レースによって異なる
  • 電話番号:0155-34-0825
  • アクセス:東京から飛行機で約1時間30分、札幌から電車で約2時間
  • 備考:入場料100円、駐車場あり(無料)
  • ばんえい競馬の奥深い歴史を知る

    ばんえい競馬は、北海道の歴史を今に伝える競技です。開拓時代にルーツがあり、鉄のソリを引くスタイルはかつての行事が由来になってます。歴史を知れば、もっとばんえい競馬の魅力がわかるはず。ここでは、ばんえい競馬の始まりや現代までの歴史をフカボリします。

    ルーツは農耕馬の競い合い

    ばんえい競馬の「ばんえい」とは、荷物を引くことを意味する言葉。農耕や木材運搬など荷物を引く「ばん馬」が支えたことから、「ばんえい競馬」という名前が使われているそう。競技の由来は、綱引きのようにばん馬が引っ張り合って競ったのが始まりと言われています。

    農耕馬のイメージ

    「お祭りばん馬」という農村の行事が始まり、日々の仕事の労いや人々の娯楽として、ばんえい競走が定着。騎手が馬ではなくソリに乗るスタイルは世界的にも日本だけで、馬を一人で操る方法を外国人指導者が伝えたのが今に引き継がれているそうです。

    公営競馬になったのは終戦後の昭和21年

    ばんえい競馬の歴史

    しばらくは農村の娯楽として楽しまれていましたが、昭和21年に公布された地方競馬法でばんえい競馬が組み込まれました。これは、戦後の復興のために、食糧増産や馬産の奨励などを目指すためであり、食糧不足解消の一手としてばんえい競馬に白羽の矢が立ったからです。地方競馬によって馬の需要を生み、農地を耕したり、馬ふんで土壌を向上したりすることができ、それが馬産農家の希望になりました。

    1947年(昭和22年)には、旭川と岩見沢で初の公式ばんえい競馬が開催。すぐに目に見える結果は出なかったものの、馬産地として北海道と旭川市・北見市・岩見沢市・帯広市による市営ばんえい競馬が発足し、ばんえい競馬が世に知られるようになっていきます。

    幾多の困難を超えて、今や十勝の名物に

    初期の頃は手探りで粗削りな部分もあったばんえい競馬ですが、レースを重ねながら進化していきます。直線コースへの変更、障害の設置でエキサイティングなコースになり、鉄製のソリやソリに乗せる重量物も統一しました。

    競技の進化は騎手や審判の進化も促しました。馬を操る技術の向上、スリットカメラやVTRによる正確な着順判定によって、競技としての質が高まり、隆盛期を迎えていきます。

    その後、不況によって帯広市のみの開催になりましたが、単独開催の滑り出しは好調。ばんえい競馬と一緒に楽しめる施設「とかちむら」の開設、メディアへの露出増などによって人気を博し、十勝と帯広が発信する独自のエンターテインメントとして日々進化を続けています。

    見どころ&楽しみ方

    見どころはココ

    ばんえい競馬の魅力は、なんといっても現地での生観戦。サラブレッドとは違った迫力のある馬のスタイル、熱気ほとばしるレースはもちろん、競馬場にある施設も見どころです。4つの見どころを参考に、ばんえい競馬を楽しみ尽くしましょう。

    【その1】パワフルな“ばん馬”にくぎづけ

    ばんえい競馬で活躍するばん馬は、サラブレッドの2倍以上の大きさがあり、目の前で見るとかなりの迫力。最高1トンもの重量物を引く巨体は力強く、パワフルな筋肉やスタイルが好きな方にはたまらないはず。

    ばん馬をじっくり観察するなら、レース前にパドックを訪れるのがおすすめです。パドックとは観客が馬の様子を見るための場所で、スタッフがばん馬を引きながら周回します。本来はレースの予想をするための場所ですが、ばん馬のスタイルをじっくり見てみるのも楽しみ方のひとつです。

    【その2】白熱のレースを観戦

    レース観戦

    ばんえい競馬のレースが行われるのは、200メートルの直線コース。高さ1mの第1障害物、高さ1.5mの第2障害物を乗り越え、ソリがゴールラインを完全に通過するまで走り切ります。坂を乗り越えるところは、一番盛り上がるシーンです。順位の入れ替わりも激しく、突き進む馬、全力で操る騎手の姿に胸が熱くなるはず。

    レースを見られるのは、上から見られるスタンド席、ゆったり楽しめるVIPルーム「プレミアムラウンジ」、コース脇の3つ。レースの迫力を間近で感じたいならコース脇がおすすめ。馬のスピードは緩やかなので、スタートからゴールまで並走しながら見学することも可能。砂埃が届きそうな場所で、レースの熱さを全身で感じてみましょう。

    馬券売り場

    もっと楽しむなら、馬券を買ってみるのもおすすめ。馬券は8種類ありますが、初心者の方でもチャレンジしやすいのは1着の馬を当てる「単勝」。売り場にはビギナーコーナーがあり、馬券の種類や購入の仕方をスタッフが教えてくれるので安心です。マーク式のシートに予想を記入したら、発券機に入れるだけ。意外と簡単なので、訪れた記念に1枚購入してみてはいかがでしょう。

    【その3】バックヤードツアーに参加してみよう

    バックヤードツアー

    バックヤードツアーでは、本来関係者から立ち入ることができないエリアを見学できます。レース前に馬具の装着や健康チェックなどを行う装鞍所(そうあんじょ)、人と馬が寝食をともにする厩舎(きゅうしゃ)などを見られる貴重な機会になるはず。ツアーは、1階の総合案内所で当日受付が可能です。

    他にも、早朝に調教師とばん馬がレースの調整を行う様子などを見られる「朝調教ツアー」、スタート地点や練習用ゲートを見学できる「スタート地点探検ツアー」も実施しています。好きなツアーに参加して、ばんえい競馬の裏側に入ってみましょう。(各種ツアーが当面の間、中止となっています。)

    【その4】「馬の資料館」で歴史を学ぼう

    馬の資料館1 馬の資料館2

    帯広競馬場の敷地内にあるとかちむらの隣に、馬の資料館があります。入場料は無料で、ばんえい競馬や開拓時代の農耕馬などに関する資料や器具が展示されている施設です。

    ばん馬が農耕で活躍する姿は実物大の模型で展示されていて迫力満点。馬具や血統書など貴重な資料も個人・各種団体の協力を得て、多数展示しています。レースを見る前に歴史を学ぶのはもちろん、レース後に訪れてもばんえい競馬の印象が変わるでしょう。時間に余裕がある方は、展示を一つひとつ丁寧に見学してみてくださいね。

  • 住所:北海道帯広市西13条南9丁目
  • 営業時間:10:00~16:00
  • 定休日:なし(年中無休)
  • 電話番号:0155-34-7307
  • アクセス:帯広駅から車で約7分
  • 備考:駐車場あり(無料)、入場料無料
  • 一緒に楽しみたい“ツウ”なスポット

    ばんえい競馬をもっと楽しむなら、周辺スポットも一緒にめぐるのがおすすめ。近隣のおすすめスポットを3つ紹介するので、ぜひ競技場と合わせて訪れてみてくださいね。

    十勝輓馬(ひきうま)神社

    十勝輓馬(ひきうま)神社

    帯広競馬場にある「とかちむら」内に、平成27年に十勝輓馬神社が完成。ばん馬の蹄鉄を御神体として祀り、ばん馬の引く力になぞらえて、幸運を引き寄せると話題のパワースポットです。ご利益はもちろん、人気を集めているのはユニークなおみくじ「うまみくじ」です。馬のことわざが書かれていて、雑学を学びつつ、ちょっとタメになる言葉をもらえます。

  • 住所:北海道帯広市西13条南8丁目1番地
  • 営業時間:10:00~21:00
  • 定休日:なし(年中無休)
  • 電話番号:0155-34-7307
  • アクセス:帯広空港から車で約40分
  • 備考:駐車場あり(無料)
  • ふれあい動物園

    ふれあい動物園

    帯広競馬場内には、かわいい動物たちで触れあえるふれあい動物園があります。ポニーやうさぎ、ニワトリなどが飼育されていて、エサやりやポニーの乗馬体験を楽しめるスポットです。ばん馬の飼育舎もあり、レースの迫力とは違った、穏やかな表情やつぶらな瞳に癒されるはず。ばん馬や動物に触れ合ってみたい方や家族連れの方はぜひ訪れてみましょう。

  • 住所:帯広市西13条南9丁目
  • 営業時間:帯広競馬場開門時間~17:00
  • 定休日:火曜日
  • 電話番号:0155-34-0825
  • アクセス:帯広空港から車で約40分
  • 備考:駐車場あり(無料)
  • とかちむら産直市場

    とかちむら産直市場

    十勝輓馬神社のあるとかちむらには、産直市場もあります。十勝の生産者がつくった野菜やチーズ、お肉、お酒、焼き立てのパンなどが勢ぞろい。十勝に育まれた恵みは、家族や友人へのお土産にもぴったりです。ばんえい競馬を見た後のお昼時や帰りにぜひ立ち寄って、食材や加工品の数々をチェックしてみましょう。

  • 住所:北海道帯広市西13条南8丁目1番地
  • 営業時間:4月~10月/10:00~18:00(土日は~19:00)、11月~3月/11:00~16:00
  • 定休日:水曜日
  • 電話番号:0155-66-6830
  • アクセス:帯広空港から車で約40分
  • 備考:駐車場あり(無料)
  • writerprof_sugawara
    菅原 光拳
    ライター / フリーエディター
    札幌生まれ、北広島市育ち。学生時代に釧路で環境と自然教育を学んだのち、卒業後も北見を拠点に道東で7年間を過ごす。現在は北海道観光をはじめ、ライフスタイルメディアなど多様なジャンルの記事を執筆中。