北海道の「農業技術」はここまで進歩している!話題のスマート農業を徹底解説

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私たちの食卓を支える野菜や果物、お米などを育てる農業。高度な技術や知識、経験が必要な業界で、近年ロボットやAIなどを取り入れた、新たな農業技術の開発が進んでいることをご存知でしょうか?

この記事では、今注目を集めている、最新の農業技術についてご紹介!北海道での具体的な取り組み例や、導入することのメリット・デメリットについても詳しくご紹介します。

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新たな農業技術のカタチ「スマート農業」とは?

スマート農業

「スマート農業」とは、ロボット技術やICT(情報通信技術)などの先端技術を活用した農業です。

人の手に頼る作業や熟練者でなければ難しい作業が多いという、従来の農業のあり方を大きく変える可能性を持つのが、スマート農業です。

スマートフォンやスマートウォッチなど、先進技術を活用した製品や取り組みが普及する中、近年は農業分野でも、ITやICT技術の導入が急速に進められています。

スマート農業は、人手の確保や作業者の負担軽減、後継者の育成など、日本の農業における様々な課題を解決する農業技術として、近年注目を集めています。

北海道で使われているスマート農業技術

日本の農業の「新たなカタチ」として期待されている、スマート農業。食料自給率全国一位を誇る北海道でも、新しい農業技術の導入が進められています。 ここからは、北海道で使われているスマート農業技術を、5つピックアップしてご紹介します。

①GPSガイダンスシステム

トラクター

GPSガイダンスシステムとは、農業用トラクターに装着するだけで、正確な現在地をリアルタイムで確認することができる農業技術です。いわば「農作業用のカーナビ」システム。GPSガイダンスシステムを導入することにより、耕起、整地、肥料や農薬の散布作業などで、重なる部分や抜けがなく、均一に効率よく走行することが可能となります。

特に北海道では、広い農地を少人数で管理している農家が少なくありません。さらに農家の戸数や担い手の減少も課題です。
GPSガイダンスシステムは、それらの課題解決に役立つ農業技術のひとつ。トラクターの走行経路を「見える化」することで、広い農地でも簡単に、無駄なく正確な農作業ができるようになります。

②ロボットトラクター

GPSなどの衛星測位システムを使って、自動走行するトラクター(ロボットトラクター)も登場しています。

ロボットトラクターの種類は、主に「自動(有人)走行」と「無人走行」の2つ。「自動(有人)走行」とは、人が搭乗して、旋回など一部の操作のみを人の手で行うもの。「無人走行」とは、エリアやルートを専用のシステムに登録することで、全ての操作を自動で行ってくれるものです。

北海道では、米どころの岩見沢市や新十津川町などで、ロボットトラクターの活用が進められています。
特に注目されているのが、1台は自動走行、もう1台は無人走行のロボットトラクターによる「協調作業」。人の手による操縦をロボットに追従させることで、作業者の負担や人手を大幅に削減することができるとされています。

③ドローンによる種まき

ドローン

空撮などで利用されるドローン(無人航空機)も、農業技術として活用されています。

活用例のひとつがコメの栽培です。日本の稲作といえば、真っ先に思い浮かべるのが「田植え」ではないでしょうか。しかしこの田植え作業は作業者への負担が大きく、苗を育てるには時間も場所も必要です。

新たな稲作として注目されているのが、「直播(じかまき)」という田んぼに直接コメの種子を播く方法。その「直播」をドローンで実現する取り組みが、北海道旭川市などで行われています。

これまでの移植栽培から直播への移行、さらにドローンの導入によって、大幅な作業軽減に繋がるとして、今後の活用に期待が集まっています。

④搾乳ロボット(自動搾乳システム)

酪農が盛んな北海道。酪農家は毎日欠かさず、決まった時間に搾乳を行います。北海道における、乳牛1頭あたりの搾乳作業時間は約46時間※を占めるそう。

酪農家にとって負担の大きい搾乳作業。この作業を自動化する農業技術として登場したのが、搾乳ロボットです。BOX型のロボットの中に乳牛を入室させ、自動で搾乳を行います。作業時間はBOXに入ってから出るまで7〜10分です。ロボット設備の規模にもよりますが、搾乳を自動化することにより、1頭あたりの処理時間の短縮に貢献できます。

また、搾乳ロボットには、搾乳時の乳牛の体重や乳質などのデータが蓄積されるメリットもあります。疾病の早期発見・治療にも役立つ農業技術です。

※参考:独立行政法人農畜産業振興機構「搾乳ロボットが酪農経営の収益性向上と労働条件の改善に与える影響」

⑤AIによる生育・収量予測

農業において「作物の収穫量」は、売り上げに直結する重要な要素です。収穫量や生育状況が天候や気温に大きく左右されるのが農業ですが、スマート農業技術により革新をもたらす可能性があります。

近年導入・活用が進められているのが、AI(人工知能)による生育・収量予測です。過去の栽培記録や気象データをAIに取り込み、解析することで、気象と生育の関係性の特徴やパターンを見つけ出し、将来の収穫時期や量をより正確に予測することができるのです。

作物の収穫時期や収穫量を予測することは、過剰な生産の防止や在庫管理の効率化にも繋がり、フードロスの削減にもなります。

スマート農業技術のメリット・デメリット

メリット

様々な場面での活用が期待できるスマート農業技術には、多くのメリットがある反面、デメリットも確認しておくことが重要です。

スマート農業技術を使うメリット

スマート農業技術を導入することによるメリットは、主に以下の3点にまとめることができます。

農作業の省力化、生産性の向上

これまで人間が行っていた判断をAIが、作業をロボットがサポートまたは担うことにより、農作業の大幅な省力化、労力軽減が実現します。
高齢化や人手不足が深刻な日本の農業業界において、スマート農業技術による作業の省力化は大きなメリットと言えるでしょう。

また、種まきや収穫などの長時間かつ単純な作業をロボットに任せることで、作業者は複雑で柔軟な対応に集中することができるため、生産性の向上にも繋がります。

さらにスマート農業技術の活用により、力仕事に向いていない人や高齢の方であっても農作業を行うことが可能となります。

品質の向上

スマート農業技術で栽培データを管理し、収穫時期を予測することで、いつでも最適な状態の作物を栽培、収穫することが可能となります。

野菜や果物などの作物は、収穫時期の見極めが大切です。AI予測などの農業技術を活用し、適切な時期に収穫することで、品質の向上を図ることができます。

農業技術の伝承

スマート農業技術により管理できるデータは、作物に関することだけではありません。熟練者が持つ技術やノウハウをデータ化して、管理できることもメリットです。

スマート農業のシステムを活用し、技術を伝承することで、たとえ農業が未経験の方が参入しても、高い品質の農作物を栽培することが可能です。
これまで経験や勘に頼っていた農業技術をデータ化することで、スムーズに技術を伝承することができるでしょう。

スマート農業技術のデメリット

コスト

導入することで様々なメリットをもたらすスマート農業技術ですが、以下のような注意点もあります。

  1. 導入コストが高い
  2. ICT(情報通信技術)の知識が必要
  3. 各機器間の互換性にバラつきがある

一番の課題は、導入コストが高額なこと。機器やシステムによって金額は異なりますが、補助金の活用やリースでの利用を検討することも可能です。

さらにスマート農業技術は、これまでの農業重機とは異なる操作方法が求められることがほとんどです。特に高齢者が多い農家では、導入後のサポートを検討する必要があるでしょう。
スマート農業の機器のデータ形式や仕様に、バラつきがあることも課題のひとつです。

新しい取り組みである、スマート農業技術のシステムや機器は、日々進歩しています。導入の際には、最新の情報をチェックすることが重要です。

まとめ

ロボット技術やAIなどの農業技術を導入することは、日本の農業課題を解決する大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
特に今後さらに深刻化するであろう、農家の人手不足や高齢化に対して、スマート農業技術は力強いサポート役となります。

新しい農業技術によって育てられたお米や野菜などが、当たり前に食卓に並ぶ未来も、そう遠くないかもしれませんね。

writerprof_honma
本間 幸乃
ライター
北海道浦河町生まれ、札幌育ち。北海道の生産者・事業者にまつわるストーリー、食やカルチャー情報など「暮らしがちょっと豊かになる」記事を執筆中。好きな六花亭のおやつは『霜だたみ』。