カジカの食べ方は?北海道で「鍋こわし」と呼ばれるカジカの特徴や旬
海や川に生息するカジカ。北海道で「鍋こわし」と呼ばれるカジカは、全国にあまり流通することが少ない魚ですが、北海道では秋~冬になるとよく食べられます。特に味噌仕立てのスープに野菜と一緒に食べる鍋料理は絶品で、北海道の冬を代表する食べ物でもあります。また、カジカは身だけでなく多くの部位を食べられることが特徴で、カジカの卵や肝を使った料理も人気です。
こちらの記事ではカジカの詳細や食べ方、旬の時期などを詳しく紹介します。
この記事でわかること
- カジカは北海道で「鍋こわし」と呼ばれる
- 北海道でよく出回るのはトゲカジカとケムシカジカ
- カジカはビタミンやミネラル、コラーゲンが豊富
- カジカは低カロリーな食材
カジカとはどんな魚?北海道で「鍋こわし」と呼ばれる理由
カジカとはスズキ目カジカ科カジカ属に属する魚のことで、北海道の冬を代表する魚のひとつでもあります。主に淡水に生息する淡水魚ですが、なかには海水に生息する種類もいます。カジカは20cmほどの魚で、頭部が大きく褐色系の見た目が特徴です。見た目はゴツゴツとしたカジカですが、クセのない淡白な味わいをしており、食べるとおいしい魚としても知られます。
カジカにはさまざまな種類がありますが、なかでも「トゲカジカ」や「ケムシカジカ」などは体長が大きく30cm~40cmほどになります。大きくて味もおいしいので釣りの対象として人気です。
また、北海道では主に味噌仕立てのカジカ鍋のこと、またはトゲカジカのことを「鍋こわし」と呼びます。鍋こわしとは、「おいしすぎるあまり鍋の底までつついて鍋をこわしてしまう」という意味が由来です。
食用とされるカジカは4種類
日本近海には50種類以上のカジカが生息しているとされています。そのうち、主に食用とされるのは次の4種類です。
食用とされるカジカ
- トゲカジカ
- ケムシカジカ
- ギスカジカ
- ニジカジカ
なかでもトゲカジカとケムシカジカは北海道でよく出回るカジカです。ここからは、それぞれの種類について紹介します。
トゲカジカ
トゲカジカは体長が大きく、全長70cm重量10kgほどにもなるカジカです。寒い時期は身が引き締まっておいしくなり、12月~2月が旬の北海道を代表するカジカの一種です。北海道でカジカと言えば「トゲカジカ」のことを指すことがほとんどで、「マカジカ」「オキカジカ」「鍋こわし」などという名前でも親しまれています。
引き締まった白身だけでなく卵や肝もおいしく食べられます。肝は「海のフォアグラ」と呼ばれるほどおいしく、肝をすりつぶして身と和える「肝和え(共和え)」は絶品です。さらに、ウロコがほとんどないので、鍋料理の「カジカ汁」にしてもウロコを気にせず食べられ、そのほかに唐揚げや煮物にして食べられることも多いです。
ケムシカジカ
ケムシカジカは、体長35cm~40cmほどのカジカです。大きさはトゲカジカよりもやや小さい程度で、体には細いトゲがあり、毛虫のように見た目があまりよくないことからその名がつけられたと言われています。北海道では「当別カジカ(トウベツカジカ)」と呼ばれることもあり、トゲカジカと同様に汁物や鍋料理の具材として人気です。
晩秋~冬にかけての産卵時期は、「真子(まこ)」と呼ばれる卵巣を醤油漬けにした「カジカの子の醤油漬け」として食べられることが多いです。ケムシカジカの卵はいくらよりも小ぶりで、表面の皮に弾力があるのでプチプチ食感を楽しめます。また、やわらかい白身ももちろんおいしいですが、トゲカジカと比べるとやや旨みが薄いので、真子や肝の方が人気とされています。
ギスカジカ
ギスカジカも食用とされるカジカの一種です。見た目はトゲカジカに似ていますが、頭部にトゲがなくて皮弁があります。浅場に生息していることが多く、主に北海道や青森県で水揚げされます。また、トゲカジカに次いで大きいカジカで、汁物や鍋料理、煮付け、塩焼きなどにして食べられることが多いです。
ニジカジカ
ニジカジカは、食用カジカのなかでもっとも市場へ流通しやすい種類です。北海道や青森県のほか、岩手県や宮城県などで水揚げされて関東あたりへ流通します。背ビレが虹のように半円状になっていることから由来しているとされており、北海道では「ベロ」と呼ばれることもあります。汁物や鍋物、唐揚げのほか刺身にしてもおいしいです。
カジカのおいしい食べ方は?おすすめのカジカ料理
カジカは、北海道の冬によく食べられる魚です。見た目から想像できないほどおいしい上、卵や肝、胃袋などあらゆる部位を食べられるので、さまざまなカジカ料理を楽しめます。
おすすめのカジカ料理
- カジカ鍋・カジカ汁
- カジカの煮付け
- カジカの味噌汁
- カジカの唐揚げ
- カジカの子の醤油漬け
- カジカの肝和え(共和え)
- カジカの刺身
- カジカの飯寿司(いずし)
ここからは、それぞれのカジカ料理について詳しく解説します。
カジカ鍋・カジカ汁
カジカ鍋(カジカ汁)は、カジカをぶつ切りにして皮・胃袋・肝・骨がついたまま、野菜などと一緒に味噌仕立てのスープに入れて食べる鍋料理です。カジカの淡白な白身だけでなく、コラーゲンたっぷりな皮や濃厚な味わいの肝も楽しめるのが魅力です。
あまりのおいしさから「鍋こわし」とも呼ばれます。カジカ鍋は北海道の郷土料理でもあり、「石狩鍋」や「三平汁」と並ぶ北海道の冬の代表的な料理と言えます。
カジカの煮付け
カジカは煮付けてもおいしいです。カジカを湯通したあと、生姜やネギなどを入れた醤油ベースの煮汁に入れて作る煮付けは絶品。一度冷ますと味が染み込んでより一層おいしくなります。
カジカの味噌汁
カジカの味噌汁も北海道では定番の家庭料理です。湯通しして臭みを取ったカジカを味噌汁に入れるだけで完成です。長ネギやじゃがいも、にんじんなどお好みの野菜を入れてアレンジもできます。
カジカの唐揚げ
カジカの唐揚げは、サクサクふわふわとした食感が特徴です。市場でカジカの切り身が売っていることが多いので、そのまま下味をつけて片栗粉をまぶして揚げるだけで出来あがりです。ムニエルにしてもおいしく食べられます。
カジカの子の醤油漬け
カジカの子の醤油漬けは、主にケムシカジカの卵を醤油漬けする料理です。カジカの卵は皮に弾力があるのでプチプチとした食感を楽しめます。お酒のおつまみにしたり、白いごはんにそのままかけたりして食べられます。
カジカの肝和え(共和え)
カジカの肝和えは、カジカの肝臓を味噌で味付けしてすりつぶし、身や胃袋などと和える料理です。濃厚な肝と胃袋のコリコリ食感を楽しめます。日本酒や白ごはんとの相性バッチリです。
カジカの刺身
新鮮なカジカであれば刺身で食べることができます。タイなどの白身魚に比べると旨みが少ないので、物足りないと感じるかもしれません。「刺身にして白身魚の淡白な味わいを楽しみたい」という時以外は、汁物や鍋料理にするのがおすすめです。
カジカの飯寿司(いずし)
カジカの飯寿司もおすすめの食べ方です。飯寿司とは魚と野菜を米こうじに漬け、乳酸発酵させた寿司のことで、北海道の郷土料理のひとつです。サケやホッケ、ニシンの飯寿司が一般的ですが、北海道の石狩市厚田村ではカジカを使った飯寿司も食べられています。
カジカが旬の時期はいつ?秋~冬がおいしい
カジカの旬は秋~冬です。12月~2月はカジカの産卵時期でもあり、卵を産むために沖合の深みから沿岸部まで移動してくるので冬はカジカの漁獲量が増えます。
さらに産卵に備えてカジカは栄養を蓄えるので身は引き締まって脂がのり、肝も大きく育って卵もおいしいです。寒い時期は、北海道でカジカが一般的に流通するようになり安く購入できます。
カジカの代表的な栄養素
カジカに含まれる三大栄養素は、一尾(約250g)あたりタンパク質37.5g・脂質12.5g・炭水化物0.5g含まれており、カロリーは約278kcalです。タンパク質が多く、脂質や炭水化物が少ないのでやや低カロリーです。
カジカの代表的な栄養素
- ビタミンB12
- ビタミンD
- ミネラル(カルシウム・マンガン・リンなど)
- コラーゲン
- EPA・DHA
ビタミンB12はタンパク質・脂質・炭水化物の代謝をサポートするほか、血液や赤血球を作るのに大切な栄養素です。成人の場合、1日2.4μgのビタミンB12の摂取が推奨されていますが、カジカには100gあたり約28.2μgのビタミンB12が含まれているので、カジカを少し食べるだけでも必要量を摂取できます。
さらに、カジカの皮にはコラーゲンが豊富に含まれており、肌の弾力やうるおいのキープのほか、傷の治りを早めたり骨密度を高めたりするのに役立ちます。
また、カジカにはEPAやDHAも含まれています。EPAやDHAは人間が体内で生成できない栄養素「必須脂肪酸」です。EPAが血液をサラサラにしてくれるので血栓の予防につながり、DHAは脳と目の発達をサポートすると考えられています。カジカはカロリーが低めで、ビタミンやミネラルなどの栄養素も多く含まれているのでぜひ普段の食事に取り入れましょう。
カジカの釣り方は?
カジカは釣って食べることもできます。釣りが趣味という方であれば、カジカを狙って釣りをするのも選択肢のひとつです。トゲカジカやケムシカジカなど、海のカジカを釣る場合は夜釣りが適しています。釣り用語で「ロックフィッシュ」とも呼ばれるカサゴやハタなどを釣る場合と同じように、堤防から仕掛けを投げ込むとカジカが釣れることがあります。
ただし、旬の時期のカジカ釣りは初心者には不向きです。カジカが旬の産卵期は釣れやすくなりますが、波が強く足場も不安定なことが多いので、釣り初心者や子連れの場合は危険です。また、産卵時期を過ぎれば堤防などから投げ釣りでも釣れるので、釣りに慣れていない方は旬を過ぎたころにカジカを狙うのがいいでしょう。
また、川など淡水でも小さいサイズのカジカを釣ることができます。川に生息するカジカもおいしく食べることができますが、地域や時期によっては禁漁とされるので、事前に確認しておきましょう。
川で釣ったカジカの食べ方・下処理の仕方
川沿いでカジカを釣ってすぐ食べる場合は、串に2~3尾刺して火の近くに置き、じっくり火を通した後に醤油で味付けするとおいしく食べられます。
釣ったばかりのカジカにはヌメリがあり、ヌメリが残っていると臭みにつながるので流水でヌメリをしっかり洗いましょう。胃袋には砂や小石が入っていることも多いので、焼く前に胃袋などの内臓を取り除く下処理をするのがポイントです。
北海道のカジカの見分け方
北海道で食べられるカジカには、トゲカジカやケムシカジカなどの種類があります。川で釣れる種類のカジカは大きくて20cmですが、トゲカジカやケムシカジカは大きいもので70cmまでに成長するので、体長で見分けることができます。トゲカジカとケムシカジカは見た目が似ていますが、ケムシカジカには頭部や口元にコブや突起物があり、体全体が小さなイボに覆われていることが特徴です。また、鮮度のいいカジカには次のような特徴があります。
鮮度のいいカジカの見分け方
- 皮表面にツヤがある
- 身に弾力がある
- 切り口がきれい(切り身の場合)
北海道で売られているカジカは切り身がほとんどですが、身の弾力や切り口などで鮮度がいいものを見分けることができます。肝も市場で購入する場合は、あざやかなオレンジ色をしているかどうかが、鮮度のいい肝を見分けるポイントです。
北海道のカジカをお試しください
北海道では秋から冬にかけてスーパーにカジカが必ず並ぶほど人気の魚です。海に生息する種類(トゲカジカやケムシカジカ)は、主に北海道近海で水揚げされ全国へ流通するケースは多くありません。カジカはさまざまな料理で楽しまれており、味噌仕立てのスープにカジカや野菜を入れた鍋料理「鍋こわし」は、北海道の絶品郷土料理としても知られます。
さらに、卵を醤油漬けにした「カジカの子の醤油漬け」や肝をすりつぶして身と和える「肝和え」も地元では人気の料理です。ぜひカジカを食べに北海道へ足を運んでみてください。
まとめ
カジカは見た目がゴツゴツとしていますが、食べるとおいしい魚として知られます。さまざまな種類がありますが、なかでも北海道で食べられるカジカ「鍋こわし」は絶品です。
12月~2月が旬なので、ぜひ秋・冬は北海道のカジカを一度試してみてください。