オショロコマは北海道だけに生息する絶滅危惧種の魚! 特徴や生息地、味などを詳しく紹介

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オショロコマって、みなさん聞いたことありますか?

これ、実は魚の名前なんです。日本では北海道のみに生息するという渓流魚で、イワナの仲間です。オショロコマという名前はアイヌ語の「オソル・コ・オマ」が語源となっています。「尾で床を掘る魚」という意味で、産卵の時の姿が表現されています。北海道以外では見られないこの魚はどんな魚なのか、食べて美味しいのか、いろいろ調べてみました!

    この記事でわかること

  • オショロコマは冷水域を好むイワナの仲間
  • 美しい朱色の点が特徴!
  • 然別湖周辺のオショロコマは天然記念物
  • 然別湖以外では禁漁期などもなく自由に釣れる
  • 塩焼きや唐揚げがおすすめ!
  • 北海道ご当地ラーメン
  • スープカレー特集

オショロコマとは?

オショロコマとは?

渓流の魚といえば、ニジマスやイワナ、ヤマメなどが有名ですが、北海道ではオショロコマも人気の渓流魚です。

オショロコマは別名カラフトイワナともいわれ、寒冷気候を好むサケ目サケ科イワナ属の魚です。日本では北海道のみ、世界的には朝鮮半島北部やサハリン、ロシア東部、北アメリカ、カナダのノースウエスト準州などに生息しています。

名前 オショロコマ(漢字なし)
別名:カラフトイワナ
分類 サケ目・サケ科・イワナ属
生息域 北極海から北部太平洋沿岸
山岳地帯~湿原の冷水域。降海型と河川残留型がいる
生態 産卵期10月~11月下旬、孵化は1~2月
稚魚~幼魚は流れの緩い浅瀬で過ごし、成長するに従って深い場所へ移動する
アメマスの混在する河川では、それよりも上流に生息して住み分けるが、交雑種が見られることも
特徴 体長10~30cm程度。イワナの近縁種であり、体色や白い斑点なども似ているが、側面のパーマークと朱点が特徴。繁殖期には腹側が赤く染まる
釣期 春~秋。オショロコマは漁業権が設定されている河川・湖沼はほとんどないが、生息域が重なるヤマメの禁漁期に注意
亜種のミヤベイワナ(然別湖)は、期間と人数を限って毎年解禁している
エサ釣り、ルアー釣り、フライフィッシングなど
保護状況 環境省レッドリスト・絶滅危惧Ⅱ類

オショロコマには河川残留型と降海型がいる

サケ科の渓流魚のいくつかは河川残留型(陸封型とも言います)と降海型に分かれます。産まれた後に川から海へ下り、海で成長して再び戻ってくるのが降海型で、海へ下らずにそのまま残るのが河川残留型です。海へ下ると名前が変わることが多いため、渓流魚として知られている名前は河川残留型のものです。

たとえば、ヤマメ(北海道・東北の一部ではヤマベ)は渓流ではヤマメと呼ばれますが、海へ下って成長するとサクラマスになります。ヤマメの亜種であるアマゴの降海型はサツキマスです。

オショロコマも河川残留型と降海型があり、渓流に残っているのがオショロコマ、海へ下るとドリーバーデンとも呼ばれます。

ただ、ドリーバーデンという呼び名はオショロコマの英名なのですが、近年ではドリーバーデンとオショロコマでは遺伝的に違いがあるのではという説もあり、また、生息域が重なるアメマスやイワナなどとの交雑種も多く見られ、なかなか事情は複雑のようです。

北海道に生息するオショロコマは河川残留型

ちなみに、北海道に生息するオショロコマのほとんどは河川残留型ですが、知床半島などでは上流から河口域までが近いため、降海型が出ることがあります

オショロコマの大きさ・見た目

北海道に生息する魚のため、一部の道民や釣り好きには知られているオショロコマですが、多くの人はその大きさや見た目が気になるところ。ここでは、オショロコマの大きさと見た目、特徴について紹介します。

オショロコマの大きさ・見た目

オショロコマの大きさ・見た目

オショロコマの体長は10~30cm程度です。降海型がやや大きめになりますが、渓流で釣れるオショロコマは、1年目で10cm前後、2年目で15~20cm程度と、やや小さめの魚です。

オショロコマの見た目と特徴

見た目はイワナに似た、黒褐色~緑褐色の体で、腹側は黄白色です。側面にパーマークと呼ばれる模様が並んでいるのが特徴です。イワナにもパーマークは見られますが、イワナよりもはっきりしています。

パーマークの美しい渓流魚の代表格がヤマメですが、ヤマメは背中から側面にかけて黒点があるのに比べ、イワナとオショロコマは白点があります。それに加えて、オショロコマにはパーマークの上に美しい朱色の点が見られるのが特徴です。

まとめると、イワナは淡いパーマークと白点、ヤマメは濃いパーマークと黒点、オショロコマはパーマークに朱点と白点です。

オショロコマの体の側面にちりばめられた白点と鮮やかな朱点の美しさは、宝石のようと例える人も居ます。

パーマークとは?魚類の側面にある模様のこと

パーマークとは?魚類の側面にある模様のこと

サケ科の魚類のほとんどに見られるのが、体の側面にある楕円型の模様です。この模様の付き方は個体差もあるのですが、魚の種類ごとにそれぞれ特徴があるので、見分けるための目安のひとつとなっています。パー(parr)は「サケ科の幼魚」という意味で、稚魚から幼魚期にかけてはほぼ全てのサケ科魚類が持っています(河川で生活する期間が極端に短いカラフトマスを除く)。

捕食者が上から見た時に、川底の砂利と自然に溶け込むカモフラージュ効果があるというのが一般的な説です。そのため、狙われやすい幼魚期までははっきりとマークが見られ、成長するに従って薄くなっていきます。

海に下るタイプのサケ科魚類は、成長するとパーマークが無くなる代わりに魚体が銀色を帯びます。河川残留型はパーマークが維持されますが、これも大きくなると薄くなります。

オショロコマの旬や産卵時期は?

オショロコマの産卵時期は10~11月です。この時期になると雄のオショロコマは体色がやや黒ずみます。産卵で痩せてしまう前が美味しく楽しめる時期なので、春~秋が旬と言えます。山間部、特に川の上流域で釣ることが多いため、釣りに出かけて気持ちの良い季節がいいですね。

オショロコマが北海道だけに生息している理由

オショロコマは北極海から北部太平洋沿岸に生息する魚です。寒冷気候を好むため、北海道が生息域の南限にあたります。大雪山系、日高山系の渓流・源流エリアに多く見られ、知床半島にも生息します。

北海道内での南限は太平洋側で十勝川水系(帯広市付近)、日本海側で千走川水系(今金町~せたな町付近)とされています。北海道内でも、函館付近になると暖かすぎて天然のオショロコマは生息できません。

オショロコマの北海道の生息エリア

オショロコマの北海道の生息エリア

代表的な生息エリアは忠類川(根室管内標津町)、羅臼川(根室管内羅臼町)、十勝川(十勝管内新得町)、石狩川(上川管内上川町)、真狩川(後志管内真狩村)などで、イワナよりも低水温を好むため、源流エリアに近い上流域に生息します。釣りのポイントを探してどんどん上流に向かいがちですが、北海道の川の上流域はほとんどがヒグマの生息域なので注意が必要です。

また、道東の清里町にある神の子池と、その付近の川にもオショロコマは生息しており、冷たく澄んだ湧き水の中で、美しい魚体が優雅に泳いでいる様を見られます(環境保全のため、神の子池での潜水や水中撮影、池とその周辺の川での釣りは禁止されています)。

然別湖に生息しているオショロコマは特別?

然別湖に生息しているオショロコマは特別?

鹿追町にある然別湖にもオショロコマが生息しますが、こちらはオショロコマの亜種として、ミヤベイワナと呼ばれます。オショロコマの特徴でもあるパーマークは河川残留型の特徴なので、湖に下って成長するタイプのミヤベイワナは、成長にしたがってパーマークが消えます。白点と朱点は残るので、よりシンプルな美しさが際立ちますね。

こちらは他の水系に生息するオショロコマとは異なり、湖でプランクトンを食べるために「えらとげ」の数が多くなっているのが特徴です。ミヤベイワナは、然別湖を海に見たてて河川から下り、湖で成長してからまた河川を遡上して産卵をする、珍しい生態です。

これは、遥か1万5千年前に大雪山系の火山が噴火して然別湖が生まれた時に、川と海を往復していたオショロコマが湖に陸封されたことにより、湖沼内で独自の進化を遂げたものとされています。河川残留型のオショロコマよりもやや大きく、成魚の体長は25~30cm前後。過去には60cmを越えるものも生息していたとか。

オショロコマが幻の魚と言われる理由

オショロコマは生息域の近い近縁種・アメマスやイワナ、外来種であるカワマスとの交雑が起こっていることが確認されています。また、環境の変化を受けやすいため、護岸工事や河畔林の伐採などの開発があれば生息域が減ってしまう可能性も。然別湖の固有亜種として天然記念物に指定されているミヤベイワナ以外でも、天然のオショロコマは環境省のレッドリスト・絶滅危惧Ⅱ類に指定されており絶滅の危機が増加している状態です。

外来種や近縁種との交雑、環境問題だけではなく、人間による乱獲もその原因のひとつです。北海道で渓流釣りを楽しむ方にとっては、オショロコマは珍しい存在ではなく、釣りとしての難度も低いため気軽に釣ってしまいがちです。現在、ミヤベイワナ以外は禁漁期間など指定されてはいませんが、渓流釣りで楽しむ場合も獲りすぎにはくれぐれも注意しましょう。

オショロコマを釣るには?地域によって制限があるので気をつけよう

オショロコマを釣るには?地域によって制限があるので気をつけよう

渓流釣りで楽しむ場合、オショロコマに禁漁期間はありません。ただし、生息域が重なるヤマメが4/1~5/31または5/1~6/30が禁漁期間(地域による)となっています。オショロコマ狙いでもヤマメがかかってしまいますが、これをキャッチ&リリースをしても違法行為とされてしまうので、この時期は外して夏~秋で楽しむのがよさそうです。

ヤマメの禁漁期に入る前でも大丈夫ですが、その時期はまだ山間部には雪が残っているため、装備を考えてもあまり気軽には楽しめそうにありません。

オショロコマに限らず、一部の河川では釣り自体を禁止していることもあるので、北海道の公式HP(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/ggs/turi-r-m/rule-manner.html)や釣り具店などで確認してみるのがおすすめです。

然別湖のミヤベイワナは1年に2度、キャッチ&リリースのみ

然別湖のミヤベイワナは1年に2度、キャッチ&リリースのみ

「然別湖のオショロコマ生息地」として、湖の北岸水域とそこに流入するヤンベツ川は天然保護区域に指定され、ミヤベイワナも然別湖の固有亜種として北海道指定天然記念物になっているので自由に釣りはできません。ヤンベツ川は通年で禁漁区域となっていますが、然別湖では、1年に2度、期間と人数を限定し、キャッチ&リリースでミヤベイワナを釣ることができます(6月上旬~7月上旬、9月下旬~10月上旬※各日50名)。

とかち鹿追ジオパーク ビジターセンターでは水槽でミヤベイワナの生体展示がされており、然別湖ネイチャーセンターでは、ヤンベツ川を箱メガネで覗いて観察するプログラムも実施されています。そちらで生きたミヤベイワナを観察するのもいいでしょう。また、周辺の温泉ホテルでは養殖されたものが夕食で提供されているので、味も確かめられますよ。

オショロコマってどんな味?どうやって食べるの?

ここまでオショロコマの生態や幻の魚と呼ばれる理由を紹介してきましたが、実際に食べてみるとどんな味がするのでしょうか。また、栄養面ではどのような効果が期待できるのか、どのような調理法が適しているのかをここでは詳しく紹介します。

オショロコマの栄養成分

オショロコマはサケ科に属する魚で、渓流魚なので脂肪分が少なく、味はイワナに似ています。低カロリーで、貧血予防に効果的なビタミンB12、カルシウムの吸収を高めたり、免疫強化も期待できるビタミンDが豊富です。

オショロコマのおすすめの食べ方は塩焼き

オショロコマのおすすめの食べ方は塩焼き

食べ方のおすすめは塩焼き。川魚は身に水分が多いため、フライパンで焼いたり鉄板焼きにしたりすると、身が柔らかくなりすぎてしまうこともあります。理想は、塩を振ったあと串に刺して直火で焼くことですが、これはアウトドア向きの食べ方ですね。

家庭でやるなら、えらと内臓をとったお腹の中に少し塩を振って一晩冷蔵庫で寝かせると、適度に水分がとんで身が引き締まります。焼く直前に外側にも少し塩を振って、グリルで両面を焼きましょう。食べる際には外の塩を少し剥がしながら食べるとちょうど良い塩加減になります。オショロコマは魚体が小さめなので、しっかり火を通せば骨まで食べられます。

小ぶりのオショロコマは揚げるのがおすすめ

15cm程度の小さなものであれば、天ぷらや唐揚げが向いています。こちらも調理前に塩を振って少し休ませ、適度に身が締まったものをまるごと揚げていきましょう。焦げないようにしつつ、芯まで火を通せば骨ごと食べられます。

オショロコマが刺し身で食べられるって本当?

三枚おろしができるほど大きな魚体であれば、刺身で食べるのもおすすめです。川魚はまずいと言われることもありますが、川魚に特有の香りが野趣溢れるものとして、それこそが美味しいと好む方も。味そのものは淡泊なので、燻製やハーブ焼きも美味しいですよ。

オショロコマは買える?生のオショロコマは販売していない

生のオショロコマを手に入れるには天然のものを釣るか、管理釣り場で養殖されたものを釣って食べることになります。

生のオショロコマが販売されることはほとんどないため、値段や相場といったものはありませんが、然別湖の湖畔に位置するホテルでは夕食膳の一部としてオショロコマの塩焼きを提供しています。また、鹿追町内にもいくつかオショロコマ料理を出しているお店があるので探してみてください!

まとめ

川魚と言えば、ニジマス、イワナ、ヤマメが有名ですが、北海道だけに生息するオショロコマも知っておいていただきたい存在です。アイヌ語が語源なので、日本語や英語とは違った名前の響きも面白いですね。釣りをする方であれば、一度は北海道でのオショロコマ釣りに憧れるのではないでしょうか。ただし、天然のものを釣りに行く際には、ヒグマ対策もお忘れなく!

writerprof_minagawa
皆川 今日子
ライター
札幌在住。旅行誌を中心に、観光・グルメ系メディアにて執筆中。趣味は料理とゲーム。長年、掃除を苦手としていることで悩んでいたが、「掃除に必要な才能を生まれ持たなかった」と割り切ることで気が楽になった。