意外と知らないバターとマーガリンの違い! それぞれの成分や特徴を解説
朝食のトーストに欠かせないのが、バターとマーガリン。パンと相性が良く、クリーミーでおいしいスプレッドですが、2つの違いをご存知でしょうか。味の違いは分かりますが、何からできているか、成分はと聞かれると意識したことがないという人が多いはず。
この記事では、今さら聞けないバターとマーガリンの違いや歴史、健康への影響や料理での使い分けについて解説します。
バターとマーガリンの違いとは?
バターとマーガリンは、見た目こそ似ているものの、原材料、製造方法、味などが大きく違います。
大まかに違いを挙げるなら、バターは動物性油脂の塊、マーガリンは植物性油脂の塊と言えますが、他にもさまざまな違いがあります。それぞれの違いについて詳しくみていきましょう。
原料の違い
バター | マーガリン | |
---|---|---|
原料 | 牛乳 | 食用油、乳製品、食塩、ビタミンA,乳化剤、着色料など |
バターの原料は、乳脂肪分です。有塩バターの場合は食塩などを添加することもありますが、基本的には乳脂肪分さえあれば製造できます。
一方、マーガリンにはコーン油、大豆油、パーム油、なたね油、綿実油などのさまざまな植物性油が混合して使われており、食塩やビタミンA、乳化剤などを加えて固形化します。その他、バターの風味を持たせるために乳成分を加えたり、バターに色味を似せるために着色料を用いるものもあります。
製造方法の違い
バター | マーガリン | |
---|---|---|
製造方法 | 攪拌 | 混合乳化 |
バターは乳脂肪分を攪拌して製造します。極端に言えば、乳脂肪分を容器に入れて振っているだけでもバターは製造できます。ただし、100gのバターを作るために必要な原料乳は4.8Lと言われており、生産には大量の乳脂肪分が必要です。
一方、マーガリンは植物性油を混合乳化させることで固形化させるのが特徴です。マーガリンが誕生したのは、1869年のフランス。戦争中にバターが欠乏したため、その代用品として化学者が発明したのが始まりでした。最初は牛乳と牛脂を混ぜて固め、バターに似せて作ったそうです。
栄養成分の違い
バター(無塩) | マーガリン(無塩) | |
---|---|---|
カロリー | 720kcal | 715kcal |
カルシウム | 14mg | 14mg |
カリウム | 22mg | 27mg |
レチノール(ビタミンA) | 520㎍ | 25㎍ |
βカロテン | 190㎍ | 290㎍ |
ビタミンD | 0.7mg | 11mg |
ビタミンK | 24㎍ | 53㎍ |
※100gあたり
参照:栄養成分データベース
バターは牛乳が原料なので、乳製品に多く含まれるビタミンAが豊富です。ビタミンAには肌や粘膜を健康に保ち、免疫力を高める効果があります。また、乳脂肪は油脂の中で最も吸収率が高く、栄養素を効率よく摂取できます。
マーガリンは、植物性油脂に多く含まれる必須脂肪酸(リノール酸、α‐リノレン酸など)という成分が豊富です。必須脂肪酸とは体内で作り出せない栄養素で、食物で摂取することが必要とされています。また、原料の植物によってビタミンEやビタミンKが豊富に含まれているので、抗酸化作用による老化防止、骨を丈夫に保つ効果があると言われています。
味の違い
バター | マーガリン | |
---|---|---|
味 | コクがある、濃厚な風味 | さっぱりしている |
バターは乳脂肪分を原料としているため、コク深く濃厚な風味が特徴です。バター特有の甘みも感じやすく、スイーツ作りなどには欠かせない材料と言えるでしょう。その他、料理のコクを出す隠し味にも使われることがあります。
マーガリンは、ほとんど味のない植物性油脂を原料としているため、固形化してもさっぱりと軽い味わいです。バターのようなコクや風味はありませんが、その分素材の味わいを活かすことができます。また、近年は敢えて風味や味わいを感じられるように製造段階で味付けがされている製品もあり、バター風味のマーガリンなども販売されています。
バターとマーガリンの歴史
バターの歴史は古く、紀元前5世紀頃のメソポタミア文明の時代にはすでに存在していたという説もあります。バターは牛乳を入れた容器が揺れるだけでも出来ることがあるため、牛乳を飲むようになってから発見されるまで、そう長い時間がかからなかったのではないでしょうか。
バターは当初、保存性が良くないことから食用ではなく、髪に塗る薬や化粧品、潤滑油などの用途で使用されていたと考えられています。食用としてヨーロッパに定着し始めたのは15世紀頃と考えられており、日本に持ち込まれるようになったのは江戸時代という説が有力です。
一方、マーガリンが製造されたのは19世紀末頃と言われています。戦争の影響でバターの原料が入手しにくくなり、バターよりも安価でなおかつ代用品となる食べ物を製造するために開発されました。
歴史上、バターはマーガリンに比べると圧倒的に長く人類に食べられてきたことが分かりますよね。
マーガリンは体に悪いって本当?
バターが開発された当初、植物性油脂を固形化するために水素を添加する製造方法が主流でした。しかし、水素添加物は心臓病のリスクを高めるトランス脂肪酸を生成しやすく、水素添加物が化合されたマーガリンを過剰摂取すると病気のリスクが上昇するとさまざまなメディアでも報じられました。
しかし、2018年にアメリカの食品医薬品局がマーガリンを含む食品への水素添加油脂の使用を禁止したことで、マーガリンの製造手法も大きく変化しています。
マーガリンの開発当時、バターに比べて水素添加物が多くトランス脂肪酸の生成リスクが高かったのは事実ですが、現在は違います。トランス脂肪酸の量は、バターは100gあたり約2gに対し、現在のマーガリンは100gあたり約1gとバターより少ないものが多く「マーガリンは体に悪い」という根拠はないと考えられています。
バターとマーガリンどちらが健康にいいの?
バターとマーガリン、どちらかを選ぶなら「健康によい方を選びたい」という人も多いでしょう。
バター | マーガリン | |
---|---|---|
トランス脂肪酸量 | 10gあたり約0.3g | 10gあたり約0.1g |
トランス脂肪酸は、心血管系の病気のリスクを上昇させる恐れがあるため、総エネルギー比1%未満に抑えるのが望ましいと言われています。日本人の1日の摂取エネルギー量の目安から考えると、トランス脂肪酸の摂取は約2g以下に抑えるのが望ましいと言われ、トランス脂肪酸自体は食品から摂取する必要がないとも考えられています。
単純にトランス脂肪酸の配合量だけで考えると、マーガリンの方が健康によいと考えられるでしょう。
しかし、バターには特有のコクや風味の良さの他、ビタミンAが豊富に含まれており、マーガリンはバターに比べるとβカロテンやビタミンKが豊富に含まれています。
それぞれに良い部分も多く、トランス脂肪酸の量についても過剰に食べ過ぎなければ重大な問題になる可能性は低いでしょう。マーガリンの方がトランス脂肪酸が少ないからといって、食べ過ぎてしまっては意味がありません。
適量であれば、バター、マーガリンどちらでも健康的な食生活を送ることは可能です。
バターとマーガリンを使い分けるポイント
栄養豊富なバターとマーガリンは、使い過ぎに気を付けつつ、おいしく料理に取り入れたいですよね。ここでは、バターとマーガリンの味の特徴や使い分けをご紹介します。
バターは濃厚なコク、風味を生かそう
バターがもつ豊かな風味とコクは、洋食やお菓子作りには欠かせません。普段の料理でも、バター醤油にして炒めるだけで簡単にボリュームたっぷりのおかずが作れます。
また最近では、バターを作る際に乳酸菌を加えて発酵させる発酵バターも人気です。発酵させることでさらに深いコクと独特の酸味が味わえるので、バターの風味を生かしたお菓子作りに最適です。
マーガリンはあっさり仕上げたいときに
マーガリンは、バターに比べてあっさりして軽い味わいが特徴で、合わせる食材の味を邪魔せず引き立てることができます。バターを使う料理でマーガリンを代用することもできます。バターのようなコクや風味は出ませんが、軽い食感に仕上げたいときにおすすめです。
マーガリンはバターの代用品として使える?
料理などをしているとレシピに「バター」と記載されていることがありますよね。元々、マーガリンはバターの代用品として開発されましたが、こういったシーンではバターの代用品として使用することができるのでしょうか?
基本的に、有塩バターの代用品として使うのであればマーガリンを代用してもよいケースが多いでしょう。バターに比べれば風味やコクは劣りますが、その点が問題ないのであればマーガリンを代用して使うことが可能です。
一方、無塩バターと記載がある場合、マーガリンは代用品として不向きです。一般的なマーガリンの多くは食塩が添加されているため、無塩バターを必要とするレシピには不適切なケースが多いでしょう。
特に、スポンジケーキのように小麦粉をフワッと膨らませる焼き菓子を作りたい時には、食塩を加えてしまうと膨らみにくくなってしまいます。
まとめ
見た目がそっくりなマーガリンとバターは、原料の違いで味や栄養に違いがあります。どちらも栄養を適度に備え、料理をおいしく仕上げるために活躍する食材です。ただし、摂りすぎは肥満や生活習慣病の原因になるので注意しましょう。
濃厚なバターとあっさり味のマーガリン、バランスを意識しておいしく上手に使い分けましょう。