北海道だけに生息するエゾシカを知る。その特徴と被害対策を調べてみた!

北海道だけに生息するエゾシカを知る。その特徴と被害対策を調べてみた!の画像

北海道の道北や道東をドライブしていると、エゾシカに遭遇! というのはそう珍しくありません。一般道はもちろん、高速道路にも「鹿とび出し注意」の標識がたくさん設置しれているくらいです。

一時期、絶滅危惧種寸前であったエゾシカ。近年はエゾシカの繁殖により、数が急上昇しているとも言われています。実際、車とエゾシカとの交通事故の件数は5年連続で右肩上がりなのだそう。本記事では、北海道ならではの野生動物であるエゾシカへの理解を深めるため、生体や特徴について解説します。

参考:令和2年(2020年)エゾシカが関係する交通事故発生状況

  • 北海道ご当地ラーメン
  • スープカレー特集

​​北海道のみに生息するエゾシカとは?

北海道のみに生息するエゾシカとは?

本州に住んでいる人にとってエゾシカは、馴染みのない動物のはず。そもそも、エゾシカとはどんな動物なのでしょうか?

この項目では、エゾシカの基本的な情報と歴史について解説しています。

ニホンジカの一種

エゾシカはシカ科シカ属に分類される、ニホンジカの一種。かつては、雪の少ない釧路・根室地方や十勝地方などの一部にしか生息していませんでした。

しかし、1900年代以降は雪の多い石狩地方や、空知地方にも温暖化のため分布拡大が進んでいきました。現在では北海道全域に分布しており、北海道では馴染みのある動物です。

エゾシカの歴史

明治時代の北海道は未開の地であり、原始の森に覆われていました。蝦夷を探索し「北海道」と名付けた松本武四郎は、​​東蝦夷日誌のなかで一面に広がるエゾシカの大群を見て驚愕したと記しています。

北海道開拓以降は、大量のエゾシカの狩猟により、5年間で57万頭以上ものエゾシカが捕獲されたそうです。この大量狩猟の目的は、多くのシカ肉を海外に輸出し、資金を捻出するためでした。

また、森林伐採が追い討ちをかけ、エゾシカは一時期絶滅寸前の危機に陥りました。

その後は、禁猟政策を取り進めながら徐々に数を増やし、2000年代には約65万頭生息していると推測されています。禁猟政策のおかげで、絶滅を逃れることができました。

​​エゾシカの特徴や生態

エゾシカの特徴や生態

この項目では、エゾシカの特徴や生態について解説していきます。

低地から山地の森林に生息

エゾシカは、海抜の低い土地や木々の多い山林に生息しています。草原や牧草地を好み、木の芽やどんぐりなどが主食です。また、同じ場所で生活する個体と、夏と冬に規則的に移動しながら生活する個体に分かれることも知られています。100キロ以上移動する個体もおり、冬になると雪の少ない地域で越冬します。

200kgを超える個体もいる

エゾシカは、体長90㎝から最大で190㎝にまで成長します。体重はメスで25kgから100kg、オスが50kgから最大で200kgを超える個体もいます。本州に生息するニホンジカよりも、ひと回り大きい個体が多いのが特徴。

また、エゾジカは北海道の厳しい寒さを生き抜くために、秋に脂肪を蓄える習性があります。そのため、エゾシカは1日に2kgから5kgの植物を食べます。

夏と冬では毛色が全く違う

エゾシカは夏と冬の年2回、換毛期が訪れます。夏は「鹿の子模様」と呼ばれる茶色い毛色に白い斑点模様です。鹿の子模様と聞くと子鹿だけに出る模様だと思われがちですが、大人にもこの模様は見られます。

一方で冬毛は、斑点模様のない灰色です。エゾシカは、夏と冬で毛色が全く異なるので、はじめて見る方は別の動物だと勘違いしてしまうことも多いんだとか。

オスのツノは毎年生え変わる

オスのツノは毎年生え変わる

エゾシカのツノは、オス特有の特徴であり、メスにはありません。オスのツノは、毎年4月から5月にかけて根本部分から自然に脱落します。

その後、袋角(ふくろづの)と呼ばれる柔らかい袋で覆われ、中に血管が形成されます。そこから9月頃にかけて、根元から角化していき立派なツノへと成長します。

エゾシカによる被害

エゾシカによる被害

エゾシカは、2000年代に入ってから急増化傾向にあり、人間社会にさまざまな影響を及ぼしています。続いて、エゾシカによる被害を見ていきましょう。

農作物や希少植物への被害

エゾシカの主要な被害として挙げられるのが、農作物や林業への問題です。エゾシカの食害による被害の約半数が、牧草被害。牛や豚の餌となる牧草がエゾシカによって食べられてしまうと、乳量減少や餌代が余計にかかってしまいます。

また、希少植物の被害例も多く報告されており、生態系への影響も懸念されています。エゾシカによる農林業の被害額は年々増え、2011年に64億円を超える大きな被害額が問題になっています。

交通・列車事故

エゾシカによる被害で次に問題とされているのが、交通・列車事故です。エゾシカによる列車事故は、年間2,800件以上も起きています。交通事故によるエゾシカ被害は年間2,000件以上起きており、令和2年度では過去最高の3,500件以上にも登りました。

また、エゾシカが原因の交通事故のうち、約42%が10月から11月にかけて発生しています。この時期の多い理由としては、越冬前のエゾシカの移動が原因だと考えられています。時間帯では約70%以上が16時から24時にかけてが一番多く、予防対策としては、以下の4つが挙げられています。

  • 秋〜初冬の運転に注意する
  • 早朝・夜間の運転に注意する
  • ライトの反射に注意する
  • 一頭だけだと思わない

また、早朝や夜間の暗さの中でもエゾシカの目は反射して光ります。暗闇で光るものがあったら注意を。

感染症

エゾシカに限らず野生の動物は、人間に感染する病原菌を持っている可能性があります。そのため、エゾシカに遭遇しても決して近づいたり触ったりしないようにしてください。

また、エゾシカの出産時期である6月から7月にかけては、弱って動けない子ジカを見ることもあります。そのような場合は、必ず親ジカが近くで見守っています。人間がむやみに近づくと攻撃される危険性があるので、注意しましょう。

エゾシカ被害の対策

エゾシカ被害の対策

エゾシカと人間の共生のために、さまざまな対策が行われています。この項目では、具体的なエゾシカ対策を見ていきましょう。

狩猟

北海道森林管理局では平成26年度より、エゾシカ森林被害対策の一環で捕獲事業を実施しています。捕獲したエゾシカにGPSを装着して、どのような範囲を移動しているかを把握し、生態系や狩猟の効率化にも役立てています。

侵入防止柵

エゾシカの農作物への対策として講じられたのが、侵入防止策です。現在では、さまざまな畑にエゾシカ対策として柵が設置されています。

しかし、エゾシカは跳躍力に優れており、2mの柵であれば軽々と乗り越えられます。そのため高い柵を設ける必要があり、費用面でも問題となっています。

オオカミの投入も検討されていた!?

エゾシカが増えた原因の一つとして、オオカミの絶滅が考えられています。そのため、海外からオオカミを輸入し再び北海道の自然に放つことも検討されていました。

しかし、北海道の自然環境にオオカミが適応できるのかの問題や、生態系への悪影響を考え、未だ実現には至っていません。

エゾシカは高級な「森の幸」

画像

近年では、狩猟したエゾシカを食用として活用する動きが高まっています。鹿肉は、高タンパク・低カロリーであり鉄分も多く含まれているので、栄養素的には非常に優れた食材です。

また、ジビエとして古くからフランス料理の食材としてもシカ肉は親しまれてきました。昨今の北海道では、給食に鹿肉が提供されるなどの活動が行われています。エゾシカは、害獣ではなく高級な「森の幸」へと変貌しつつあるといえるでしょう。

【エゾの杜】十勝エゾ鹿5種 焼肉セット
Re size
【エゾの杜】十勝エゾ鹿5種 焼肉セット
5,000(税込)

5種類の部位を一度に楽しめるアソート。焼肉用にスライスされているので、使いやすく食べやすいのが特徴です。熟成後に急速冷凍しているため、柔らかく新鮮な状態でお楽しみいただけます。

まとめ

ここまで、エゾシカの生態や特徴、北海道での被害について紹介しました。車での北海道旅行を検討している方は、エゾシカによる交通事故にも注意しましょう。

また、エゾシカは北海道のジビエ料理の代表格。健康的でおいしい食材なので、積極的に食することで生態バランスの維持にも繋がります。北海道を訪れた際には、そういった点も意識してみるとより良い旅になるかもしれません。

PREZO編集部
PREZO編集部
美味しいものに目がない。食べ歩きやお取り寄せ大好きなPREZOのスタッフが、地域の魅力や商品にまつわるストーリー、北海道の豆知識など、とっておきの情報を発信!