利尻昆布とは?京都の料理人に愛される秘密と人気レシピも紹介!
和食を作るときにかかせない食材と言えば、昆布。出汁をとるのはもちろん、煮物やおつまみにもなる万能食材です。中でも利尻昆布といえば、昔から料理人たちに愛用される高級品として知られています。
でも、日高昆布や羅臼昆布などいろんな昆布がある中で、なぜ利尻昆布は多くの料理人に選ばれているのでしょうか? 利尻昆布とその他の昆布の違い、利尻昆布が昔から料理人に愛用されている理由について調べてみました。
利尻昆布とは
北海道の昆布の漁獲量は年間4万トン以上で、全国第1位。実に9割以上の昆布が北海道で生産されています。そしてひと言で昆布と言っても、利尻昆布に日高昆布、羅臼昆布など種類は様々です。
まずは、利尻昆布の特徴や水揚げされる地域、漁法についてご紹介します。
地域ごとに異なる昆布の特徴
北海道の昆布は、その生息している海域によって色や形などの特徴が違います。
例えば日高昆布(三石昆布)は、日高地方から十勝地方の沿岸が主な産地で、黒みがかった濃い緑色をしています。身が肉厚ですがやわらかく、食用、出汁用のどちらにも適しているのが特徴です。
羅臼昆布は知床半島の羅臼町沿岸にのみ生息する昆布で、身は20cm~30cmと幅広く、黒色または赤褐色の見た目が特徴です。非常に濃厚な味わいの出汁が出ることから「出汁の王様」と呼ばれることも。
そして、利尻昆布は主に道北の沿岸に生息していて、黒褐色の見た目と他の昆布に比べて硬い身が特徴です。主に出汁昆布として使われることが多く、その透き通った上品な出汁は古くから京料理に好んで使われています。
北海道の海には、この他に10種類近い昆布が生息しています。北海道はまさに昆布王国と言えるでしょう。
利尻昆布が採れるのは、道北の海
利尻昆布の名前は、北海道の北方の島・利尻島に由来しています。利尻昆布が採れるのは、利尻島と礼文島(れぶんとう)、そして道北地域(稚内、留萌、網走)沿岸です。
島で採れる昆布は「島物」、それ以外の地域で採れる昆布は「地物」と呼ばれているようです。一般に、島物の方がより高級とされています。特に礼文島でとれる昆布は激しい波に揉まれて育つため品質が高く、漁獲量も希少であるため別格なのだそう。
昆布漁が行われるのは、おもに7月前後。この頃は島のいたるところで利尻昆布の天日干しが行われており、昆布の香りが島中に広がります。
天然ものと養殖の違い
利尻昆布には、天然ものと養殖ものがあります。天然ものは、名前の通り天然で海底に生えている昆布を収穫したものです。天然なので大きさや色にムラが出ますが、利尻昆布本来の身の硬さと粘り気があります。一般的に、高級品として扱われている利尻昆布です。
養殖ものは、海中に張ったロープに昆布を根付かせて育て、収穫します。天然ものに比べて長さや厚みを均質に育てることができるのが特徴。身も比較的柔らかいので出汁が出やすく、一般のご家庭でも調理しやすいという利点もあります。
料理人に愛される利尻昆布
生息地や漁法によって特徴が大きく変わる北海道の昆布。その中でも利尻昆布は、特に京都の料理人に昔から愛用されています。続いて、なぜ京都の料理人に選ばれるのか? を見ていきましょう。
利尻昆布は、素材の味を引き出す名脇役
利尻昆布からとれる出汁は、透明で澄んでおり、クセのない上品な香りが特徴。味は旨味が強く、やや塩みと甘みが感じられます。出汁自体の主張が強くないため、漬物やお吸い物のような素材を引き立たせる料理に適しています。
他の昆布、例えば羅臼昆布はとても濃厚な出汁がとれるので鍋物などに適しています。しかし、利尻昆布と同じように使うと出汁の味が強すぎることがあります。このため、利尻昆布は素材の味と風味を生かす京都の懐石料理などで特に重宝されてきたと言えます。
京料理に欠かせない利尻昆布
京都では平安時代から昆布が宮廷で使われていたそうで、京料理と昆布の歴史は実に1000年以上にもなります。
現在も、買ってきた昆布をすぐに使わず、ワインのようにさらに1年寝かせる料理人もいるのだそうです。こうすることで塩みを抜き、逆に甘みを引き出す効果があるのだとか。
京料理では懐石料理をはじめ、湯豆腐や千枚漬けなど利尻昆布の出汁が欠かせません。また、利尻昆布は他の昆布より身が硬いという特徴があります。そのため加工しても崩れにくいので、重ねて削り出すとろろ昆布や、薄く削りだすおぼろ昆布などにもぴったり。
京都の料理には、利尻昆布を細かく刻んだ木の芽煮(佃煮)があります。こちらも細かく刻んでも崩れない、利尻昆布の特徴が生かされているというワケです。
世界の料理人も注目!
海外では、ヘルシーな日本食が少し前からブームになっています。その中でも昆布は、世界の料理人が注目する和食材のひとつ。欧米料理にはスープストックと呼ばれる出汁にあたるものがありますが、それらは主に動物性の肉や骨からとるものがほとんど。対して昆布は植物性のため脂肪分がなく、しかも肉や骨と同じように旨みが豊富に含まれているので、とてもヘルシーだと人気のようです
利尻昆布の上品な香りや素材の旨さを引き立たせる独特の旨みは、フランスの三ツ星レストランシェフも認めるところ。
利尻昆布の定番&人気の食べ方
世界の料理人からも認められる利尻昆布! せっかく使うなら、利尻昆布の良さを生かした料理にしたいですよね。というわけで、ここでは利尻昆布のおすすめの食べ方をご紹介します。
カツオとの合わせ出汁(一番出汁・二番出汁)
利尻昆布と言えば、まずはお出汁。その上品さと、主張しすぎず他の食材を引き立てることができる独特の旨みは、合わせだしでその真価を発揮します。
香り高く澄んだ一番出汁は、お吸い物や素材の味を引き出す調理法に向いています。カツオと昆布からバランスよく取り出されたうまみと香りがポイント。二番出汁は、一番出汁より味がしっかりしているので煮物などの濃い味付けの料理にぴったりです。
湯豆腐
昆布でとった出汁で豆腐をゆでる、最もシンプルな料理。だからこそ、出汁の美味しさが最も重要になります。利尻昆布の澄んだ上品な出汁が、大豆の旨みや甘みを引き立たせます。
千枚漬け
京都のお土産では定番の「千枚漬け」にも、利尻昆布が欠かせません。
薄切りにしたかぶらを利尻昆布と漬け込むことで、トロっとしたねばりが出るのが特徴です。このねばりは昆布から出る食物繊維で、整腸効果や血糖値を下げる効果があるといわれています。
かぶらの白さを損なわないため、京都の料理人は透明な出汁が取れる利尻昆布を好んで使ったそうです。
佃煮
出汁をとった後のだしがらも、酒、しょう油、みりんで煮詰めて佃煮として楽しめます。
昆布そのものにも鉄分、食物繊維がたっぷり! 昆布の栄養を残さずとりたいときは、佃煮がおすすめですよ。
京都では山椒の実と利尻昆布を一緒に煮詰めて佃煮にして、最後に細かく刻む「木の芽煮」が有名です。
利尻昆布ラーメン
「いい出汁がとれる」と聞いて、作りたくなるのがラーメン。テレビ番組でインスタントラーメンが紹介されたのをきっかけに人気が広まったのだとか。利尻島のラーメン屋さんでは名物として提供されています。
スープは塩やしょうゆがありますが、どちらも利尻昆布本来のうまみを感じさせます。さらに麺にも利尻昆布が練り込まれているものもあり、一口食べただけで昆布の風味が口いっぱいに広がります。
まとめ
利尻昆布が料理人に愛される理由は、上品な香りで透き通った出汁と、素材の味を引き立たせる独特の旨みがあるからと言えます。
ただし、鍋や煮物には他にも適した昆布があることもわかりました。自分が作りたい料理によって、昆布を使い分けてみましょう。