アロニアって何? 美容と健康に効果的な北海道発の果実
“スーパーフード”としてその名をしばしば耳にするようになった「アロニア」。アセロラ・キヌア・チアシード・アサイーなどなど、これまでも多くのパワーフードが注目を浴びてきましたが、アロニアにはどのような栄養素や健康効果があるのでしょうか。本記事では、未だその魅力が知られていない「アロニア」について詳しく紹介します。
この記事でわかること
- アロニアはベリーの仲間
- 生産量日本一は北海道
- アントシアニン(抗酸化物質)の含有量が圧倒的
- 渋抜きすると美味しく食べられる
アロニアってどんなフルーツ?
注目を浴びるようになったとはいえ、アロニアの実物を目にしたことがある人は多くないでしょう。
アロニアは北アメリカ原産のバラ科の植物です。さくらんぼやベリーの仲間で、見た目は小粒のブルーベリーにも似ています。諸外国では「黒いナナカマド」と呼ばれることもあり、赤い実が熟すと真っ黒に変色するのが特徴です。
粒の大きさは直径5~10mm程、渋みが大変強く加工品として食べられることが多い植物です。
アロニアの生産地
アロニアの原産地は北米といわれ、ネイティブ・アメリカンが食用にしていました。しかし、北米に入植した人たちは、食用ではなく肌につける薬としてアロニアの実や木の皮を利用していたと言われています。
そして第二次世界大戦後、ソビエト連邦で改良されたアロニアがソ連(現ロシア・ベラルーシ・モルドバ)を中心に東欧・北欧で栽培されるようになりました。寒冷地・暑い地域とも適応する丈夫な小果樹として、現在はポーランドで多く栽培され、ドイツやイタリアなどでも栽培されています。
参考:USDA発表「ORACデータベース」
AMERICAN BOTANICAL COUNCIL
日本の一大生産地は北海道
日本では最初に北海道で試験栽培が始まり、2000年頃から大滝村(現・伊達市)や江別市で一般による本格的な栽培が始まりました。
寒さにも強く、日本各地での栽培に適していることがわかってからは、北海道外でも栽培されるようになりましたが、生産量・作付面積とも北海道が圧倒的なシェアを誇り、アロニアの栽培面積・生産量とも北海道は全国シェア約90%以上もあります。
*集計値には小規模栽培が反映されていない可能性があります
出典:農林水産省 2019年特産果樹生産動態等調査
現在は北海道の広いエリアでアロニア栽培が盛んに行われている
大滝村(現・伊達市)や江別市で本格栽培が始まってからは、北海道各地でも次第にアロニア栽培が始まりました。
アロニアの果樹園として規模も大きな栽培から、ほかの小果樹果樹園の片隅に数本植えられた小規模栽培を含め、これまで上川・空知・オホーツク・根室・十勝・石狩・後志・胆振と北海道内の広いエリアで栽培されてきました。
春に白い花、北海道での収穫は9月から
その実はナナカマドによく似ており、ナナカマドの実は1色ですが、現在、アロニアは黒い実(アロニア・メラノカルパ)、紫の実(アロニア・ブルニフォリア)、赤い実(アロニア・アルブティフォリア)の3色。そのうち食用は、黒い実と紫の実のアロニアです。
北海道では、5月に真っ白な花が房のように開花し、8月頃から実が色づき始めるナナカマド。一方、アロニアの開花も北海道では5月。同じように白い花ですが、花の中心、花糸の先にある“葯(やく)”はピンク色。ナナカマドと同じようにたくさんの小さな花を房状に咲かせます。
そして8月頃に実をつけ、北海道での収穫は9月初旬頃から10月頃までおこなわれます。
アロニアがスーパーフードと呼ばれる理由
スーパーフードとして紹介されることが多いアロニアは、「ミラクルフルーツ」「パーフェクトフード」などとも呼ばれます。続いては、アロニアがスーパーフードとして注目される理由についてみていきましょう。
理由1.豊富なアントシアニンを含んでいるから
アロニアは、ポリフェノールを多く含んでいる食べ物です。ポリフェノールは、高い抗酸化作用を持つ成分です。アロニアには、紫や青紫色の野菜やフルーツに多く含まれる天然色素でポリフェノールの一種・アントシアニンが豊富に含まれています。
アロニアに含まれるアントシアニンは、紫色のフルーツや野菜のなかでも特に多いと言われています。アントシアニンが豊富なフルーツのひとつとしてブルーベリーがありますが、アロニアに含まれるアントシアニンの量はブルーベリーの約3倍です。
複数の大学がアロニアに含まれるアントシアニンに関する研究論文を発表するなど、その栄養価や働きが研究対象とされていることでも知られています。
豊富に含まれるアントシアニンにより、アロニアは老化や生活習慣病などの予防に効果が期待できると言われ、スーパーフード、ミラクルフルーツとして注目を浴びています。
参考:北海道道立総合研究機構
理由2.緑黄色野菜に匹敵するβ-カロテンを含んでいるから
アロニアには、「β-カロテン」や「β-クリプトキサンチン」などのカロテノイドも含まれています。果実のなかではトップクラスの含有量を誇り、アロニアに含まれるβ-カロテンはトマトの約1.4倍です。
β-カロテンは活性酸素を除去する抗酸化力が強い成分とされ、ガン予防にも効果が期待できると言われています。
参考:奥恒行 著「基礎栄養学 改訂第2版」(南江堂)
アロニアに含まれる栄養に期待できる効果・効能
アロニアには、アントシアニンやβ-カロテン以外にもさまざまな栄養が含まれており、以下の効果・効能が期待できます。
- アントシアニンによる目の健康維持
- アントシアニンによる抗酸化作用(老化予防)
- 食物繊維による整腸作用(便秘の改善)
- ビタミン類による美肌効果
- 鉄分による貧血の予防
その他にも、カリウムによるむくみ予防やカルシウムによるストレスの緩和など、アロニアを食べることで期待できる効果・効能は数多くあります。
アロニアってどんな味?
抗酸化物質のアントシアニンをはじめとするポリフェノールの成分は、健康によいとされる反面、渋みやえぐみを感じさせることも特徴です。アントシアニンがたっぷりのアロニアも例にもれず、渋みがとても強い果実として知られています。
強いえぐみを持っている
アロニアは英語で「チョークベリー」と呼ばれ、息がつまる(choke)ほど、渋くて苦い果実という意味を持っています。
北米の開拓時代当時、ネイティブ・アメリカンは「白人には苦すぎて食べられない」と伝えていたそうです。アロニアのえぐみは日本人の味覚にも強く感じられ、北海道で栽培を開始して以来、アロニアの食べ方について数々の試行錯誤が繰り返されてきました。
一方で、東欧やロシアなど、一部のエリアでは渋みを気にせずフレッシュなまま食べる人もいます。
日本では渋抜きして食べるのが主流
収穫したアロニアで手作りジュースやジャムを作る人もいますが、食べられるようにするには、渋抜きが必要です。日本では、多くの場合渋抜きをしてから加工されています。
熟成させて渋みを抜く方法もありますが、時間がかかるため、冷凍して渋抜きをする方法が知られています。
摘み取ったアロニアを冷凍し、自然解凍をすると渋抜きができます。解凍の際、完全に自然解凍をしてから再冷凍することがポイントです。アロニアは特に渋みが強いため、冷凍と自然解凍を2〜3度繰り返します。
渋抜きしたアロニアは、そのまま食べたり、ジャムやジュース、ソースに加工したりして食べます。作るものによっては渋みを少し残したほうがおいしい場合があるので、家庭で作る場合、冷凍と解凍の回数を調整して好みの渋みにするのがよいでしょう。
アロニアのおすすめの食べ方
北海道で本格栽培が開始された2000年代には、栽培している地元エリアやビジネス交流イベントなどで乾燥アロニアやジャムを見かける程度でしたが、今は、お取り寄せなどでより手軽に、また便利な形態のアロニア商品を購入できるようになりました。
最後に、アロニアのおすすめの食べ方を紹介します。
冷凍アロニア・ドライアロニア
果樹園で栽培したアロニアをフレッシュなまま冷凍したアロニアは、渋みを気にしなければ解凍してそのまま食べられるほか、渋抜きをしてジャムやシロップ、ソースを作る楽しみがあります。
乾燥させたドライアロニアは、ジャムにしたり、パウダーにしてお菓子やパンに入れたりして利用できます。
アロニアジャム
小果樹類の定番加工品のジャムやソースは、シリアルやヨーグルトにかけたりと、最も食べやすい形態です。充分に渋抜きをしたアロニアを、砂糖で煮詰めて簡単に作れるため、冷凍アロニアを購入して家庭で作ってみるのもよいでしょう。
アロニアシロップ
アロニアで作ったシロップは、スイーツ作りや料理などさまざまな場面で活躍します。シロップを炭酸や水で割れば簡単にジュースにして飲めるのも人気の理由のひとつです。
ソースにして料理などに使う際には、やや渋みを残すのもよいでしょう。レモンを加えることでさっぱりした酸味が加わり、大人の味わいを楽しめます。
アロニア酒(果実酒)
大人な味わいを持つアロニアはブランデーなどのお酒とも相性抜群です。アロニアを氷砂糖とブランデーに漬け込んで、果実酒としていただくのもよいでしょう。
アロニア酒は、お酒を飲みながらさまざまな栄養を豊富に摂ることができるため、特に注目を集めています。
アロニアスムージー
食物繊維の豊富なアロニアは、他の野菜とミックスしてスムージ―にするのがおすすめです。バナナやさくらんぼ、ヨーグルトなど、優しい甘さを持つ果物や酸味のある果物との相性が抜群です。
食欲がなくなりやすい夏場には、アロニアで作るスムージ―で栄養補給をしてみてはいかがですか。
アロニアスイーツ
アロニアは充分に渋抜きすれば、スイーツに用いることもできます。
アロニアパイ
渋みの強いアロニアもコンポートにすれば、甘く美味しく食べられます。砂糖で柔らかく煮たアロニアのコンポートはパイとの相性が抜群です。パイシートに並べてオーブンで焼いたアロニアパイは、栄養豊富なオヤツになります。
アロニア羊羹
アロニアの一大生産地である北海道では、アロニア果汁を用いた羊羹も販売されています。見た目は一般的な羊羹のようにも見えますが、ポリフェノールを豊富に含んだ赤紫色の羊羹は、これまでにない味わいとして人気を集めています。北海道に立ち寄った際には、ぜひ探してみてはいかがでしょうか。
サプリメント
最近は、大手メーカー製をはじめ、サプリメントで手軽にアロニアの栄養素を摂取できる商品を購入できます。特に目の健康を促す働きから、スマホのブルーライトによる疲れ目対策のサプリメント商品や、ペットのわんちゃん用サプリメントもあります。
その他のアロニアの食べ方
数は多くはありませんが、道内には手作りアロニアジュースを出す飲食店があったり、スイーツ以外にドレッシングやパンが販売されたり、学校給食で「アロニアごはん」を出したりと、アロニアを栽培する地域ならではのアロニア商品や料理を見かけることがあります。
また、アロニア摘みができる果樹園もあり、収穫期にはフレッシュなアロニアを手に入れることができます。
まとめ
実に豊富な栄養を蓄えたスーパーフード「アロニア」。
健康を気遣うきっかけが多くなっている今、国産アロニアをはじめさまざまな形態に加工したスーパーフードのアロニアを食生活に取り入れてみるのもよいかもしれません。栄養バランスを考えながら、適度な量のアロニアを摂り、健やかな毎日を心がけたいですね。