北海道に梅雨がないのは本当か? 道民が感じる6月の気候
5月末から7月中旬にかけて雨の日が多くなる梅雨の時期。日本の初夏の風物詩でもありますが、北海道には本州のように梅雨がないことをご存知でしょうか。梅雨前線は北海道に来る前に勢いを弱めるために、梅雨を体感していない道民も多くいます。
この記事では、北海道に梅雨がない理由、特有の気候「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」や「リラ冷え」を解説。北の大地ならではの気候の知識を深めていきましょう!
この記事でわかること
- 北海道には梅雨がない!
- 蝦夷梅雨(えぞつゆ)は6月頃に来る
- 急に気温が下がる「リラ冷え」にも注意
「北海道には梅雨がない」はホント!
「北海道には梅雨がない」というウワサは事実です!
梅雨は、湿度が高くジメジメしたり、雨の日が多くて気分もどんよりしたり、洗濯物がなかなか乾かなかったりするなど、厄介な気候ですが、本格的な梅雨がないのは北海道の特権。では、なぜ北海道には梅雨が起きないのでしょうか。梅雨の仕組みを参考にしながら、その理由を解明していきましょう。
どうして北海道には梅雨が来ないの?
北海道に梅雨が来ない理由を知るうえで、まずは梅雨のメカニズムを理解する必要があります。
梅雨は、移動速度が遅い停滞前線の一種である梅雨前線によって起きる気候現象です。初夏の時期に、オホーツク海高気圧による冷たく湿った風と太平洋高気圧による暖かく湿った風がぶつかり、梅雨前線が生まれます。梅雨前線はゆっくりと北上していき、前線がかかっているエリアに雨を降らせたり、雲をかけたりするのが梅雨の仕組みです。
梅雨入りと梅雨明けは例年気象庁が発表しており、令和3年は以下のように予想されました。
梅雨入り | 梅雨明け | |
---|---|---|
沖縄 | 5月5日頃 | 7月2日頃 |
奄美 | 5月5日頃 | 7月3日頃 |
九州南部 | 5月11日頃 | 7月11日頃 |
九州北部 | 5月15日頃 | 7月13日頃 |
四国 | 5月15日頃 | 7月19日頃 |
中国 | 5月15日頃 | 7月13日頃 |
近畿 | 5月16日頃 | 7月17日頃 |
東海 | 5月16日頃 | 7月17日頃 |
関東甲信 | 6月14日頃 | 7月16日頃 |
北陸 | 6月18日頃 | 7月14日頃 |
東北南部 | 6月19日頃 | 7月16日頃 |
東北北部 | 6月19日頃 | 7月16日頃 |
表を見て気づいた方もいるかもしれませんが、なんと北海道は記載されていません! 梅雨がないことを公認されているようなもので、本州で発達した梅雨前線は北海道には到達しないのが真相です。太平洋高気圧が次第に張り出してくるとオホーツク海高気圧が弱まり、両者がぶつかることによって発生する梅雨前線は勢力を失っていきます。北海道に到達するまでに勢力を維持できず、梅雨は北の大地で発生しないのです。
今後、北海道にも梅雨が来るかもしれない?!
これまでは北海道には梅雨が来ないと言われていましたが、実は気候が変わってきています。
梅雨前線が勢力を保ったまま北海道に到達することが増えており、梅雨のように雨が降る日が増えているのが現状です。実際、1950年から2021年の降水データによると、降水日数が増えている地点が増加しているそう。地球温暖化による気温上昇や気候変動などの影響と考えられているものの、本当の理由はまだまだわからないことが多いとのことです。
今は梅雨の影響が少ない地域ですが、将来梅雨が来るエリアになるかもしれません。
北海道には「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」がある!
本州に訪れるような梅雨は来ませんが、北海道では6月ごろに雨の日が多くなります。これは、北海道の旧地名「蝦夷(えぞ)」と梅雨を組み合わせて、「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」と呼ばれる現象です。ここでは、蝦夷梅雨の特徴や本州の梅雨との違い、この時期の過ごし方を見ていきましょう。
蝦夷梅雨(えぞつゆ)の時期と特徴
蝦夷梅雨の時期は、6月中旬から下旬にかけて10~15日程度、雨の日や曇りの日が続きます。一般的な梅雨は梅雨前線によって発生しますが、蝦夷梅雨はオホーツク海高気圧が原因です。
梅雨のイメージよりも実際のストレスはそれほどないため、道民もあまり「蝦夷梅雨の時期だな」と思うことは少なく、気づいたときに過ぎているなんてこともあります。
本州の梅雨とはどう違うの?
蝦夷梅雨は北海道、梅雨は本州という地域の違い以外にも、一般的な梅雨と蝦夷梅雨には違いがいくつかあります。本州の梅雨は、例えば令和3年の関東甲信では6月14日に梅雨入りし、7月16日に梅雨明けと予測され、約1ヶ月梅雨が続きました。北海道では10~15日程度でそれほど雨や曇りの日は続きません。
雨の降る量にも違いがあり、蝦夷梅雨は本州の梅雨ほど強い雨が降ることは少ないです。シトシト小雨が降ったり、霧雨で収まったりするので、それほど雨に悩まされることはないでしょう。ただ、雨の日が増えていると説明したように、今後は本州の梅雨に似てくるかもしれません。6月の気候の変化に注意しながら、蝦夷梅雨の時期を過ごすことが大切です。
北海道の6月の過ごし方
蝦夷梅雨が来る6月の北海道は、気温・湿度が低い日が続きます。2021年の札幌の平均気温は18.9℃で比較的涼しく、過ごしやすい時期と言えるでしょう。
ただ、雨や曇りの日も多いので、寒暖差には注意が必要。朝晩冷え込んだり、太陽が隠れて体感温度が低くなったりするだけではなく、日中の気温が高くなることもあります。天候が崩れることを想定して厚着をすると暑くなったり、暖かいからといって軽装だと寒く感じたりするので、脱ぎ着しやすい上着を着用するのがおすすめです。
北海道ならではの気候「リラ冷え」も知っておこう
北海道ならではの気候は蝦夷梅雨(えぞつゆ)だけではありません。蝦夷梅雨と同じく、オホーツク海高気圧が原因で起きるのが「リラ冷え」です。リラ冷えの「リラ」はフランス語で、日本語で言うと札幌でキレイに咲くライラックのこと。ライラックが咲く5月下旬の気候、リラ冷えについても詳しく理解していきましょう。
リラ冷えの由来とは
リラ冷えは俳句の季語で、初めて使ったとされるのが北海道を代表する俳人・榛谷美枝子(はんがいみえこ)氏。「リラ冷えや十字架の墓ひとところ」と詠み、ライラックが咲いた頃の肌寒い情景を表現しました。全国にリラ冷えが広まるきっかけになったのは、作家・渡辺淳一氏が発表した『リラ冷えの街』。リラが咲く季節を舞台にした物語が話題になり、リラ冷えが知られるようになりました。
気候の特徴
リラ冷えは、春から夏に向かって気温が上がったと思いきや、気温が一気に低くなるのが特徴。「寒の戻り」とも呼ばれ、春先の寒い時期の気温に戻ってしまうので、寒暖差に注意しなくてはいけません。