いくらのプリン体は少ないって本当?痛風との関係やプリン体の少ない食品や多い食品も紹介
いくらと言えばお寿司では外せない定番の食材ですし、どんぶりなどでも人気があります。
しかしその美味しさと引き換えに、痛風になりやすい食べ物・プリン体の多い食べ物という噂を耳にしたことはありませんか?
たしかにパッと見たイメージとしては、なんとなく刺激が強そうだったりプリン体が多そうだったりする感じがあるかもしれません。
はたして本当に、いくらには痛風になるような成分が含まれているのでしょうか。
この記事では、いくらに含まれるプリン体の量やプリン体がどのような成分なのかを分かりやすく紹介します。合わせて、プリン体が影響する病気として知られている痛風のメカニズムや、プリン体の少ない食べ物・多い食べ物なども紹介しています。
いくらを心置きなく食べたいけれど、プリン体や痛風への影響が心配という人は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- いくらは低プリン体食品
- プリン体自体は体に必要な栄養素
- プリン体の過剰摂取は尿酸の過剰生産を引き起こし痛風の原因になる
- レバーやニボシは高プリン体食品なので要注意
いくらに含まれるプリン体の量
プリン体は細胞のひとつひとつに含まれる成分です。いくらに含まれるプリン体は100gあたり3.7mg。健康食の代名詞とも言われる玄米のプリン体含有量は37.4mg(100g中)、低カロリーで健康的な食生活に欠かせない豆腐(冷奴)は31.1mg(100g中)含まれています。
他の食べ物のプリン体含有量を知ると、いくらのプリン体含有量の少なさがよくわかるのではないでしょうか。ちなみに、公益財団法人 痛風・尿酸財団の発表しているガイドラインによると、1日のプリン体摂取上限量は400mg以下とされています。
一般的にお寿司に盛られているいくらの量は8~15g程ということを踏まえると、いくらに含まれるプリン体の少なさがよく分かりますよね。
いくら(魚卵)にプリン体が多いイメージを持たれる理由
実は、いくらはプリン体の含有量が少ない食べ物だったという事実に驚いた人もいるのではないでしょうか。これらの誤ったイメージは、プリン体の構造やいくらの見た目から、連想ゲームのように定着していったことが原因として考えられます。
続いては、いくらを始めとする魚卵にプリン体が多いイメージを持つ理由について見ていきましょう。
プリン体についての誤った認識が持たれているから
プリン体は細胞に存在する核酸です。そのため、細胞の数だけ存在しています。つまり、細胞が多ければ多い程プリン体の量は多くなり、細胞の数が少なければ少ない程プリン体の量は少なくなるということです。
いくらを始めとする魚卵は、小さな卵が数えきれない位無数に集まっていますよね。つまり、魚卵の数だけプリン体が存在することから「いくら(魚卵)はプリン体が多い」というイメージがついたのだと考えられます。
しかし、いくらを始めとする魚卵は、生きている状態なら今から細胞分裂が始まり、魚として育っていきます。細胞分裂前の魚卵は数こそ多いものの、細胞数はほんのわずかであるため、プリン体の含有量は少ないのです。
一般的にゾウリムシの細胞は1個、ウサギの細胞は約5兆個、ゾウの細胞は約10000兆個と言われています。いくら魚卵の数が多いからといって、それぞれに1つの細胞しか存在しないのであれば、そこに含まれるプリン体の量は微々たるもの、ということです。
いくら(魚卵)が高級品だから
いくらをはじめとする魚卵は、海産物のなかでも高級品として扱われています。昔から「贅沢品にはプリン体が多く含まれている」というイメージを持っている人も多く、いくらが高級品であることから、プリン体が多い食品だと勘違いされたのだと考えられます。
そもそもプリン体って何?
プリン体と聞くと「体に悪い」というイメージを持つ人が多いです。しかし、このイメージも大きな誤解と言えるでしょう。
プリン体は、細胞内の核酸の総称で、核酸は生命の維持に欠かせない成分です。
細胞の代謝、内臓の正常な働き、身体活動などにも利用される成分で、体内で利用するプリン体の2割が食事から摂取し、8割は体内で作られています。
この時点で「思っていた感じと違う」という人も多いのではないでしょうか。プリン体はそれ自体が体に害を与える訳ではありません。
ちなみに、プリン体は「3大うまみ成分」のひとつと言われるほど旨味が感じられるのが特徴です。体に必要だからこそ美味しく感じられるようになっているのでしょうが、美味しいからこそ食べ過ぎてしまう人が少なくありません。
体に必要な成分とはいえ、過剰に食べ過ぎてしまうとさまざまな影響が出てしまうこともあるでしょう。
プリン体が影響する病気「痛風」とは
プリン体と聞いて真っ先に連想する病気として「痛風」を挙げる人が多いですが、病気の実態について詳しく知っているという人は少ないです。プリン体について知るのであれば、痛風のメカニズムについても知っておくとよいでしょう。
痛風のメカニズム
プリン体は肝臓で分解されると「尿酸」に変化します。ちなみに、尿酸自体も害悪な成分ではなく、ビタミンCや強力な抗酸化作用を持つ、人間に必要なものです。
肝臓で分解されたプリン体は尿酸になり、通常8割は腎臓でろ過され膀胱から尿として排泄されます。また、残りの2割は便から排泄されるため、基本的に体内に蓄積するものではありません。
しかし、プリン体の摂り過ぎで過剰な尿酸が生成されたり、さまざまな要因で尿酸が適切にろ過・排出されない場合、血液中に増え過ぎた尿酸は、関節を保護する役割を持つ滑膜(かつまく)という部分に蓄積し結晶化していきます。
結晶化した尿酸を免疫細胞が攻撃することで、炎症を起こし激痛をもたらします。これが「風が吹くだけでも痛い」と言われる痛風が発症するメカニズムです。
痛風の原因はプリン体だけじゃない
プリン体を過剰に摂取することで、尿酸が増え過ぎてしまうことも痛風の原因のひとつですが、その他にも以下のような原因があります。
痛風の原因
- プリン体の摂り過ぎ
- アルコールの摂り過ぎ
- ストレス
- 過剰な運動
プリン体の過剰摂取を控えることも痛風予防には大切ですが、それ以外に原因があることも理解しておくことが必要です。特に、お酒を毎日大量に飲む人は、アルコールの利尿作用によって体内の水分が減少し、血液中で尿酸が結晶化しやすくなってしまいます。
一般的な食生活や嗜む程度の飲酒であれば、そこまで痛風を警戒する必要がありませんが、日頃から暴飲暴食をしてしまう人は注意してください。
プリン体が少ない食べ物5選
プリン体は、どんな生物・植物にも含まれている成分であるからこそ、好きなものだけをずっと食べ続けると過剰摂取になってしまう可能性もあります。
そこで重要なのが、プリン体の少ない食べ物や多い食べ物が何なのかを知っておくことです。まずは、プリン体が少ないと言われる食べ物について紹介していきます。
1.いくら
記事の冒頭でも紹介しましたが、いくら100gに含まれるプリン体は3.7mg。プリン体を含む食品のなかでも、非常に含有量が少ない食べ物です。
ちなみに、いくら100gと言えば、スーパーなどで小さなパックに「食べ切りサイズ」などと表記されて販売されている量をイメージすると良いでしょう。
お寿司や料理に添えられているいくらは、量自体ももっと少ないため、プリン体の含有量は極めて少ないです。ただし、プリン体が少ないからといって食べ過ぎると塩分やコレステロールの過剰摂取に繋がってしまうので、適量にしておくのがよいですね。
2.数の子
ニシンの魚卵である数の子も、いくらと同じくプリン体が少ない食品です。100gの数の子に含まれるプリン体は21.9mg。おせち料理などで振舞われても気兼ねなく食べられます。さらに、数の子は他の魚卵に比べてコレステロール値が低いのも特徴です。
一方、数の子は塩漬けにして保存されることが多いため、調理前に塩抜きをするとは言え、塩分の摂り過ぎには注意しましょう。
3.たまご(鶏卵)
普段の食事にも頻繁に使われるたまご(鶏卵)は、なんとプリン体含有量が0mgと表記されます。これは、実際にプリン体が含まれていない訳ではないのですが、極少量過ぎて表記できないため、0mgになっています。
すでに、痛風を患っている方でも、安心して食べられる食材と言えるでしょう。
4.かまぼこ
つみれやちくわ、かまぼこなどの魚類加工品は、プリン体の少ない食品に分類されます。魚類は比較的プリン体を多く含んでいることがありますが、かまぼこは加工の過程で魚を水に晒すため核酸が流れ落ちます。そのため、かまぼこはプリン体の少ない食品に分類できるのです。
なかでも、最もプリン体が少ないのはさつま揚げです。さつま揚げ100gに含まれるプリン体は21.4mg、魚肉ソーセージも100g当たりのプリン体含有量22.6mgと非常に少ない食品と言えます。
5.コンビーフ
肉類にはプリン体が多く含まれているイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。実際、内臓の部位などは高プリン体食品に分類されるため、注意が必要です。
しかし、牛肉を塩漬けにした缶詰「コンビーフ」が低プリン体食品であることはあまり知られていません。牛モモ肉100gに含まれるプリン体は110.8mgですが、コンビーフ100gに含まれるプリン体は47mgと半分以下です。
尿酸値が気になるけれど肉を食べたい、という人はコンビーフを上手に活用した料理を食べてみてはいかがでしょうか。ただし、塩漬けにされていることもあって塩分量は多いため、食べる量には注意してください。
プリン体が多い食べ物5選
プリン体が少ない食べ物を知ったのなら、合わせてどのような食べ物にプリン体が多いのかを知っておくことも大切です。
続いては、プリン体が多く含まれている食べ物を5つ紹介します。
1.うに
私達が普段食べているうには、生体のどの部位かご存知ですか?実は、うにの可食部は成熟していない精巣や卵巣などの生殖巣です。魚卵などと違い、生殖巣は比較的細胞数が多いため、プリン体の含有量も多くなってしまいます。
うに100gに含まれるプリン体は137.3mg。食品全体で見れば、極端に多い数値ではないですが、普段食べている部分を「うにの卵」と勘違いしている人も多く「いくらにプリン体が少ないなら、うにも少ないんじゃないの?」という誤ったイメージを抱いてしまうことがあるため要注意です。
そこまでプリン体が多い訳ではないので、食べる量に充分注意して美味しく味わってくださいね。
2.あんこう肝
絶品の珍味と言われ、豪勢なお酒のつまみとして振舞われるあんこう肝。生でも調理しても食べられ、濃厚な旨味に一度食べたら病みつきになること間違いなしです。
しかし、あんこう肝の食べ方には充分注意してください。生で食べた場合、あんこう肝100gに含まれるプリン体は104.3mg。うによりも少なく、こちらも食べる量に気を付ければ大きな問題はないでしょう。
一方、あんこう肝の定番料理である酒蒸しにすると、100gに含まれるプリン体は399.2mgに跳ねあがります。既に痛風の症状が出ている人にとって、あんこう肝の酒蒸しは避けるべき料理と言えるでしょう。
3.レバー
動物の内臓は、数多くの細胞から成り立っていて生命活動を支えています。そのため、ホルモン系の食肉は基本的にプリン体が多く含まれていると考えてよいでしょう。
そのなかでも特に多くのプリン体を含むのがレバーです。
豚レバー100gに含まれるプリン体は284.8mg、その他にも牛レバーは219.8mg、鶏レバーには312.2mgのプリン体が含まれています。
4.干ししいたけ
和食に使われることの多い干ししいたけ。きのこ類でありながら、プリン体の含有量が多い食品であることは殆ど知られていません。
生しいたけ100gに含まれるプリン体は98.5mgなのに対し、欲ししいたけ100gに含まれるプリン体は379.5mgです。どうして干しているだけなのに、プリン体量が3倍以上に増えているのか疑問に思いますよね。
実は、干ししいたけは干して水分が抜けることで1個当たりの質量が軽くなります。そのため、プリン体が多く算出されるのです。
水で戻せば、生しいたけのプリン体含有量と同等になるため、そこまで注意する必要はないでしょう。ただし、痛風の人は「きのこだから大丈夫」と大量に食べ過ぎないよう注意してください。
5.ニボシ
干ししいたけと同じく、日本で古くから親しまれている乾物のひとつにニボシがあります。ニボシの原材料は一般的にカタクチイワシが用いられていますが、元々、魚類はプリン体含有量が多く生のカタクチイワシ100gに含まれるプリン体は約200mg以上と言われています。
ちなみに、カタクチイワシよりも大型のイワシであるマイワシ100gに含まれるプリン体は305.7mgです。カルシウムやビタミンD、DHAなど、健康を維持するために必要な栄養は豊富ですが、痛風の人にとっては控えた方がよい食品とされています。
ニボシも干ししいたけと同じく、干して水分が抜けることでプリン体含有量が多く検出されますが、ニボシ100gに含まれるプリン体は746.1mgとこれまでに紹介した食品のなかでも最も多い含有量です。
100gを一度に食べる機会は少ないでしょうが、なかには口寂しい時にニボシを齧る、なんて人もいるのではないでしょうか?栄養が豊富な一方、痛風の人にはリスクのある食品であるため食べる量には充分注意してください。
いくらを美味しく食べるためのレシピ紹介
さて、このように健康食的に食べられるいくらですが、よりいっそう美味しく食べるためにはどんな食べ方やレシピがあるのでしょうか。
基本の醤油漬けは外せない
いくらは醤油漬けや塩漬けで食べることがほとんどですが、現在では醤油漬けが主流です。食品売り場や物産展などで見かけるいくらも、その多くは醤油漬けで売られています。
いくらが痛風の原因にはなりにくいとわかれば、いままで豪快にいくら丼をかきこむことを躊躇していた方も、たっぷりのいくらを盛った丼を食べてみたいと思うのではないでしょうか。
そんないくら丼こそいくら本来の味を楽しめる、究極のいくらレシピと言えるでしょう。
いくら醤油漬けをこだわりの手製で
実はすじこを手製で醤油漬けにしていくらとして食べられますから、お買い得なすじこを入手したら自家製で醤油漬けにチャレンジてみても良いでしょう。
いくらの醤油漬けの作り方は、鍋に酒とみりんをそれぞれ大さじ2杯入れて軽く煮てから醤油を大さじ2杯入れて冷ましてておきます。
次に生すじこ(250~300g)を容器に入れて、先ほどの冷ました醤油を入れ冷蔵庫で半日程度寝かせれば、いくらの醤油漬けの出来上がりです。
大根おろしと合わせてさっぱりいただく
いくらと合う食材として紹介しておきたいのが、大根おろしです。
よく汁を切った大根おろしをいくらにまぶし、柚子の皮などをくり抜いて器を作って盛り合わせれば、まるで高級和食店で出されるようなおしゃれないくら料理の出来上がり。
お酒のおつまみとしておしゃれで美味しいいくら料理が出てくれば、ついもう一杯となってしまうはずでしょう。
鮭といくらの親子パスタはいかが?
洋食にいくらを使いたいとお考えなら、パスタの具として使ってみてはいかがでしょうか。サーモンと組み合わせれば、海の親子パスタの出来上がりです。
大きめにほぐしたサーモンを具材に、醤油とバターで味付けしたパスタをつくり、最後にいくらをトッピングしてください。
北海道グルメとして外せないいくらは痛風を心配せずに楽しもう
いくらと言えばやはり北海道グルメの主役。
特に大盛りのどんぶりから溢れるほどのいくら丼は、北海道を訪れたなら必ず食べておきたい北海道グルメです。
これまで痛風を気にしていた方でも、実はそれが真実でなかったと知ったのなら、これまで以上に北海道グルメのいくらが気になるはず。
もちろん最近では実際に北海道を訪れなくても、ネットの通販を使って北海道の本場のいくらが購入可能ですから、ぜひ一度、本場のいくらの醍醐味を楽しんでみてください。