第3の食物繊維?レジスタントスターチは食事制限の強い味方
近年、健康的な食生活を求める人やダイエットに励む人から注目されている「レジスタントスターチ」という成分をご存知ですか?摂りすぎが悪いと思われがちな糖質によく含まれる成分で、食物繊維と似たような物質です。これまでの「糖質」に対する認識をひっくり返すレジスタントスターチについて知ると、ご飯やバナナ、穀類、いも類などへの見方が変わります。
この記事では、レジスタントスターチがどのような成分なのか、種類、効果、多く含まれる食品、増やす方法、効率的な取り方などを紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
この記事でわかること
- レジスタントスターチとは、難消化性でんぷんのこと
- レジスタントスターチは、消化されず腸に届く
- 腸内で短鎖脂肪酸を生み出し、善玉菌の増殖を促す
- 便秘改善、腸内環境正常化、肥満予防、ダイエット効果が期待できる
レジスタントスターチとは
レジスタントスターチとは、糖質の主成分であるでんぷんの一種です。英語では、resistant(レジスタント:抵抗力のある・対抗性のある)starch(スターチ:でんぷん)と表記し、日本語では「難消化性でんぷん」と訳します。
これまで、でんぷんは全て小腸で吸収され、エネルギーに変換されると言われていました。しかし、レジスタントスターチの存在が発見されたことで、でんぷんに対する認識は変化してきています。レジスタントスターチは、小腸で全て消化されずに大腸まで残る栄養と考えられており、同じく消化されにくい栄養として食物繊維があります。
糖質のうち、大腸まで届く量としては食物繊維よりもレジスタントスターチの方が割合として多く、これまで知らず知らずの内に摂取していたレジスタントスターチが古くから米を主食とする日本人の健康を支えてきたことが分かりました。一方、糖質制限ダイエットや米離れが進む現代の日本では、これまで充分に摂れていたレジスタントスターチが減少し、さまざまな問題が起きている可能性も示唆されています。
レジスタントスターチの種類と多く含まれている食品
レジスタントスターチには「RS1」「RS2」「RS3」「RS4」の4種類があります。続いて、それぞれの違いや多く含まれている食品について紹介します。
RS1
RS1は細胞壁に包まれているため、消化酵素が届きにくいのが特徴です。通常、穀物を粉砕して粉にする際に、細胞壁が破壊されて消化しやすいでんぷん質になりますが、RS1は粉砕が不十分な場合などに細胞壁に包まれたまま残り、レジスタントスターチとして難消化性の特性を発揮します。
RS1が多く含まれている食品
全粒粉、粉砕の不十分な穀物、豆類、玄米、パスタなど
RS2
RS2は構造自体が消化されにくく、消化酵素が作用しにくいのが特徴です。しかし、加熱調理などをしてしまうと、構造が変化し消化されやすい通常のでんぷんへと変化してしまいます。生の状態のでんぷんやアミロースの含有量が多い食品などに含まれているレジスタントスターチです。
RS2が多く含まれている食品
未熟なバナナ、生のじゃがいも、山芋、高食物繊維小麦など
RS3
RS3は、加熱調理などによって糊化したでんぷんが冷えた際に形成されるレジスタントスターチです。糊化したでんぷんが冷める際に水分を失い、残ったものが消化酵素の影響を受け難い構造に変化します。
RS3が多く含まれている食品
冷えたご飯、冷えたいも類、焼いてから長く時間が経ったパン、コーンフレークなど
RS4
RS4は化学処理を施したことで難消化性の性質を持ったでんぷんです。食品加工の際の加工工程で、でんぷんの構造中に架橋結合ができ、難消化性に変化します。
RS4が多く含まれている食品
加工食品(スナック菓子、菓子パン、冷凍食品、麺類など)
レジスタントスターチの働き
レジスタントスターチは、消化酵素の働きを受けずに大腸まで届きますが、なかでも特に注目を集めているのが「発酵性食物繊維」の働きを持つ点です。
発酵性食物繊維は、腸内で発酵し短鎖脂肪酸を生成します。短鎖脂肪酸は、善玉菌の餌となり善玉菌を増やす働きが期待できるため、レジスタントスターチから発酵性食物繊維を摂取することは腸内環境の改善に大きく影響すると考えられています。その他、短鎖脂肪酸は腸のエネルギー源としても消費されるため、上皮細胞の増殖を促すなど、腸を健康な状態に保つ効果も期待されます。
レジスタントスターチに期待できる効果・効能
レジスタントスターチを摂取することで期待できる効果・効能には以下があります。
- お腹の調子を整える(便秘の改善、腸内環境の正常化)
- 体重増加を抑える(肥満の予防)
- ダイエットのサポート
それぞれの効果・効能について詳しく紹介します。
便秘の改善
レジスタントスターチは消化されないまま大腸まで辿り着くことができます。未消化のまま大腸まで辿りついたレジスタントスターチによって便のかさが増すため、便秘の改善効果も期待できるでしょう。
腸内環境の正常化
レジスタントスターチは腸内で短鎖脂肪酸を作り出します。これにより、短鎖脂肪酸を餌にする善玉菌が増え、腸内細菌のバランスが良くなる効果が期待できます。また、短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、腸の活動に必要なエネルギー源となります。酪酸を得ることで、腸が正常に働いたり、腸壁にある上皮細胞が増殖したりして、健康な状態を保つことにも繋がるでしょう。
今、話題の腸活にもレジスタントスターチが大変有効だと考えられています。腸の状態を改善したい、良い状態のまま保ちたいという人は、ぜひレジスタントスターチを積極的に摂取してみてください。
肥満の予防
レジスタントスターチには、血糖値の上昇を緩やかにする働きがあると言われています。血糖値の乱高下が続くと、インスリンの分泌量が増え、その結果脂肪が蓄積しやすくなります。そのため、血糖値の急上昇を防ぐことで、肥満の予防効果も期待できるでしょう。
ご飯などの炭水化物を食べたいけれど、太りたくないという人にこそ、レジスタントスターチがおすすめ。
ダイエットのサポート
通常のでんぷん質は1gあたり4kcalです。しかし、レジスタントスターチは消化・吸収されず便として排出されたり、善玉菌の餌になったりするほか、腸の活動エネルギーとして消費されることもあります。そのため、レジスタントスターチ1gあたりのカロリーは2kcalと、通常のでんぷんの半分しか含まれていないのです。ダイエット中でカロリーを制限したい人の場合、レジスタントスターチを多く含む食品を選ぶことでカロリーを抑える効果が期待できるでしょう。
また、レジスタントスターチの働きによって腸の状態がよくなれば、太りにくい体作りにも繋がります。美しく、健康的にダイエットしたいという人にこそ、レジスタントスターチがおすすめです。
レジスタントスターチを増やす方法
レジスタントスターチはRS1やRS2のように、元々レジスタントスターチとして存在しているものの他に、加熱・放熱・化学処理などの影響を受けてレジスタントスターチとしての構造を得るものもあります。つまり、少しの工夫で食品中のレジスタントスターチを増やすことができる場合もあるのです。
加熱・放熱によってRS3を増やす場合、電子レンジなどで加熱するよりも蒸して加熱した方がレジスタントスターチ含有量が多くなることが分かっています。
RS3に変化しやすい食品、しにくい食品を見分け、蒸し調理をして冷ますなどの工夫をすれば、レジスタントスターチを増やすことができるでしょう。
レジスタントスターチを効率的に摂るなら「冷やご飯」が◎
食物繊維と似た働きを持つレジスタントスターチは、野菜離れが進む日本人にこそ積極的に摂取して欲しい栄養の1つです。そんなレジスタントスターチを効率的に摂取したいなら、冷えたご飯を食べるのがおすすめです。
RS3は一度加熱して糊化したでんぷんから熱が逃げて冷める過程で、消化されにくい構造に変化します。冷やご飯といっても、冷凍したものや冷えて乾燥して硬くなってしまったものでなくてもいいのです。一度冷めてしまえばでんぷんはRS3に変化するため、おにぎりやお寿司など。冷めても美味しく食べられる料理で、レジスタントスターチを効率的に摂ってみてください。
1度冷えたご飯であっても、再加熱してしまうと糊化しレジスタントスターチの含有量が減ってしまうので注意してくださいね。
まとめ
今回は、これまでのでんぷんの常識を覆すレジスタントスターチについて紹介してきました。消化されにくく、腸で有益に働くレジスタントスターチは、日本人の健康を古くから守ってきた重要な栄養素です。レジスタントスターチを多く含む食品を積極的に摂り、さまざまな健康効果を体感してみてくださいね。