栄養豊富・希少価値が高い黒千石(くろせんごく)大豆とは?戻し方やおすすめレシピも紹介
北海道は大豆の生産が盛んであることが有名ですが、実はそんな中でも非常に希少価値が高く道民でもなかなかお目にかかれない「幻の大豆」と呼ばれている黒豆があることをご存知でしょうか。
それが、北海道の一部の地域で生産されている黒豆「黒千石大豆」です。
この記事では、黒千石大豆がどのような黒豆なのか解説します。合わせて、黒千石大豆の栄養から期待できる健康効果や入手方法、戻し方、おすすめレシピも紹介します。黒千石大豆に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- 黒千石大豆は黒豆の一種
- 一度栽培が完全に停止したことで、「絶滅した品種」「幻の黒千石」と呼ばれることもある
- 他の大豆に比べてポリフェノールの含有量が多い
- 他の大豆には見られない免疫力向上効果やアレルギーの抑制効果が期待できる成分が含まれる
黒千石大豆とは
大豆とは、枝豆が成熟した豆のことで、一般的にはクリーム色のものが知られています。品種に寄っては、豆が黒いものもあり、これが黒豆です。
黒千石大豆は黒豆の一種で、他の大豆とは異なり希少価値や栄養の観点から注目が集まっている豆です。
黒千石大豆の特徴
黒千石大豆は、一般的な大豆に比べて非常に小粒であることが大きな特徴と言えます。
大豆の多くは、品種によってさまざまですが平均的な1粒の重さが約0.3g前後と考えられます。一方、黒千石大豆は極小粒に分類され、100粒の重さで約10~11g、つまり1粒0.1g前後と非常に小さいのが特徴です。
また、大豆は一般的に楕円形のものが多いなか、黒千石大豆は球体をしているため、一見すると大豆の一種であると分からない人も少なくありません。
皮の部分はツヤツヤした光沢のある黒色ですが、豆の中身は鮮やかな緑色であることも特徴のひとつです。
「絶滅品種」「幻の黒千石」呼ばれた黒千石大豆
黒千石大豆は他の大豆に比べると流通量が非常に少なく、入手が困難なことでも有名です。一時は「絶滅品種」「幻の黒千石」と呼ばれたこともあります。
その原因は、過去に生産が停止されたことにありました。黒千石大豆は、栽培に手間がかかるうえ、成熟するまで長い時間がかかり、さらに極小粒であることから多くの収穫量を得られない大豆です。そのため、1970年代に生産する農家がいなくなってしまいました。
一時、完全に絶滅した品種だと思われていましたが、2001年に黒千石大豆の種が偶然見つかったのをきっかけに栽培プロジェクトが立ち上がり、徐々に生産量を増やしていくことに成功しました。北海道の北竜町では特産品にもなっております。
しかし、前述した通り成熟するまでの期間も長く、収穫量も多くないため、他の大豆と同等量を流通させるのは困難です。こういった理由から、現在も黒千石大豆は幻の大豆として限られた流通ルートで取引されています。
黒千石大豆と他の豆類の違い
黒千石大豆が特に注目されるのには、他の豆類と一線を画す栄養の豊富さにあります。
黒千石大豆には他の大豆よりも多くの大豆イソフラボンなどのポリフェノールが含まれていることが分かっています。
また、黒千石大豆からはインターフェロンγの生成を促進する成分が検出されたのも他の豆類との大きな違いです。インターフェロンγには、免疫力を高め感染症やがんへの抵抗性を高め、アレルギー症状を抑える働きがあるとされており、インターフェロンγの生成が促されることで、免疫機能の向上が期待されます。
他の豆類と比べ、黒千石大豆には、高い免疫機能の向上効果と抗酸化作用が期待できます。これが、黒千石大豆と他の豆類の決定的な違いと言えるでしょう。
黒千石大豆を食べることで期待できる効果
黒千石大豆には、さまざまな栄養成分や抗酸化作用・免疫力の向上作用を期待できる成分が含まれることが分かりました。続いては、黒千石大豆を食べることで期待できる効果について見ていきましょう。
老化予防
黒千石大豆には豊富なポリフェノールが含まれています。ポリフェノールにはさまざまな種類がありますが、大豆や豆類に含まれているのはイソフラボン類であるダイゼインやゲニステイン、グリシテインなどです。
強い抗酸化作用を持つため、体内の老化を促進する活性酸素を抑制・除去してくれる効果が期待できます。
美肌効果
黒千石大豆に多く含まれるアントシアニンは、イソフラボンと同じく強い抗酸化作用があるポリフェノールの一種です。抗酸化作用により、肌細胞の老化を防ぐ効果が期待できます。しみ、しわ、たるみなど、肌細胞の老化によるトラブルを予防したい人におすすめです。
内臓肥満の予防
アントシアニンには内臓脂肪の蓄積を抑える効果が期待できる点も、黒千石大豆が老若男女問わずさまざまな年代に注目されている理由のひとつです。
ある実験では、アントシアニンが含まれるエサを食べ続けたマウスは、通常のエサを食べているマウスに比べて脂肪が合成される量が抑えられ、内臓脂肪、血中脂肪量が大幅に少なかったという結果が発表されています。また、アントシアニンには血糖値の上昇を抑える効果も期待できるため、積極的な摂取によってメタボリックシンドローム(肥満が原因で引き起こされるさまざまな疾患)の予防効果も期待できるでしょう。
免疫力アップ
黒千石大豆には、免疫力の向上効果も期待できると言われています。人間の体には、感染症への抵抗力を高めたり、アレルギー反応を抑制するインターフェロンγという活性化因子があります。黒千石大豆には、インターフェロンγの生成を誘発する成分が含まれているため、積極的に摂取することで免疫力の向上やアレルギーの症状を抑える効果が期待できると言われています。
納豆やお菓子も!黒千石大豆を使ったさまざまな加工食品
黒千石大豆のさまざまな栄養効果を紹介してきましたが「大豆ってどうやって食べればいいんだろう?」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
流通量の少ない黒千石大豆ですが、生産地である北海道ではさまざまな製品に加工し販売されています。
黒千石大豆を使った加工食品の例
- 大豆ミート
- 納豆
- ケーキやクッキーなどの洋菓子
- 最中や餡子・きな粉などの和菓子
- 黒豆茶
- 雑穀
黒千石大豆は極小粒であるため、納豆に加工してある製品が特に人気です。また、極小粒で口当たりがよいことから、豆大福や黒豆ブッセなどに用いられることもあり、北海道の老舗菓子店・きのとやでも黒千石のフロランタンが製造され人気を博しています。
黒千石大豆はどこで買えるの?
黒千石大豆は生産数が少ないこともあり、どこでも購入できる食材とは言えません。
限られた流通経路で販売されているため、どこで販売されているのか事前によく調べなければ、スーパーなどに言っても取り扱いが無く無駄足になってしまうこともあるでしょう。
関東を中心に展開するスーパー・オーケーストアでは黒千石大豆を使った小粒納豆が販売されています(2024/1月時点)。また、イオンなどの大手スーパーでも黒千石大豆を使った納豆を取り扱っている店舗があるそうです。
その他、黒千石大豆生産農家から直接購入する方法やネットなどでも黒千石大豆の加工食品が購入できるショップがあります。
流通量が多くないため、見つけたら品切れになってしまう前に購入しておく方がよいかもしれませんね。
黒千石大豆の戻し方
黒千石大豆を入手できた場合、お湯や水で戻してから調理する必要があります。続いては、黒千石大豆を戻す方法を紹介します
火にかけて戻す方法
短時間で黒千石大豆を戻したい場合は、火にかける方法がおすすめです。
黒千石大豆と水を1:6の割合にして鍋に入れ、弱火でじっくり茹でれば簡単に戻すことができます。茹で時間は30分を目安にし、戻り具合を見ながら微調整してみてください。
茹でた黒千石大豆をザルにあげて湯切りすれば、簡単にふっくらした黒千石大豆が出来上がります。
水に浸けて戻す方法
じっくり時間をかけられる場合は、水に浸けて戻す方法がおすすめです。水に浸けて戻す方が、風味良く仕上がるため、時間があるならなるべく水に浸けて戻す方がよいでしょう。
水に浸けて戻す方法はとても簡単です。鍋に黒千石大豆と水を入れて6時間以上放置すれば完成です。豆が一回り大きくふっくらとしていれば、きちんと戻っている証拠です。
黒千石大豆を使ったおすすめレシピ
戻した黒千石大豆は、さまざまな料理に使って美味しく食べることができます。最後に、黒千石大豆のおすすめレシピを紹介します。
黒千石大豆の炊き込みご飯の作り方
極小粒の黒千石大豆は、炊き込みご飯にすると赤飯のような鮮やかな赤色に仕上がり口当たりもよいのでおすすめです。
材料
材料は以下のとおりです。
- 米
- 黒千石大豆
- 昆布
- 塩
- 酒
米と黒千石大豆は、米1合に対して黒千石大豆大さじ1と1/2を目安にするとよいでしょう。
作り方
作り方は以下のとおりです。
- 戻した黒千石大豆を研いだ米と混ぜる
- 塩、酒を入れる
- 炊飯器の内釜の表示に従って、米の量に合わせた水を加える
- 昆布を入れる
- 通常の炊飯モードで炊飯する
出来上がった炊き込みご飯から、昆布を取り出せば完成です。
黒千石大豆の煮豆
黒千石大豆は、煮豆にしても美味しく頂けます。できた汁に餅を加えれば、栄養豊富なお汁粉にもできますよ。
材料
材料は以下のとおりです。
- 黒千石大豆
- てんさい糖
- 水(黒千石大豆の戻し汁を含む)
- 醤油
水は黒千石大豆の2倍以上を用意します。お汁粉などにしたい場合には、水を少し多めにしておくとよいでしょう。てんさい糖を使うことで、上品な甘さを持つ煮豆に仕上げることができます。
作り方
作り方は以下のとおりです。
- 黒千石大豆と戻し汁、水を圧力鍋に入れて約20分加圧する
- 加圧が終わったらてんさい糖と醤油を加えて約10~15分煮詰める
- 味を調整して完成
圧力鍋で作るため、短時間でしっかりと煮上がった煮豆を作ることができます。一度、常温に冷ますとより味が浸みて美味しくなりますよ。
黒千石大豆の納豆
市販の納豆を使えば、自宅でも簡単に豆から大豆を作ることができます。栄養豊富な黒千石大豆が手に入った場合、自家製納豆を作ってみるのがおすすめです。
材料
材料は以下のとおりです。
- 黒千石大豆
- 納豆(市販のもので種類は何でもOK)
自家製納豆を作る際、市販の納豆に含まれる納豆菌を使って発酵させるため、途中雑菌が入ってしまわないよう使う器具を全て殺菌する必要があります。
煮沸消毒が望ましいため、器具を煮沸できる大きな鍋も必要です。
作り方
作り方は以下のとおりです。
- 戻した黒千石大豆を圧力鍋で約15~20分蒸す
- 熱湯(約30ml)に市販の納豆(約5粒)を入れた納豆菌液を作っておく
- 蒸した黒千石大豆に2で作った納豆菌液をかけてよく混ぜる
- 約30~40度を保ちながら、30時間置く
- 黒千石豆が真っ白になったら、冷蔵庫で1~2日熟成させる
納豆菌を発酵させるために30~40度を保つ際には、発砲スチロールに入れて保温するのがおすすめです。熱いペットボトルなどを一緒に入れることで適温を維持することができます(ペットボトルの水が冷めてしまったら新しいお湯と取り替えましょう)
完成したものは、冷蔵庫で保存し3日を目安に食べ切る様にしてください。
黒千石大豆のお茶
黒千石大豆からは、香ばしい香りのお茶を作ることもできます。クセがなく飲みやすいうえ、栄養もしっかり摂ることができるので、子どもの飲み物としてもおすすめです。
材料
材料は以下のとおりです。
- 黒千石大豆
- 水
出がらしの黒千石大豆は、そのまま料理に使うこともできます。
作り方
作り方は以下のとおりです。
- 黒千石大豆をフライパンでしっかりと炒る
- 急須に炒った黒千石大豆を入れてお湯を注ぐ
- 3分程蒸らす
黒千石大豆大さじ3に対して約500mlのお湯を目安として、好みに合わせて調整してみてください。
まとめ
北海道で栽培されている幻の大豆、黒千石大豆について紹介してきました。一度、完全に栽培が停止された歴史があるものの、黒千石大豆は農家の情熱や手間をかけた栽培によって再復活した貴重な黒豆です。
健康や美容にもさまざまな効果が期待できる黒千石大豆を、ぜひ一度食べてみてはいかがでしょうか。