すき焼きの肉といえば「豚肉」ですか?北海道の意外な”すき焼き事情”とは
年末年始に食べる料理といえば?年越しそばやおせち料理の次に思い浮かべるのが「すき焼き」という方も多いのではないでしょうか。
老若男女に親しまれている「すき焼き」ですが、北海道のすき焼きには「豚すき焼き」なるものがあることをご存知ですか?
この記事では、北海道の意外な「すき焼き事情」をご紹介。北海道のすき焼きの歴史から、北海道の豚肉がおいしいワケ、豚肉を使った特産品まで詳しくご紹介します。
北海道のすき焼きのお肉は「豚」が主流!
すき焼きのお肉といえば?と聞かれると、多くの人が「牛肉」と答えるのではないでしょうか。ニュースサイト運営会社である株式会社ジェイ・キャストのアンケート調査によれば、全体の86.7%が牛肉派。次いで豚肉派が10.9%、鶏肉派が1.5%、その他が0.8%となったそう。
しかしこの結果はあくまでも全国値。北海道だけの結果を見ると、なんと55.2%が「豚肉派」だったのです。牛肉派は43.8%、鶏肉派とその他はそれぞれ0.5%。
他地域でも一定数「豚肉派」はいるものの、半数を超えたのは北海道だけ。
北海道のすき焼きといえば「豚肉」という方が多いことがうかがえます。
なぜ北海道では「豚すき焼き」?
ではなぜ、北海道では「豚すき焼き」が一般的になったのでしょうか?
かつて北海道では、牛肉はとても高価な食材でした。地域の特性上、手に入りにくい牛肉よりも安価で身近な豚肉の方が、北海道では好まれてきた歴史があります。そのため、豚肉をすき焼き肉として使うことも一般的でした。
1991年から牛肉の輸入が自由化されたことで、北海道でも安価な牛肉が手に入るようになりました。しかしそれまではなかなか食べられない「高級食材」だったのです。
ちなみに北海道以外の新潟県や東北地方の一部でも、豚すき焼きが食べられているそうですよ。
北海道のすき焼きの源流は「肉鍋」
北海道の豚すき焼きは別名「肉鍋」とも言われています。その名の通り、鍋つゆの要領で「割り下」をいれ、豚肉や野菜などの具材を煮込んで作ります。
この作り方は、関東風のすき焼きに近いと言えるでしょう。
関東地方のすき焼きは、醤油・砂糖・酒・みりんなどで作った「割り下」を鍋に入れ、沸騰させたところに牛肉や野菜を加えて「煮る」料理です。
一方で関西地方では、すき焼きは「焼く」料理。まず牛肉を焼き、そこに砂糖や醤油を足して味をつけることが特徴です。野菜などの具材は一度に全部入れるのではなく、少しずつ加えながら調味料と水で味を整えます。
北海道の豚すき焼きである「肉鍋」、関東風すき焼き、関西風すき焼きに共通しているのは、味のベースが醤油と砂糖の甘辛味であることと、生卵をつけて食べること。「煮る」と「焼く」という作り方の違いにより、その味わいや風味が異なります。
なお、豚すき焼きで使う薄切り肉は、部位によって違う味わいが楽しめます。脂がのってジューシーな、柔らかいお肉がお好きな方は豚バラ肉を。ヘルシーで食べ応え重視の方には、モモやロースがおすすめです。ぜひお好みの味を探してみてくださいね。
北海道は豚肉の一大産地!
「豚すき焼き」が広がった北海道は、豚肉の一大生産地!鹿児島、宮崎に次いで全国3位の飼養数を誇っています。
令和4年(2022年)時点での豚の飼養数とその割合は、以下の通りです。
都道府県名 | 飼養数 | 全国シェア率 | |
---|---|---|---|
1位 | 鹿児島県 | 1,199,000頭 | 13.4% |
2位 | 宮崎県 | 764,200頭 | 8.5% |
3位 | 北海道 | 727,800頭 | 8.1% |
4位 | 群馬県 | 604,800頭 | 6.8% |
5位 | 千葉県 | 582,500頭 | 6.5% |
北海道と豚の生産の歴史は古く明治初期から始まり、北海道開拓の歴史とともに発展してきました。養豚業が盛んな十勝地方では明治末期から生産が始まったとされています。
暑さに弱い豚にとって、北海道の冷涼な気候はストレスフリーな飼育環境。そのため病気の治療や予防のために使う薬剤の使用が少ない傾向があります。
さらに養豚施設は、広大な北海道の土地を生かして設置されています。他の施設との距離が十分に保たれているため、たとえ疫病が発生しても感染が広がりにくいという利点もあります。
北海道では農産物の生産も盛んなため、農産物の加工過程から出る残渣(ざんさ)を使って独自のエサを与えている養豚場も少なくありません。
北海道の雄大な自然環境の中でのびのび育った豚は、身近で安心安全な食材として、北海道民から親しまれています。
すき焼きだけじゃない!豚肉を使った北海道名物あれこれ
北海道民にとって身近なお肉である豚肉。「豚すき焼き」以外にも、豚肉を使った北海道名物が多くあります。
今回は、北海道ならではのルーツを持つ「やきとり」と「豚丼」をピックアップしてご紹介します!
「やきとり」だけど豚?
北海道の中南部に位置する室蘭市の名物は「室蘭やきとり」。「やきとり」という名前ながら、使用されているお肉は「豚肉」です。豚肉と玉ねぎを交互に串に刺し、甘辛いタレをかけたものが「室蘭やきとり」。洋辛子を付けていただくのがポイントです。
かつて室蘭市には大きな製鉄所があり、周辺には手に入りやすい豚のモツや豚肉の串焼きを出す屋台が多くあったそうです。「室蘭やきとり」の元祖と言われている「鳥よし」も、製鉄所があった輪西(わにし)町で開業しています。
また、室蘭市よりもさらに南、函館をはじめとする道南地方でも「やきとり」といえば「豚肉」が出てきます。養豚場が多い道南では、鶏より豚の方が安価で手に入りやすかったのが、普及の理由とされています。
ちなみに函館名物のハセガワストアの「やきとり弁当」のお肉も鶏肉ではなく「豚肉」です。一番人気は甘辛味の「タレ」ですが、ガーリック風味の「シオ」もおすすめ!
甘辛タレが豚肉に合う!十勝の「豚丼」
養豚業が盛んな十勝地方の名物、豚丼。十勝では明治時代から養豚業が行われており、働く人たちにとっての貴重なタンパク源が、豚肉だったと言われています。
汗を流し働く農家や開拓者の疲労回復のための食事を、と生まれたのが「豚丼」。本州でのスタミナ料理「うな丼」からヒントを得て、炭火で焼いた豚肉に、蒲焼き風の甘辛タレをかけて作ったのが始まりとされています。
焼いた豚ロースやバラ肉をタレに絡めた上に、白髪ネギなどの薬味だけをのせたシンプルな味わいが特徴。肉の旨みを存分に楽しめます。
今では北海道の食品メーカーから様々な「豚丼のタレ」が発売されており、自宅で手軽に本格的な豚丼が楽しめるようになりました。
まとめ
北海道の歴史とともに親しまれてきた豚肉。すき焼きに豚肉が使われるようになった背景には、北海道の気候や環境から作られた豚肉のおいしさがありました。
日本各地で特色のあるすき焼き文化。 今年の年末年始には北海道のすき焼きとともに、関西風、関東風など、ご自身の出身地以外の「新たなすき焼き」もぜひ味わってみてはいかがでしょうか。