北海道の名産品。通称「福耳・仏の耳」と呼ばれる「銀杏草」をご存知ですか?

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北海道の中でも一部の地域でしか採れない、隠れた名産品があることをご存知でしょうか。その名も「銀杏草(ぎんなんそう)」。道産子の方でも「知らない」という方も多いのでは?

そんな珍しい食材である「銀杏草」は、真冬の北海道で獲れる海の幸です。現在は希少価値が高く、高級食材として扱われています。

この記事では、北海道の冬の味覚である「銀杏草」について解説!銀杏草が持つ驚きの栄養効果からおすすめの食べ方、保存方法まで詳しくご紹介します。

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北海道の特産品「銀杏草」って何?

銀杏草(ぎんなんそう)とは、道北の稚内・留萌地方にかけての日本海側と、道南の太平洋の一部で採れる天然の海藻です。

銀杏草は綺麗な海水と寒さを好むため、北海道でも水揚げされる場所が限られていることが特徴。さらに漁の時期も短く手間がかかるため、希少価値が高いことで知られています。

近年は天候の影響や生産者の減少に伴って、ますます流通量が減っており、高級食材として扱われています。

極寒の海で手摘みする銀杏草漁

北海道で銀杏草の漁が行われるのは、真冬の1月〜3月。それも漁船での漁ではないんです。 なんとウェットスーツに身を包んだ漁師さんたちが極寒の海に入り、手作業で一つひとつ銀杏草を摘んでいくのが、銀杏草漁の特徴です。

真冬の北海道は氷点下。日によってはマイナス10℃を下回る気温の中、体ひとつで海に入り、早朝からお昼頃まで漁が続きます。ときには漁の最中に道具が凍ってしまうこともあるそうです。
ベテラン漁師さんであっても過酷な環境で行われるのが銀杏草漁。苦労して手摘みされた銀杏草ですから、高級品であることも納得です。

「銀杏草」の由来

イチョウ

「銀杏草」という名前の由来は諸説ありますが、「海藻を広げたときの形が銀杏の葉に似ていたから」と言われています。約1年かけて大きくなる銀杏草の中には、子どもの手のひらサイズほどになるものもあります。

北海道では銀杏草はその見た目から「福耳」や「仏の耳」とも呼ばれており、冬の味覚として親しまれてきました。

さらにかつて銀杏草は、漆喰(しっくい)や建築用の糊(のり)の原料として利用されていたこともあるそうです。建築様式の変化により、現在ほとんどが食用のみで採取されており、そのほかの銀杏草は、海中を漂ったままになっているとか。

高級品である銀杏草、市場の相場は?

流通量が少なく希少価値の高い銀杏草。市場価格も年々高騰しています。

2023年現在の価格目安は、生の銀杏草100gあたり930円〜1,120円。乾燥銀杏草は40gあたり1,300円前後と少し割り高です。

「銀杏草を食べてみたい!」という方は、旬である1月〜3月に通販サイトなどをチェックしてみることをおすすめします。天然・生の銀杏草が出回ることが多いですよ。

美容・健康にも◎銀杏草の栄養効果

ミネラル

銀杏草は海藻の一種であることから、カルシウムやマグネシウム、鉄分など体の調子を整えるミネラルが豊富に含まれています。
また「アルギン酸」という海藻ならではの天然の食物繊維も多く含まれており、ダイエットにもぴったりの食材です。

さらに銀杏草は、同じ海藻類である昆布と比べて「タウリン」と「シトルリン」の含有量が多いことがわかっています。

タウリンとはアミノ酸の一種で、血液中のコレステロールを下げ、血圧を正しく保つ作用があるとされています。さらに、心臓や肝臓の機能向上、不整脈の防止、疲労回復など、様々な効果が期待できると言われています。栄養ドリンク剤の成分としても有名ですね。

シトルリンもアミノ酸の一種で、硬くなった血管を広げ、血液の流れを良くする成分であることが解明されています。血流を改善することにより、冷え性の改善やむくみ予防のほか、集中力アップや筋肉の増強も期待できます。

タウリンとシトルリンが含まれている銀杏草は、健康にも美容にも良い万能な食材と言えるでしょう。

栄養も効率的に摂取!銀杏草の食べ方

味噌汁

栄養がたっぷり詰まった銀杏草。せっかくならおいしく、栄養を逃さず食べたいですよね。 ここからは銀杏草のおすすめの食べ方をご紹介。地元漁師さん直伝の食べ方の工夫も伝授しちゃいます!

食感の違いを楽しもう!銀杏草のお味噌汁

銀杏草に含まれるタウリンは、水に溶けやすい成分。そのため煮汁ごと食べられる「お味噌汁」にしていただくのがおすすめです。

調理の際のポイントは、銀杏草を入れるタイミング。
銀杏草を食べる直前に入れると、キクラゲのような「コリコリ」の食感に。最初から入れて煮込むと、めかぶのような粘り気のある「とろとろ」の食感になります。
この2つの食感が楽しめるのが、銀杏草の大きな特徴。ちなみに銀杏草が持つ、独特の磯の香りを楽しめるのは「コリコリ」のタイミングです。

地元漁師さんおすすめの食べ方は、贅沢に「両方」の食感と香りを楽しむこと。

最初は煮込まず銀杏草のコリコリ食感を楽しみ、その後「追い銀杏草」をして火を通し、トロトロ食感も味わうのだとか。中にはわざわざ一日寝かせて、翌日さらにトロトロにした食感を楽しむ方もいるそうですよ。

寒い冬にいただくお味噌汁は格別。銀杏草をたっぷり入れて、その風味と食感を存分に味わってみましょう。

コリコリ派には銀杏草のサラダや酢の物がおすすめ

銀杏草ならではの食感を生かすなら、サラダや酢の物もおすすめです。

熱湯にくぐらせて洗った銀杏草をお好みの海鮮や野菜で和えれば、磯香りが食欲をそそる海藻サラダの出来上がり。
銀杏草にきゅうりやかまぼこ、もずくなどを加えて調味酢で和えれば酢の物に。

コリコリとした食感がクセになるおいしさは、おかずにもおつまみにもぴったりです。

おいしさそのまま!銀杏草の保存方法

冷凍

獲れたてのおいしさが楽しめる生の銀杏草は、非常にデリケートな食材です。
冷蔵で1週間程度保存できますが、水洗いしてしまうと鮮度が落ちてしまいます。

すぐに食べられない場合は水洗いせず、パッケージごと冷凍しましょう。冷凍すると1か月ほど保存が可能です。

食べる時には、凍ったままの銀杏草を包丁で切るか半解凍して折り、使う分だけ流水解凍して、砂利や砂を洗いましょう。

冷凍した銀杏草は、火を入れて「トロトロ」食感で食べるのがおすすめです。

まとめ

北海道の限られた地域でのみ獲れる海藻、銀杏草。極寒の中、漁師さんが体一つで海に入り、手間をかけて私たちの元に届けられている、貴重な海の幸です。

北海道で昔から親しまれてきた銀杏草は、生産者の高齢化も相まって、年々流通量が少なくなっています。

今まで大切に守り届けられてきた銀杏草の「2つの食感」と磯の風味、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

writerprof_honma
本間 幸乃
ライター
北海道浦河町生まれ、札幌育ち。北海道の生産者・事業者にまつわるストーリー、食やカルチャー情報など「暮らしがちょっと豊かになる」記事を執筆中。好きな六花亭のおやつは『霜だたみ』。