これで見わけられる!スルメイカとヤリイカの違いを解説
イカ焼き、リングフライ、煮物に塩辛など、古くから日本の食に関わりのあるイカ。いつでもスーパーで手に入る気軽な食材ですが、国産のイカは2種類あるのをご存知ですか?ひとつはスルメイカ。もうひとつはヤリイカです。でも、そのふたつの違いは?見分ける方法はとは?
この記事ではスルメイカとヤリイカの違いや見分ける方法、おいしいイカの見分け方や北海道のイカにまつわるイベントなどを紹介します。
この記事でわかること
- スルメイカは夏、ヤリイカは冬に出回る
- 新鮮なイカは赤茶色のものを選ぼう
- アニサキスは火を通すか、目視で取り除く
- 松前漬け、イカそうめんなど北海道ならではの料理
これってスルメイカ?ヤリイカ?その違いとは
時々、スーパーに活魚として売られていることがあるイカ。でもそのイカの種類がなんなのかわからないことはありますよね。実は北海道では主に2種類のイカが水揚げされており、それぞれ特徴があります。
違いを知ることで季節の到来を感じることができ、それぞれのより美味しい食べ方などもあるので知っておいて損はなし。ここではスルメイカとヤリイカ、それぞれの特徴を紹介していきます。
スルメイカ
北海道のイカを代表するスルメイカ。マイカと呼ばれることもありますが、これは俗名で、標準和名はスルメイカです。日本周辺に広く生息するイカで、日本での水揚げ量の7割はスルメイカなのだそう。旬の時期は6〜12月。最大の水揚げ量を誇る函館では6〜9月に最盛期を迎えます。成長しながら日本海を1年をかけて北上する魚で、10〜11月頃には羅臼町周辺で水揚げされます。
耳(頭の菱形の先端)が小さく、胴が長いのがスルメイカの見た目の特徴です。雄より雌の方が大きくなり、胴は30cm程の大きさにまで成長します。
ヤリイカよりは小ぶりではありますが、腕(触腕)はヤリイカよりも長いため天ぷらにぴったり。触腕という2本の腕には大きな吸盤が付いており、更にその吸盤に歯が付いているのも特徴の一つです。地方によってマイカの他、マツイカ、バライカなど様々な呼び名があります。
ヤリイカ
細く先が尖ったからだが槍の穂にそっくりなことから「槍イカ」と名付けられています。スルメイカ同様、北海道函館周辺で多く水揚げされており、渡島・檜山3月~5月、後志4月~5月、留萌・宗谷5月~6月、北海道南西部沿岸10月~翌1月の水揚げとなり、ヤリイカの旬は冬から春にかけてとなります。
ヤリイカはオスの方が大きく成長し、胴体の部分の長さは雄が30〜40cm、雌は20〜25cm程。槍の名を持つ通り先端が尖った耳、ほっそりとした形で長く、反対に腕は胴体の4分の1の長さ。柔らかい身なので上品な味わいのお刺身、味の良いスルメの原料として使われ、高級イカとして親しまれています。また、やはりその形から「ササイカ(笹烏賊)」とも呼ばれています。
スルメイカ・ヤリイカの比較 | |||||
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耳の形 | 胴の長さ | 腕 | 身の味わい | 適した調理 | |
スルメイカ | 小さい菱形 | 20~30cm(雌の方が大きい) | 胴の約半分 | 肉厚 | 天ぷら・煮物・イカそうめん |
ヤリイカ | 槍のように先端が尖っている | 30~40cm(雄の方が大きい) | 胴の4分の1 | 肉薄で柔らかい | 刺身・高級スルメ |
スルメイカ・ヤリイカの栄養素
イカは和食に多く使われているし、ヘルシーで健康に良さそうですよね。では具体的には、どのように良いのでしょうか。
イカには良質なたんぱく質が多く含まれ、脂質が少ない食材です。また、タウリンの含有量が多いのも特徴です。タウリンは体内でコレステロールを減らす作用があり、他にも血糖値を下げる効果が期待されるインスリン分泌促進、心臓や肝臓の機能を高めたり高血圧の予防や視力の回復など、さまざまな効果があると言われています。
さらに、必須アミノ酸がバランスよく含まれているかを数字で表した指標「アミノ酸スコア」が最大数値の100です。アミノ酸はタンパク質の元となる大切な成分。タンパク質は分解されアミノ酸として吸収されたのちに筋肉や内臓を構成する体タンパク質となるもの、脂肪として蓄積されるもの、ホルモンや抗体となるもの、エネルギーとして使われるものなど体内の様々な機能に関係しています。つまり、身体の発育や健康維持に不可欠なのですが、体内では合成出来ないアミノ酸が8種類もあります。体内で作れない以上、食べ物やサプリで摂取していかなければなりません。
どうせ摂取しなければいけないのなら、効率が良くおいしい食材から取りたいですよね。イカは低エネルギー、低脂質、高たんぱく質でダイエットのみならず健康的な生活を送るにはもってこいの食材です。
ただしイカには、ビタミンCやビタミンD、ビタミンK、食物繊維はそれほど多くは含まれていません。野菜やきのこと一緒に調理して食べれば補うことができるので、バランスを考えながら献立を考えてみましょう。
ちなみに、アミノ酸スコアが高い食材として他に、牛肉、鶏肉、豚肉、大豆、鶏卵、牛乳、カツオ、アジなどがあります。
おいしいイカの見分け方
スルメイカはまず目の色をチェック。目が美しい黒のものを選びましょう。次に胴体の方は、体表の皮の色がはっきりと残っているもの。なるべく透明感があり、触った時に色が変わる状態だととても新鮮なスルメイカです。鮮度が落ちたスルメイカは徐々に白くなっていきます。スルメイカはヤリイカより身がやや固く、煮物や焼き物で楽しむ方がおすすめですが、煮過ぎると固くなるので注意。イカそうめんはややしっかりとした歯触りと、ねっとりした食感が魅力です。比較的安価で、家庭の食卓にぴったりな食材です。
ヤリイカも見分け方はほぼ一緒です。獲れたばかりのものは半透感の白で、時間が経つと徐々に表皮の色が鮮やかな赤色になり、さらに鮮度が落ちると茶褐色になり、身が透明感のない白になります。ヤリイカは高級イカで、鮮度が良いものは刺身やお寿司などで食べるのがおすすめ。身は柔らかめで適度な歯触りがあります。甘味は強くなく、上品な味わいですが一度冷凍すると甘味は増します。お好みに合わせて使い分けてください。
気をつけたい!アニサキスについて
生でも食べられるスルメイカ。産地から近く、新鮮なイカを食べられるのだから刺身で食べたくなるものです。しかし、生で食べる場合は「アニサキス」に注意しなければなりません。スルメイカは寄生虫、アニサキスの宿主になりやすい魚介類。冷凍も加熱もせず刺身で食べる場合は、よく目でアニサキスがいないかまずは確認し、見つけたら取り除きましょう。アニサキスは24時間以上冷凍(-20℃)する事で無害化できます。60℃なら1分間、70℃以上なら瞬時に死滅させることができるとされています。食べる時もよく噛んで食べるのがおすすめです。
イカをおいしく食べるおすすめ料理
日本で古来から食べられているイカは、焼く・煮る以外にも発酵を用いた塩辛などさまざまな食べ方があります。北海道は水揚げ量が多いことから昔から親しまれているイカを使った郷土料理も存在します。おいしさだけではなく日本の歴史にも触れられるイカのおすすめ料理をご紹介します。
いかめし
「いかめし」の歴史は意外と古くなく、第二次世界大戦中の頃。米不足の深刻化が進み、函館本線森駅の駅弁として考案されたのがはじまりといわれています。当時の道南地方では大量のイカの水揚げがあり、これが米の代わりにならないかと見込まれたのだそう。足や内臓は取り、胴体の中に具を詰め込んで楊枝で留め、醤油、砂糖、塩、酒を加え、鍋でじっくりと炊き込んで作ります。具はもち米やうるち米、刻んだゲソやしいたけ、タケノコなど。家庭ごとのバリエーションが楽しみでもある料理です。
松前漬け
「松前漬け」はその名の通り、松前藩が発祥といわれている郷土料理。イカや昆布、カズノコ(ニシンの魚卵)など、地元の食材を使った保存食として親しまれています。乾燥させたスルメイカと昆布を醤油、酒、みりん、砂糖などで漬け込んでいます。昔は塩で漬け込んでいたそう。生のスルメイカを刻んで入れるイカ刺し松前漬けなどもあり、現在でも人気の高いメニューです。
イカそうめん
生のイカをまるでソーメンのように細く切り、刺身として食べるのが「イカそうめん」。麺状になっているので、麺つゆや醤油などをつけて麺のようにすすって食べることができます。新鮮なイカで作ったイカそうめんは透き通るような色で、そうめん状にしても強い歯応えが魅力。一方、加工後に一日寝かせて食べる方法もあります。歯応えは弱くなるものの、熟成されることでイカ本来の甘みが感じられ、鮮度の高いイカとは違ったおいしさが楽しめます。
イカの塩辛
イカ料理の定番中の定番ですが、産地から近く新鮮なイカを加工する北海道のイカの塩辛はおいしいものが多いと評判です。イカの塩辛はイカの筋肉と内臓を塩で漬け込み熟成させたシンプルな保存食で、その歴史は平安時代まで遡るそう。しかも、書物に現れ始めたのが平安時代というだけで、もっと以前から作られていたのではないかといわれています。最近の塩辛は「味噌味」「ウニ入り」「キムチ味」などバリエーションも豊富。ほかほかごはんの上に乗せたり、蒸したじゃがいもと一緒に食べたりと色々な食べ方で味わってみてください。
イカの天ぷら(ゲソ天)
イカの足の部分を天ぷらにした料理。ヤリイカは足が短すぎるので天ぷらにするのは難しく、スルメイカの方が向いています。普通の天ぷらのように衣をつけてあげるだけでもシンプルにおいしいですが、北海道ではザンギのように醤油味で漬け込んで食べることもしばしば。イカ本体よりゲソ天の方が好き、という人もいるくらい北海道ではポピュラーな料理です。
スルメ
あたりめとも呼ばれることがあるスルメ。「するめ」は日持ちがすることから「幸せが続く」、イカは「お足(お金)が多い」ので「お金に困らない」と解釈され、古くから縁起物の「寿留女(するめ)」として用いられてきました。北海道のスルメは冷たい潮風でじっくり乾燥させているものが多く、水分が完全に抜け切るまで干したスルメは旨味成分が凝縮されています。ハサミで切って軽く叩いてから食べますが、お好みで少し炙ってもOK。食べ始めはあまり味がしませんが、噛むほどに独特のおいしさで口がいっぱいになります。マヨネーズ、さらに一味などをかけて食べるのもおすすめです。
イカ墨
もともと日本で食べる習慣があったというより、中世にポルトガルの宣教師からその調理法が伝わったという説があります。江戸時代にはイカの塩辛にイカ墨をつけた富山県の郷土料理「黒作り」が作られていたそう。
沖縄の郷土料理としてあるのが「いかすみ汁」。アオリイカと脂身の少ない豚肉、ンジャナと呼ばれるニガナを煮込み、仕上げにイカ墨を加える料理です。出産した女性が最初に食べるという風習もあるそう。のぼせや頭痛、肩こり、産後の回復によい食材としてイカ墨は重宝されてきました。
イカ墨のパスタやパエリアなど、食べたら歯が真っ黒になってしまうのが難点ですが、他にはないおいしさで一度食べたらクセになる味わいです。
北海道で行われるイカに関するお祭り
北海道では、特産品ともいえるイカにまつわるお祭りが主に道南で行われています。コロナ禍でしばらくおやすみしていたりそのまま中止になってしまったイベントもありますが、2022年ごろから徐々に再開されつつあります。今後もっと増えていく可能性がありますので要チェックです。
函館いか祭り
函館市の特産品のいかを存分に楽しむイベント。会場では屋台が立ち並び、限定食の朝イカ・ほたて丼をはじめ、いか丸焼き、いかゲソ焼き、いか飯、いかゲソ焼そばなどさまざまなイカ料理が楽しめます。イカにちなんだ歌に合わせて市民が町なかを踊り歩く「いか踊り」も見どころ。イカの刺身や塩辛などのイメージを取り入れた振り付けはとってもユニーク。食べて見て楽しいお祭りです。
▶函館いか祭りの詳細はこちらやるべ福島イカまつり&海峡花火大会
横綱・千代の富士の生誕の地、北海道福島町。南は津軽海峡、北は広大な大千軒岳に囲まれた福島町の特産品はスルメイカ。夏の一大イベントとして開催される、イカと花火大会のお祭りです。30回以上開催の歴史を持つお祭りで、北海道では珍しいビーチイベントです。津軽海峡をバックに最大6号玉の花火が夜空を彩り、夏の一夜を盛り上げてくれます。
▶やるべ福島イカまつり&海峡花火大会の詳細はこちらまとめ
スルメイカとヤリイカ、意外と簡単に見分けがつくことがわかりました。ヤリイカの方が漁獲量が少なく、上品なため高価なイカとされていますが、慣れ親しんだスルメイカの方が好き、という人もいるでしょう。
近年は地球温暖化の影響により、イカの漁獲量が減少傾向にあるそうです。いつか高級食材として気軽に食べられなくなる可能性もあります。古来から神事や祝い事にも欠かせない食材だったイカ。発酵技術なども考えると、イカは日本の大切な文化のひとつです。最近イカを食べる頻度が減った、という方は、この機会に積極的に食べてみてはいかがですか?