大迫力!鮭の遡上が見られる場所・観察ポイント
秋に旬を迎える鮭。食卓にはお馴染みの魚である鮭ですが、その一生は感動と謎に包まれていることをご存知ですか?
川の激流を何度も飛び跳ねてのぼっていく鮭の様子を、テレビなどで見たことがある方もいるのではないでしょうか。このように、鮭が川の流れに逆らってのぼっていくことを「遡上(そじょう)」といいます。
この記事では、鮭の遡上について徹底解説!鮭が遡上する理由や、遡上の時期、見られる場所まで詳しくご紹介します!
この記事でわかること
- 鮭が遡上する理由について
- 札幌近郊で鮭の遡上が見られる場所
鮭の遡上とは?
鮭の遡上とは、海に出た鮭が数年後に生まれた川に帰り、川の流れをさかのぼって産卵することをいいます。
鮭が川で産んだ卵が孵化(ふか)して稚魚になると、豊富な餌を求めて海に出ます。栄養補給をして成長した鮭は、海に出てから3~4年後、産卵のために生まれた川へと戻ってくるのです。
では、なぜ鮭は遡上するのでしょうか?次からは、鮭の遡上する理由や具体的な行動、遡上の時期についてみていきましょう。
なぜ鮭は遡上するの?
鮭が生まれた川に帰ってきて遡上する理由は、鮭が産んだ卵を安全に孵(かえ)すためといわれています。
川で生まれた鮭が1匹で産む卵の数は、3千~4千粒※ほど。何万、何十万粒の卵を産む海水魚と比べると、鮭の卵は非常に数が少ないことが分かっています。
※参考:サケのふるさと千歳水族館「よくある質問」
もし鮭が海で産卵した場合、わずか3千粒ほどの卵はほとんど流されてしまうか、他の魚に食べられてしまうでしょう。
貴重な卵を守るため、鮭は生まれた川に戻り遡上して、他の魚に食べられないように砂に穴を掘って卵を産み、また砂を被せるという方法で子孫を残しています。
ところで、なぜ鮭は生まれた川に帰ってくることができるのでしょうか。このことについては諸説ありますが、鮭は生まれた川の「匂い」を覚えているという説が有力です。
川の匂いは数十種類のアミノ酸の組成によって決まるとされており、この匂いを頼りに鮭は戻ってくるそうです。
しかし、中には川の匂いだけではなく、太陽の位置や磁気を感知して方角を決めているという説もあります。広い海を出た鮭が、なぜ生まれた川に戻ってくることができるのかということについては、まだ多くの謎が残されています。
遡上の時期
鮭が遡上する時期は、生まれてから3~4年後の9月~12月ごろです。
毎年秋から冬にかけて遡上し産卵した鮭は、1週間ほどで死んでしまいます。しかしその後、無事に孵化した鮭の稚魚は、春になると海に出て北上し、長い海の回遊で大きく成長していきます。3~4年後に成熟した鮭は、太平洋最北部に位置するベーリング海から南下し、生まれ故郷である日本の河川に戻ってくるのです。
北海道で見られる鮭の遡上のピークは、おおよそ9月上旬~11月下旬です。札幌市中心部を流れる豊平川をはじめ、石狩川や千歳川などでも鮭の遡上を見ることができます。
遡上した鮭は食べられるの?
遡上した鮭は食べられないわけではないのですが、味は落ちるとされています。
その理由は、産卵のために蓄えた鮭の栄養が、遡上することで使い果たされてしまうため。特にメスの鮭は栄養分が卵に回るので、遡上する前もオスに比べて味は落ちるといわれています。
産卵前の脂ののった旬の鮭を「秋味(あきあじ)」といい、産卵後の鮭のことを北海道の方言で「ほっちゃれ」といいます。
また、「ほっちゃれ」という方言には、「疲れて元気のない人」という意味もあるほか、お菓子の名前にも使われています。
「ほっちゃれ」というお菓子は、北海道北見市にある「菓子處大丸(かしどころだいまる)」の名物。鮭をかたどった皮の中に小豆餡(あん)が入っており、ふんわりとした食感と優しい甘さのバランスが人気の和菓子です。
近年の研究では、産卵後の鮭である「ほっちゃれ」は、環境を豊かにするサイクルを生み出していることが明らかになっています。
海から川に戻ってきた鮭「ほっちゃれ」は、キツネやカモメなどの餌になり、更に食べ残されたものは昆虫類に食べられることで、陸や川の栄養につながっているのです。
鮭が遡上する川の特徴
続いては、鮭が遡上する川の特徴についてみていきましょう。鮭の遡上は日本各地で見ることができますが、共通している河川の特徴は主に次の3点です。
- 水質が自然に近い状態であること
- 水温が10℃前後であること
- 淡水の川であること
鮭が遡上し産卵する場所は、川底が砂利になっていて湧水の湧く綺麗な川です。
また、鮭は冷水魚でもあるため、高い水温を嫌うという特徴があります。近年の鮭の不漁は、温暖化による海水温の上昇が原因のひとつともいわれています。
そして、鮭は一般的な分類では淡水魚にあたるため淡水の川を好みます。淡水とは、塩分の含まない水のことです。
さてここで、淡水で生まれた鮭に不思議な生態があることをお気づきでしょうか。それは、淡水魚でありながら塩分を含む海でも生きられることです。その理由には「浸透圧の調整機能」が関係しているといわれています。
鮭には、淡水魚が持つ排泄による浸透圧の調整機能と、海水魚が持つエラを使った浸透圧の調整機能の両方があるそうです。川と海、両方で生きることができる鮭ならではの特徴ですね。
札幌近郊で鮭の遡上が見られる場所と観察ポイント
鮭は東北地方をはじめ、日本全国で遡上する姿が確認されています。その中でも一番多く遡上を見られる場所は、やはり北海道です。 2021年での北海道の秋鮭来遊数(沿岸と河川での捕獲数の合計)は、年間1,863万尾にものぼりました。
今回は、北海道の中心都市である札幌近郊で、鮭の遡上が見られる代表的な場所をピックアップ!豊平川、琴似発寒川、星置川の3か所をご紹介します。
豊平川
札幌市中心部を流れる豊平川は、鮭が遡上する川の中でも比較的アクセスのしやすい場所にあります。
豊平川では毎年約1,000尾の鮭が遡上し、産卵をしていることが分かっています。しかし、豊平川は川幅が広く、鮭の産卵スポットも広範囲に渡ります。そのため、鮭の遡上を観察したい場合は、事前に「札幌市豊平川さけ科学館」の公式HPで最新情報を確認しておくと良いでしょう。
豊平川での観察ポイント
豊平川での鮭の観察ポイントは年や時期によって変わりますが、例年多い場所は南7条大橋~豊平橋の間と、東橋~北13条橋の間です。
中でも豊平橋(上流側)、水穂大橋(下流側)、東橋(下流側)の3箇所は遡上を観察しやすいポイントです。ぜひ覚えておくことをおすすめします!
豊平川へのアクセス
- 豊平橋(上流側)~地下鉄南北線「すすきの」から徒歩10分
- 水穂大橋(下流側)~地下鉄東西線「バスセンター駅前」から徒歩11分
- 東橋(下流側)~JR千歳線「苗穂駅」から徒歩9分
「札幌市豊平川さけ科学館」の情報 | |
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名称 | 札幌市豊平川さけ科学館 |
住所 | 北海道札幌市南区真駒内公園2-1 |
電話番号 | 011-582-7555 |
営業時間 | 9:15~16:45 |
休館日 | 毎週月曜日(祝休日の場合は次の平日)、年末年始(12月29日~1月3日) |
入館料 | 無料 |
公式サイト:https://salmon-museum.jp
琴似発寒川
札幌西部を流れる琴似発寒川は、鮭が遡上する川の中でもトップクラスで観察のしやすいポイントです。毎年300~500尾ほどの鮭が遡上し、産卵しています。 川幅の広い豊平川と比べると川幅も狭く小さい川であるため、遡上する鮭の姿を見つけやすいのが特徴です。
- 寒月橋(かんげつばし)下流
- 農試公園橋(のうしこうえんばし)下流
寒月橋と農試公園橋の観察場所について、それぞれのポイントをご紹介します。
琴似発寒川での観察ポイント①寒月橋下流
琴似発寒川付近での鮭の遡上観察は、最初に寒月橋の上から見るのがおすすめです。橋の上からのぞいてみると、遡上する鮭のいる場所がよくわかります。
橋の上からではなく川岸まで下りてみると、水面が光って見えづらいことがあります。そのような場合は、偏光サングラスをかけて観察をするか、少し離れて堤防の上から観察すると良いでしょう。
寒月橋付近で鮭が多く見られる時期は、例年10月初旬~11月前半です。
琴似発寒川での観察ポイント②農試公園橋下流
琴似発寒川下流にあたる農試公園橋付近の遡上観察は、橋の上からはもちろん、右岸側からさらに下流方面に歩いた場所がおすすめです。最盛期には、遡上した鮭があちこちで産卵している様子を見ることができるといわれています。
農試公園の下流付近は、水面があまり波立っておらず、対岸の茂みが水面の反射を抑えるため、水中の鮭の様子が見やすいという特徴があります。貴重な鮭の産卵シーンを見ることができる観察ポイントですので、ぜひチェックしてみてください。
農試公園橋付近で鮭を多くみられる時期は、例年10月中旬~11月いっぱいです。
琴似発寒川(寒月橋側)へのアクセス
- JR函館本線「琴似駅」から徒歩9分
- JR函館本線「発寒中央駅」から徒歩10分
※自家用車でお越しの場合は、農試公園駐車場の利用がおすすめです。
星置川
星置川は、札幌市と小樽市の間を流れる河川です。毎年100尾ほどの鮭が遡上し産卵しているとされています。他の河川と比べると鮭の数は少なめですが、鮭の産卵が集中するポイントが複数あるので、おすすめの観察スポットです。
鮭が産卵する場所は河口から約1.5km~2km上流にあたる、国道5号線から星観(ほしみ)緑地までの一帯です。中でも特に観察しやすいポイントは、次の2か所です。
- JRの鉄橋(旧「JRえん堤」)付近
- 星流(せいりゅう)橋付近
ではJRの鉄橋と星流の観察場所について、それぞれのポイントをみていきましょう。
星置川の観察ポイント①JRの鉄橋(旧「JRえん堤」)付近
星置川での鮭の遡上観察ポイント1か所目は、JRの鉄橋付近です。
この観察ポイントには、以前堤防があったため、鮭がせき止められて産卵していたそうです。
星置川を横切るJR鉄橋がすぐ上流にあることから、通称「JRえん堤」と呼ばれていましたが、現在はこの場所にえん堤はありません。
今でもこの付近で遡上し、産卵する鮭を見ることができますが、次の観察ポイントの方が多くの鮭を見ることができるかもしれません。
星置川の観察ポイント②星流橋付近
星置川で一番おすすめしたい鮭の遡上観察ポイントは、星流橋付近です。
星流橋は3方向に分かれているため、上流側・下流側両方から観察することができます。また、ちょうど橋の真下が鮭の遡上と産卵のポイントになっているので、観察しやすいのも特徴です。
星置川で見られる鮭の遡上シーズンは、例年9月中旬~10月下旬ごろです。
星置川へのアクセス
- JR函館本線「ほしみ駅」から徒歩5分
※自家用車でお越しの場合は、星観緑地駐車場の利用がおすすめです。
まとめ
長い海の旅から生まれ故郷の川に帰り、力強く遡上する鮭の姿は感動的です。
札幌市の豊平川では、一時期の水質悪化で絶滅した鮭を復活させようと、人工孵化した鮭の稚魚を放流するなど、鮭の保護活動を行なっています。
毎年鮭の遡上を見ることができるのも、地道な環境づくりのおかげかもしれませんね。
なお、北海道の河川で鮭を釣ることは規則により禁止されています。遡上する鮭はあくまでも「観察」のみに留めておきましょう。
秋に北海道を訪れた際には、貴重な鮭の遡上する姿をぜひじっくり観察してみてください。