流氷の天使「クリオネ」の生態とは?かわいく見えて捕食シーンは衝撃的!?
愛らしい見た目と神秘的な泳ぎ方で人気のクリオネですが、その生態については未だ完全に解明されていません。クリオネを見た事のある人でも「結局動物なの?魚なの?」など、さまざまな疑問を覚える人も多いでしょう。
今回は、流氷の天使と呼ばれるクリオネについて、その生態を徹底解説します。合わせてクリオネの捕食方法や飼育方法、北海道でクリオネが見られるスポットなども紹介。ぜひ、クリオネについて詳しく知りたい人は最後まで見てみてください。
- クリオネは巻き貝
- 幼体の頃は貝殻を持っている
- バッカルコーン(触手)を使った捕食シーンが衝撃的
- クリオネは一般家庭でも飼育できる
この記事でわかること
流氷の天使「クリオネ」ってどんな生き物?
クリオネと言えば、天使の羽のような小さなヒレをはためかせて海中を泳ぐ姿が印象的です。しかし、それ以外の部分は知られていないことが多く、クリオネがどのような生き物なのか見当すら付かないという人も少なくありません。
まずは、クリオネの生態について紹介していきます。
クリオネは巻貝の仲間
クリオネは軟体動物門腹足綱裸殻翼足類ハダカカメガイ科ハダカカメガイ属の総称です。つまり、「クリオネ」という生物は存在せず、普段水族館などで見かけるのは「ハダカカメガイ」や「ダルマハダカカメガイ」という種です。
クリオネは「カメガイ」という名前の通り、巻貝の仲間です。しかし、貝殻を持っているのは幼体だけで、成体になると貝殻を失い裸になることから「ハダカカメガイ」の和名がついたそうです。
6本のバッカルコーン(触手)を持っている
クリオネはバッカルコーンと呼ばれる触手を持っています。日本語では口円錐と呼ばれる部分で、クリオネがもつバッカルコーンは6本です。
クリオネは半透明な身体に2カ所赤みがかった部位がありますが、上部の赤い部分にバッカルコーンが収納されています。このバッカルコーンはとあるシーンで使われるのですが、なかなかにショッキングで後ほど詳しく解説します。
クリオネを英語にすると?
クリオネはハダカカメガイ属の総称で英語ではClioneと表します。この名前は、ギリシア神話に登場する文芸の女神クレイオーから付けられたと言われていますが、その詳しい理由は分かっていません。
また、英語ではクリオネをsea Angelと表すこともあります。日本でクリオネを「流氷の天使」と呼ぶのは、英語名からきているとも考えられるでしょう。クリオネはハダカカメガイ属の総称として使われる名前ですが、sea Angelはクリオネよりも広い意味で裸殻翼足類の総称として用いられる言葉です。
クリオネの生息地
クリオネは北極や南極を含む冷たい海域に広く生息しており、日本でも一部の海で見ることができます。
生息域によって種類や大きさに差があり、日本周辺の海域で見られるクリオネは0.5~3cm程のものが多いです。しかし、北極などでは主に3.5~8cm程が一般的なサイズとされており、中には10cm程のクリオネも存在します。
日本では北海道で見られる
日本国内では、主に北海道のオホーツク海側にクリオネが生息しています。クリオネは流氷と共に北海道にやってくるため、紋別や網走、知床など流氷観光で有名なスポットでは比較的クリオネが見やすい傾向にあります。
富山湾では新種が発見された
寒流域に生息するクリオネですが、2016年に富山湾で発見された例があります。この際に発見された5種のクリオネは、新種であったことが2017年に発表されています。
これらの5種は日本の固有種とされ、未だ正式な学名や和名などは決められていません。また、これらの新種クリオネは日本海の酸性化に伴い、発見からわずか2年後に絶滅が危惧されています。
クリオネの種類
世界でハダカカメガイ科に属するものは16種存在し、さらにハダカカメガイ亜科には8種が確認されています。
続いては、クリオネの種類についてみていきましょう。
ハダカカメガイ
北海道近海などにも生息し、日本の水族館などでも多く展示されているのがハダカカメガイです。日本人のイメージするクリオネは、ハダカカメガイであることが多いでしょう。
体長は1~3cmほどです。
ダイオウハダカカメガイ
北極や北大西洋に生息するクリオネです。ダイオウハダカカメガイはハダカカメガイの中でも最大種と言われ、10cmの個体も存在します。これまで、ハダカカメガイが大きく育ったものだと思われていましたが、違う遺伝子を持つ別種族であることが明らかになりました。
ナンキョクハダカカメガイ
ナンキョクハダカカメガイは南極に生息するクリオネです。クリオネの中でも珍しい、毒を持つ種族として知られています。
ダルマハダカカメガイ
オホーツク海に生息する比較的小型のクリオネです。ダルマハダカカメガイは体長8mm
程の個体が多く、2016年に発見されました。バッカルコーンが短く、ダルマのように丸みがかった形が特徴的です。
クリオネの意外な生態3つ
可愛さばかりが注目されがちなクリオネですが、実はそんなイメージとは全く異なる一面を持っていることをご存知でしょうか。
続いては「こんなのクリオネじゃない!」と言いたくなるような、あまり知られていないクリオネの生態を紹介していきます。
その1.悪魔的?トラウマものの捕食シーン
クリオネは、殻を持つ幼体の時期に植物プランクトンを食べて育ち、成体に成長すると肉食になることが分かっています。クリオネが肉食なんて、全く想像できませんよね。
クリオネは主にミジンウキマイマイという巻き貝を食べます。同じ巻貝を食べる時点で、既にショッキングに感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、本当にショッキングなのはクリオネの捕食方法です。
クリオネは捕食の際、頭部分がパカッと左右に割れ、中から6本の触手・バッカルコーンが出てきます。バッカルコーンでミジンウキマイマイを捉え、触手の1本を突き立てて養分を吸い上げてしまいます。その時間は何と20~30分におよび、ミジンウキマイマイはジワジワと体内の養分を吸い取られ、最後に残るのは殻だけです。
バッカルコーンを大きく広げて獲物に襲いかかる姿は、エイリアンを連想させ「悪魔的」なんて言われることも少なくありません。「見た目が可愛いだけにギャップがすごい」「トラウマになる」など、クリオネの捕食シーンに恐れおののく人も後を絶ちません。
その2.意外な呼吸方法
クリオネは生きているため、何らかの方法で酸素を取り込まなければいけません。しかし、一見エラのようなものも見当たらず「どうやって呼吸しているの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
実は、クリオネは皮膚呼吸で海中の酸素を体内に取り込んで生きています。そのため、僅かな酸素でも効率良く吸収することができると言われています。
その3.1年絶食できることもあるタフネスな生き物
クリオネは自然下であればミジンウキマイマイを捕食して生きていますが、水族館などで展示されている個体は何を食べているのかご存知ですか?
ミジンウキマイマイは捕まえることが難しく、さらにクリオネは人工餌を食べません。そのため、展示されているクリオネは何も食べずに生きています。
クリオネは1年以上餌を食べなくても生き続ける個体が確認されている位、飢餓状態に強いタフな生き物です。そのため、餌を得られる自然界ではどの位寿命が続くのか未だ解明されていません。
クリオネとおうちで過ごせる?一般家庭でも飼育可能
自宅でアクアリウムなどを楽しむ人のなかには、クリオネを飼ってみたいと考える人もいるでしょう。愛らしいクリオネをいつでも気軽に見ることができるのは大きな魅力です。また、飼育することでトラウマものと名高いクリオネの捕食シーンを観察してみたいという人もいます。
実は、クリオネはある方法を使えば一般家庭でも飼育可能です。続いては、クリオネの飼い方について紹介していきます。
クリオネを販売している場所と生体価格
まずは、クリオネの生体を手に入れなければ何も始まりません。
クリオネはペットショップや観賞魚専門店などで取り扱われている場合があります。また、クリオネが近海に生息している北海道では、観賞用などとしてスーパーや鮮魚店で生体のクリオネが販売されていることもあります。
クリオネの平均相場価格は1匹1,000〜1,500円前後です。
クリオネの飼い方
クリオネを飼育するためには、海水を冷たい状態で維持する必要があります。クリオネの飼育に適した水温はおよそ0度です。日本では室内に置いておくと、0度の水温を維持するのはまず不可能でしょう。
そこで、冷蔵庫を活用します。クリオネを入れた容器を冷蔵庫に入れておくことで、水温を0度に保つことが可能です。万が一、冷蔵庫の出力が強く、0度以下になっても海水は凍りにくいため、クリオネが氷漬けになってしまうようなことにはならないでしょう。
容器は瓶やペットボトルなどでも構いません。雑菌の繁殖を防ぐために蓋が閉められるタイプのものを選んでください。
ポンプや海藻は必要ないの?
水中生物を飼育する際には、酸素の供給が不可欠です。熱帯魚などの場合、水草などを入れて光合成を促し水中に酸素を発生させたり、ポンプを使って人工的に酸素を送り込んだりすることも珍しくありません。
しかし、0度で光の当たらない冷蔵庫内の環境では水草は育たないうえ、ポンプを使うと泳力がほとんどないクリオネは水流に巻き込まれて死んでしまう可能性が高いです。
そもそも、クリオネは全身を使った皮膚呼吸で海中の空気を取り込んでいるため、わずかな酸素でも生きることができます。こまめに酸素を含んだ水に取り換えてあげるだけで、酸素は充分供給できるでしょう。
1~2週間に1度は、急激に水質が変わってしまわないよう1/3ずつ水を交換していくのがポイントです。
クリオネの餌は何をあげるの?
飼育するからには餌が必要です。しかし、1年絶食できることもあるタフネスな生き物で紹介したように、クリオネの主食となるミジンウキマイマイは、餌として捕まえることができず、クリオネも生き餌以外を食べることがありません。
つまり、与える餌が存在しないのです。基本的にクリオネの飼育は生きている間の観察がメインとなります。クリオネは餌を食べなくても約1年ほどは生きられると言われているため、観察期間(飼育期間)は良くて約1年と考えてよいでしょう。
流氷近くの海水などをすくって、偶然ミジンウキマイマイを捕まえることができれば話は別ですが、基本的に飼育している環境でクリオネの補食シーンを観察するのは不可能です。
北海道でクリオネが見れるスポットはどこ?
日本で最も多くクリオネが生息するのは北海道近海です。そのため、北海道を訪れた際に本物のクリオネを見てみたいと考える人も少なくありません。
最後に北海道でクリオネを見られるスポットを紹介します。
水族館や研究施設
近年、全国のさまざまな水族館でクリオネが見られるようになりました。もちろん、北海道の水族館にも多くのクリオネが展示されています。
間近で確実にクリオネを観察したいのであれば、水族館や研究施設を訪れるのがよいでしょう。北海道では以下の施設でクリオネが展示されています。
※2022年11月時点の情報
- おたる水族館
- サンピアザ水族館
- オホーツク流氷館
- オホーツク流氷科学センター
- 蘭越町貝の館
ちなみに、2016年に新種として発見されたダルマハダカカメガイですが、この際の発見者は蘭越町貝の館の学芸員だそうです。
おたる水族館
住所 | 〒047-0047 北海道小樽市祝津3丁目303番地[map] |
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電話番号 | 0134-33-1400 |
営業時間 | ・通常営業 9:00~17:00(最終入館16:30) ・冬期営業 10:00~16:00(最終入館15:30) |
休館日 | 2022年11月28日(月)~2022年12月16日(金)、2023年2月24日(金)~ |
公式サイト | https://otaru-aq.jp/ |
サンピアザ水族館
住所 | 〒004-0052 北海道札幌市厚別区厚別中央2-5-7-5[map] |
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電話番号 | 011-890-2455 |
営業時間 | 10:00~17:00(最終入館16:30) |
休館日 | なし |
公式サイト | https://www.sunpiazza-aquarium.com/ |
オホーツク流氷館
住所 | 〒093-0044 北海道網走市天都山244番地の3[map] |
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電話番号 | 0152-43-5951 |
営業時間 | ・5月~10月 8:30~18:00(最終入館17:30) ・11月~4月 9:00~16:30(最終入館16:00) ・12月29日~1月5日 10:00~15:00(最終入館14:30) |
休館日 | なし |
公式サイト | https://www.ryuhyokan.com/ |
オホーツク流氷科学センター
住所 | 〒094-0023 北海道紋別市元紋別11[map] |
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電話番号 | 0152-43-5951 |
営業時間 | 9:00~17:00(最終入館16:30) |
休館日 | 毎週月曜日(祝日は除く)、祝日の翌日、年末年始(12月29日~1月3日) |
公式サイト | http://giza-ryuhyo.com/ |
蘭越町貝の館
住所 | 〒048-1341 北海道磯谷郡蘭越町港町1401番地[map] |
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電話番号 | 0136-56-2102 |
営業時間 | 9:30~16:30 |
休館日 | 毎週月曜日。11~3月は冬季休館。7・8月は無休。 |
公式サイト | https://www.town.rankoshi.hokkaido.jp/kainoyakata/ |
鮮魚店
北海道では、鮮魚店やスーパーなどでクリオネの生体が販売されていることがあります。もちろんクリオネは、食用ではなく観賞用のものです。瓶やプラスチックケースに入った状態で売られている様子は、他府県民からすると驚愕の光景と言えるでしょう。
宿泊地の近隣に鮮魚店やスーパーがあれば、ぜひチェックしてみてください。
流氷ツアー
クリオネは流氷と共に北海道近海にやってきます。流氷が着岸する頃に、付近の海水をバケツですくうとクリオネが捕獲できることもあります。
流氷ツアーでは、クリオネ観察などを盛り込んでいることもあるため、野生のクリオネを見たいのであればチェックしてみてください。また、ツアー会社によっては、クリオネ観察をメインとした「クリオネツアー」を開催していることもあるようです。
蘭越貝の館の公式Twitterでは、流氷や海流の流れからクリオネの漂着予測情報なども配信しているので、チェックしてみてはいかがですか。
流氷ダイビング
流氷の中を自由に泳ぐクリオネの姿を観察したい人には、流氷ダイビングがおすすめです。しかし、流氷ダイビングは通常のダイビングと比較すると遥かに上級者向け。事前にどういったアクティビティなのかを調べたうえで、案内経験豊富なプロダイバー同伴の元で行いましょう。
厚い流氷の中に差し込む光の中で、優雅におよぐクリオネを見ることができれば、一生の思い出になること間違いなしです。
まとめ
流氷の天使・クリオネについて生態や飼育方法を紹介してきました。まだまだ謎な部分も多くあるクリオネは、美しさや儚さが魅力の生き物です。一方、獰猛にも見える捕食シーンや飢餓状態でも長く生きられるタフネスなど、意外性の高い生き物としても魅力的だと言えます。
知れば知る程興味が湧いてくるクリオネ。北海道を訪れた際には、ぜひクリオネが見られる様々なスポットをめぐってみてはいかがですか。