「室蘭やきとり」と「美唄やきとり」って知ってる?焼き鳥なのに豚肉を使う理由やルーツも紹介
北海道と言えば海鮮やジンギスカンなどが有名ですが、実はここでしか食べられないやきとりがあることをご存知ですか?北海道通なら知っている、独自の文化から生まれた「室蘭やきとり」と「美唄(びばい)やきとり」。北海道を訪れるなら、ぜひとも食べておきたい逸品として人気です。
この記事では、室蘭やきとりや美唄やきとりについて徹底解説。どのようなやきとりなのか、ルーツや食べられるお店、おすすめの食べ方なども紹介しています。
- 室蘭やきとりは豚肉とたまねぎの串焼き
- 美唄やきとりは鶏のさまざまな内蔵部位を串焼きにしたもの
- それぞれ室蘭市や美唄市以外でも食べられる
この記事でわかること
北海道のご当地グルメ「室蘭やきとり」と「美唄やきとり」
北海道は豊かな海と広い大地で育まれたさまざまな食材を味わえるグルメスポットとしても人気です。郷土料理も多く、ルイベや松前漬けなど北海道ならではの食べ物も多くあります。
一方で、全国的に知られている有名な名前なのに、道外の人が驚く食べ物があることをご存知でしょうか?それが「やきとり」です。室蘭市の郷土料理「室蘭やきとり」や美唄市の郷土料理「美唄やきとり」は、道外の人が知っている「やきとり」と一味違います。
知ってる?やきとりの歴史
普段当たり前のように食べているやきとりですが、その歴史やルーツをご存知ですか。
実は歴史的に見ると鶏肉を日常的に食べるようになったのは最近のこと。やきとりとして食べるようになったのは明治時代頃と考えられます。
鶏の祖先にあたる野鶏は、縄文時代頃から日本に生息していたと考えられています。しかし、鶏肉を食べる文化はあまり発展せず、日本人は主に雉や鴨などを食用していました。
明治時代の中期頃に、鶏のモツをかば焼きにしたものを売る屋台が出始め、これがやきとりのルーツという説があります。大正時代になると、豚のモツを串焼きにした「やきとん」や鶏肉を使ったやきとりも現れ始めましたが、当時の鶏肉が貴重品であったため鶏肉を使ったやきとりは高級品だったそうです。
昭和になると、やきとり屋台が続々と固定店舗を持つようになり、同時に安価な食肉用ブロイラーの繁殖が盛んに行われるようになります。そうして、現代に近い形で大衆向けの串焼きとして、やきとりが親しまれるようになりました。
やきとりなのに鶏じゃない?室蘭やきとりとは
やきとりの歴史の中で、北海道独自に進化したのが室蘭の郷土料理「室蘭やきとり」です。
室蘭やきとりの大きな特徴は、「やきとり」という名前なのに鶏を使わず豚の串焼きであること。全国的に豚の串焼きは「やきとん」として知られていますが、室蘭やきとりは独特なルーツでやきとりとして北海道で食されています。
ここから、室蘭やきとりについてもっと詳しくみていきましょう。
室蘭やきとりってどんな食べ物?
画像出典:農林水産省Webサイト
室蘭やきとりは、豚の肩ロース肉と玉ねぎを交互に刺した串焼きです。各店独自の甘辛タレを漬けながら焼き、洋辛子を添えて食べるのが室蘭やきとりの一般的な食べ方として知られています。
近年では、豚肩ロース肉の代わりに、豚トロやサガリなど他の部位を使ったり、タレではなく塩焼きで提供したりするお店もあります。
室蘭やきとりは長ネギでなく、玉ねぎを使って串を作るのも特徴のひとつと言えるでしょう。これは、北海道で多く生産されている玉ねぎの方が安価で手に入りやすい他、長ネギよりも玉ねぎの方が豚肉に合うからという理由だそうです。
室蘭やきとりのルーツ
画像出典:農林水産省Webサイト
室蘭やきとりが生まれたのは、やきとんや鶏肉のやきとりが流通し始めた昭和初期の頃だと言われています。
昭和12年に起きた日中戦争で、食料を確保し軍用の資材として豚革を納めるために、全国で養豚が急速に広まりました。室蘭市でも養豚が盛んになり、肉と革は国に納め、鮮度が高くなければ食用できないモツだけは市内での消費が許可されました。これが室蘭やきとり誕生のきっかけです。
豚のモツを串焼きにした「室蘭やきとり」は食用ブロイラーの養殖が始まっても変わらず愛され続け、現在の形となりました。
養豚が盛んになる前から、野鳥の串焼きや豚のモツの串焼きなどは全てまとめて「やきとり」と呼ばれており、室蘭でも豚肉の串焼きは「やきとん」ではなく、鶏やもつの串焼きの総称として「室蘭やきとり」と呼ばれています。
室蘭では「豚精」と「鶏精」がある
豚肉の串焼きが一般的である室蘭やきとりですが、もちろん鶏肉を使った串焼きを提供しているやきとり屋もあります。
室蘭では一般的に「やきとり」といえば豚串が出てくるので、鶏肉のやきとりと区別するため、豚肉の串焼きは「豚精肉」もしくは「豚精」、鶏肉の串焼きは「鶏精肉」もしくは「鶏精」と表記しているお店が多いです。注文する際にメニューや看板をチェックしてみてください。
1本で何度もおいしいと評判!美唄やきとりとは
室蘭と同じく「やきとりと言えば美唄」と言われる、独自のやきとり文化が郷土料理として残るのが北海道美唄市です。
一般的にやきとりは「もも」「皮」「ハート」「砂ぎも」など、部位によって1本ずつ用意されることが多いです。しかし、美唄やきとりは、茹でた鶏のモツや肉、玉ねぎが1つの串にまとめられています。串元には皮、最後はモモ肉を刺すお店が多く、その間にはムネ、ランカン、キンカンなどさまざまな部位の鶏モツと玉ねぎが刺されているやきとりです。
美唄やきとりとして知られていますが、地元では「もつぐし」とも呼ばれ、長年愛されている美唄ならではの味です。
どうして皮とモモ肉の順番が決まっているの?
画像出典:農林水産省Webサイト
鶏肉のさまざまな部分が1本で楽しめる美唄やきとりですが、多くのお店で「串元は皮、最後はモモ肉」という順に串に刺されています。
これにはさまざまな説がありますが、皮は伸縮して串に刺した肉をしっかりと止めやすいから串元、モモ肉は脂や旨味が強いから最後(先端)にされているという説があります。
串元を皮でしっかり止めておけば食べやすく、一番はじめに旨味の強いモモ肉を食べれば、じゅわっと広がる鶏の脂でその後のモツや玉ねぎもより美味しく味わえるでしょう。美唄やきとりは、お客様に美唄のやきとりを手軽に美味しく食べて欲しいという想いから、串元は皮、最後はモモ肉の順番を守っているのかもしれませんね。
どうして数種類の鶏肉や鶏モツを1本にしているの?
画像出典:農林水産省Webサイト
美唄市で鶏のモツをふんだん使った「美唄やきとり」を初めて作ったのは、1953年「三船」というお店だと言われています。
炭鉱で栄えた美唄市では、炭鉱夫のスタミナ源として昔から鶏モツがよく食べられていました。
そんな鶏モツを手軽に美味しく食べられるよう作られたのが、美唄やきとりです。1本でさまざまな鶏肉や鶏モツを味わえるとして炭鉱夫に広まり、今や美唄市の郷土料理となりました。
また、「捌いた鶏は余すことなく使う」という考え方のもと、鶏肉も鶏モツも同じ串にして廃棄する部位を出さないようにするため美唄やきとりが産まれたという説もあります。
美唄やきとりの食べ方は「とにかくたくさん食べる」が流儀!?
洋辛子を添えて食べる室蘭やきとりと同じように、美唄やきとりにも「食べ方」があります。
それは「とにかくたくさん食べる」ことです。
美唄やきとりのルーツは炭鉱夫にあります。炭鉱で働く屈強な男たちに習い、美唄やきとりはたくさん食べることがマナーと言ってもよいでしょう。美唄では10本単位で大量に注文するのが通常で、子どもや女性でも10本や20本をペロリと平らげ、男性なら30本近く食べる人も珍しくないんだとか。
一度に大量に注文を受ける美唄やきとりのお店では、100本ほどのやきとりを同時に焼くこともあるそうです。
室蘭やきとりや美唄やきとりはどこで食べられるの?
室蘭やきとりや美唄やきとりは、それぞれの発祥地である室蘭市や美唄市で食べられます。市内には店舗型や屋台など、さまざまなお店があるため、室蘭市や美唄市を訪れた際にはお店を探してみてください。
代表的な店舗としては、室蘭やきとりは一平、味鳥、鳥よし、美唄やきとりは三船、たつみ、福よしなどです。
また、室蘭やきとりや美唄やきとりを北海道名物として取り扱っていることもあり、札幌市など室蘭市・美唄市以外でも「室蘭やきとり専門店」や「美唄やきとり専門店」などがあります。
室蘭市に近い函館市では、室蘭市に負けず劣らず豚肉を使った「豚精」のやきとり店が数多くあります。
そんな食べ方もあるの?北海道のやきとりの食べ方
北海道の2大やきとりとして名物にもなっている室蘭やきとりと美唄やきとりですが、実は北海道には地元民に愛される少し変わったやきとりの食べ方が他にもあります。
【函館】やきとり弁当
函館をはじめ道南ではやきとりといえば既に紹介した室蘭やきとりと同じく豚肉が一般的です。
甘辛ダレを絡めた豚串は白いご飯によく合います。そこに目をつけたのが函館のローカルコンビニ「ハセガワストア」のやきとり弁当です。ハセガワストアは「ハセスト」の愛称で親しまれており、函館市や北斗市、七飯市に全13店舗を展開しています。
ハセガワストアのやきとり弁当は、海苔を敷いたご飯の上に室蘭やきとり同様甘辛ダレを絡めた豚串を贅沢に盛っています。小サイズだと豚串3本、中サイズだと豚串3本+野菜串1本、大サイズは豚串4本がのっています。
元々は、ハセガワストアの店長が「お酒のあてになる弁当が欲しい」というお客様からの要望に応えてとっさに作ったのが始まりの商品ですが、あるアーティストが好んでいるという噂から一躍知名度が上昇しました。
そのアーティストとは、メンバー全員が函館市出身の人気ロックバンドGLAYです。特にGLAYのTERUさんはやきとり弁当を推しているそうで、度々「GLAYのTERUさんから差し入れをいただきました」とやきとり弁当の写真をSNSに投稿しているアーティストがみられます。
GLAYのTERUさんも愛したやきとり弁当、ファンならずとも一度は食べてみたいものですね。
【美唄やきとり】もつそば
とにかくたくさん食べるのが本場の食べ方として好まれる美唄やきとり。そんな美唄やきとりの〆に選ばれるのが、美唄やきとりを豪快に乗せた「もつそば」です。
出汁と醤油が効いた濃いめのそば汁に、じゃぶじゃぶと美唄やきとりを浸けて食べるもつそばは、定番の〆料理です。塩コショウでシンプルな味付けの美唄やきとりをそば汁に浸すと見事に味変し、さらに食が進むんだとか。いつまで経っても食べる手が止められなくなる人も少なくありません。
もつそばの持ち帰りなどに対応しているお店も多く、美唄市では年越しをもつそばで迎える家庭もあるそうです。
まとめ
「やきとりであって、やきとりじゃない」道外の人が驚く、北海道2大やきとりの室蘭やきとりと美唄やきとりについて紹介しました。それぞれ、時代や地域に根付いたルーツを持ち、今なお北海道で広く愛される郷土料理です。
北海道を訪れた際には、ぜひここでしか食べられない室蘭やきとりや美唄やきとりをさまざまな食べ方で味わってみてくださいね。