海苔の驚くべき栄養。でも食べ過ぎには注意!?体への影響は?
おにぎりや薬味、お味噌汁などともよく合う海苔は、私たち日本人にとって身近な食べ物のひとつです。黒くて薄く、一見すると特に栄養などなさそうに見えますが、海苔は「海の野菜」と称される程さまざまな栄養を含んでいます。
この記事では海苔の栄養について徹底解説。味付け海苔や韓国のりなど種類による違いなども紹介しています。海苔の栄養を知れば、きっと今すぐ海苔を食べたくなることでしょう。
- のりは「海の野菜」と呼ばれる栄養豊富な食べ物
- 特に葉酸やヨウ素を豊富に含む
- のりは1日2枚程度食べるのがよいとされる
- 世界でも生海苔を消化できる酵素を持つのは日本人だけ
この記事でわかること
「海の野菜」と呼ばれる程海苔は栄養豊富
海苔は大変栄養豊富な食べ物で「海の野菜」と呼ばれることもあります。野菜が土から栄養を取って育つのと同じように、海苔は海水の中でさまざまな栄養を吸収して育ちます。
そのため、海の恵みをギュッと凝縮したように栄養豊富な食べ物になるのです。まずは、海苔に含まれる栄養を見てみましょう。
焼き海苔100gに含まれる栄養
エネルギー | 297kcal |
---|---|
たんぱく質 | 41.3g |
ナトリウム | 530mg |
カリウム | 2,400mg |
カルシウム | 280mg |
マグネシウム | 300mg |
鉄 | 11.0mg |
亜鉛 | 3.6mg |
ヨウ素 | 2,100㎍ |
βカロテン | 25,000㎍ |
ビタミンB1 | 0.69mg |
ビタミンB2 | 2.33mg |
ビタミンB12 | 58.0㎍ |
ビタミンC | 210mg |
葉酸 | 1,900㎍ |
参照:食品成分データベース
豊富な栄養が含まれることは分かるものの、ここで紹介しているのは焼き海苔100gに含まれている栄養成分です。海苔は大きさによりますが、1枚あたり3g程度です。100gを食べようと思うと約33枚食べることになります。
海苔に含まれる栄養やそれぞれの効能
海苔にはさまざまな栄養が含まれますが、それぞれの栄養がどのように身体に影響を与えるのかピンとこない方も多いのではないでしょうか。続いては、海苔に含まれる栄養や期待できる効能について紹介します。
タンパク質
海苔の約4割はタンパク質で構成されています。このタンパク質は身体に欠かせない必須アミノ酸9種を含むため、大変良質なタンパク質と言えるでしょう。タンパク質は人体の15~20%を占めている成分のため、なるべく低カロリーでたくさんのタンパク質を含む食べ物を摂るのがよいとされています。
海苔は、正に高タンパク低カロリーの代表格と言える食べ物です。
タウリン
タウリンは牡蠣やたこ、ほたてなどに多く含まれるアミノ酸の一種です。タウリンには疲労回復などの効果が期待できることから、栄養ドリンクなどに配合されているイメージを持つ人も多いでしょう。
その他、悪玉コレステロールの減少や動脈硬化、血管障害、心疾患、心筋梗塞などの予防にも効果が期待され、肝臓の働きを活性化させるとも言われています。その他、慢性肝炎や白内障、糖尿病などの予防にも効果が期待できます。
タウリンを豊富に含むことから、お酒をよく飲む人は肝臓の働きをよくする海苔をおつまみにするのがおすすめです。
葉酸
葉酸はビタミンB群に属し、胎児の発達に欠かせない重要な栄養素です。特に、妊娠前〜妊娠初期の女性は葉酸の積極的な摂取が推奨されています。
また、葉酸はビタミンB12と共に造血ビタミンと呼ばれることもあり、赤血球の正常な製造をサポートする働きを持ちます。10万人に1~2人という少ない割合ですが、葉酸が不足しておこる「巨赤芽球性貧血」という病気もあります。
海苔は特に葉酸を多く含む食べ物なので、妊娠中の人や貧血の人は積極的に摂るとよいでしょう。
ビタミン
海苔には豊富なビタミン類が含まれていることもポイントです。
ビタミンA
ビタミンAは、粘膜や神経を正常に働かせる為に必要な栄養で、気持ちを安定させる効果も期待できます。また、海苔に含まれるレチノールは発がん物質の影響を受けにくくする働きもあると言われているビタミンAの一種です。
子どもの健やかな発達には欠かせない栄養素で、不足すると成長が止まってしまったり、皮膚や粘膜の角質化が起こってしまうことも。一方で、過剰摂取をすると頭痛や口唇炎、脱毛、筋肉痛などをはじめとする症状が起こることも報告されています。
通常の食事でビタミンAの過剰摂取に陥ることはまず無いと言われていますが、サプリなどを服用している人は注意するとよいでしょう。焼き海苔100gに含まれるレチノールは2,300μg、これはビタミンAが豊富と言われている牛レバー100gに含まれるレチノール量の約2倍に当たります。
ビタミンB
海苔に含まれるビタミンBは葉酸の他にB1、B2、B12などがあります。ビタミンB1やB2は、糖質をエネルギーに変換する際に必要な成分です。
その他、ビタミンB12は葉酸と共に造血ビタミンとして正常な赤血球を作り出すために欠かせない栄養と言えるでしょう。
海苔にはこれらのビタミンB群に属する栄養が豊富に含まれています。
ビタミンC
美白効果が注目されがちなビタミンCですが、コラーゲンを合成したり、非ヘム鉄(野菜などに含まれることが多い鉄分)の吸収をサポートするなど重要なビタミンのひとつです。
しかし、ビタミンCの多くは水に溶けやすく熱に弱い性質を持っているため、効率良く吸収するためにはさまざまな工夫が必要でしょう。海苔に含まれるビタミンCは、熱に強いため加熱しても余すことなく栄養を享受できます。
鉄分
造血作用を正常に働かせるために欠かせない鉄分も海苔に含まれています。海苔に含まれる鉄分は非ヘム鉄です。
非ヘム鉄はヘム鉄に比べると吸収率が悪いと言われています。しかし、海苔には非ヘム鉄の吸収を助けるビタミンCが含まれるため、とても効率的に鉄分をとれる食べ物だと言われています。食物繊維
海藻と言えば、豊富な食物繊維を持っているイメージが強いですよね。藻類からできている海苔も、もちろんたくさんの食物繊維を含んでいます。
海苔は全体の1/3が食物繊維で構成されているため、便秘の解消などにも高い効果が期待できます。また、海苔の持つ食物繊維は腸内環境を整え、発がん物質の排出効果や大腸がんの予防効果が期待されます。
カルシウム
牛乳や卵などに豊富に含まれることで有名なカルシウムは、歯や骨の健康な成長に必要な栄養です。そんなカルシウムが海苔にも豊富に含まれています。
特に現代人はカルシウムやミネラルが不足していると言われていますが、海苔はこれら2つの栄養を効率良く摂取できる食べ物です。
ヨウ素
ヨウ素は甲状腺ホルモンの生成に必要なミネラルの一種です。海藻類に多く含まれ、甲状腺ホルモンには新陳代謝を促す働きがあり、生殖や身体の成長にも影響を与えます。日本では古くからヨウ素を多く含む海産物を食べる習慣があるため、ヨウ素が不足するケースはあまり聞かれません。
寧ろ、長期間に渡る過剰摂取が心配されます。ヨウ素は長期間過剰摂取すると甲状腺ホルモン分泌の低下を促してしまうことが分かっています。その他、筋力の低下、体重減少などさまざまな影響があります。
イコサペンタエン酸(EPA)
イサコペンタエン酸は人間が身体の中で合成できない脂肪酸、必須脂肪酸の一種です。体内の血流をスムーズにしたり、悪玉コレステロールの抑制、コレステロール値の低下、中性脂肪の減少などさまざまな効果が期待できます。
海苔にはイコサペンタエン酸が豊富に含まれることが分かっています。
海苔の種類による栄養の違い
海苔といってもさまざまな種類があります。それぞれに栄養にも違いがあるため、求める栄養や用途に合わせた海苔を選ぶのがよいでしょう。
焼き海苔
焼き海苔とは、生海苔を乾燥させて焼いたものです。シンプルなため、巻き寿司やおにぎり、薬味などにも適しています。
生海苔を乾かして焼いただけなので、殆ど加工されておらず、他の海苔に比べて低カロリー低糖質であることが特徴です。
味付け海苔
味付け海苔は生海苔を乾燥させて味付けした後焼いたものです。すでに味が付いているため、ご飯のお供として用いられることが多く、栄養の高さから学校給食などの献立に追加されることも多くあります。
醤油ベースで味付けされているものが多いため、味付けのりは比較的ナトリウム量が多いです。また、ごく僅かな差ですが、焼き海苔に比べるとカロリーも高めの傾向にあります。
韓国海苔
韓国海苔はごま油と塩で味付けされた海苔で、香ばしく塩味の効いた海苔として韓国で親しまれています。韓国のりはごま油を使っているため、特に糖質が高い傾向にあります。また、ナトリウム量も比較的多いです。
岩海苔
岩海苔は、岩場に自生している海苔で日本の他、朝鮮半島やイギリスなどにも分布しています。磯の香りや甘みが強く、日本で古くから食べられている海苔のひとつです。
岩海苔はカリウム含有量が特に多いのが特徴です。ビタミンKや食物繊維量も多い一方、ビタミンCの含有量はあまり多くありません。
海苔1枚の栄養はこんな食品と同等
海苔の栄養は100gあたりの指標で表されることが多いため「結局1枚でどれ位の栄養が摂れるの?」と疑問を感じる人も少なくありません。
ビタミンAの含有量に関しては、卵1個や牛乳350cc、にんじん10gと同等と言われています。ビタミンB2はいわし1尾と同等の含有量、鉄はほうれん草1株と同じ位の栄養が海苔1枚に含まれています。
こうして見ると、海苔がいかに高い栄養を持っているか分かりますね。
海苔は一日何枚食べるのがいいの?
海苔に含まれる豊富な栄養をバランス良く摂り入れるには、適切な摂取量を意識することが大切です。昔から「海苔を1日2枚食べれば医者はいらない」などと言われることもあります。
海苔1枚を食べることで、成人が一日に必要な以下の栄養を摂取できます。
- 一日に必要な葉酸の1/4
- 一日に必要なビタミンB12の3/4
- 一日に必要なヨウ素の2/3
以上のことから、のりの1日の摂取量は2枚が適量と考えられています。
海苔を食べ過ぎると身体に悪い?
海苔の栄養について学んでいくと海苔の食べ過ぎに対する注意喚起を見かけることも多いです。
これは、海苔に含まれるヨウ素の過剰摂取を危険視するもので、甲状腺機能低下症を防ぐためにもヨウ素の過剰摂取は控える方がよいでしょう。
しかし、ヨウ素の過剰摂取とは具体的にどれ位なのか知らずに危険視している声が多いことも見過ごすことはできません。厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準によると、ヨウ素の上限摂取量は3.0mgとされています。
これを海苔の栄養に当てはめると、1日で約47枚以上を食べると過剰摂取になるでしょう。しかし、1日に約47枚食べる機会はそう多くありません。適量であれば、海苔は健康を害する所か豊富な栄養の恩恵を受けられる高機能食品と言えます。
海苔の栄養を得られるのは日本人だけって本当?
外国人は海苔を食べるとお腹を壊す、という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?これは半分真実、半分嘘です。
日本人は古くから海苔を食べる文化があるため、生海苔の持つ固い細胞壁を分解する酵素を持っています。これは、海苔を食べる文化を持たなかった外国人には無いもので、日本人特有のものです。
そのため、外国人は日本人に比べると海苔の分解が苦手な傾向にあるでしょう。
しかし、焼き海苔や味付け海苔、韓国海苔などをはじめとする加工品は、加熱の際に細胞壁が破壊されています。固い細胞壁さえなければ、誰でも消化分解することができるので、外国人でも焼き海苔や味付け海苔などであれば美味しく食べることができます。
あくまで、外国人が消化・分解できないのは「生海苔」だけです。港町などでは旬の時期に生海苔を食す機会もありますが、外国人観光客などにはおすすめしないよう注意が必要ですね。
海苔は意外に塩分が少ない
海産物は塩分が多いイメージを持つ人も多いでしょう。海苔についても塩分量を気にする声が多く聞かれます。
しかし、海苔はとても塩分量の少ない食品であることをご存知でしょうか。
味付けをしていない焼き海苔はもちろんですが、味付け海苔などは味も濃いため塩分が高いのでは?と思われがちです。そんな味付け海苔の塩分量は1袋5枚入りでも約0.06gと言われています。
意外と少ないと思った人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の示す健康な成人男性の塩分摂取量目安は7.5g未満、成人女性の場合は6.5g未満とされています。1食当たり2.1〜2.5gの塩分量に抑えることを考えると、味付け海苔の塩分量の少なさがよく分かるのではないでしょうか。
おにぎりやご飯のお供として食べる際、海苔は最も外側に位置しており一早く舌に触れます。そのため、塩分量が少なくても味がしっかりと感じやすいのです。減塩したい人は、上手に味付け海苔を活用してみてください。
海苔の旨味を活かした佃煮もおすすめ
焼き海苔を食べると、何も味を付けていないにも関わらず海苔の旨味を強く感じますよね。
これは、昆布の旨味成分であるグルタミン酸、鰹節の旨味成分であるイノシン酸、椎茸の旨味成分であるグアニル酸の3つの旨味成分を含んでいるからです。さらに、グルタミン酸とイノシン酸は組み合わせることで相乗効果が生まれ、より旨味成分が高まることが分かっています。
相乗的に旨味の強い海苔を使った佃煮は、食感もさることながら、日本人の舌に馴染む深い味わいを感じられる加工食品です。醤油やみりんなどで煮詰めた海苔の佃煮はご飯のお供にもぴったりです。
まとめ
海苔の栄養について紹介してきました。栄養不足な人や偏食でバランスよく栄養を摂れない人におすすめな海苔。上手に摂り入れることで、豊富な栄養を余すことなく享受することができます。
ぜひ、栄養豊富な海苔を食べて身体の中から健康を保ってみてはいかがでしょうか。