ハムやベーコンの「無塩せき」って何? 無添加とは違うの?

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「無塩せき」という言葉を聞いたことはありますか?

実は市販のハムやベーコンなどに、「無塩せき」と表示されているものがあるんです。じゃあそもそも「塩せき」って何? と思いますよね。化学の知識がある方なら「塩析」と思ってしまうかもしれませんが、これは別物です。本記事では、ハムやベーコンの無塩せきについて解説します。

    この記事でわかること

  • 無塩せきとは、発色剤・着色料不使用のこと
  • 無塩せきだからといって無添加ではない
  • 素材本来の素朴な味わいが楽しめる
  • 見分けるポイントは、亜硝酸の有無
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「塩せき」と「無塩せき」って何?

「塩せき」は、漢字表記をすると「塩漬」となります。本来「塩漬」は「えんし」と読みましたが、「えんせき」と誤読され、それが定着してしまったとのこと。定着した誤読がさらに誤読されないように、今ではひらがなが一般的になっているのは少し面白いですね。

塩せきとは

ハムやベーコンなどの製造工程には、塩やスパイスなどを直接素材に塗りこむ「乾塩法」と、塩をはじめとした調味料を溶かした液(塩せき液)を作って、それに素材を浸すことで、肉に調味料をなじませる「湿塩法」があります。

この塩せき液に漬け込むことを「塩せき(塩漬)する」と言いますが、では「乾塩法」のことを「無塩せき」と言うのかというと、違います。

無塩せきとは

無塩せきのイメージ

無塩せきとは、「塩せき液に発色剤を使用していない」ということなんです。なので、厳密に言えば「塩せき液」には漬けています。

ただ、塩せき液には通常の調味料(塩、糖類、たんぱく、香辛料など)の他に、保存料や酸化防止剤、発色剤、化学調味料などが加えられることが多く、これによって色鮮やかで見た目も美しく、日持ちもするハムやベーコンができあがります。この中で、「発色剤を使わない」ことが「無塩せき」を表示する条件となっています。ここが少し誤解されやすいポイントかもしれませんね。

ちなみに、肉を液に漬け込むのではなく、大きな注射針のようなもので調味液を直接肉に注入する塩せき法もあります。工場などで専用の機械を使ってやることが多いようです。

塩せきによっておいしい効果も

塩せきのイメージ

「塩せき」することで肉を熟成させ、旨みと独特の風味を作りだし、ハムならではの味わいを生み出します。 また、肉の保水性を高め結着力を向上させることで、しっとりとした食感や弾力などを生み出す効果もあります。

前述の通り、鮮やかな見た目や日持ちするというメリットがあるので、一概にどっちがいいとは言えません。

「無塩せき」って無添加ということ?

結論からいうと、これもまた違います。「無塩せき」は、塩せき液の中に発色剤が入っていないということだけなので、「無添加」と合わせて表記されていなければ、食品添加物は使用されています

無塩せきと無添加の違い

「無添加」は発色剤をはじめとした食品添加物を一切使用しないことなので、「無添加」であれば「無塩せき」でもありますが、「無塩せき」がイコール「無添加」ではありません。

無塩せきと無添加の違い

そもそもハムやベーコンなどの食肉加工品は、生肉よりも保存性を高めるために加工されたものなので、成形や保存の助けになる添加物は使用されていることが多いです。

また、「無塩せき」では使用されない発色剤(多くは亜硝酸ナトリウム)も、色合いだけの問題ではなく、亜硝酸ナトリウムにはボツリヌス菌などの増殖を押さえる働きがあり、同時に、熟成によりハムやベーコンなど加工品独特の風味を作り出す働きも持っています。

塩せきが体に悪いわけじゃない

ハムやベーコンなどの食肉加工品

もともとハムは、古代の人々が狩猟で得た肉を岩塩で塩漬けすると、防腐効果があると共に獣臭さが軽減でき、肉の色の良さも保てることを経験で学んだことから歴史が始まっています。後に燻製の技術と融合して保存食として確立されてきました。

基本的には塩の殺菌作用に期待した製法ですが、岩塩に含まれていた硝石がバクテリアによって分解されて亜硝酸となり、肉に働きかけていたと思われます。

亜硝酸ナトリウム自体は、実は普通の野菜などにも含まれていたり、人間の体の中で生成されたりなどもします。なので、なるべく取り入れたくないという方は「無塩せき」を選ぶといいでしょう。


より体に良いものは?

現在の日本では、食品に添加して良いものが厳密に定められています。なので、安全かどうかで言うならば、添加物が使用されていても安全です。

ただ、より体に優しいもの、素材本来の味わいを楽しみたいという方は「無塩せき」「無添加」がおすすめです。

無塩せきは少し色みが薄い

無塩せきのロースハム

「無塩せき」のハムは発色剤や着色料を使わないため、一般的なハムと違って、少し色みがよくないようにも見えてしまいます。けれどこれは、加熱した食肉と考えれば、ピンク色をしていないのは当たり前のことですね。

無添加は手に入らないのが実状

「無添加」については探すのが少し難しいかもしれません。結着剤を使用しなければ成形がむずかしく、保存料を使用しなければ日持ちがしません。

もともとハムやベーコンは肉を日持ちさせる保存食でした。衛生に配慮した保存料は人類の知恵とも言えます。人間は長い歴史の中で、食料を保存する技術を得てきましたが、保存食と保存料は切っても切れない関係と言えるでしょう。

「無塩せき」の魅力

無塩せきのベーコンエッグ

「無塩せき」と言っても、「塩せき液」に漬ける工程はあるので、減塩に直結するわけではありません。「無塩せき」の魅力は、自然な色合いと素朴な風味です。素材の良さが製品の見た目に直結してしまうので、こだわりの素材を使って丁寧に作られている証とも言えるでしょう。

もちろん、上でも述べたように少量の亜硝酸ナトリウムはボツリヌス菌の増殖を抑え、熟成された肉の旨みや風味を増す働きもあります。メリット・デメリットを踏まえた上で、お好みの商品を選んでください。

ハムやベーコン、ソーセージは朝食に欠かせないという方もいれば、お酒のおつまみに最適という方も。もちろん子供も大好きな食材ですよね。パンに挟んだり、お弁当に入れたり、パスタに使ったりと、日々の食生活に欠かせません。

見分け方アドバイス

食肉加工品の原材料表示を見ると、「豚肉、食塩、香辛料、糖類」などの表記がありますが、このくらいシンプルな表記であれば、これは「無添加・無塩せき」です。

ここに加えて「亜硝酸Na」と表記があれば、これが発色剤なので「無塩せき」ではありません。「リン酸塩、酸化防止剤」などの表記があれば添加物が入っています。

ただ近年では添加物も天然由来のものが多く、添加物が全て悪いものではありませんが、気にされる方はパッケージの裏側に注目してみるといいかもしれません。

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皆川 今日子
ライター
札幌在住。旅行誌を中心に、観光・グルメ系メディアにて執筆中。趣味は料理とゲーム。長年、掃除を苦手としていることで悩んでいたが、「掃除に必要な才能を生まれ持たなかった」と割り切ることで気が楽になった。