平飼い卵とは? 自然に近い養鶏法でおいしさが増す
安全で新鮮なものが求められる食用品。口に入れるものだからこそ、品質が良く美味しいものを選びたいですよね。私達が普段何気なく食べている卵にも、こだわりの育て方で高い品質や美味しさを持つものがあることをご存知ですか?
この記事では、今注目の平飼い卵について紹介します。平飼い卵の特徴や通常の飼育方法との違いなども合わせて解説。世界でも動物福祉の観点で注目される平飼いを、ぜひ知ってください。
- 平飼いは鶏本来の行動を促しながら行う養鶏方法
- 世界ではアニマルウェルフェアに配慮し平飼いが推奨され始めている
- 平飼いの卵は甘みや旨味、コクが強い
この記事で分かること
平飼い(ひらがい)とは
平飼い(ひらがい)とは、養鶏方法のひとつです。鶏をケージに入れず、ある程度自由な環境を用意し、自然に近い状態で飼育することを言います。
世界的にも注目されている平飼いについて詳しくみていきましょう。
平飼いの定義
平飼いは一般的に地面を自由に歩き回れる状態での飼育を指すものです。止まり木や砂浴び場、鶏舎などを用意し屋外や屋内を自由に行き来できる環境を作ることで、鶏は野生に近い生き方ができストレスを感じにくくなると言われています。
また、広いスペースを自由に動き回れることで、適切な運動量を維持でき、卵や鶏肉の品質向上にも期待できるでしょう。
一方で、広いスペースや施設が必要な上、排泄物の掃除など飼育者にとってはコストがかかり、管理が難しい面もあります。諸外国では敷地面積や鶏の羽数などを定めていることもありますが、現在日本では平飼いについての明確な定義はありません。
一般的な飼育方法(ケージ飼い)との違い
日本の養鶏の多くはケージ飼いです。鶏を一羽ずつケージに入れて飼育することで管理を簡易化。日本では約95%がケージ飼いで養鶏を行っていると言われています。
施設の縮小化、人件費の削減が可能なため、ケージ飼いで収穫できた卵は安価での流通が可能です。
放し飼いとの違い
平飼いはスペース内で鶏を放して飼育しているため、放し飼いとさほど大きな違いはありません。しかし、他の肉食動物や猛禽類などに鶏が襲われてしまうことのないよう、屋外スペースにも囲いやネットなどをしていることが多いです。そのため、放し飼いとは呼ばず平飼いという表現を使うことが多いようです。
平飼い卵の特徴
ブランド牛などが良い餌や最適な環境で育てられているように、自然に近い環境でストレスを減らして育てられた平飼いの鶏は高品質で美味しい卵を産みます。
主に味覚面に違いが見られると言われ、以下のような特徴を持つ事が多いです。
- 卵特有の生臭さがほとんどない
- 白身に弾力があり、プルプルと盛り上がって見える
- 黄身に旨味やコクを感じられる
その他、平飼いの鶏から生まれた卵はケージ飼いのものより殻が堅くなる傾向にあります。平飼いで飼育すると鶏がストレスを感じにくく病気になりにくいことから、健康な鶏から生まれた卵を購入したいという人にも注目されているようです。
地鶏は平飼いであることが条件になっている
地鶏とは、古くからその土地で養鶏されてきた在来種の鶏のこと。北海道地鶏や名古屋コーチン、黄金シャモなどが有名です。地鶏は在来種というだけでなく、飼育方法にも決まりがあり、定義は以下のように定められています。
- 在来種の血液百分率50%以上
- 飼育期間75日以上
- 28日齢以降は平飼い
地鶏として出荷するには上記の定義を満たしている必要があるため、地鶏は平飼いされた鶏であることが分かります。
世界の主流になりつつある平飼い
日本の養鶏で主流となっているケージ飼い(海外ではバタリーケージと呼ぶ)は、生産性重視の養鶏方法と言えます。狭いケージの中でひたすら卵を産み続けるのは、どのように考えても動物福祉に配慮できているとは言えないでしょう。そのため、動物福祉を重視する世界の風潮からは敬遠され、EU諸国では2012年に禁止となりました。
動物福祉を考えるアニマルウェルフェアが注目されはじめ、養鶏だけでなく酪農や養豚など畜産業の考え方も変わりつつあります。EUだけでなくアメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどもケージ飼いを抑制する動きがで始め、日本でもアニマルウェルフェアへの関心が高まっています。
健康的な養鶏を行うためにも、動物福祉は重要な課題。アニマルウェルフェアに配慮した養鶏方法・平飼いは今後、スタンダードとなる可能性を持っているのです。
平飼いの卵や鶏肉を選ぶ時にチェックする3つのポイント
平飼いの魅力や重要性について紹介してきました。しかし、日本はアニマルウェルフェアに対する取り組みが遅れているのが現状です。平飼いに関する規程も曖昧になっており、中には適切な環境に整えられていないケースもあります。
卵や鶏肉を選ぶ際、「平飼いだから」という理由だけで選ばず、さらに飼育環境にまで関心を向けることで健康的で安全な卵や鶏肉を購入できるようになります。最後に、平飼いの卵や鶏肉を選ぶ時にチェックするポイントについて見ていきましょう。
飼育密度をチェックする
平飼いの魅力は伸び伸びとしたスペースで、鶏が本来持つ自然な行動を促しストレスなく養鶏する点です。しかし、日本では平飼いを行う際の面積や羽数に規制が無いため、わずかなスペースに多くの鶏を飼育して「平飼い」としていることがあります。
ケージ飼いをいち早く禁止したEUでは、9羽/㎡以下の密度を保ち平飼い養鶏するよう定められています。養鶏農家によってはホームページやSNS、動画などでも飼育環境を公開していることも増えてきました。購入を検討している養鶏農家では、どれ位の密度で平飼いを行っているのかチェックしてみると良いでしょう。
鶏のくちばしをチェックする
鶏は狭いスペースなどで飼育していると他の鶏をくちばしでツツキ、怪我をさせたり死なせたりしてしまうことがあります。こういった行動を防ぐために行われるのが、鶏のくちばしの先端を切り落としてしまうデピークという方法です。
しかし、ツツキは鶏にとってストレスフリーな環境で飼育されていれば高確率で防ぐことができる行動だと言われています。つまり、デピークされている鶏がいる場合、適切な環境で養鶏されていない可能性があります。
環境を整備してもツツキを辞めない鶏もいるため、デピークされている鶏がいるからといって必ずしも適切な平飼いができていないとは言えません。しかし、全羽デピークされていたり、デピークされている鶏が多い場合には、平飼いの方法に問題がある可能性が大きいです。
飼育設備をチェックする
平飼いでは、ただ屋外に鶏を放すだけではありません。自然な行動を引き出せるよう設備を整える必要があります。例えば、鶏は砂浴びをして体を清潔に保つ習性や、止まり木の上で眠る習性などを持つ鶏です。1日に15,000回以上地面をつついて餌を探したり、足で地面を引っかくような仕草を好む個体も多くいます。
平飼いのにわとりは、このような行動をとることでストレスを減らし、適切な筋力などを発達させることができます。
砂浴びできる環境はあるか、止まり木は設置されているか、地面は土やわらが敷かれているかなど、鶏にとって好ましい環境に整えられているのかチェックしてみるとよいでしょう。
まとめ
日本ではこれまでケージ飼いによる養鶏が主流になっていたため、卵や鶏肉は比較的安価な素材と認識されています。平飼いで手間暇やさまざまなコストをかけて養鶏された卵や鶏肉は、ケージ飼いのものと比べると高価だと言えるでしょう。
しかし、平飼いの鶏や卵には味や安全面において高価になるだけの価値があります。ぜひ、一度平飼いの卵を味わってみてください。普段食べている卵との違いに驚くこと間違いなしですよ。