難消化性デキストリンとは?効果・効能や安全性・摂り方のポイントも紹介
消費者庁が指定している特定保険食品(トクホ)や機能性表示食品などに使用されていることがある「難消化性デキストリン」という成分をご存知でしょうか?食事の欧米化によって、食物繊維不足に陥る現代の食生活において、難消化性デキストリンはさまざまな問題を解決に導く効果が期待されている成分です。
今回は、そんな難消化性デキストリンについて分かりやすく解説します。難消化性デキストリンについてや、効果・効能、安全性、摂り方など詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 難消化性デキストリンは、人工的に生成された水溶性食物繊維
- とうもろこしのでんぷんを原料に作られている
- 血糖値の急上昇抑制・中性脂肪の急上昇抑制・腸内環境の正常化などの効果が期待できる
難消化性デキストリンとは?
難消化デキストリンとは、α-グルコースをグリコシド結合で重合した構造の低分子の物質です。とうもろこしのでんぷんを原料として作られており、人間の消化酵素で切断できない結合が含まれていることから完全に消化されず大腸まで届く特徴を持ちます。
消化しにくいという特性を活かし、さまざまな効果や効能が期待できる成分として注目されており、消費者庁から指定されている特定保険食品(トクホ)や機能性表示食品などでも難消化性デキストリンを使用している商品が多々あります。
難消化性デキストリンの役割とは
難消化性デキストリンは日本人の慢性的な食物繊維不足を解消する目的で作られた成分です。日本人の食生活が欧米化するなかで、米離れ、野菜離れは深刻化し、食物繊維不足によってさまざまな問題を訴える人も増えています。
そんな日本人にとって、人工的に生成された水溶性食物繊維である難消化性デキストリンは、慢性的な食物繊維不足を解消してくれる重要な成分です。さまざまな効果・効能が期待できるだけでなく、低粘性・低甘味で普段の食事や飲み物に加えやすく、熱や酸にも強く変質しにくいため、日常的に摂取しやすい点が魅力と言えます。
食物繊維はどうして必要なの?
食物繊維は昔から「栄養がないから必要ない」と言われていましたが、現代ではその有用性が明らかになり、今では第6の栄養として認められるまでになりました。厚生労働省からは、1日あたりの目標摂取量も提示されています。
人間が生きる上で絶対に必要な栄養とは言えないため、これまで軽視されてきましたが、健康的に生きる上で欠かせない栄養素が食物繊維です。
厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準(2020年度版)によると、18~64歳の男性は1日当たり21g以上、同年代の女性は1日当たり18g以上の摂取が推奨されています。しかし、米や豆、いも類などを食べる現代の食生活で摂れる食物繊維は1日当たり平均14g前後と言われており、目標摂取量に達していないケースが多いです。
難消化性デキストリンの5つの効果・効能
難消化性デキストリンには以下の5つの効果・効能が期待できると言われています。
- 血糖値の上昇を抑える
- 内臓脂肪の蓄積を抑える
- 腸内環境を整える
- ミネラルの吸収を促す
- 中性脂肪の上昇を緩やかにする
続いては、難消化性デキストリンに期待できる5つの効果・効能について詳しく解説します。
1.血糖値の上昇を抑える
通常、食事によって摂取された糖質は、消化によってブドウ糖に分解されて小腸で吸収されます。ブドウ糖が吸収されるとき、血中にブドウ糖が溶け込むため健康な人でも食後は必ず血糖値が上昇するでしょう。
一時的に血糖値が上昇しても、腎臓から分泌されるインスリンの働きによって時間経過と共に、血糖値はコントロールされます。しかし、インスリンの働きが衰えたり、あまりにも食後の血糖値が急上昇し過ぎてコントロールできなくなってしまった場合、血管が傷付き動脈硬化を始めとする様々なトラブルが起こるリスクも上昇します。
緩やかに上昇した血糖値はインスリンによるコントロールが効きやすく、健康のためにも血糖値が急上昇してしまわないような食生活を意識することが大切です。難消化性デキストリンは、小腸で糖の吸収を抑える働きをするため、血糖値が急上昇しにくく、食事をした後でも血糖値の急上昇を防いでくれる効果が期待できる成分として注目されています。
2.中性脂肪の上昇を緩やかにする
中性脂肪とは、血液中に含まれる脂肪のことです。適量であれば健康な体を維持するために使用されますが、過剰に中性脂肪が増えてしまった場合、血液によって全身の脂肪細胞へと送られ、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積します。
難消化性デキストリンには、脂肪の吸収を遅らせる働きが期待できると言われています。脂肪が直ぐに吸収されて中性脂肪が急上昇することを防ぎ、緩やかに吸収することで皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積するのを防ぐ働きも期待できます。
3.内臓脂肪の蓄積を抑える
内臓脂肪とは、胃や腸をはじめとする内臓の周囲に蓄積する脂肪のことです。内臓脂肪が増えすぎると生活習慣病を引き起こすリスクが上昇すると言われており、過食や飲酒、運動不足、基礎代謝の低下、不規則な生活習慣などが原因と考えられています。
難消化性デキストリンの持つ血中中性脂肪を抑える働きによって、脂肪の吸収効率が低下するため、内臓脂肪の蓄積を抑える効果が期待できます。
4.腸内環境を整える
難消化性デキストリンは、摂取したうち5~10%が小腸でグルコースとして吸収され、50%は腸内細菌のエサになると考えられています。小腸で消化されなかった難消化性デキストリンの一部は中鎖脂肪酸に変質し、ビフィズス菌をはじめとする善玉菌のエサとなったり、大腸のエネルギーとして吸収されるのが特徴です。これにより、大腸の腸内環境が改善され、腸自体の働きがよくなる効果も期待できると言われています。
また、難消化性デキストリンの40%は分解・変質しないまま大腸まで届くため、便のカサを増やして排便を促す効果も期待でき、便秘の改善効果などにも注目されています。
5.ミネラルの吸収を促す
難消化性デキストリンには、ミネラルの吸収を促す効果が期待できると言われています。ある、動物実験では、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの吸収率が上昇したとの結果も出ており、人による臨床実験でも血中ミネラルの値が上昇したと報告されています。
難消化性デキストリンの安全性は?
難消化性デキストリンは、人工的に生成されているという背景から安全性についての不安を感じる人も少なくありません。
実際は、アメリカの食品医薬品局(FDA)によって「1日の摂取上限を定める必要がない安全な食品」として認定されており、人による臨床実験でもその安全性は証明されています。
特に難消化性デキストリンは粉末状で製品化されていることも多く、見た目から「体に悪いのでは?」なんて思われることも多いようですが、元の原材料を辿ればとうもろこしのでんぷんです。有害な副作用等は報告されておらず、適量を摂ることで体にとって良い影響を与えるものなので、安心して摂取してみてくださいね。
難消化性デキストリンがヤバいと言われる理由は?
なかには「難消化性デキストリンはヤバい」なんて噂を聞いた事がある人もいるのではないでしょうか?難消化性デキストリンは人体にとって有害な副作用をもたらす成分ではありませんが、摂取の仕方によってマイナートラブルを抱えた経験のある人がいるようです。
難消化性デキストリンを摂るとおならが増える?
例えば、「おならが増える」「腸に圧迫感がある」といった声が聞かれます。これは、食物繊維を摂った際の正常な腸の反応です。難消化性デキストリンは、中鎖脂肪酸などに変質して腸内細菌に影響することで、腸内では細菌の発酵によるガスが発生します。このガスによって腸の膨張を感じる人もいるでしょう。また、ガスが溜まると排出するためにおならがでるのも、仕方のない事ですよね。
これらのマイナートラブルは、食物繊維の急激な摂取や過剰な摂取が影響していることも多いです。普段から食物繊維の摂取量が少ないからこそ、適量を継続して摂取していくことが、難消化性デキストリンによるマイナートラブルを防ぐポイントとも言えるでしょう。
難消化性デキストリンは肝臓に影響を与える?
難消化性デキストリンが肝臓に悪いという噂を聞くこともありますが、これは間違いである可能性が高いです。むしろ、血糖値の急上昇を抑える難消化性デキストリンは、肝臓の負担軽減に貢献しているとも考えられます。
アメリカで発表された研究結果によると、一部の水溶性食物繊維が肝臓に悪影響を及ぼす可能性があると報告されています。そのため、同じく人工的な水溶性食物繊維である難消化性デキストリンも肝臓に悪影響を与えると勘違いされていることが多いのでしょう。しかし、肝臓に悪影響を与える可能性があると考えられる水溶性食物繊維は長鎖イヌリン(LCI)という成分で、イヌリンは菊芋やチコリの根などにも多く含まれています。腸内では善玉菌のエサとなり高い整腸作用を持つのが特徴です。
研究によると、1日あたり30g以上の長鎖イヌリン(LCI)を摂取した人に肝酵素の数値上昇がみられたそうです。しかし、日本人の平均的な食物繊維の摂取量は約14gで30gには全く及ばないだけでなく、食物繊維には長鎖イヌリン以外も多く含まれます。食物繊維を摂取することが危険だとは、直接的には言い切れません。むしろ、日本では1日あたり18~21g以上、欧米においては24g以上の食物繊維を摂取することで、病気の発症リスクを低減させるとも言われています。このことから、基本的に適量の難消化性デキストリンを適切に摂取することによる健康リスクの可能性は限りなく低いと考えられます。
難消化性デキストリンを効果的に摂取するポイント
難消化性デキストリンは、臨床実験によって安全性が確認され、特定保険食品にも使用されている成分です。最後に、そんな難消化性デキストリンを効果的に摂取するポイントについても紹介していきます。
食事に混ぜて摂る
難消化性デキストリンには、糖や脂肪の吸収を緩やかにする働きが期待できます。そのため、食事を摂る際に一緒に摂取するのが望ましいでしょう。難消化性デキストリンは、耐熱性・耐酸性に優れており、低粘性・低甘味であるため、味噌汁などの汁ものに混ぜて食事の一番最初に摂取する方法がおすすめです。
適切な量を摂る
日本人の食物繊維の目標摂取量は18~64歳の男性の場合1日21g以上、女性の場合1日18g以上と設定されています。食物繊維は、普段の食事のなかにも含まれているため難消化性デキストリンだけで1日の目標摂取量を摂る訳ではありません。
日本人の平均的な食物繊維摂取量は1日あたり14g前後のため、足りない分だけを難消化性デキストリンで補う感覚で摂取するのがよいでしょう。1日の推奨摂取量は製品によっても異なりますが、3~10gです。製品に記載されている1日の摂取目安量を参考に、過剰摂取になり過ぎないよう注意しましょう。
毎日継続して摂る
難消化性デキストリンは医薬品ではなく、人工的に精製された食物繊維です。そのため、難消化性デキストリンを摂取することで起こる影響について、即効性は期待できないでしょう。
毎日、適切な量を継続的に摂取することが大切です。過去に行われた臨床実験なども1~3 週間など、中長期的に行われたものが多いようです。
まとめ
注目の成分・難消化性デキストリンについて紹介してきました。とうもろこしのでんぷんを原料に生成された難消化性デキストリンは、水溶性食物繊維の働きを持ちさまざまな効果・効能が期待されています。
手軽に摂取でき、血糖値の上昇抑制や中性脂肪の抑制、腸内環境の正常化、内臓脂肪の定着抑制、ミネラルの吸収促進など、私達の体にとってさまざまな健康効果をもたらす効果を期待されている一方、情報過多によって副作用などの誤った噂を聞かれることも少なくありません。
難消化性デキストリンの安全性については臨床実験によって証明されており、日本の消費者庁やアメリカの食品医薬品局のお墨付きもあります。ぜひ、日々の食生活に難消化性デキストリンを加えて、食物繊維不足を解消してみてください。