北海道の高級魚「きんき(めんめ)」ってどんな魚?金目鯛との違いも解説
北海道の高級魚「きんき(めんめ)」ってどんな魚?金目鯛との違いも解説
海鮮の宝庫と呼ばれる北海道。さまざまな魚介類が水揚げされますが、高級魚として名高い「きんき」という魚をご存知でしょうか。北海道はもちろん関東などでも高級魚として料亭などに卸されている絶品の深海魚です。
この記事では、きんきがどのような魚なのか、旬や産地、おすすめの食べ方なども紹介します。合わせて、見た目のよく似ている金目鯛との見分け方についても解説。北海道の高級魚きんきについて知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
- きんきの正式名称は「喜知次(きちじ)」
- キンメダイとよく似ているが、目の色やエラの特徴で見分けられる
- 北海道を代表する高級魚
この記事でわかること
きんきってどんな魚?
きんきは北海道の道南沖に生息する深海魚です。東北の一部でも水揚げされることがあり、地域によってさまざまな名前を持っていますが、実は正式名称を「キチジ」と言います。漢字で「喜知次」「吉次」「黄血魚」などと書きます。
カサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科で、体長30cm前後にまで成長する深海魚です。大きいものなら1匹3,500円以上で取引されることもあり、北海道のさまざまな魚介の中でも高値がつきやすい高級魚と言われています。
きんきは地域によって名前が違う
きんきは地域によってさまざまな呼び名を持っています。きんきという呼び方は北海道全域で広く使われていますが、道内でも南部では「きんきん」東部では「めんめ」と呼ばれることもあります。
その他、岩手県では「めいせん」、茨木県では「あかじ」と呼ばれています。
姿造りもできる深海魚
きんきは深海魚の一種です。深海魚の多くは、高い水圧のかかる深海に生息しているため、水揚げすると目玉や内臓が飛び出てしまいます。そのため、見た目があまり良くなく姿造りなどには適しません。
きんきは浮袋がないため、水揚げしても内臓などが飛び出すことがありません。この特徴を活かしてきんきを姿造りなどで提供しているお店もあります。
きんきと金目鯛の違い
きんきとよく似た魚に金目鯛がいます。金目鯛は、キンメダイ目キンメダイ科に属しており、きんきと同じく深海魚の一種です。赤い魚体と大きな目が特徴的で、さまざまな料理にして親しまれています。
体が赤くて大きな目を持つ深海魚として、似ている部分も多いですが決定的な違いがあります。
- きんきの方が赤色が淡い
- きんきの目は白目が透明なのに対し、金目鯛は白目部分が黄色っぽい
- きんきは背びれが尖っていて黒い斑紋がある
- きんきの胸びれは中央部分が欠けているような形になっている
それぞれに見ると間違えてしまいそうな程よく似ていますが、並べて見ると違う魚であることが分かりやすいでしょう。また、きんきの市場価格は金目鯛の2倍程なので、価格の違いも見分ける際のポイントになります。
きんきが高級魚とされる理由
きんきは北海道で水揚げされる魚の中でも特に市場価格が高いことで有名です。一大生産地である北海道ではもちろん関東でも高級魚として名高く、時には1キロあたりの価格が1万円を超えることもあります。
そんな北海道を代表する高級魚・きんきですが、ひと昔前はごく普通に一般家庭で食べられる白身魚でした。元来の味の良さが広まって人気が出たことに加え、年々進む漁獲量の減少が、価格高騰の原因と考えられます。
きんきの人気が高まるのと共に、底引き網漁による乱獲できんきの生体数が激減。現在は40年前の10分の1程に漁獲量が減ってしまっています。
きんきに含まれる栄養
とろけるような舌触りが特徴のきんき。その濃厚な旨味は脂肪分に由来するものです。そんなきんきの脂肪分には2つの栄養が詰まっています。
DHA
魚に多く含まれている栄養として知られているDHA。Docosahexaenoic Acidの略称で、日本語ではドコサヘキサエン酸と呼ばれる必須脂肪酸の一種です。体内ではほとんど生成できないため、食べ物から摂取するしかない脂肪酸ですが、脳や心臓の筋肉など人間に欠かせない器官を作るのに必要とされます。
DHAには脳神経の発達を促進する効果が期待できるため、記憶力や学習能力の向上が期待できるといわれています。「DHAを摂ると頭がよくなる」なんて話を聞いたことがある人も少なくないでしょう。DHAと知力の関係については国内外でさまざまな研究がされており、関係性を認めるという内容の結果も多く聞かれます。
EPA
EPAはEicosapentaenoic Acidの略称で、日本語ではエイコサペンタエン酸です。DHAと同じく必須脂肪酸の一種で、以下のさまざまな効果が期待されると言われています。
- 血栓の予防
- 脳内の血管を正常に保つ効果
- 生活習慣病の予防と改善
- アレルギーの緩和
これらの効果の他にも、気持ちを落ち着かせる働きも持っていると言われています。
きんきの一大産地は北海道
きんきは冷たい海域の深海に生息するため、最も水揚げ量が多いのは北海道です。道内でも特に斜里町や根室市、釧路市などで多く水揚げされている他、広尾町などでもきんきの一夜干しが名産品として取り扱われています。
続いて、岩手県や宮城県などでもごく僅かですが水揚げされます。一大産地である北海道では、自治体によって水揚げされたきんきをブランド化していることもあり、ブランドきんきは特に人気が高いです。
きんきは関西以南で知られていない魚
北海道はもちろん東北や関東では高級魚として知名度の高いきんきですが、実は関西より南ではほとんど知られていない魚です。
北海道が一大水揚げ地であるうえ漁獲量も少ない高級魚のため、きんきの多くは北海道、東北、関東で消費されています。関西には多少の流通があるものの、知名度はごくわずかです。
四国・中国地方や九州では、流通もほとんどないと言われています。関東以北では、代表的な高級魚としてその美味しさが知られていますが、関西以南ではきんきを知らないという人が多いです。
きんきの旬の時期
きんきは温度変化の少ない深海に生息しているため、比較的一年を通していつでも味わいが変わらないと言われています。つまり、これといった旬の時期はありません。
ただし、2~5月の時期には雌は産卵を行うため、雌は産卵前の秋から冬にかけて栄養を豊富に蓄えているといわれています。
きんきの目利きポイント
市場などできんきを選ぶ時には、以下の目利きポイントに注目してみてください。
- 赤色が鮮やか(深紅で輝きのあるものがよい)
- 触れてみて身に締まりを感じる
- 腹がブヨブヨしていない
- ひれが赤々としている
きんきは、水揚げ直後は深紅の色味が美しいですが、時間が経つにつれオレンジから黄色っぽく変色し、最終的には白みの強い淡い色に変わります。色鮮やかなものほど鮮度が高いため、色に注目して選ぶとよいでしょう。
きんきのおすすめの食べ方
きんきはさまざまな料理にして食べられますが、特に以下の食べ方がおすすめです。
鍋
きんきは加熱すると甘みとコクの強い出汁が出るため、鍋に入れるのもおすすめです。一度焼いたアラなどを入れると特に風味がよくなります。
高級料亭などでは、しゃぶしゃぶとして食べられることもあります。
煮付け
きんきはが多く漁獲されていた頃、北海道の家庭料理として煮付けで食べられるのが一般的でした。醤油や酒、生姜などで味付けすると、きんきの出汁が出て豊富な旨味を感じられる逸品となります。
一夜干し
きんきは脂肪分が多いため、そのまま焼き物にしてしまうと少々脂っぽく感じることもあります。そこで、一夜干しにする食べ方が推奨されるようになりました。
一夜干ししたものは、不要な水分が抜けて旨味が凝縮されるため、より濃くきんきの味わいが感じられます。
唐揚げ
きんきは一般的に体長30cm前後になる魚ですが、底引き網漁で漁獲する際にサイズの小さいものが水揚げされることがあります。このようなサイズの小さいきんきは、唐揚げにして食べるのがおすすめです。
内臓を取り除いてぶつ切りにしたきんきは、じっくり2度揚げすれば骨まで美味しく頂けます。ただし、大型のきんきは、身の脂肪分が多く唐揚げには不向きです。
刺身
きんきは身がとろけるように甘く新鮮なものを刺身で食べるのが人気です。特に、一本釣りで鮮度の高いものは身の締まりもよく絶品。肝しょうゆで食べるのがツウの食べ方です。
皮霜造り
きんきは皮にも旨味があるため、皮部分に湯をかけて霜降りにさせる皮霜造りが絶品です。魚は皮の下に脂肪分を蓄えるため、そのまま刺身として食べるよりも脂の旨味とコクを強く感じます。
まとめ
北海道の絶品高級魚きんきについて紹介してきました。かつては多く水揚げされていたきんきですが、今や漁獲量の減少で高級魚として扱われています。特に関東では老舗料亭などでお目にかかるような魚で、関西以南ではあまり見かけることもないでしょう。
きんきは水揚げのほとんどが北海道で行われているうえ、とても鮮度が落ちやすい魚です。北海道以外の地域で、きんきを味わうのであれば一夜干しなどがおすすめ。ぜひ、北海道を代表する高級魚を味わってみてはいかがですか。