一度食べたらやみつき! 今、いぶりがっこが人気の理由とおいしい食べ方
秋田の名産品として知られる漬物「いぶりがっこ」。かつては郷土料理の扱いでしたが、近年はクリームチーズアレンジなどで洒落たバルや居酒屋などでも目にするようになりました。スモーキーで独特な味わいが、なんといっても魅力。
本記事では、いぶりがっこが最近人気となっている理由やおいしい食べ方を紹介。相性がいいお酒もピックアップしているので、参考にしてみてください。
秋田の名産品「いぶりがっこ」とは?
いぶりがっこは、生の大根を囲炉裏火で煽って乾燥させ、米ぬかや食塩などの調味料に漬け込んだ漬物の一種。食料を生産できない根雪期間が長い秋田の冬の常備食として、厳しい気候風土の中で生まれた秋田の伝統食品です。
その名称は、秋田の方言で漬物を指す「がっこ」に由来し、県内の漬物業者が初めて「いぶりがっこ」と名づけられました。その名称で市場に流通するようになり、近年では、秋田の代表的な名産品としても知られ、農林水産省により地理的表示(GI)登録されています。
※地理的表示(GI)とは、地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物食品を知的財産として保護するもの
いぶりがっこのルーツと歴史
いぶりがっこのルーツは、秋田県の山間奥地に位置する横手市三又地域が発祥の地だと言われています。
通常、たくあんは風に晒してよく乾燥させてから漬け込むのが一般的です。しかし、三又地域は風が弱く、みぞれや雪の日がほとんどで日照時間も短い地域。そのため、大根を乾燥させるのには不向きな地域でした。そこで、囲炉裏の上で大根を吊るして干していたのが、いぶりがっこの始まりだと言われています。
現在では、囲炉裏のある茅葺き民家に代わって、大根を燻煙するための「いぶり小屋」で行われるのが一般的です。編み込んだ大根をいぶし小屋に運んで吊るし、5日ほど昼夜火の勢いを調節しながらいぶし続けます。
そして、ザラメ、塩、炊いた玄米、米ぬか、ウコン粉や紅花粉など各家庭で調合した大きな樽に漬け込みます。約50日ほど漬け込んで出来上がったいぶりがっこは、芳醇な燻製の香りと味わいが特徴的です。
豊富な栄養素
いぶりがっこには、ビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富に含まれています。以下の栄養素を摂取することができ、効能が期待できます。
食物繊維
いぶりがっこの大根に含まれる食物繊維は、腸内環境を整えて便秘改善の効果が期待できます。また、一緒に漬けている米ぬかには植物乳酸菌が含まれています。植物乳酸菌は、腸内環境を整える善玉菌の一種。腸内の善玉菌が増えることで、消化の促進や免疫力の向上などが期待できるでしょう。
ビタミンC
いぶりがっこの主原料となる大根には、ビタミンCが多く含まれています。ビタミンCは、抗酸化作用による免疫向上が期待できます。
また、大根を米ぬかに漬け込むことによってビタミンB群が加わります。ビタミンB群には、皮膚や粘膜を保護してくれる役割があるので、美肌効果も期待できます。
いぶりがっこの人気の秘密
いぶりがっこは、パリパリとした食感、香ばしい燻しの香りと大根の甘みが一体となった独特の風味が人気を博しています。
燻製の風味が堪らない!
いぶりがっこは、普通の漬物とは異なり“燻す”工程があります。そのため、燻製の香りが大根にうつり、他の漬物とは一味違った風味を楽しめます。
いぶりがっこの燻製に使用する木は、ミズナラ・サクラ・リンゴ。ナラの木などさまざま。使用する木材によって、また違った風味が楽しめるのもいぶりがっこの魅力だといえるでしょう。
噛めば噛むほど大根の甘さを感じる
いぶりがっこの人気の秘密は、燻製の香りだけではありません。いぶりがっこを燻製することによって大根の甘みが凝縮され、噛めば噛むほど口の中に旨みが広がります。
この燻製特有の旨味は、他の漬物にはない大人の味わいです。
どんなお酒や料理にも合う
いぶりがっこは、日本酒はもちろんワインやウイスキーなどの洋酒とも相性は抜群です。お酒の中でも特に、いぶりがっこと相性が抜群なのが白ワイン。
クセや渋みの少ない白ワインは、いぶりがっこの燻製の味わいを邪魔しません。また、いぶりがっこは和食・洋食問わずさまざまな料理にも合います。ご飯のお供はもちろん、ざまざまな食材と相性抜群です。
いぶりがっこは自分で作れる?
いぶりがっこは、大根を燻して糠につけるなどさまざまな工程があり、自作するのは難しく感じるかも知れません。しかし、市販のたくあんを使用することで、ご家庭でも簡単にいぶりがっこが作れます。
用意するもの
- 鍋
- 鍋の蓋
- 鍋にはまる網
- アルミホイル
- スモークウッド又は、チップ
鍋に置く網は、たくあんがはみ出さない程度のものを用意しましょう。ただこの方法は、燻製器がない人のための方法です。家庭に燻製器がある場合は、燻製器を使うことをおすすめします。
作り方の手順
- たくあんの表面に付いている水分をキッチンペーパーでふき取る
- 風の当たる屋外で1〜2時間ほど干し、乾燥させる
※ラップに包み冷蔵庫で3〜4時間乾燥させるのも可 - 鍋底にアルミホイルまたはスモークウッド、チップを敷いて網の上にたくあんをのせる
- 蓋をして3時間ほどたくあんを燻製する
- 燻製後は冷蔵庫でひと晩寝かせ、香りが馴染んだら完成
ただ、この方法は本来のいぶりがっこの作り方とは、逆の工程で行っています。本来のいぶりがっこは、燻製して漬けているのに対してこの方法は、漬けているたくあんを燻製しています。そのため、家庭で作るいぶりがっこはあくまで即席いぶりがっこです。
おいしい食べ方
いぶりがっこは、さまざまな料理と相性の良い食材。本項では、おすすめの食べ方を紹介します。
チーズとの組み合わせは相性抜群!
チーズといぶりがっこは、どちらも同じ発酵食品であるためこの2つの食材は相性抜群。チーズは、青カビのゴルゴンゾーラや白カビのカマンベールなど、さまざまな種類がありますが、いぶりがっこと相性がいいのはフレッシュチーズです。
フレッシュチーズは、加熱処理をしていないチーズの種類で、モッツァレラチーズ・クリームチーズ・マスカルポーネチーズ・カッテージチーズなどがあります。これらの、フレッシュチーズはいぶりがっこの香りを邪魔せずに、チーズの濃厚な美味しさが加わりお互いの魅力を最大限に引き出してくれます。
みじん切りにして食感を楽しむ
いぶりがっこは、たくあん同様にコリコリとした食感が魅力。細かめのみじん切りにすると、さらに食感が楽しめるでしょう。
また、いぶりがっこをみじん切りにすれば餃子のタネや、コロッケの具材としても活躍します。いつもの料理に、みじん切りしたいぶりがっこを加えるだけで、また違った味わいと食感が生まれます。
タルタルソースとの組み合わせ
子どもから大人まで大好きなタルタルソース。いぶりがっことは、一見相性が悪そうに見えますが、市販でいぶりがっこのタルタルソースが販売されるくらい人気。
いぶりがっこ特有のスモーキーな風味と、タルタルソースのマイルドな味は病みつきになること間違いなし。普段のタルタルソースとは、また違う食感や味わいを楽しめます。
チャーハンやパスタにも合う
いぶりがっこは、チャーハンやパスタなどの主食の具材に入れても美味しいと評判。刻んでチャーハンに加えることで、食感や燻製の風味を楽しめます。
パスタの具材として、スモークサーモンやチーズ、生ハムなどと一緒になることでさらに美味しさが引き立つでしょう。パスタは、オイル系・和風・クリーム系、どのソースとの相性も抜群なのでお試しください。
まとめ
秋田の名産品であるいぶりがっこは、お酒やご飯のお供にぴったり。燻製の風味とコリコリとした食感が楽しめるうえに、アレンジ力が高いのも今人気を集めている理由かもしれません。