西洋梨(洋なし)の旬はいつ? 食べ頃と上手に追熟させる方法
シャキシャキとした歯触りの和梨と異なり、しっとりとした食感が特徴的な洋梨。実は日本だけでも約20種類もの洋梨が栽培されています。スーパーなどでは秋から冬にかけて店頭に並びますが、洋梨の最も美味しい時期はいつなのでしょうか。
本記事では、代表的な洋梨の種類や旬を紹介。また、美味しい洋梨の選び方や保存方法も解説します!
この記事のまとめ
- 市場に出回るのは9月
- 洋梨は樹についている間は完熟しない
- 皮が黄色くて甘い香りがすると食べ頃
- 北海道原産の「千両梨」は冬でも手に入る
洋梨について
洋梨はバラ科ナシ属に分類され、元々ヨーロッパで栽培されていた果物です。古代ギリシャでは、梨を「神へのみつぎもの」としており、洋梨は欠かせないものでした。
しかし、涼しい気候を好む洋梨は温暖な気候のヨーロッパでは育てることが難しく、現在ではほとんど栽培されていません。
日本に伝わったのは明治時代の頃で、ごつごつとした不格好な見た目と栽培の難しさから、広まるまでに時間がかかりました。品種改良を重ね、現在では洋梨の種類も豊富で、和梨より甘みが強くなめらかな食感が人気の果物に。
洋梨とラ・フランスの違い
洋梨と聞くと、「ラ・フランス」を思い浮かべる人も少なくないはず。「洋梨」はナシの分類のうちのひとつで、「ラ・フランス」は品種の名前です。つまり、「ラ・フランス」は数多くある「洋梨」の品種のうちのひとつということになります。
代表的な洋梨の種類
代表的な洋梨の種類と旬の時期を紹介します。気になる洋梨があれば、チェックしてみてください。
ラ・フランス
洋梨の中で最も知名度の高い品種といえるラ・フランス。平均的な重さは200g〜250g程度。
ラ・フランスは、追熟しても形や香りに変化がなく、食べ頃を見分けることが難しい洋梨です。10月頃に旬を迎え、お店でよく見るようになります。
ル・レクチェ
ル・レクチェは完熟するときれいな黄色になり香りも高まり、大きいものは400gほどの重さになります。収穫は10月の終わりころですが、追熟に1か月ほどの時間がかかるのが特徴。そのため、市場に出回るのが11月から12月の頃となります。
マルゲリット・マリーラ
マルゲリット・マリーラは、重さ500gにも成長することが最大の特徴。大きいので、ジャムなどにしても一つで十分な量が作れそうですね。
大玉ではありますが、香りも豊かで果汁もたっぷり。生でも美味しく楽しめます。市場へは、9月下旬頃から10月まで流通します。
バートレット
バートレットは日本だけでなく、世界中でも生産され流通の多い洋梨。大きさはフランスと変わらないくらいで、主に缶詰用として利用される品種だったそうです。
最近では生食用としても売られるようになり、9月頃からお店で購入することができます。
オーロラ
オーロラは、マルゲリット・マリーラとバートレットの交配種。1980年代に日本に持ち込まれた、比較的新しい品種の洋梨です。
なめらかな果肉と上品な香りで、果汁も豊富。旬の時期は早く、9月からお店に並ぶので真っ先に味わうことができます。
洋梨の旬と追熟・完熟について
収穫時期が早い地域では8月頃から始まり、市場に出回るのは9月頃から。秋の気配が感じられる頃に、旬を迎え店頭に並び始めます。
洋梨は2週間から1ヶ月程度の追熟が必要な果物なので、収穫時期と食べ頃には差があります。洋梨は樹についている間は完熟しない果物です。収穫した後、上手に保管して洋梨に含まれるデンプンを糖に変化させることで、甘くて美味しい洋梨となります。洋梨独特のしっとりした食感も追熟によって現れるものです。
購入した洋梨の追熟が終わり食べ頃になるまでは、さらに約1週間程度かかります。スーパーなどで目にする黄色っぽい洋梨は、追熟の時間を計算して出荷されている未熟の洋梨ということになります。
洋梨の追熟は難しい!?
洋梨は湿度や温度などの環境に左右されやすく管理が少し難しいので、追熟に失敗してしまうことも少なくありません。上手く追熟できなかった場合は、コンポートやジャムなどに利用すると良いでしょう。
洋梨の完熟はいつ?
完熟しているかの見分け方は、皮が黄色くなって甘い香りがしているかで判断します。
ただし、ラ・フランスの場合は見た目の変化がなく香りも少なめ。判断が難しい品種です。見た目と香りの他に完熟しているかを確認するには、洋梨に付いている軸を見てみるのも方法のひとつです。軸が枯れてその周りを触って弾力が出ていたら完熟したサイン。
ラ・フランスに限らず、洋梨は完熟すると実が柔らかくなります。お店で熟しているか確認するのは、商品に傷をつけてしまう恐れがあるので気を付けましょう。
北海道特産の洋梨「千両梨」
北海道には、冬でも手に入れることのできる洋梨があります。その名前は「千両梨」。北海道のみで栽培されている洋梨です。
昔は北海道で一般的だった「千両梨」ですが、現在はあまり見かけなくなりました。ここでは、千両梨が北海道の特産品となった経緯や千両梨の特徴や旬などを紹介します。
千両梨とは?
千両梨は明治時代に北海道で偶然見つかった洋梨です。千両梨という名前の由来は、「手間がかからず、大量生産が可能な洋梨だったから」と言われています。しかし、大量に作られ出回ったため市場価値は低下。さらには和梨の人気も相まって、利益が出ない千両梨を栽培する農家は減少しました。
千両梨の主な産地は北海道余市で、秋に収穫が始まります。収穫後は特別な方法で保存し、冬にも出荷されます。産地が限定され、道外には出回らない洋梨は貴重です。
千両梨の特徴
千両梨の一番の特徴は、その食感。一般的な洋梨の食感は「しっとり」「ねっとり」「なめらか」などと表現されますが、千両梨は和梨のようにシャキシャキとした歯ごたえがあります。
また、ラ・フランスの平均的な重さがだいたい200g〜250gなのに対して、千両梨は平均400gと大ぶり。その他の見た目は、普通の洋梨と大きな違いはありません。香りが良く素朴な味で、北海道の人々に親しまれています。
千両梨の旬
千両梨は10月上旬から下旬に旬を迎えます。千両梨は追熟する必要がありません。食べ頃に収穫されるので、購入後はすぐにシャキシャキとした食感と千両梨の香りが楽しめます。
また、収穫後は「CA貯蔵」と呼ばれる方法で保存されます。「CA貯蔵」は倉庫内を低い温度に保ち、酸素を減らして二酸化炭素を増やす貯蔵方法です。そうすることで、果物の呼吸を減らし、糖の消費や酸化を遅らせることができます。これがおいしさを保つ秘訣です。
千両梨はいつ、どこで買える?
千両梨は旬を迎えた10月にスーパーなどで購入できます。また、現在ではネットやふるさと納税の返礼品として、現地以外でも手に入れることが可能になっています。
気になる方はぜひチェックしてみてください。
美味しい洋梨の選び方
ごつごつとした見た目で、美味しい洋梨の見分け方は難しそうですよね。どこを見て選ぶべきか、と悩む方も多いのではないでしょうか。洋梨を選ぶ時は形、重さ、色を確認すると良いでしょう。
「形」で選ぶ
いわゆる「洋梨型」を選びます。軸と反対側の方がふっくらとして丸みがある物がおすすめ。
「重さ」で選ぶ
大きさが同じ洋梨の場合は、水分量が多くしっかりと重みを感じる方を選ぶと良いでしょう。
「色」で選ぶ
購入後に日を置く場合は、明るい黄緑色の洋梨を選ぶと良いでしょう。明るい黄緑色は未熟の状態なので、買ってからも常温で数日間置いておくことができます。
洋梨の保存方法
洋梨は、実が完熟しているかしていないかで保存方法が異なります。
完熟前の保存方法
冷やすと追熟が止まってしまうため、未熟の場合は乾燥を防ぐため新聞紙で包み常温で置いておきます。追熟を早めたいときは「エチレンガス」を発生させるりんごやバナナと一緒に保管すると良いでしょう。
エチレンガスは追熟を促進させるガスです。ポリ袋などに入れて置いておくと熟すスピードが早くなります。
完熟後の保存方法
完熟した洋梨は、冷蔵庫に入れて保存しましょう。鮮度を保ってくれる野菜室がおすすめです。その際にも乾燥しないように新聞紙で包み、さらにポリ袋などに入れておくと良いでしょう。
洋梨は完熟するとあまり日持ちしないので、熟した実は早めに消費するようにしましょう。完熟になる一歩手前で冷蔵庫に入れて保管すると、少し長く日持ちしますよ。
まとめ
8月頃から収穫が始まり、9月にはお店で見られるようになる洋梨。追熟が必要な果物で、熟した果実は甘く香りも豊かです。
現在では鮮度を保つ保存方法も取り入れられ、長く洋梨を味わうことができるようになっています。環境によって自宅での追熟は少し難しく、完熟の見極めも失敗することがあります。その際は、ジャムやコンポートなどにしても美味しいので、ぜひいろいろな品種の洋梨を味わってみてください。