謎の魚! 道南でしか出会えないホテイウオの特徴と食べ方を紹介
函館周辺の海では冬の風物詩で、「ゴッコ」という名前で親しまれているホテイウオ。なんといっても見た目のインパクトが強烈!ぶよぶよしたまんまるの体につぶらな瞳。慣れるとかわいく見えますが、見た目の衝撃は一度見たら忘れられません。
函館では毎年2月に、恵山(えさん)地区で「恵山ごっこまつり」が開かれます。道内の方々もこの珍しい魚を求めて、多くの人が集まります。
この記事では、道南でしか出会えない謎の魚「ホテイウオ」の魅力についてご紹介します!
ホテイウオ(ゴッコ)とは?
ホテイウオは、ダンゴウオ科ホテイウオ属の魚です。ダンゴウオ科の仲間は10cmにも満たないものが多いようですが、ホテイウオは30cmほどにもなります。七福神の布袋(ホテイ)様から付けられた名前の通り、ホテイウオはまるまるとした体をしています。うろこは無く、ゼラチン質のぶよぶよした体で、表面はぬるぬるした粘膜で覆われています。
背びれは皮の中に隠れてしまっているので、丸い体がより際立ちます。裏返すと、大きな吸盤がついているのも特徴的。この吸盤で岩肌や海藻にくっついて流されないようにするために発達したそうです。
ちなみに、函館周辺ではホテイウオを「ゴッコ」と呼びますが、その由来ははっきりしません。一説には、産卵期のメスが卵巣の中にたっぷりと「卵」を持っているから、「たまご」→「ゴッコ」になったという話もあります。
ホテイウオの生態
ホテイウオは、太平洋側では神奈川の三崎港以北、日本海側は島根県より北の海に生息しています。ただ、漁が盛んなのは道南の渡島半島近海と東北の一部のみです。通常、沖合で深さ100m〜1,700mほどの深いところを泳いでいますが、産卵期になると浅瀬にやってきます。産卵期は冬の12月から4月初旬までで、漁が行われるのはこの時期です。
卵がふ化した後、幼魚のうちは吸盤で海藻などにくっついて生活します。そして大きくなると沖に出て、およそ3年を目途に産卵のため浅瀬に戻ってきます。産卵期が終わるとオスもメスも死んでしまいます。しかし、オスは卵がふ化するまでは卵のそばにいて、外敵から卵を守るそうです。
ホテイウオの漁
ホテイウオの漁は、産卵しに浅瀬にやってくるところに網を仕掛ける「刺し網漁」が有名です。刺し網とは、目標とする魚種が遊泳・通過する場所を遮断するように網を張り、その網目に魚の頭部を入り込ませることによって漁獲するための漁具です。この刺し網を用いておこなう漁法を刺し網漁といいます。
ホテイウオは夜行性で夕方から活発に活動する魚ですので、この活動に合わせて夕方に網を敷設し、翌朝に揚網するのが一般的です。
恵山ごっこまつり
函館市東部の恵山(えさん)地区では、毎年2月に「恵山ごっこまつり」が開催されます。海沿いの道の駅「なとわ・えさん」が会場で、名物の「ゴッコ汁」や、干物にした「生干しゴッコ」でつくる様々なゴッコグルメが味わえます。
この他、ゴッコをはじめ海産物の直売や、かわいいゴッコの幼魚がいる水槽。ゴッコのキャラクターグッズなど、まさにゴッコづくしのイベントです。2月は寒さが一番厳しい時期ですが、ゴッコ汁が体を温めてくれますよ。
ホテイウオの料理をご紹介
ここからは名物の「ゴッコ汁」など、ホテイウオのおいしい食べ方をご紹介します。「もう一度食べたい!」と言われるほど美味しいホテイウオの魅力を紹介していきます。
ホテイウオの味は?
ホテイウオは皮から骨、肝などの内臓まで、ほとんどすべておいしく食べることができます。皮や筋肉はゼラチン質でコラーゲンがたっぷり! そして、淡白でプリプリとした食感がたまりません。肝や内臓などはアンコウが有名ですが、同じように濃厚でクリーミーな味わいを感じられます。
卵は甘みがあり、プチプチとした食感が楽しめます。産卵期のメスは、その体の中の半分以上が卵巣になっていて、捌くとたっぷりと卵が出てきます。メスは卵が人気ですが、その分身は少なめです。オスの身の方が肉厚でおいしいといわれています。そのため、地元の方達はオスとメスの両方をつかってゴッコ汁を作り、卵も身もしっかり味わうそうです。
ゴッコ汁
ホテイウオが採れる地域で冬に必ず作られるのがゴッコ汁です。地元のスーパーでは、冬になると捌いてパック詰めされた「ゴッコ汁セット」が売られています。ゴッコ汁は、真冬で冷えた体を芯から温めてくれます。味付けはしょう油が一般的ですが、味噌仕立てにしても美味しいそうです。具材も様々で、ネギと豆腐だけのシンプルなものもあれば、大根、にんじん、しめじを入れることもあります。その他にもジャガイモやわかめなどを入れる地域もあり、実にバラエティー豊かです。
ここでは簡単な作り方の流れをご紹介します。
- 身は表面の粘膜を熱湯などで取る
- 豪快に骨ごとぶつ切りにする
- 卵巣や内臓などは別に取り出す
- 昆布でとった出汁に、ぶつ切りにした身と内臓を入れる
- 同時に他の具材も入れて茹でていく
- 卵は茹ですぎると硬くなってしまうので後から入れる
- 酒、みりん、しょう油で味を付けて完成!
ゴッコ鍋
ホテイウオの真っ白な身は淡白でクセがなく、とても味がしみこみやすいのが特徴です。うどんすきや寄せ鍋などで一緒に煮込めば、鍋のうまみがしっかりしみこんで、ゴッコ汁とは違った味わいが楽しめます。チゲ鍋のように辛めのスープでも良く合いますよ。
生干しゴッコ
ホテイウオをおろした切り身を4、5日寒風にさらしたものが生干しゴッコです。干物にすることでうまみが凝縮され、生の切り身にはない味が出ます。地元の方曰く、潮風にあたると味がより一層よくなるそうです。
恵山ごっこまつりでは、生干しゴッコを塩コショウやバター醤油で炒めたものなどが屋台に並びます。お酒との相性が抜群のおつまみになりますね。生干しではなく、完全に干した干物もあります。生干しとはまた違った味わいで、焼いたり、昆布と一緒に煮物にしたりするそうです。
ゴッコのから揚げ
あっさり淡白なホテイウオの身は、から揚げにもぴったりです。唐揚げには、生の切り身ではなく、生干しゴッコが最適(生の切り身だと水分が多く含まれすぎるため、食感に差が出ます)。衣の油と生干しゴッコに凝縮されたうまみが溶けあい、口いっぱいに広がります。
卵のしょうゆ漬け
ホテイウオの卵巣から卵をほぐしてお湯でぬめりをしっかりとり、しょう油やみりんと合わせて漬けます。卵のもつ甘みとうま味をしっかり味わいたい人におすすめです。ご飯にかければ箸が止まらなくなりますよ。
ゴッコの肝和え
ゴッコの肝和えは肝を味噌、酒、だしと合わせてすり鉢ですり、ホテイウオの身や他の具材と合えたものです。肝の濃厚な味わいが癖になる一品です。こちらもお酒のお供に最適です。
まとめ
ホテイウオは北海道でも函館周辺で、冬しか食べられないとてもレアな魚です。驚きの見た目とは裏腹に、あっさり淡白な味わいでさまざまな料理に合います。見た目に慣れると意外と可愛く見えるかも!? 機会があれば、ぜひ味わってみてください。