有限会社 丸イ 伊藤商店
創業は、ソーラン節発祥の北海道余市町でニシン漁が盛んだった1919年(大正8年)。身欠きニシンの加工を主としてスタートした丸イ 伊藤商店は、その後、身欠きにしんの専門として今に至ります。主には京都の「にしんそば」の具として身欠きにしんを製造・販売。「油や添加物、塩素等の薬品は使用しないこと」「ウロコはすべて取り除くこと」「そばの器にぴったり合うサイズであること」など、京都の職人さんの細かい注文に応えながら、加工技術やニーズへの対応力を磨いてきました。
あるときは商品の品質をとことんまで追求しようと、余市町にある道内最大の「北海道中央水産試験場」(北海道立総合研究機構)に品質検査を依頼。大学の研究室の力も借りるなど、徹底して品質にこだわる姿勢を貫いたことも。そして水産試験場へ通ううち、思いがけない技術と結びつくことになり、後に鈴木直道北海道知事の表彰による「北海道新技術・新製品開発賞」優秀賞を受賞する画期的な商品開発につながりました。
「ニシンはおいしい魚だけど骨が多くて食べづらい」「調理が面倒」という消費者の認識、そして、これまでは甘露煮以外は考えられなかった「骨ごと食べられるにしん」を作りたいという目標は、水産試験場・食品加工研究センターとの二人三脚の開発と粘り強い研究により、次第に現実味を帯びてきました。夢を実現させたカギのひとつは、ニシンの加熱温度と時間。ニシンは回遊エリアによって、サイズや脂の乗りなど特色が大きく異なるため、近海産・アラスカ産・ロシア産と、骨まで柔らかくするための加熱温度と時間を探らなければなりませんでした。
しかし、地道な研究開発は成就。
当初は湯せんして温める商品でしたが、さらに開発を進め、パッケージごと電子レンジで温められる商品「骨までまるごと一夜干しにしん」が完成しました。まるごと食べられる栄養面のメリット、魚を焼く煙や後片付けが気にならず、4カ月の常温保存可能な手軽さは、マンション暮らしやひとり暮らしでも食べやすく、マリネやカナッペなど洋食にも合う気軽に手に取りたい添加物なしの商品です。
専門店としてにしんそば用の身欠きにしんを作り続けてきた中、京都の"にしんそば"用身欠きにしんは、サイズや脂の乗りなど細かな要望がいくつもあり、そのニーズに応えながら身欠きにしんを届け続けたことが同社商品への信頼につながっています。例えばひと手間かかるウロコの処理。食べた時の舌触りを重視する顧客の要望で丁寧にウロコを取り除いたり、早くから機械導入にも力を入れ、熟練工による丁寧な手作業の結果、「丸イ 伊藤商店の身欠きにしんでなければ」といわれるまでになりました。
身欠きにしんを乾燥させる工程では、原料やその時々の気温・湿度に合わせ、乾燥機台車の入れ替えや串の掛け替えなど、ムラのないようにつきっきりで乾き具合を調整していたという修行時代の社長の経験と、華麗な手捌きの熟練加工スタッフの手腕が信頼される商品の質を裏打ちしています。多くの要望に応えながら培った技術は、にしんフィレ商品やジャーキーなどの商品にも活きています。