VEGGIEHILLS(ベジヒルズ)
札幌から北東へ、車で約40分。札幌市と隣接していながらも、ダイナミックな自然と広大な農地が広がっているのが北海道・当別町です。街の丘陵からの眺めが、風光明媚なスウェーデンの首都・ストックホルムの郊外の景色に似ていることからスウェーデン王国レクサンド市と姉妹都市として交流を深めている街でもあります。
そんな当別の自然の美しさと利便性にひかれて移住してきたのが、今回ご紹介するVEGGIEHILLS ベジヒルズの山岸豊さん・彰子さん夫妻です。長くヨーロッパを中心にIT系の仕事をしていた豊さん。帰国後もヨーロッパのような豊かな自然や過ごしやすい気候の環境を探して、移住フェアで当別町を訪れました。当別町の交通の便の良さや景色・気候も気に入りましたが、何よりその時に食べたミニトマトのおいしさは、移住を決めるには十分なものだったそうです。
移住当初、豊さんは北海道でもIT系で働く予定でしたが、せっかく大自然の中に住むのであれば、自然に関わり土地にも貢献できる仕事をしようと就農を決意。当別町のサポートを受けつつ1年の農業研修を経て2020年から彰子さんとVEGGIEHILLS(ベジヒルズ)を立ち上げました。
2人だけで農作業から収穫まで行う同農園では、育てられる品種が自然と絞られてきます。まずは思い入れの深いトマトを数種、さらに北海道でおいしく育つアスパラ、カボチャ、さつまいもなど。そして、土壌微生物を活かし昆虫の生態系を健全に保つために、すべての農作物を化学農薬・除草剤不使用で育成しています。
野菜の安心安全とともに、特別なおいしさも追求したいと考える豊さんと彰子さん。そのためには植物や野菜が本来持ってる生命力を、最大限に引き出せるような環境を作らなければならないと言います。特に土壌づくりは要。一般的な農法は深く土を掘り起こし、雑草の根を切るなどした柔らかい土壌から始めますが、VEGGIEHILLSでは深く耕さずに始める不耕起栽培を採用しています。不耕起栽培は土壌そのものの力を生かして農作物を育てることができますが、その分除草の労力が一段と増えてしまいます。しかしそこでも土壌微生物を殺さないよう除草剤をまかずに、手作業で除草を続けているそう。それもすべて土を守り、おいしい野菜を育てるため。与えている肥料も標準的な分量の三分の一程度。一般的な収穫量よりは減ってしまいますが、理想とする味の野菜が育つのだそう。
特にこだわっているのがミニトマトです。とろっとしたフルーツのような「ピッコラカナリア」、甘さが自慢の「甘っこ」、濃厚な味わいの「雅」、アイコに似た甘さの「フラガール」を現在は作っています。VEGGIEHILLSの野菜の味わいに年々ファンが増え、東京のレストランからも注文が入っているのだそう。
まったく農業の知識がないところから初めて、今年で5年目。野菜作りを始めた当初はスイートコーンをアライグマにほとんど食べられてしまったり、収穫期をコントロールできずにミニトマトを収穫しきれなかったりと様々な苦労があったといいます。
手作業での草取りは現在も続いており、まさに汗水垂らし、愛情を込めて野菜づくりを続ける山岸夫妻。このスタイルを続けるために、農地は60アールのみ。北海道の農家の平均耕地面積は約30ヘクタールですが、除草剤をまかず、大きな農機具を入れずに栽培するにはこの大きさが限界なのだそう。目を配り、手をかけられる範囲での自分たちにちょうどいいサイズの野菜づくり。VEGGIEHILLSのおいしさの秘密はそんなところにあるのかもしれません。
今後は新たなおいしさを秘めた品種にもチャレンジしつつ、海外在住の経験を生かし、海外からの農業体験希望者などの受け入れに役立ちたいそう。土づくりに力を入れ続けることで、今後ますますVEGGIEHILLSらしい土壌が育っていくことでしょう。ぜひ手に取って味わってみてください。