nicao
蝦夷富士といわれる羊蹄山の麓にあるまち、倶知安町。自然豊かな地域で、冬は海外からのスキー客が押し寄せる話題に事欠かないエリアです。そんな大自然に囲まれ、羊蹄山を仰みる場所にアトリエを構えるのが、ブレイク 由子さんが代表を務めるチョコレートブランド「nicao(ニカオ)」。ニセコエリアでは初のビーントゥバーチョコレートのブランドで、直輸入した無農薬のカカオ豆をじっくりと焙煎。時間と愛情をたっぷりかけてチョコレートに仕上げ、最後のラッピングまで手がけています。
由子さんがnicaoを立ち上げたのは2016年のこと。子どもにより良い生活環境を与えたいという思いから、2009年にご主人の故郷であるイングランドから一家で倶知安町へと移住しました。生活環境も変わり、何か新しいことを始めたいと考えた由子さんは以前から関心を寄せていたビーントゥバーのチョコレートが、機材と材料さえあれば自分でも作れると知り、チョコレート作りを開始。楽しそうにチャレンジする由子さんの姿を見て、やがてご主人のティムさんもチョコレート作りに参加するようになりました。
車のエンジニアだったティムさんは、ほんの少しの温度差や時間差で味が大きく変わるチョコレート作りにすっかり魅了されてしまったそう。ふたりは自宅を一部改装して工房を構え、そこに友人で家庭科の先生だった沙友里さんが加わりました。現在は3人で北海道の材料を取りいれた様々なフレーバーのタブレット(板チョコレート)の製造とnicaoのチョコレートを使った商品開発を行っています。
nicaoのチョコレートへのこだわりは、とてもシンプル。無農薬のカカオ豆のおいしさを、食べてくれる人にまっすぐに伝えること。そのため、カカオ豆はシングルオリジン(ブレンドしない1種類のカカオ豆)を使用し、余計な添加物は一切加えません。加えるのは、北海道産のてん菜糖だけ。そうすることで「カカオパワーを最大限に」引き出すことができる、と由子さんはいいます。
使用しているグアテマラ産のカカオ豆とは、インターネットを通して、偶然の出会いだったそう。家族経営の小規模なカカオ農園の再建を始めたばかりの女性の農園主とは、nicaoを立ち上げたばかりの由子さんの想いと重なる部分が多く“この農園のカカオでチョコレートを作りたい”と直接取引がスタート。無農薬で手間と愛情をかけて育てられたカカオは、食べると香り高いアロマ感が口に広がり、何よりとても元気が出てきます。そのカカオの力強さを伝えるために、nicaoで使う豆はシングルオリジンに限定しました。
「シングルオリジンのカカオ豆は、焙煎の微妙な加減で大きく味が左右されます。その調整は、今は主人のティムがすべて行っていて、詳しいレシピは私達にも秘密なんです(笑)」と由子さん。また、カカオ豆が採れた年ごとの変化を楽しめるのもシングルオリジンならでは。「ワインと同じで、その年ごとにフルーティーだったり力強かったりと味の個性が変化します。他の農園の豆を混ぜないからこそ、驚くほどストレートにカカオ豆本来の味わいを楽しめるんです」と沙友里さん。
ひと口食べれば、一般に流通しているチョコレートとは全く違うことがすぐにわかり、リピートするファンが多いのも頷けます。「無駄なものが入っていないからこそ、カカオ含有量が多いので1~2かけらくらいでも十分、満足感にひたれますよ」
タブレットの他にもジワり注目を集めているのが、nicaoのチョコレートのおいしさをしっかり楽しめる2種類のクラフトアイスクリームです。
「ダブルチョコレートアイスクリーム」はカカオ70%のダークチョコレートをベースに、中のチョコチップもタブレットとして作っているチョコレートを絶妙な食べごたえの薄さに削ったもの。「チョコチップの厚さや大きさは何度も試作して調整しました。アイスの口どけとチョコレートの歯応えを贅沢に楽しんでください」と由子さん。
「抹茶ホワイトチョコチップ入りアイスクリーム」に入っているホワイトチョコチップももちろんタブレットと同じもの。室町時代より続く、京都・宇治の老舗「堀井七茗園」の抹茶とnicaoのホワイトチョコレートとの相性は抜群で、コクがあるのに、後味は軽やかです。
アイスの製造は、業界最高峰のカルピジャーニー社の製造機器を有する北海道ミルク工房に依頼。相談を重ねて、やっと完成の日の目を見ました。
「添加物が入っていないため凍らせるととても硬くなるんです。少し常温で待ってから食べてくださいね」
nicaoがいま世の中に広めたいと思っているのが、香り豊かな「カカオティー」。その主原料は、なんとカカオ豆の外皮として廃棄されることが多い「ハスク」なのだそう。
カカオ豆が届くと、まずは選別をし、焙煎にかけます。その後はチョコレートの主原料になるカカオニブと外皮などのハスクに分られるのですが、せっかくはるばるグアテマラから旅をしてきたカカオ豆。しかも無農薬の貴重な原料を無駄にするのはもったいないと考えた3人は、どうにかして商品化できないかと思案し、辿り着いたのが「カカオティー」。ハスクに熱湯を注ぐだけで、カカオの香りを楽しむお茶に早変わり。しかもノンカフェイン・ノンカロリーなので妊婦の方や子どもも楽しむことができます。
「カカオ豆はまだまだ可能性を秘めています。カカオニブを砕いてサラダのアクセントにしたり、ハスクをふりかけにできないかなど、アイデアがふつふつと湧いてきます」
カカオのパワーがたくさんの人を幸せにしますように。今日もニセコの大自然に見守られながら、nicaoではチョコレートが作り続けられています。