NAKAFURANO BREWERY
中富良野町は、北海道のほぼ中心に位置するまち。北海道最大のラベンダー畑「ファーム富田」を有し、夏になると濃い紫色の美しい景観とラベンダーの香りに包まれます。湿度が低く、冷涼な気候を活かして作られているのは、お米、玉ねぎ、スイートコーン、メロンなど。道内でも「農産物の宝庫」と呼ばれるほど、多種多様な農産物が栽培されています。
豊かな自然に恵まれたこの地に、2023年7月にオープンしたのが「NAKAFURANO BREWERY(なかふらのブルワリー)」です。地元産ホップと十勝岳連峰の湧き水、富良野エリアの特産品を贅沢に使ったクラフトビールを醸造・販売しています。その品質と美味しさはすでに高く評価されており、国内最大級のクラフトビール審査会「ジャパン・グレート・ビアアワーズ2024」の受賞を果たしています。
NAKAFURANO BREWERYのオーナー、鵜飼亮子さんは神奈川県横浜市出身。10代の頃からスノーボードにのめり込み、社会人になってからもニセコを中心に北海道を訪れ、その雪質の良さを堪能していたそう。
転機が訪れたのは2020年。青年海外協力隊として、現地で Web制作関連の仕事をしていた鵜飼さんは、感染症の影響で一時帰国を余儀なくされました。帰国後、ニセコに滞在する中で「このまま北海道に住みたい」という思いが募ったと言います。しかし、ニセコは北海道屈指の観光地。「もっとのびのびアクティビティを楽しめるまちがいい」と近隣を探していたところ、中富良野町の地域おこし協力隊の募集に出会いました。SNS運用などの広報業務担当として採用され、2021年4月に中富良野町へ移住します。
広報業務と並行して始めたのが、クラフトビール造りでした。鵜飼さんは「普段からクラフトビールしか飲まない」ほどの愛好家。その魅力は種類や味わいの多様さにあると言います。「自分が住んでいるまちでもクラフトビールが飲みたい!」と、一念発起して醸造所の立ち上げを決意したのです。
ビール事業の背景には、地域貢献への想いもありました。新たな観光資源やお土産品の創出に加え、ストップしていた「ホップ」の栽培も再開できるのではないか。鵜飼さんの考えに共感した人たちの後押しもあり、町内初のビール造りがスタートしました。
現在では年間9,000ℓ、瓶に換算すると2万7000本を製造するNAKAFURANO BREWERYですが、醸造経験はゼロからのスタートでした。
鵜飼さんが修行先で出会ったのが、小ロット生産に適した「石見式」という醸造方法。低コストでの醸造が可能な反面、手作業が多いのが特徴です。寸胴鍋とガスコンロを用いて麦汁の抽出や煮沸を行い、攪拌(かくはん)も人力で。ビール造りは「1℃で味が変わる」と言われるほど繊細な作業です。温度を一定に保つため、10分ごとに温度を測り、火力調整を繰り返します。
道内外での研修を経て醸造を習得した鵜飼さんは、地元素材を活かした商品づくりに着手します。試行錯誤の末、最初に出来上がったのが、「Nostalgia(ノスタルジア)」。べルジャンスタイルのビールをベースに、中富良野町産の無農薬ラベンダーの花粒を発酵の最終段階で加えています。「ラベンダーの香りが強すぎると飲みにくくなってしまう。調整に苦労しました」と鵜飼さん。ほのかに香るラベンダーとレモンピールの爽やかさが感じられる、NAKAFURANO BREWERYの看板商品となりました。
そのほかの定番商品やシーズナル商品も「地産地消」へのこだわりは共通しています。地酒「法螺吹(ほらふき)」の酒粕や富良野産のはちみつなど、富良野エリアならではの素材を使用することで、唯一無二の味わいを生んでいるのです。
今後は製造量のさらなる拡大を目指すとともに、クラフトビールをもっと気軽に楽しんでほしい。そのために工場に併設している飲食スペースはこれからも続けていきたいと言う鵜飼さん。最近では、クラフトビールを目当てに訪れる観光客の方も増えているそうです。
町内で宿泊される方には、なんと鵜飼さん自ら無料の送迎サービスを行っています。「いずれは町内の廃校を活用して、ビール工場を併設したサウナ付きの宿泊施設を作りたい」と夢を語ってくれました。
お土産やプレゼントに、そして自分へのご褒美に。NAKAFURANO BREWERYは、まちのクラフトビール文化の発信地として、新たな価値を創出し続けています。